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「私が守りきれば、負けることはない。」GK松本真未子は冷静なプレーに、熱い思いを忍ばせる

超ワールドサッカー / 2023年1月24日 20時30分

写真:©mynavisendai

マイナビ仙台レディースの試合会場には、良く通る彼女の檄が響き渡る。その声の主、GK松本真未子は2022-23 YogiboWEリーグで、開幕から8試合連続の先発出場を続けている。優れた身体能力と判断力を誇り、一歩の出し方、一つのキャッチング動作に繊細さやこだわりが見える。そうかと思えば、時には大胆に前へ飛び出していったりもする。ゴールマウスで鮮やかに舞い、失点を防ぐ様子は見ている人をけして飽きさせない。まるでGKというポジションの楽しさや格好良さを教えてくれているようだ。

◆本領発揮のPKストップ。松本はどこまでも“冷静”だった。

ウインターブレイク直前の第8節日テレ・東京ヴェルディベレーザ戦、前半25分に彼女の“見せ場”はやってきた。それはマイナビ仙台にとって、この日“最大のピンチ”でもあった。味方選手がエリア内でハンドを取られて、東京NBにPKが与えられた。キッカーはFW小林里歌子選手。ペナルティスポットに立つストライカーの姿を、松本はじっくりと観察した。


「小林選手の雰囲気から、『打ち込んでくるんじゃないか?』という予測がありました」

水を口にし、息を整えた。駆け引きは始まっていた。自分の間合いを大事にし、冷静に小林と向き合った。笛が鳴った瞬間、両足で地面を蹴ると、体をまっすぐに伸ばし、ゴール左側に飛んだ。小林は予測通り、左ゴールポスト内側を右足で狙ってきた。タイミングも角度も完璧、1点が決まるというキックだった。しかし松本は両手でボールをキャッチすると、すぐさま立ち上がりガッツポーズ。仲間と肩をたたき合った。

「(小林選手の右足の)対角線上にクロスして飛びました。それが当たったのでラッキーです。運が良かったと思います」と松本は言うが、幸運だけではPKを防ぐことはできない。どんな相手と対峙しても一歩も引かない強さと落ち着き。それがチームメートの安心感にもつながっている。彼女のようなGKがマイナビ仙台にいるということは本当に心強い。

◆シュート25本で失点0。「そんなに危ないシーンはなかった」

松本の活躍や守備陣の奮闘もあり、この東京NB戦はスコアレスドローで終え、勝ち点1を掴んだ。ゲームの主導権を握っていたのは東京NB。マイナビ仙台は公式記録で、実に25本ものシュートを浴びた。東京NBは流れるようなパスワークから、クロスから、更にミドルシュートも狙ってきた。ボールを支配され、気が抜けない時間が続いた。しかし、こうした状況でPK以外にもビッグセーブを繰り返した松本は、やはり冷静だった。

「25本という数字を聞いたら恐ろしいですが、私の実感ではそんなに危ないシーンはありませんでした。落ち着いて守ることができましたし、味方もマークをしっかりとついて、コースを限定することを意識していたので、その成果が無失点という結果に出ました」

どんなに打たれても、最後のところでやらせなければ失点は防げる。自身が守り切ることができれば、チームが負けることはないという自信が、松本にはある。

◆浦和の下部組織出身。聖地・浦和駒場スタジアムで目指した「3度目の正直」

前身のマイナビベガルタ仙台レディースを含め、加入して3季目のシーズンを迎えた。2020年、出場機会と成長を求めて仙台へやってきた松本だが、古巣・浦和レッズレディースとの対戦には、いつも背筋が伸びる。下部組織から育ててもらったクラブ、サポーターには感謝の思いを抱いている。ジュニアユースの頃から試合運営を手伝い、憧れの先輩たちの姿を見つめた。トップチームの選手としても5年間を過ごした“聖地”の浦和駒場スタジアムには、特別な感情があった。昨年12月のWEリーグ第7節でも、試合後にこう話した。

「アウェーですが、私にとって(浦和駒場スタジアムは)ホームスタジアムです。3度目の正直で勝ちたい気持ちもあったのですが、やっぱり(レッズは)強いなと思いました」

WEリーグが開幕し、松本は駒場スタジアムに3度立った。2021-22のプレシーズンマッチ(1-1)、今季のWEリーグカップ第5節(0-2)、そしてWEリーグ第7節(0-2)である。いずれの試合でも松本は好セーブを見せたが、未だ浦和から勝利は上げられていない。駒場のミックスゾーンでは、レッズ時代に取材をしてくれた旧知の記者たちに囲まれた。再会の喜びを味わうも、言葉には結果が出ない悔しさをにじませた。

「私たちはまだまだなんだなと思い知らされました。もうちょっと成長した姿を浦和の皆さんに見てもらいたかったです」。涙は、駒場に置いてきた。いつの日か、勝利という形で恩返しをする。松本はその時を目指し、ひたすら自分を磨き続ける。

◆3月のWEリーグ再開までに磨くものとは。

マイナビ仙台を指揮する松田岳夫監督は、中断前の戦いをこう振り返りった。「3連勝でスタートしましたが、ゲームの内容は全くついて来ず、自分たちの思い描くようなプレーにはつながっていかなかった」。開幕から“紙一重の勝負”を何とかものにしてきたが、上位チームに対しては通用しなかった。

「よりゴールを意識し、アクションを起こすということで、縦への速さやゴールへの迫力、より高い位置でボールを奪うことに取り組んできました。その中で、上手くいかなかった要因はスピードを上げ過ぎ、攻守ともにバランスを崩したこと」。どこでスピードを上げ、どこでセーブするのか。一つのボタンの掛け違いが、大きなずれとなって試合結果に影響した。

東京NB戦前には「この試合に勝利するためだけではなく、リーグ再開後のゲームにつなげることが大事」と守備の原則など基礎の基礎を見直した。「後戻りするかもしれないけれど、3月以降しっかりと戦っていくためにはそこに取り組まないといけない」。中断期には、新戦力も迎え、ベースである守備の連係や攻撃の共通理解をより多く作っていくつもりだ。

松本も一層表情を引き締める。「失点0、しかし得点も0というところでは、まだまだやらなければいけないことはたくさんあると思いました。ウインターブレイクを挟んでINAC神戸レオネッサ戦も待っています。そこを目指して、しっかりトレーニングを積みたいと思います」。守備だけではなく、攻撃の起点としても力を発揮したい。リーグ再開後に高みへ上っていくため、マイナビ仙台と松本の大事な5週間は始まっている。

《マイナビ仙台レディース オフィシャルライター・村林いづみ》

【動画】GK松本真未子が魅せた渾身のPKセーブ!



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