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浮かれている訳にはいかない…/原ゆみこのマドリッド

超ワールドサッカー / 2023年2月14日 18時30分

写真:Getty Images

「束の間の息抜きだったわね」そんな風に私が気の毒がっていたのは月曜午後、レアル・マドリーがベルデベバス(バラハス空港の近く)の練習場でセッションを再開したと知った時のことでした。いやあ、クラブW杯ではアル・アハリ(エジプト)、アル・ヒラル(サウジアラビア)と2つのアラブチームを倒し、同大会史上最多となる通算8回目の優勝。クラブの公式戦タイトル数を何と、100という高みまで伸ばした彼らでしたけどね。日曜の夜にはバルサがビジャレアルに0-1で勝利したため、とうとうリーガでは首位と2位の差が2桁の勝ち点11まで拡大することに。

もちろん、水曜午後9時(日本時間翌午前5時)に順延されたエルチェ戦で勝てば、差は8に戻るんですが、それだって、決して僅差とは言えませんからね。ただ、このミッドウィークにリーガ戦があるのはマドリーだけで、バルサは今週、来週の木曜にEL16強対決出場プレーオフでマンチェスター・ユナイテッドと対戦。同日にはセビージャも同様にPSV戦を迎えるんですが、え?来週火曜にはマドリーもCL16強対決リバプール戦1stレグと、ヨーロッパの大会が再開されていくのを見ると、アトレティコがその間、まったり練習しているだけの身分になってしまったのが、今更ながら悔しくならないかって?

まあ、それはその通りなんですが、要はCLグループリーグで最下位敗退した彼らの自業自得ですからね。それ以上にモロッコで行われたクラブW杯なんて、夢のまた夢という気分で私も見ていたんですが、とりあえず、土曜のアル・ヒラルとの決勝がどんなだったか、お話ししていくことにすると。この試合、マドリーには頼もしい応援が入って、いえ、トロフィーを掲げる時だけ、ユニ姿でしれっと登場。筋肉痛が治らず、当日ラバト入りして、試合をパルコ(貴賓席)観戦していたGKクルトワじゃないですよ。

それはエースのベンゼマで、1-0で負けたマジョルカ戦と準決勝のアル・アハリ戦はお休みしたものの、木曜にミリトンとチームに合流。決勝でいきなり先発となったんですが、早くも前半13分にはエリア外からビニシウスにスルーパスを送って、先制点のお膳立てをしているんですから、頼もしいじゃないですか。18分にもマドリーは、モドリッチのシュートはGKアル・マイウフに弾かれたものの、DFのクリアミスしたボールをバルベルデが撃ち込んで、早くも2点リードを奪うことに。おかげでジブラルタル海峡を挟んで、フェリーで1時間のお隣さんということもあり、マドリーファンの多いスタッド・ムーレイ・アブドゥラのモロッコ人観客は一斉に”Ola(オラ/ウェーブ)”を始めていたんですが、まさか26分に冷や水を浴びせられることになるとは!

だってえ、負傷中のメンディに代わって、本職ボランチのカマビンガが左SBを務めるサイドを突いて、自陣からのスルーパスを追ったマレガが独走。そのままGKルニンを破り、1点を返されてしまったんですよ。でもこれには逆にマドリーの気を引き締める効果があったか、後半になると、9分にはビニシウスのアシストでベンゼマが3点目。13分にもカルバハルのラストパスをバルベルデが決めて、「Al final no tengo que romper mi carnet porque ya lleva once goles/アル・フィナル・ノー・テンゴケ・ロンペル・ミ・カルネ・ポルケ・ジャ・ジェバ・オンセ・ゴーレス(最終的にコーチライセンス証を破る必要はなくなった。これでもう11得点になったからね)」と、今季のバルベルデが10得点以上挙げるという賭けをしていたアンチェロッティ監督を喜ばせる4点目が入り、早々にベンゼマ、チュアメニはお役御免に。代わりにロドリゴとセバージョスがピッチに入ります。

でもねえ、そこでまたマドリーは油断してしまったか、18分にはセンターからのスルーパスに抜けたビエットがエリア内からゴールを決め、アル・アハリが2点目をゲット。24分にはビニシウスが、セバージョスがシュート態勢に入る前にボールをかっさらって、5点目が入ったからいいんですが、以前、アトレティコにも在籍したアルゼンチン人FWは34分にもゴールを追加していましたからね。これって、マドリーの守備ミスでマレガが得た2度程のチャンスでシュートを外していなければ、試合の結果も違っていたってこと(最終結果5-3)?

まあ、言ってみれば、それがマドリーとアル・ヒラルの差で、相手のラモン・ディアス監督も「ウチはそれ程、ミスを犯した訳ではないが、向こうの質の高さにより、チャンスを作られ、点を取られた。マドリーから3点を奪うのは簡単なことではないから、アル・ヒラルのファンも満足していると思う」と納得していたようですけどね。実際、「Para el Al Hilal es el partido de su vida y se nota/パラ・エル・アルヒラル・エス・エル・パルティードー・デ・ス・ビダ・イ・セ・ノタ(アル・ヒラルにとっては生涯1度の大一番で、それを感じられた)」とクロースも言っていたチームを前にして、何より大きかったのはビニシウスとバルベルデのパフォーマンスが改善されたことでしょう。

この3得点でバロンドールをもらった前者は最近、スペイン国内のアウェイ戦で頻発する敵のファール攻勢と執拗なpito(ピト/ブーイング)から、モロッコでは解放されたのが大きかったようですし、同じ得点数で銀賞をもらった後者も妊娠継続を危ぶまれていた彼女のミナ・ボニノさんが先週、無事に次男を生めそうだとわかって、ようやくサッカーに集中できるようになったみたいですしね。それにしたって凄いのはアンチェロッティ監督で、マドリーでの通算4シーズン目、209試合を率いて9タイトルを獲得というのは、単純計算で23.2試合ごとに優勝しているのだとか。

これは在任中、11タイトルを獲ったジダン監督の23.9試合毎という記録も越えているんですが、ただ問題は今季の残りで、いえ、アンチェロッティ監督は「Estamos mejorando y este título nos va a dar un impulso para luchar por todo lo que queda/エスタモス・メホランドー・イ・エスタ・ティトゥロ・ノス・バ・ア・ダール・ウン・インプルソ・パラ・ルチャール・ポル・トードー・ロ・ケ・ケダ(ウチは良くなってきていて、このタイトルは残り全てを争うための後押しとなってくれるだろう)」と言っていたんですけどね。でもリーガ18試合、最多でコパ・デル・レイ3試合、CL7試合の全部をプレーして、無冠に終わった場合は26.3試合に1タイトルに後退しちゃうんですよ。

逆に3冠達成すると19.75試合という凄いことになるんですが、何せリーガはバルサが独走状態に入った感が強いですからね。極寒のサンティアゴ・ベルナベウで行われるエルチェ戦には、相手はダントツの最下位とはいえ、ビニシウスが累積警告で出られませんし、クルトワ、ルーカス・バスケス、メンディ、アザールも間に合わず。更には土曜のオサスナ戦、来週のCLリバプール戦も考えて、上手くローテーションしないといけないとなると、とりあえず、コパとCLの2冠で21.54試合にするぐらいを狙うのが妥当かもしれませんね。

そして週末、普通にリーガを戦った他のマドリッド勢の試合も報告しておくと、日が差す日曜午後2時からはコリセウム・アルフォンソ・ペレスでヘタフェとラージョの弟分ダービーが開催。いやあ、前回のホームゲーム、ベティス戦ではbengala(ベンガラ/発煙筒)を焚いて、大勢のファンがチームバスを迎えたものの、結果が伴わなかったせいでしょうか。この日は特に何もなかったようで、というか、お昼ご飯を食べてから、スタジアムに駆けつけるファンが多かったせいで、キックオフ15分前でもまだ、ゲートに長い行列ができていたんですが、試合ではヘタフェにこれでもかという試練が待ち受けていたから、さあ大変。

ええ、前半25分にはミジャが負傷し、急遽、アルゴビアが入ったことなどはまだ序の口で、38分にはイシの蹴ったCKを何と、ゴール前にいたアランバリがオウンゴールして先制点献上。後半も4分にせっかく、バリウのハンドでPKをもらいながら、どういう訳か、前節の兄弟分ダービーで引分けをもぎ取るPKゴールを決めたエネス・ウナルがいるのにマジョラルが蹴って、ボールを天高く撃ち上げてしまってはねえ。かてて加えて、9分にはアレニャが2枚目のイエローカードをもらって退場って、うーん、これは別に監督の責任じゃないと思うんですけどね。場内が「Quique vete ya!/キケ・ベテ・ジャー(キケ・サンチェス・フローレス監督、もう出て行け)」のカンティコに包まれてしまったのもムリはない?

そんな中、31分に神風が吹いたんですよ。ええ、ラージョのGKディトリエフスキがゴールキックを目の前まで詰めていたウナル目掛けて蹴ってしまい、その足に当たったボールが同点ゴールとなった時には私も我が目を疑った程。いやあ、ゴール祝いで彼が先日のトルコ・シリア大地震の同胞の被災者を応援する文字の入ったTシャツを掲げているのを見るにつけ、ますますPKキッカーを譲った理由がわからなくなったんですけどね。それがまさか、勝ち点1が手に入るまで、あと5分に迫りながら、イシのシュートがガストンの腕に当たり、今度はラージョにPKが与えられるとは、ヘタフェの不幸は一体、どこまで続くんでしょう。

いえ、この時、キッカーを務めた途中出場のRdT(ラウール・デ・トマス)はPKをGKダビド・ソリアに弾かれて、ラージョは勝ち越し点を挙げられなかったんですけどね。結局、試合は1-1のドローで終わり、これでダービー連続引分けとなったヘタフェは19位のままと、降格圏は脱出できず。キケ・サンチェス・フローレス監督も「Empatar no nos vale/エンパタール・ノー・ノス・バレ(引分けでは役に立たない)」と嘆いていたんですが、後半ほとんど10人で戦いながら、負けなかった根性はきっと、次節、同じく今年になって白星がない、勝ち点1差の18位、バレンシアとのどん底対決を制するのに味方してくれるかと。

一方のラージョはこの日、決定力の弱さが取りこぼしに繋がった形でしたが、アルメリアに勝ったベティスに追い抜かれても、ビジャレアルがバルサに負けたため、EL出場圏の6位を維持できましたからね。傷心の弟分仲間を更に追い詰めずに済みましたし、今週末の日曜、エスタディオ・バジェカスにセビージャを迎える一戦で、まずはあと7と迫った残留目安の勝ち点40という宿題を進めてから、高みを目指したらいいんじゃないでしょうか。

そしてその日もすぐ次の時間帯でアトレティコのセルタ戦が始まったため、コリセウムを出て、前半半ば過ぎにメトロ駅近くのバル(スペインの喫茶店兼バー)に駆け込んだ私でしたが、ずっと聞いていたオンダ・マドリッド(ローカルラジオ局)の中継でも言っていた通り、自分が見ていない時間の両者はほとんど特筆することがない状態だったよう。いやあ、0-0のまま、バリオスがカラスコに代わった後半が始まるとすぐ、モラタがエリア内からのシュートをGKビジャルに弾かれてしまい、こぼれ球を撃ったカラスコも外してしまった上、オフサイドだったという悔しいシーンがあったんですけどね。

逆に11分にはイアゴ・アスパスのシュートをGKオブラクが完璧にセーブできず、ゴール方向に転がったボールをライン上ギリギリで掻き出すというピンチもあったんですが、この日もシメオネ監督は早めにモラタを見限り、16分にはメンフィス・デパイを投入。その5分後にはグリーズマン、マルコス・ジョレンテもコレア、ビッツェルへと、前線総取っ替えとなったんですが、25分、まさかサビッチが途中出場のセフェロビッチを止めようとして倒し、最終ラインにいたDFだったため、レッドカードで退場させられるとは!いえ、私も最初は主審にエルモーソが抗議していたため、最近は更生したようだったのに、またしても彼がやらかしてくれたのかと思ったんですけどね。

そういえば、今年になってのサビッチもバルサ戦、お隣さんとのコパ準々決勝ダービーで退場していて、これでもう3回目。セルタに与えられたエリアすぐ前のFKをアスパスがゴールバーに当てて、冷や汗をかかされたのはともかく、まだ20分以上あるのに一体、どうするんだろうとお先真っ暗な気分になったものですが、そこに立ちふさがったのは守護神のオブラクでした。ええ、セルタが嵩にかかって攻めて来る中、カルロス・ペレスのシュートを弾くと、セフェロビッチがゴール前に通したキラーパスをアスパスが受ける前に完全オウンゴールコースでクリアしたレイニウドもparadon(パラドン/スーパーセーブ)。こんなんですから、終盤はもう、0-0での引分けもやむなしと思ったものでしたが…。

何と44分、奇跡が起きたんです!というのもエルモーソのロングパスを受けたカラスコがエリア内右から撃ったシュートはカルロス・ペレスに当たって逸れたものの、ゴール前に転がってきたボールをデパイが体をクルリと回転させてシュート。土壇場にアトレティコ移籍後初ゴールを挙げて、チームを0-1の勝利に導いてくれたとなれば、この試合前、シメオネ監督が「今週のメンフィスはウチに来て一番感じだ」と言っていたのもただのリップサービスではなかった?

おかげで先週末もCL出場圏内の4位を死守、それどころか、5位に返り咲いたベティスとの差も勝ち点4になったんですが、うーん、コケもマルカの記事を読んだんですかね。試合後のインタビューでは、「バルサとはかなり差があるけど、ボクらの目標はできるだけ上に行くこと。Tenemos un torneo bonito como la Supercopa y es una opción/テネモス・ウン・トルネオ・ボニート・コモ・ラ・スペルコパ・イ・エス・ウナ・オプシオン(スーパーカップのような素敵な大会もあって、それもオプションにある)」と言っていたんですが、そう、確かにコパ決勝には準決勝で対決するバルサかマドリーのどちらかが進出。この2チームがリーガでワンツーフィニッシュすれば、来季のスペイン・スーパーカップにはリーガ3位チームも出場できることを私もそれで思い出したんですが、いやあ。

現在3位のレアル・ソシエダも久保建英選手のゴールなどで月曜にはエスパニョールに2-3と勝ち、アトレティコと勝ち点4差なのはともかく、エルチェ戦消化前の2位マドリーに3差と迫っていますからね。となると2位3位が引っくり返る可能性もある訳で、アトレティコがスペイン・スーパーカップに確実に出たいなら、それこそ目指すべきは2位の座。でも今の勝ち点差7、エルチェ戦で勝ったら10という、お隣さんとの距離を覆せるのなら、それこそマドリーも首位奪回できるかもしれないという論理に繋がる訳で…。

シメオネ監督によると、「Las semanas son largas, muchos quieren jugar y la competencia nos hará crecer/ラス・セマーナス・ソン・ラルガス、ムーチョス・キエレン・フガール・イ・ラ・コンペテンシア・ノス・アセ・クレセル(1週間は長くて、多くの選手がプレーしたがっている。チーム内競争がウチを成長させてくれる)」そうなんですけどね。まずはこの日曜のアスレティック戦で監督自身を含め、レイニウド、ナウエル・モリーナ、コンドグビアらが累積警告となるイエローカードをもらうことを避け、その次のマドリーダービーで少しでも差を縮められれば、少しはファンも期待してくれますかね。


【マドリッド通信員】 原ゆみこ
南米旅行に行きたくてスペイン語を始めたが、語学留学以来スペインにはまって渡西を繰り返す。遊学4回目ながらサッカーに目覚めたのは2002年のW杯からという新米ファン。ワイン、生ハム、チーズが大好きで近所のタパス・バルの常連。今はスペイン人親父とバルでレアル・マドリーを応援している。


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