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マドリーだけがミッドウィークも戦っている…/原ゆみこのマドリッド

超ワールドサッカー / 2023年2月11日 21時0分

写真:©Atlético de Madrid

「何か余裕あるみたいね」そんな風に私が戸惑っていたのは金曜日、水曜にはクラブW杯準決勝のアル・アハリ戦に出ていたレアル・マドリーのナチョが第4子誕生に備えて緊急帰国。木曜に次女のララちゃんを抱っこしている姿がインスタに上がっていると知った時のことでした。いやあ、マルチDFの彼は普段、控えであることが多いんですが、年明けからずっと週2試合ペースが続くマドリーは最近になって、負傷者が増加傾向に。守備陣でもアラバ、メンディ、カルバハル、ルーカス・バスケス、ミリトンが稼働不能となっていたため、ここ数試合、ナチョがスタメンに入ってヘルプしていたんですが、それだけに決勝前日の金曜にモロッコのラバトに戻る弾丸旅行を許すとは、アンチェロッティ監督も本当に心が広い。

いえ、アラバは先週末のリーガ、マジョルカ戦から復帰していますし、準決勝に出なかったカルバハルは突発性発熱で休んだだけで、翌日には回復。木曜夜にはマドリッドからミリトンがベンゼマと共にやって来て、DF陣の人員不足もほぼ解消しつつあるんですけどね。少々、難を言えば、全治2カ月と長いリハビリ期間を要するメンディの左SBのポジションをずっと不慣れなカマビンガに任せておくと、相手に決定力が欠けていたため、これまで致命傷には至らなかったものの、いつかは裏を突かれて痛い目に遭うんじゃないかということぐらいですが、そこはアラバを移動させるか、頼りのナチョを使えば、大ごとにはならない?

まあ、その辺はアンチェロッティ監督の人事起用の妙を楽しみに待つとして、今はアル・アハリ戦がどうだったのか、お伝えしていくことにすると。タイトルの懸かった大会の準決勝ということで、この日は中盤にクロース、モドリッチ、チュアメニのレギュラートリオ、ベンゼマの代わりにはfalso nueve(ファルソ・ヌエベ/シャドーCF)としてロドリゴを配置したマドリーでしたが、エジプトの強豪相手になかなかエンジンがかからなかったよう。ようやく30分近くなって、ビニシウスやロドリゴが敵ゴールを脅かし始めたんですが、42分に入った先制点は自陣エリア前でバックパスミスをした向こうの自業自得だった風も。

ええ、ボールを拾ったビニシウスがエリア内に入り、GKエル・シェナウィの頭上を越えるvaselina(バセリーナ/ループシュート)で決めたんですが、やっぱり彼にもモロッコ人のマドリーファンが多いスタッド・ムーレイ・アブドゥラの雰囲気がプラスになったんでしょう。というのも昨今、スペイン国内ではアウェイに行く度、スタンドからは容赦のないpito(ピト/ブーイング)を浴びるわ、敵選手たちの執拗なファールの標的になるわと、当人もサッカーだけに集中できない状態が続いていましたからね。

これを機に調子を上げていってもらいたいところですが、0-1でハーフタイムに入った試合のスコアは後半開始早々、再び動くことに。ええ、今度はモドリッチが出したスルーパスから、ロドリゴが撃ったシュートはGKに弾かれてしまったものの、エリア内に転がったボールをベルベルデが拾い、落ち着いて決めてくれます。何せ、前日記者会見では自ら、W杯でグループリーグ敗退したウルグアイ代表から戻って来た後、スランプに陥ったことを認めていた彼ですからね。おかげでparon(パロン/リーガの停止期間)前の8本で止まっていたゴール数も1つ増え、今季はバルベルデが10得点することにコーチライセンスを賭けていたアンチェロッティ監督もこれで少しは安心できた?

ただその後はマドリーに不運が続き、10分にビニシウスが敵DFにエリア内奥で倒されたプレーはペナルティを取ってもらえなかったのとは対照的に20分、カマビンガがエル・シャハトを引っかけたプレーは審判に見咎められてしまうことに。マジョルカ戦アップ中に感じた太ももの痛みはただの筋肉痛だったものの、大事をとって、クルトワはマドリッドでお留守番。クラブW杯の守護神を任されたGKルニンはアル・マールルのPKを止めることができず、1点差に迫られてしまったんですが…。

いやまあ、それも37分にビニシウスが今度はエル・ソリアにエリア内で足をかけられ、エリア内で倒れたプレーが、次のプレーが終わってからVAR(ビデオ審判)注進により、今度はペナルティを取ってもらえた時、モドリッチがそのPKをエル・シェナウィに弾かれていなければ、もっと早く決着がついていたんですけどね。リーガ前節マジョルカ戦ではPKキッカー3番手であるアセンシオが、この日も第2キッカーのモドリッチが失敗と、今季リーガ戦で1回もPKをもらっていないお隣さんなどにとっては真に贅沢な話でありますが、やっぱりこれは筆頭キッカーであるベンゼマの帰りを待つしかないのかも。

そして8分間のロスタイムに入ったんですが、まさか47分にこの試合一番のゴールが生まれるとは!ええ、周囲に敵がひしめく中、エリア前からロドリゴがtaconazo(タコナソ/ヒールキック)で途中出場していたセバージョスに送ると、こちらもヒールで返してくるって、このチームの選手たちの技術力たるや、まさに恐るべし。それをロドリゴがフィニッシュして、マドリーがとうとう3点目をゲットしたため、アンチェロッティ監督もモドリッチ、ロドリゴをオドリオソラ、マリアーノに交代させることに。更に最後の1分にはビニシウスに代えて、カンテラーノ(RMカスティージャの選手)のアリバスまで入れてみたところ、いやあ、ビックリです。

実はジダン監督時代の2020-21シーズンには19才ながら、10試合程、トップチームで経験を積ませてもらった彼ですが、アンチェロッティ監督が復帰した昨季はまったくお声がかからず。今季もコパ・デル・レイの初戦に出してもらったぐらいなんですが、まさか、ピッチに入って最初に触ったボールがネットに入るとは、どんなにラッキーなんでしょう。ええ、本人によると、アラバの蹴るFKに「クロスが入って来るのを見て、クリアボールに備えての位置取りしたんだ。Se me fue un poco el control, pero recontrolé y por suerte, gol/セ・メ・フエ・ウン・ポコ・エル・コントロル、ペロ・レコントロレ・イ・ポル・スエルテ、ゴル(ちょっとコントロールをミスったけど、コントロールし直して、幸運にもゴールになった)」そうですけどね。

普段、RFEF1部(実質3部)でプレーする自分と同じような年のビニシウスやロドリゴがトップチームでがんがん活躍しているのを見ているだけに、この得点はアリバスにとって大きな励みになったかと思いますが、そのまま試合は1-4で終了。土曜午後8時(日本時間翌午前4時)から、同じスタジアムで決勝を戦えることになったマドリーでしたが、意外にも相手はブラジルのフラメンゴではなく、彼らを火曜の準決勝で2-3と破ったサウジアラビアのアル・ヒラルなんですよね。それも決勝ゴールを挙げたのがビエットと、8年ぐらい前にアトレティコいた選手だったから、かなり意表を突かれたんですが、ただ、決勝のマドリーはベンゼマ、ミリトン、準決勝は筋肉痛でプレーできなかたアセンシオ、そしてカルバハルと使える選手が増えていますからね。

おそらく今季、UEFAスーパーカップに続く2つ目のトロフィーを恙なく獲得して、マドリッドに帰って来るんじゃないかと思いますが、その後は再び、厳しいリーガの現実に直面することに。というのも彼らがモロッコから戻る日曜にはバルサが21節でビジャレアルと対戦。もし勝てば、首位との勝ち点差が11といよいよ、remontada(レモンターダ/逆転優勝のこと)不可能域まで拡大しかねないためですが、6位のビジャレアルはCL圏の4位死守を宿命づけられたお隣りさんとたったの4差。それだけに私など、どっちが勝つのも嫌だったりするんですが、いやいや。マドリーにも水曜午後9時、また厳寒のサンティアゴ・ベルナベウに最下位エルチェを迎える試合で勝ち点差を8に戻すチャンスがありますって。

そう、クラブW杯がまったくの別世界である他のマドリッド勢もこの日曜にリーガ戦があるんですが、午後2時という早い時間にプレーするのはヘタフェとラージョで、今回はコリセウム・アルフォンソ・ペレスでの弟分ダービー。まったく、こうまで両者の状況が違うと、私も困ってしまうんですが、ご存知の通り、ヘタフェは2節前から19位の降格圏にドップリ浸っている始末でねえ。先週末、兄貴分のアトレティコと引分けたため、残留ゾーンまでは勝ち点2に迫っているとはいえ、メトロポリターノでもエネス・ウナルのPKで1点取っただけですからね。

しかもそのトルコ人エースは先日のトルコ・シリア大地震にかなりショックを受けているようだなんて聞くと、とても現在、EL出場圏の5位。4位まであと勝ち点3に迫っているイラオラ監督のチームには歯が立たないような気がしますが、さて。ちなみにヘタフェでは、アトレティコ戦でモラタへのペナルティをお目こぼししてもらったジェネが累積警告で出場停止。ラージョの方は前節アルメリア戦で負傷明け出場したアルバロ・ガルシアもその試合でゴールを挙げ、月曜から中5日もあるだけに皆、疲労から回復しているはずですが、果たしてどちらに軍配が挙がるんでしょうか。

そしてすぐその後の午後4時15分(日本時間翌午前0時15分)から、アトレティコが最近、応援団のストで雰囲気がおかしくなっているホームスタジアムを遠く離れ、バライドスでセルタ戦に挑むんですが、こちらも弟分たちと同様、今季はもう週1試合のゆったりモードですからね。今はケガ人も出場停止者もいないため、シメオネ監督が選手を選び放題というのは恵まれているかと。今週の練習では、兄弟分ダービーとはスタメンを2人変えていて、コレア、レマルの代わりにマルコス・ジョレンテ、カンテラーノのバリオスが入っていたようです。

そうそう、金曜にはAS(スペインのスポーツ紙)にこの1月、チェルシーにレンタル移籍したジョアン・フェリックスのインタビューが出ていたんですけどね。彼はシメオネ監督のサッカースタイルを「Basicamente, es sufrir en el campo/バシカメンテ、エス・スフリル・エン・エル・カンポ(基本的にピッチでは苦しむもの)。まずは苦しんでいて、チャンスが来たら得点する」と説明。そういう風に理解していたのでは、楽しんでサッカーをしたい当人が逃げ出したくなった気持ちもわかりますが、もしや、苦しんで勝った方が喜びも大きいってことはない?

まあ、チェルシーは買取オプションを持っていないため、もし今季いっぱいでシメオネ監督が退任することになれば、ジョアンが帰って来る可能性もあるんですけどね。どちらにしろ、リーガ残りの18試合はモラタ、グリーズマン、コレア、メンフィス・デパイのゴールを当てにして凌ぐしかないんですが、ちなみに相手のセルタは先週、ベニト・ビジャマリンでベティスに3-4と勝利して、12位に上昇。といっても降格圏とは勝ち点4差しかなく、その1つ上のジローナも含めて安全圏とはとても言えないため、ここはうっかり、窮鼠猫を噛むみたいな目に遭わずに済めばいいんですが…せめてアトレティコも週末ぐらいはファンを楽しませてくださいね。


【マドリッド通信員】 原ゆみこ
南米旅行に行きたくてスペイン語を始めたが、語学留学以来スペインにはまって渡西を繰り返す。遊学4回目ながらサッカーに目覚めたのは2002年のW杯からという新米ファン。ワイン、生ハム、チーズが大好きで近所のタパス・バルの常連。今はスペイン人親父とバルでレアル・マドリーを応援している。


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