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試合の多い週末だった…/原ゆみこのマドリッド

超ワールドサッカー / 2023年2月21日 23時55分

写真:©Atlético de Madrid

「あそこまで無茶苦茶になっても勝てるんだ」そんな風に私が目を丸くしていたのは月曜日、コリセウム・アルフォンソ・ペレスでのヘタフェvsバレンシア戦が終わった時のことでした。いやあ、ダントツ最下位のエルチェは別格として、降格圏残り2つの順位を占めていたチームの最弱対決は結局、後半37分にCKから2人がヘッドで繋いだ後、ゴール前でボルハ・マジョラルが蹴り込んで、キケ・サンチェス・フローレス監督のチームが虎の子の1点をゲット。今年になって初の白星を導いた当人も前回のホームゲーム、ラージョとの弟分ダービーでPK失敗のミスをファンの前で償うことができ、久々にスタンドもお祝いムードに包まれたんですけどね(最終結果1-0)。

そこに至るまでが恐ろしい展開で、とりわけ0-0まま、後半が進むにつれ、両チームはずっと勝てていない者特有のパニック状態に突入。ええ、どこぞの兄貴分もよく「パスが3度も続かない」と、ラジオの実況などでけなされることが多いんですが、こちらはそれどころではなく、自分が蹴っただけでジ・エンド、パスにすらならず、ボールが行ったり来たりという恐ろしい光景を見せられたため、場内には絶望感すら漂っていたんですが、たった1度、ゴールが入るだけでこうも世界が変わるとは!

おかげでヘタフェはバラハ新監督のデビューしたバレンシアを19位に突き落とし、アルメリア、カディスに勝ち点22で並ぶと、ゴールアベレージ差で一気に16位の降格圏外にジャンプアップ。とはいえ、できれば次はもう少し、プロサッカーらしいプレーをして勝ってくれたらと思ってしまうのはきっと、私だけではなかった?

ま、それはともかく、先週末のマドリッド勢のリーガ戦も振り返っていくことにすると、土曜に私が訪れたブタルケでのラス・パルマス戦は丁度、綺麗な夕日が見られる時間帯の試合で、スタンドを埋めたファンはクラブ創設25周年をお祝いする旗を振ってチームをお出迎え。そのレガネス最初の公式戦に出場したOBが何人も駆けつけて始球式をするなど、どこかお祭り気分で始まったんですが、彼らは早くも前半16分、不運に見舞われてしまったんです。というのもキャプテンのFWファン・ムニョスがシュートしようとした際、GKバジェスの胸を蹴ってしまい、レッドカードで一発退場してしまったからですが、実は彼らが退場者を出すのはこれで3試合連続のこと。

そう、前回のホームゲーム、スポルティング戦でこそ、柴崎岳選手が前半35分にレッドカードを受けたものの、早い時間にファン・ムニョスが奪っていた1点を守りきり、勝つことができたんですが、前節ラシン戦ではアルナイスのゴールで2-1としたすぐ後にカスミが退場。反撃ムードに水を差され、そのまま負けていたんですが、何せ、この日は2部の首位チームが相手でしたからね。レガネスが数的劣勢に耐えていた46分には、ジョナンタン・ビエイラがラバを乱暴なタックルで倒し、一旦はレッドカードが出されながら、VAR(ビデオ審判)注進により、イエローカードになってしまったなんてこともあり、疲れの出る後半が怖かったんですが…。

こうも退場が続くと、レガネスも10人でプレーするのに慣れてきたんでしょう。敵に効果的な攻撃を許すことなく、後半23分にはこの冬、レアル・ソシエダからレンタルしたFWカリカブルを投入。ちょっとだけ攻勢に出ると、ロスタイムにはフェデ・ビコを入れて、どうにか1点を奪おうと試みたんですけどね。結局、両チーム共、最後までゴールは生まれず、試合は0-0で終わったんですが、最近は昇格プレーオフ圏6位まで勝ち点7と停滞期に入ってしまったのは少々、残念だったかと。とりあえず、次のミランデス戦では退場ラッシュに終止符を打って、再び上昇気流に乗ってくれることを期待しています。

そして急いで自宅付近まで戻り、オサスナvsレラル・マドリー戦の前半終了間際に何とか、近所のバル(スペインの喫茶店兼バー)に辿り着いたんですが、おやおや。まだ得点がなくて良かったとホッとしたのも束の間で、エル・サダルのスタンドから随分、大きなpito(ピト/ブーイング)が聞こえると思いきや、どうやら原因はモイ・ゴメスとビニシウスの諍いにあったよう。せっかく先日のクラブW杯ではMVPももらったというのに国内戦に戻った途端、またこの始末では、後でクルトワも「キックオフ前の黙祷の時もhijo de puta/イホ・デ・プータ(娼婦の息子という定型の悪口)と叫ばれていたし、Vinicius muérete/ビニシウス・ムエレテ(ビニシウス、死んじまえ)ってカンティコもあった」と告発していたんですが、ホント、このアウェイ戦でのビニシウスヘイト、留まるところを知らないようです。

その影響もあったか、後半になってもピッチでは拮抗した展開が続いていたんですが、ビニシウスにはツキもなかったですよね。ええ、後半6分、アラバからスルーパスをもらい、GKエレーラをかわして決めたゴールはオフサイドで認められず、11分にはせっかくエリア内で1対1となりながら、シュートを撃つ前にボールを奪われてしまったり、28分にはウナイ・ガルシアがクリアミスしたボールを拾ってシュートしたものの、エレーラがparadon(パラドン/スーパーセーブ)。この日はベンゼマがお休みだったため、このままでは首位バルサとの差を1日だけでも勝ち点5に縮めるという、マドリーの目論見もご破算になりかねないと私もイライラしていたところ…。

でも大丈夫。34分、さすがにこうも失敗が続くと、その日は自分のシュートでは決まらないとビニシウスも悟ったか、エリア内左奥から折り返すと、ゴール前に突っ込んできたバルベルデが軌道を変え、とうとう先制点を挙げてくれたんです!いえ、その後も43分にはモドリッチが自陣から放ったスルーパスを直前にロドリゴと交代でピッチに入った18才のカンテラーノ(RMカスティージャの選手)、アルバロ・ロドリゲスがビニシウスに送り、そのシュートが決まって追加点かと思われたシーンもあったんですけどね。

それもVARでアルバロがオフサイドとされてしまったため、最後までビニシウスのゴール運は変わらなかったんですが、驚かされたのは12日までU20南米選手権のウルグアイ代表に参加、5得点して、チームを準優勝に導いたルーキーのハングリー精神だったかと。ええ、ロスタイムにはエリア前でディエゴ・ガルシアからボールを奪うと、同じく途中出場のアセンシオにラストパス。こちらはオフサイドもなく、そのシュートで2点目が入ったんですが、うーん、カンテラーノと言えば、クラブW杯準決勝アル・アハリ戦で最初に触ったボールをゴールに入れたアリバスも印象的ではありましたけどね。

ただ、あちらはすでにトップチームでの出場経験があったのと対照的に、アルバロはこれが正真正銘のデビュー戦。それもたった10分弱プレーしただけで、アンチェロッティ監督に「Si se va a quedar en el primer equipo es algo que tenemos que evaluar/シー・セ・バ・ア・ケダール・エン・エル・プリメール・エキポ・エス・アルゴ・ケ・テネモス・ケ・エバルアル(トップチームに残るかどうか、評価しないといけない)。ラウール(RMカスティージャ監督)と話すつもりだ」と言わせてしまうとは一体、どんな逸材なのか、興味が沸いたファンも多かったのでは?

おかげでマドリーが0-2で勝利できたのは幸いでしたが、残念ながら、バルサも翌日曜にカディスに勝ったため、勝ち点8差は変わらず。それより辛いのは今週も彼らの過密日程は続き、もう火曜午後9時(日本時間翌午前5時)にはCL16強対決リバプール戦1stレグという試練が到来することかと。ええ、オサスナ戦の後、アンチェロッティ監督のコーチライセンスを懸けた今季10得点はこの日でもう12得点となり、とっくにクリアしたものの、今後は20得点を目指すように言われているという、体力があり余っているようなバルベルデでさえ、「Se va notando el cansancio de tantos partidos esta temporada/セ・バ・ノタンドー・エル・カンサンシオ・デ・タントス・パルティードス・エスタ・テンポラーダ(今季、これだけ試合をこなしているせいでの疲労が出てきた)」と弱音を吐いていたぐらいですからね。

それだけに彼らが日曜もバルデベバス(バラハス空港の近く)の練習場でセッション、インフルの治らないクロース、急性胃腸炎を患ってパンプローナにも行かなかったチュアメニを除いて、月曜にはもうリバプールに移動。しかも疲労傾向にあるベンゼマのヘルプができるようにと、その遠征メンバーにも入った、ブレークの兆しを感じるアルバロ、そしてエル・サダルのベンチにいたアリバスなど、日曜夕方に同じ敷地内にあるアルフレド・ディ・ステファノでのRMカスティージャvsリナレス戦(RFEF1部/実質4部)に出場しているんですよ。ええ、前者はアンチェロッティ監督とラウール監督の取り決めで60分間だけプレー、後者はフル出場してチームの2点目を挙げ、2-0の勝利に貢献していたなんて聞くと、ただただご苦労様としか言えないんですが、カンテラーノは若いから何てことない?

そんなマドリーがスペイン勢唯一の生き残りとして、昨季決勝の相手だったとはいえ、今季はCL出場圏まで勝ち点7差の8位という絶不調のシーズン、只中にあるリバプール相手にどんな戦いを見せてくれるのかは火曜のお楽しみに取っておくことにして、今は話を先週末のリーガに戻さないと。日曜の部は午後4時15分、いきなり春の陽光が降り注ぐようになったエスタディオ・バジャカスでのラージョvsセビージャ戦からスタートした私だったんですが、天候に恵まれたせいもあったか、キックオフ前から、スタンドのかなり大きな面積を占めるビジターファンもラージョファンもエンジン全開で応援。

それを見るだけで、先週は風邪のせいでウツっぽかった私もウキウキしてきたぐらいだったんですが、ラージョのチャンスは開始早々、カメージョのシュートがGKボノに止められたぐらい。それどころか、29分には自陣エリアからヘッドでクリアしたボールをスソにエリア前から撃たれ、更にそれをクリアしようとしたバレンティンが軌道を変えてGKディトリエフスキを破り、セビージャに先制点を奪われてしまうという不幸の二乗に見舞われたから、たまったもんじゃありません。

いやあ、何せ、その日は次の時間帯にアトレティコvsアスレティック戦が控えており、タクシーに同乗できるかと当てにしていた顔見知りのイギリス人記者も前日のオサスナ戦から戻るのが遅れて来ておらず。よって、0-1でリードされたラージョを見捨てて、ハーフタイムにはバジェカスを出ざるを得なかった私でしたからねえ。ただ、メトロでの1時間強の移動中、ずっとインターネットでオンダ・マドリッド(ローカルラジオ局)の実況を聞いていたところ、決して力負けしていた訳ではなかった彼らは後半20分、イシの蹴ったCKをルジューヌがヘッドで決めて同点に追いつくことに成功。

そこから両チーム、前線のリフレッシュが始まり、ラージョはトレホをRdT(ラウール・デ・トマス)に、セビージャも木曜のEL16強進出プレーオフPSV戦1stレグで先制点を挙げていたエン・ネシリを投入したんですが、奇しくも終盤にその2人が決めたゴールは揃ってオフサイドで認められないことに。結局、1-1で引分けて、ラージョは前節の弟分ダービーに続き、「Hemos conseguido dos puntos, que no parecen mucho, pero sí que nos acercan al objetivo/エモス・コンセギードー・ドス・プントス、ケ・ノー・パレセン・ムーチョ、ペロ・シー・ケ・ノス・アセルカン・アル・オブヘティボ(ウチは勝ち点2を稼いだ。沢山には見えないが、目標達成へと近づけてくれる)」(イラオラ監督)ことで満足しないといけませんでしたっけ。

え、これで残留見込みラインの勝ち点40まであと6に迫った彼らだけど、EL出場圏内の6位キープが叶ったのは兄貴分の援護射撃も大きかったんじゃないかって?その通りで、まだ夕日が残るメトロポリターノに余裕を持って到着すると、折しもクラブ創設125周年を迎えたアスレティックをそのマドリッド支部、まさに弟分として誕生したアトレティコが第1ユニ着用権を相手に譲って祝福。カンテラの女子たちが花道を作り、旗を振って迎える中、選手たちが入場するのや、更に両チームでプレーしたOB、ハビエル・イルレタ、フリオ・サビーナ、ハビエル・クレメンテ氏といった面々が始球式に出て来るのも見ることができたんですが、あれ?地面に貼ってあるアトレティコの紋章を平気で踏んでいくOBが結構、多かったのは何故?

ちなみに試合の方は前半は両者無得点で、いえ、アトレティコはカラスコが2度、シュートをレギュラーGKのウナイ・シモンではなく、次の次の試合、3月1日に迎えるコパ・デル・レイ準決勝オサスナ戦1stレグに備えるため先発したアギレサバラにセーブされたり、アスレティックもダニ・ガルシアがフリーのシュートを天高く外したりとチャンスがなかった訳ではないんですけどね。スコアが動いたのはかなり遅くて、後半もコレア、デ・パウルがモラタ、バリオスに、カラスコがメンフィス・デパイにとシメオネ監督が前線のテコ入れを行った後の28分になってのこと。ええ、ピッチに入ったばかりのデパイと連携したグリーズマンがドリブルでエリア内に入り、斜めに突き刺さるgolazo(ゴラソ/スーパーゴール)を決めてくれたんですよ!

その途端、すでに3試合目となる応援団ストのせいで、それまでお隣さんのサンティアゴ・ベルナベウでよくあるような静けさに包まれていたスタンドが大爆発。歓喜の渦が生まれたんですが、うーん、この日は応援団に属さない一般のファンも工夫して、リード役がいなくても、最後まで歌い切るまで続くクラブ歌を合唱したりと、それはシメオネ監督も「Vi un cambio, la gente estuvo más cerca que otros partido y conectó/ビ・ウン・カンビオ、ラ・ヘンテ・エストゥーボ・マス・セルカ・ケ・オトロス・パルティードー・イ・コネクト(変化があったのを見た。他の試合よりファンは近くにいて、私たちと繋がっていた)」と評価していたんですけどね。

加えてキックオフ前の旗振り役に招集されたカンテラの女の子たちがスタンド上段から、声を揃えてずっと応援してくれていたんですが、如何せん、女児の声量では場内すべてのファンたちを牽引するにはとても足らず。相手が12試合、アトレティコに勝っていないバルベルデ監督のアスレティックだったこともあり、そのまま1-0で勝利した後、ピッチインタビューでグリーズマンも「応援ストの問題はボクらにも悪影響を与えている。Ojalá lo puedan arreglar cuanto antes porque los necesitamos/オハラ・ロ・プエダン・アレグラール・クアントー・アンテス・ポルケ・ロス・ネセシタモス(できるだけ早く解決してくれますように。自分たちにはファンが必要なのだから)」と応援回帰を頼んでいたんですが…今季のホームゲームは泣いても笑ってもあと7試合。弟分たちのスタジアムと比べて、寒すぎるメトロポリターノの雰囲気が元に戻る日が早くやって来るのを私も祈っています。


【マドリッド通信員】 原ゆみこ
南米旅行に行きたくてスペイン語を始めたが、語学留学以来スペインにはまって渡西を繰り返す。遊学4回目ながらサッカーに目覚めたのは2002年のW杯からという新米ファン。ワイン、生ハム、チーズが大好きで近所のタパス・バルの常連。今はスペイン人親父とバルでレアル・マドリーを応援している。

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