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景気のいい話はあまりない…/原ゆみこのマドリッド

超ワールドサッカー / 2023年1月17日 20時0分

写真:©︎RFEF

「大人気ないなあ」そんな風に私が呆れていたのは月曜日、試合中は見逃していたものの、スペイン・スーパーカップ決勝終盤にレアル・マドリーの中堅、26才のセバージョスがバルサの18才、ガビの髪を鷲掴みにする映像を発見した時のことでした。いやあ、確かにその時間、彼らは敗色濃厚でしたし、スペインから遥か遠く離れたリアド(サウジアラビア)での開催とはいえ、クラシコ(伝統の一戦)はクラシコ。ティーンエイジャーに好き勝手されてなるものかと、ちょっと後にはベテランのナチョも激しいタックルをかけて、1ゴール2アシストで決勝MVPをもらうことになるガビを吹っ飛ばしていたりしたんですけどね。

そこまで相手に目の敵にされてしまう当人についてはチャビ監督も試合後、「Me quedo sin palabras. Es pura pasión, pura alma/メ・ケド・シン・パラブラス。エス・プラ・パシオン、プーラ・アルマ(言葉も出ない。情熱そのもの、魂そのものだ)」と絶賛していたんですが、実は会場のキング・ファハド・インターナショナル・スタジアムにはスペイン代表のデ・ラ・フエンテ新監督も観戦に。この活躍ぶりを目の当たりにすれば、3月のユーロ2024予選にガビを招集するのは間違いないかと思いますが、バルサには他にも若くして先日のW杯カタール大会に行った選手がペドリ(20才)、バルデ(19才)、アンス・ファティ(20才)と3人も。

それに比べ、マドリーの方は先発したカルハバルも後半途中出場だったアセンシオもパッとせず、大体がして、リーガ前節のビジャレアル戦ではクラブ史上、初めてスタメンにスペイン人選手が1人もいないという珍事まであったとなれば、もしやスペイン代表の復権はバルサの若手の成長ぶりに懸かっている?まあ、その辺はまったく違う次元の話ではあるんですけどね。実際、ここ2週間、マドリッド勢にはあまりいいニュースがないせいもあって、今は私もちょっと、凹んでいたりするんですが…。

そう、先週末はスペイン・スーパーカップ参加チーム以外はリーガ戦を行い、うーん、土曜に先陣を切った弟分のラージョだけは、バジャドリーにイシのゴールで0-1と勝ったんですけどね。W杯のparon(パロン/リーガの停止期間)が明けて以来、サグンティーノ(RFEF2部/実質4部)と0-0で引分け、PK戦で勝ち抜けたコパ・デル・レイ2回戦も含め、5試合目にして、ようやく初勝利をゲットできたのは良かったかと。順位は9位のままながら、おかげでコレンフェレンスリーグ出場圏の7位オサスナまでたった勝ち点差1に、それどころか、同じ勝ち点で並んでいるCL出場圏4位とEL出場圏5、6位にいるアトレティコ、ビジャレアル、ベティスまでもたった2差になったって、何か、躍進していない?

こうなると今週土曜、4位との勝ち点差を7に広げ、堂々3位に君臨するレアル・ソシエダにエスタディオ・バジェカスでうっかり勝ったりすれば、またファンが「El año que viene RAYO – LIVERPOOL/エル・アーニョ・ケ・ビエネ・ラージョ・リバプール(来季はラージョvsリバプール戦)」と歌い出すことも十分、ありそうですが、イラオラ監督は「Tenemos la experiencia de la primera vuelta de la temporada pasada/テネモス・ラ・エクスペリエンシア・デ・ラ・プリメーラ・ブエルダ・デ・ラ・テンポラーダ・パサーダ(昨季前半の経験がある)」とあくまで慎重。ええ、前半戦で爆走した後、なかなか勝てず、残留確定に手こずったシーズン後半の苦い思い出のせいでしょうが、まあ、プレミリーグで今季苦戦しているリバプールが来季、ヨーロッパの大会に出られるかもわかりませんからね。

その辺はブカネーロス(ラージョのウルトラグループ)の創意工夫に任せるとして、惨々だったのは日曜の方なんですよ。まずは午後2時からのエスパニョール戦を見にコリセウム・アルフォンソ・ペレスに向かった私だったんですが、早くも前半6分にはルイス・ミジャがセンターでブライトワイトにボールを奪われ、そのすぐ脇からホセルの撃った超ロングシュートがGKダビド・ソリアの意表を突き、先制点を奪われているのですから、ビックリしたの何のって。おまけにその1分後にはヘタフェもエネス・ウナルがエリア外左から、対角線のgolazo(ゴラソ/スーパーゴール)を決めて同点に追いついたとなれば、驚きも2倍ですって。

ただ、その後のヘタフェはまったくいいところが見せられず、後半17分にはプアドにエリア内への侵入を許し、vaselina(バセリーナ/ループシュート)で勝ち越し点を取られてしまったのが致命傷に。うーん、後半頭から一斉交代した3人のうち、ムニルが21分にケガをしてしまい、ラタサが入って枠が早々に尽きてしまったのもツイていませんでしたけどね。そのまま1-2の敗戦となったため、またしてもファンは「Quique vete ya!/キケ・ベテ・ジャー(キケ・サンチェス・フローレス監督、もう出て行け)」の合唱で終わることに。15位と2つ順位を落としながら、降格圏との2差が変わらなかったのは不幸中の幸いでしたが、何せ彼らの次戦は日曜、カンプ・ノウでのバルサ戦ですからね。

それが済んだら、アンヘル・トーレス会長は監督を変えるだろうという予想もチラホラ出ているんですが、その日、続いて始まったアルメリア戦では前半18分、コンドグビアがセンターから出したパスをグリーズマンはスルー。それに惑わされ、スタートが遅れた敵DFに先んじて、コレアがアトレティコの先制ゴールを決めたとオンダ・マドリッド(ローカルラジオ局)の実況で知り、ウキウキしてコリセウムのプレスルームを出た私には更なる試練が降りかかることに。というのも、メトロのロス・エスパルタレス駅近くのバル(スペインの喫茶店兼バー)にいそいそと腰を落ち着けた途端、32分、マルコス・ジョレンテの弧を描いて落ちるシュートがそのままゴールに入る直前、オフサイドの位置にいたコンドグビアが足を出して押し込むという余計な真似をするのを目撃する破目になったから。

それにはシメオネ監督も「Para que la tocas!/パラ・ケ・ラ・トカス(何だって蹴るんだ!)」とベンチから叫んでいたそうですが、もちろんこのゴールはスコアには上がりません。すると、ありがちな不幸の連鎖が始まり、37分にはロベルトネスのクロスをエル・ビラル・トゥーレがヘッドして、アルメリアが同点ゴールをゲット。後半、最近はMF化著しいグリーズマンのシュートが2度、セーブされた後、いよいよモラタが投入されたんですが、大体がして、この日はCFの位置でゴールを挙げたとはいえ、元々、コレアは「Donde me siento más cómodo es más atrás con un nueve de referencia, como segundo punta/ドンデ・メ・シエントー・マス・コモドー・エス・マス・アトラス・コン・ウン・ヌエベ・デ・レフェレンシア、コモ・セグンド・プンタ(自分がやりやすいのはCFの後ろ、第2FWみたいな)」タイプですからね。

何故、シメオネ監督が最初からモラタを出さなかったのは疑問の残るところでしたが、すぐにその理由がわかることに。だってえ、彼はジョレンテの極上のクロスを2度も受けながら、最初はヘッドを外し、次はGKフェルナンドとの1対1でゴールを決められないんですよ。更にコレアのシュートも弾かれてしまったため、シメオネ監督が、「ウチはゴール運がなかった。シュートは枠内に飛んだんだが、そこに敵のGKがいた」と嘆くのもわかりますが、「Acabará llegando mas adelante/アカバラ・ジュエガンドー・マス・アデランテ(この先の試合では入っていくだろう)」という根拠は一体、どこに?

そう、撃っても撃ってもゴールが決まらないアトレティコの姿はもう今季の定番ですからね。それなのにクーニャ(ウォルバーハンプトンにレンタル)、ジョアン・フェリックス(同チェルシー)と冬の市場で2人もFWを出してしまうわ、31分にはコレアからCBのフェリペへと謎の交代はするわ、挙句の果てに途中出場のレギロンが終盤の5分間で2枚イエローカードをもらってレッドカードって、これでエルモーソ、サビッチに続いて、リーガ戦で退場者を出すのは3試合連続ですよお。結局、シュート20本で1点も取れなかったバルサ戦に続き、この日も12本でたったの1点だったアトレティコはそのまま1-1の引分けに終わりましたっけ。

もうこうなると、他試合の結果のおかげで、この節の終わりには4位に上がっていたというのが冗談のように聞こえるんですが、今の状態で水曜午後9時(日本時間翌午前5時)からのコパ16強対決、レバンテ戦を迎えるのはただただ、不安になるばかり。ええ、相手は今季2部とはいえ、前ラウンドでは弟分のヘタフェに3-2で勝っていますし、先週末のリーガもグラナダに3-1で勝利して、現在3位と好調のようですしね。

実際、1部時代の対戦でもシュタット・デ・バレンシアは鬼門だったため、ヒメネスは出場停止かつ負傷中、カラスコもまだ練習に戻っていないアトレティコが一体、どうやったら勝てるのやら。月曜のマハダオンダ(マドリッド近郊)でのセッションではシメオネ監督を始め、スタッフからシュート練習をするモラタに「A definir, a definir, a definer/ア・デフィニール(決めろ)」との声が飛んでいたそうですが、何か奇跡でも起こって、近日中にゴール力のあるFWが加入してくれたりしないんでしょうか。

そして最悪の日曜の集大成はもちろん、自宅近くのバルで見たスペイン・スーパーカップ決勝で、いやあ、確かにリーガ再開からのマドリーはあまり強い感じはしなかったんですけどね。前半12分のレバンドフスキのシュートこそ、GKクルトワが弾き、ゴールポストにも助けられたものの、33分にはボール出しのミスから失点を喫してしまうことに。ええ、クルトワからボールを受けたリュディガーがカマビンガに繋いだところを自陣エリア前で奪わると、レバンドフスキからラストパスを受けたガビがカルバハルに先んじてシュートを決めてしまったから、さあ大変!

マドリー守備陣の不具合はハーフタイム入り直前にも発生し、今度はデ・ヨングがセンターから出したスルーパスの方にカルバハルの注意が逸れ、ガビがその背後を爆走。今度は自分では撃たず、ファーサイドに来ていたレバンドフスキにアシストして、バルサに2点目が入ります。後半も始まりは似た感じで、デンベレとレバンドフスキのシュートをクルトワが防いだ後、24分、ミリトンが自陣エリア近くでボールをロスト。この時はレバンドフスキ、ガビ、ペドリで黄金の三角形が完成し、いやあ、いくら根性のremontada(レモンターダ/逆転劇)がトレードマークのマドリーとはいえ、さすがに3点もリードされてはどうしようもありませんって。

それでもロスタイムにはベンゼマがゴール前から2度撃ちで名誉の1点を挙げ、試合は1-3のスコアで終わったんですけどね。その日だけは満員御礼になったスタンドからはマドリーにブーイングも出ていたそうですが、実は彼らが決勝で負けるのは2018年のUEFAスーパーカップでお隣さんに屈した時以来なのだとか。逆にバルサはメッシがPSGに移籍して以来、タイトルを獲るのはこれが初めで、よってブスケツがキャプテンとしてトロフィーを持ち上げるのもこの日が初体験。チャビ監督にとってもバルサを率いての嬉しい初優勝となりました。

え、試合後、アンチェロッティ監督は「Se sabía que el equipo no estaba a tope y este partido nos ha mostrado algunas carencias/セ・サビア・ケ・エル・エキポ・ノー・エスタバ・ア・トペ・イ・エステ・パルティードー・ノス・ア・モストラードー・アルグーナス・カレンシアス(チームが最高の状態でないことはわかっていたし、この試合では足りない部分が出てしまった)」と言っていたけど、本調子ではなくても代理が務まる選手がおらず、モドリッチやクロースが出続けないといけないのは先々、心配じゃないかって?そうですね、アラバと一緒に負傷でお留守番になったチュアメニもすぐ戻ってくる訳じゃありませんし、ルーカス・バスケスが準決勝のバレンシア戦で足首を痛め、全治1カ月半に。バルサのガビを全然、止められない程、力の落ちているカルバハルをここしばらく、使い続けないといけないというのもありますしね。

とりわけ今週木曜午後9時のコパ16強対決では、これもベンゼマのPKでしか点が取れず、1週間前のリーガで2-1と負けたばかりのビジャレアルと再び対戦。万が一、ここで敗退しようものなら、Sextete(セクステテ/6冠優勝のこと)の夢が潰えたばかりのマドリーにとってはあまりに痛いショックになりますからね。実際、ラ・セラミカでの黒星のせいで、リーガでも首位バルサに勝ち点3差をつけられているんですが、とにかく早いところ、ベンゼマ以外の選手たちにもゴールを取り戻してもらうしかない?金曜のセルタ戦で1-1の引分けだったビジャレアルではフォイスとキケ・フェミニアの両右SBが負傷中とあって、それこそ、ビニシウスにはいいチャンスになるかもしれせんよ。


【マドリッド通信員】 原ゆみこ
南米旅行に行きたくてスペイン語を始めたが、語学留学以来スペインにはまって渡西を繰り返す。遊学4回目ながらサッカーに目覚めたのは2002年のW杯からという新米ファン。ワイン、生ハム、チーズが大好きで近所のタパス・バルの常連。今はスペイン人親父とバルでレアル・マドリーを応援している。


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