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潰し合いが始まる…/原ゆみこのマドリッド

超ワールドサッカー / 2023年1月21日 23時45分

写真:©Atlético de Madrid

「クラシコの方が良かったのに」そんな風に私が嘆いていたのは金曜日、コパ・デル・レイ準々決勝の組み合わせを知った時のことでした。いやあ、たまたまその日は寒さが少しは和らいだこともあり、マハダオンダ(マドリッド近郊)の練習場でアトレティコのセッションを見学。バジャドリー戦前日会見とラス・ロサスのスペイン・サッカー協会本部で行われる抽選会がほぼ同時に始まったため、プレスルームにいた記者たちは皆、スマホでライブ配信をチラ見しながら、シメオネ監督と質疑応答をしているという、今の時代ならでは光景が繰り広げられていたんですけどね。

それこそ、その会見中に来週はお隣さんとのコパ・マドリーダービーがあるとわかれば、質問の矛先も絶対、そっちに行ったはずだったんですが、おそらく協会もただ8つのボールを引くだけでは中継がたった2分で終わってしまうのを恐れたか、抽選前に延々と選手たちのビデオインタビューなどを放送。おかげでレアル・マドリーとアトレティコの対戦が決まったのは会見終了から、5分以上経った頃となり、とっくにシメオネ監督の姿もなかったんですが、もしや彼も戻ったロッカールームで選手たちが絶望しないように慰めていた?

だってえ、鬼門のシュタット・デ・バレンシアで生き残ったとはいえ、アトレティコのゴール力が戻ったと言うにはまだ時期早々。見学時間の15分が終わり、敷地から追い出された後、目隠しの覆いの外から、残りのセッションを伺っていたところ、選手たちは延々とシュート練習に専念していたぐらいですからね。この冬、レンタルに出した2人のFW、クーニャ(ウォルバーハンプトン)とジョアン・フェリックス(チェルシー)の穴を埋めるため、バルサから移籍したメンフィス・デパイの入団プレゼンこそ、同日夕方にあったんですが、いくら木曜からチームと一緒に練習しているといったって、彼はレバンドフスキにあらず。

いきなりダービーでゴールを決めてくれるとはとても思えないんですが、まあそれはともかく、アトレティコに今季、唯一残ったタイトル獲得の可能性がある大会、コパ16強対決のレバンテ戦がどんなだったか、お話ししていくことにすると。それが、キックオフから絶対攻めていくだろうという私の予想は完全に外れ、「El primer tiempo fue chato, no fue bueno, con imprecisiones y pérdidas/エル・プリメール・ティエンポー・フエ・チャト、ノー・フエ・ブエノ、コン・インプレシシオネス・イ・ペルディーダス(前半はのっぺりしていて、良くなかった。不正確でボールロストも多かった)」(シメオネ監督)という最低のスタートだったんですよ。

しかも前半24分など、セットプレーからムニョスにゴールに撃ち込まれ、審判がGKオブラクと一緒にジャンプした敵のFW、ブルディーニにファールがあったと判断してくれたから良かったものの、そうでなければ先制点を奪われていた始末。となれば、「No jugamos, ni pateamos al arco/ノー・フガモス、ノー・パテアモス・アル・アルコ(ウチはプレーもシュートもしなかった)」(シメオネ監督)アトレティコが0-0でハーフタイムを迎えることができたのは不幸中の幸いと言ってもいい?

ただ、ロッカールームでシメオネ監督の訓示を受けた後の後半は、いえ、どちらかというと、カンテラーノ(アトレティコBの選手)をコレアに代えたのが当たったみたいでしたけどね。ようやく過去2シーズン、2分け2敗と天敵だった1部のレバンテと今季2部にいるレバンテが違うチームだということに選手たちも気がついたか、後半9分にはコレアが送ったボールをマルコス・ジョレンテがエリア内からファーサイドのモラタに全身全霊を込めてキラーパス。このコネクション、実はリーガ前節のアルメリア戦でも2度あって、その時は見事にシュートを外していた彼ですが、この日は見事にネットを揺らし、控え目ながら、「El primer gol para mi hija que acaba de nacer/エル・プリメール・ゴル・パラ・ミ・イハ・ケ・アカバ・デ・ナセル(生まれたばかりの娘のための最初のゴール)」(モラタ)を祝うことができましたっけ。

その10分後にはモラタもサウールに代わり、なかなか追加点も入らなかったため、私もドキドキしながら見ていたんですが、ロスタイムにはようやく一息つけることに。ええ、今度もコレアが起点となり、ナウエル・モリーナへ繋ぐと最後はエリア内に走り込んだジョレンテが2点目を挙げてくれます。そのまま0-2で勝利して、アトレティコは準々決勝に駒を進めただけでなく、32強対決でレバンテの前に悔し涙を飲んだ弟分、ヘタフェのリベンジもできましたしね。相手のカジェハ監督は少々、ジャッジに不満があったようですが、10月にナフティ監督と交代した後、ここ14試合負けなしだったレバンテは3位と、1部復帰へと着実に前進中。となれば、この日曜にはレガネス戦も控えていますし、負担になるコパはこの辺が潮時だったかもしれませんね。

ちなみにこの日はシュート7本、うち枠内4本で2点を取る効率の良さを見せたアトレティコだったんですが、その調子を持続できるかの試金石となるのは、土曜午後6時30分(日本時間翌午前2時30分)からのバジャドリー戦。どうやら入団ほやほやのデパイが出場するのは問題ないようで、彼の移籍金300万ユーロ(約4億3000万円)と平行して、この夏の2000万ユーロ(約28億円)の買い取りオプションをバルサに売られたカラスコも金曜の練習ではケガが治っていたようですが、ちょっと心配なのはDF陣かも。ええ、このところリーガでは3試合連続退場者を出していて、今回もサビッチとレギロンが出場停止、ヒメネスもまだ内出血が治っていないんですよ。

といっても現在4位とはいえ、5位6位と同じ勝ち点のアトレティコだけにうっかりすると、CL出場圏から落ちてしまうため、ここは一旦、来週木曜午後9時(日本時間翌午前4時)から、当初の予定だった日曜のリーガ19節レアル・ソシエダ戦より3日も早く、サンティアゴ・ベルナベウの改装工事を中断させて開催することになるコパ・ダービーのことは忘れて、目の前の試合に集中しないといけませんが…きっと、シビタス・メトロポリターノのファンは17位のバジャドリーにリードするやいなや、ダービー先取り応援を始めるんでしょうね。

え、スペイン・スーパーカップ決勝であんなにも容易くバルサにやられてしまうマドリーを見ていれば、それ程、恐れるべき相手じゃないんじゃないかって?いやあ、実際、翌木曜のコパ16強対決ビジャレアル戦前半まではまったくその通りで、Sextete(セクステテ/6冠優勝のこと)の夢潰えたのがまだショックだったか、彼らは前半4分、スローインからジェラール・モレノが繋いだボールをカプエに決められ、先制点を奪われてしまったから、ビックリしたの何のって。その後も優勢だったのは、リーガ前節には同じラ・セラミカの舞台で2-1と勝利していたセティエン監督のチームで、42分にも今度はチュクウェゼに2点目を入れられてしまったとなれば、レバンテ戦前半のアトレティコの方が全然、マシだった?

でもねえ、普通のチームなら、前半2-0で負けて折り返せば、ほとんど絶望的になってしまうはずなんですが、マドリーはそこが違うんですよ。折しも相手はハーフでアルビオルをクエンカに交代、7分にはそれまでビニシウスを完璧に抑えていたフォイスも負傷して、本職の右SBがいないせいで、CBのマンディをその位置に入れなければならなかったのもプラスになりましたけどね。ゲームの流れを変えたのは11分、アンチェロッティ監督がクロースとロドリゴを下げ、セバージョスとアセンシオを投入したこと。いえ、チームが負けているに時点でベンチに戻ることになったロドリゴなど、指揮官とは目も合わさず、ふてくされて座ってしまったんですけどね。

おかげでそれからたったの1分、セバージョスのスルーパスを受けたビニシウスが反撃の狼煙を上げるゴールを挙げた後にはアンチェロッティ監督がロドリゴに近づいて、「Tú a mí me saludas/トゥ・ア・ミー・メ・サルーダス(君は私に挨拶しないといけない)」と直々に注意することに。とはいえ、その時は怒っていた当人も24分、今度はセバージョスのクロスをベンゼマがヘッド。GKヨルゲンセンにそれは弾かれたものの、こぼれ球をミリトンが押し込んで、同点に追いついたとなれば、上司の慧眼ぶりに感服するしかないかと。

そして、まさかCL以外で、とりわけコパなどでお目にかかろうとは思わなかった根性のremontada(レモンターダ/逆転劇)モードが発動したマドリーは41分、アセンシオの折り返したパスをセバージョスがワンタッチでシュート。とうとう2-3でスコアを引っくり返し、延長戦もPK戦もなしで勝ってしまったんですよ。実際、昨季のDecimocuarto(デシモクアルト/14回目のCL優勝のこと)に至る、逆転に次ぐ逆転となった決勝トーナメントで主役の1人となったロドリゴは、アンチェロッティ監督に記者会見で、「No ha saludado porque creo que se ha olvidado/ノー・ア・サルダードー・ポルケ・クレオ・ケ・セ・ア・オルビダードー(挨拶するのを忘れたのだろう)」ととりなしてもらっていたものの、早々に交代していましたし、モドリッチはマドリッドでお留守番。

ベンゼマも最近はPK以外でゴールを挙げる姿をめっきり見なくなった思いきや、セバージョスやアセンシオら、控え選手までいざとなると、クラブに脈づくレモンターダ精神を発揮してしまうんですから、これは本当に手に負えないかと。まあ、それでも彼らには同日夜、NBAのパリ出張試合、デトロイト・ピストンズvsシカゴ・ブルズ戦を見に行っていたことが発覚したチュアメニ、そしてアラバ、ルーカス・バスケス、カルバハルと負傷者が多い上、この日曜午後9時(日本時間翌午前5時)からのアスレティック戦は後がないコパとは違うため、そう簡単にはいかないと思いますけどね。

ただ、アスレティックもエスパニョールを1-0で下してコパ準々決勝進出組となり、来週木曜にはスポルティング(2部)に0-4と圧勝したバレンシアと当たることになったため、ちょっと気が散っているかもしれませんが、マドリーは現在、リーガで首位バルサと勝ち点3差の2位。シーズン前半終了まで、今週末を含めて、まだ3試合あるとはいえ、これ以上、離されたくないのが本音でしょうが、それには早くW杯のparon(パロン/リーガの停止期間)前の調子を取り戻さないことには。ちなみに残りのコパ準々決勝はバルサvsレアル・ソシエダとオサスナvsセビージャとなっているんですが、こうもミッドウィークの試合が続くと、ホント、どこのチームも選手の体調管理が大変でしょうね。

そしてコパは32強対決で敗退済み、今週はゆっくりできたマドリッドの弟分たちの週末の試合も紹介しておくと、土曜の午後2時(日本時間午後10時)にはラージョがエスタディオ・バジェカスにレアル・ソシエダを迎えることに。ヒザに痛みを抱えるRdT(ラウール・デ・トマス)と打撲のオスカル・バレンティンは欠場になりますが、ここは相手の連戦疲れを利用して、マドリーまで勝ち点3に迫り、アトレティコとは勝ち点差7をつけている3位を叩くことができれば、両兄貴分から感謝してもらえる?もちろん、ラージョ自身も9位ながら、CL出場圏4位まで勝ち点差2と迫っている立場であるため、前節バジャドリー戦でリーガ再開後、初勝利を挙げた流れを持続させたいはずです。

一方、ここ2試合、セビージャ、エスパニョールに連続して負けたため、15位ながら、降格圏まで勝ち点差1に迫ってしまったヘタフェは日曜午後6時30分(日本時間翌午前2時30分)から、カンプ・ノウでバルサに挑むんですが、少しでも朗報があるとしたら、相手はリーガでの出場停止3試合の消化中のレバンドフスキが出られないことぐらい。木曜のコパでセウタ(RFEF1部/実質3部)に0-5と大勝したのはカテゴリー差を考えれば、それほど驚くことではありませんが、何せ、チャビ監督のチームはスペイン・スーパーカップで宿敵を破って優勝。メッシ(PSG)が去って以来のタイトル獲得に士気が上がっていますからね。

まだ冬の市場ではゴンサロ・ビジャルがローマから、リピートレンタル移籍で入ったぐらいで、ほとんど戦力に変化のないヘタフェだけにあまり、大きな期待もできないんですが、昨季の1月にはマドリーに勝ったなんてこともありましたし、勝負はやってみるまでわからない?低空飛行も程々にしないと、キケ・サンチェス・フローレス監督の先行きも怪しくなりますし、とにかく1勝でもすれば、4チームがひしめく、降格圏一歩手前のゾーンを抜け出せるため、今は歯を食いしばって頑張るしかありません。


【マドリッド通信員】 原ゆみこ
南米旅行に行きたくてスペイン語を始めたが、語学留学以来スペインにはまって渡西を繰り返す。遊学4回目ながらサッカーに目覚めたのは2002年のW杯からという新米ファン。ワイン、生ハム、チーズが大好きで近所のタパス・バルの常連。今はスペイン人親父とバルでレアル・マドリーを応援している。


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