VARもジャッジは人間のため誤審は避けられないか/六川亨の日本サッカー見聞録
超ワールドサッカー / 2023年2月25日 11時30分
すでに当サイトでも既報の“誤審問題"である。扇谷健司審判委員長が22日に臨時のメディアブリーフィングを開催して事実経過を報告した。
問題のシーンは後半29分、広島の左CKで起きた。野津田岳人のクロスをDF佐々木翔がフリック。これをMF川村拓夢がヘディングでゴール右スミに叩きつけた。札幌GK菅野孝憲は左足で掻き出したものの、ゴール真横からとらえた映像では完璧にゴールラインを割っていた。
しかし主審と副審はゴールと認めず、VARも映像を確認したにもかかわらず主審の判定を覆すことも、オンフィールドレビューも勧めなかった。
先月27日、夢フィールドで開催されたレフェリーブリーフィングでは、VARが行われている模様を、実際の映像を見ながら見学することができた。VARとAVARは攻撃の起点が決まると、声を出して確認しあう。片時も目を離すことはできないし、無駄口を叩いている暇などもちろんない。
そして問題のシーンがあると、2名の画像操作担当者に指示を出して、問題のシーンをリプレーさせる。どのプレーまで遡って戻るのか、指示を出すのもVARの仕事だ。それだけでも2~3分はあっという間に過ぎてしまう。VARいわく「今日は事前に分かっていたので何度も練習したため早くジャッジできました」ということだった。
そうした現場を見ていたため、
「VARが暗い中でやっていて、追い込まれており、もしかしたらピッチ上の判定をサポートしたいとか、少しでもわかりにくいものを決断しないことはあるかもしれません」という扇谷委員長の言葉には頷けた。
とはいえ、「多くの皆さまがあの映像を見たときに入っていると思われている。私もそう思います。最終的に判断していても、決断ができないということは否めません。今回の場合はボールとゴールポストの間にしっかり緑の芝生の色が見えている。そうした場合にはVARとして判断して、オンフィールドレビューではなくVARオンリーレビューで主審に得点を認めて下さいと伝えるべきだった」と結論づけた。
この広島対札幌戦の主審は38歳の一級審判員で、この試合で通算12試合目。VARも41歳の一級審判員で、この試合までJ1の主審歴は9試合(J2は29試合)しかない。そのため「もう少し教育が必要。基本的なことをもう一度改めて伝えていく必要がある。そのためには一定期間が必要」(扇谷委員長)として、Jリーグの担当から外される可能性をほのめかした。
改めて言うまでもなく、サッカーはミスのスポーツである。VARというテクノロジーを使っても、最終的に人間が判断する以上、ミスはつきものだ。勝負に直結する“ゴールか否か"に関しては、カタールW杯やプレミアリーグで導入されているゴールラインテクノロジーを導入するしかないだろう。
しかしながら「いままでもゴールラインテクノロジーの議論はしている。しかし日本のスタジアム環境ではできない可能性が高い。ある会場だけやるのはアンフェアというのがある。すぐにというのは難しい」(扇谷委員長)のが現状である。
それならば、J2リーグにVARを導入することを優先すべきだろう。FUJIFILM SUPERCUPでは、FWピーター・ウタカのゴールが最初はオフサイドとして取り消された。VARの結果が出るまでに5分近く待たされ、その間に何を確認しているのかのアナウンスもなかった。たぶん甲府のサポーターは、VARの有り難みを実感したことだろう。
17日の“金J開幕戦"となった川崎F対横浜FM戦では、後半39分に素早いFKから抜け出したMFマルコス・ジュニオールを、追走したDFジェジエウが後ろから倒してストップした。主審は横浜FMにPKを与え、ジェジエウにはイエローカードを出した。
ところがVARの結果、PKではなくペナルティーアークからのFKに変わり、ジェジエウには『DOGSO(決定的な得点機会の阻止)』でレッドカードが出された。ジャッジの変更に要した時間は3分足らずだったが、これも審判団からの説明はいっさいなかった。普段、スタジアムに行ったことのないファンからすれば、何が起きたのか分からないのではないだろうか。ちょっと不親切に感じた次第である。
それにしても今シーズンは開幕から判定を巡るトラブルが目立っている。大きなルール変更はオフサイドのジャッジが2面の2Dから立体の3Dに変わったくらいだが、何か他に原因があるのだろうか。週末のJリーグで、連鎖反応だけは避けて欲しいと願わずにいられない。
【文・六川亨】
この記事に関連するニュース
-
なぜサッカーの試合で「幻のゴール」が相次いでいるのか…「ビデオ判定」を導入したらジャッジの98%が覆った本当の理由
プレジデントオンライン / 2024年7月15日 9時15分
-
Jリーグで機材トラブル…VAR適用不可の異例事態 幻ゴールも決まった“空白の13分”裏側
FOOTBALL ZONE / 2024年7月12日 8時30分
-
「EURO見たらまだまだ」 Jリーグ判定で欧州と"差"指摘…VAR介入精度「悪くはない」と評価
FOOTBALL ZONE / 2024年7月11日 17時5分
-
名古屋vs浦和のVAR機材トラブルはモニター電源が原因…JFA審判委が経緯と今後の運用方針を説明
ゲキサカ / 2024年7月10日 19時56分
-
最初の反則でレフェリーの判断基準は決まらない 審判委員会の委員長が語った天皇杯・町田戦の“実情”【コラム】
FOOTBALL ZONE / 2024年6月20日 12時15分
ランキング
-
1体操19歳エース宮田笙子が喫煙疑惑でパリ五輪代表離脱 コーチ「調査していることは把握…状況見ている」
スポニチアネックス / 2024年7月18日 23時30分
-
2「たかがタバコで何を騒いでいる」 猪瀬直樹氏、喫煙疑惑「体操女子」19歳・宮田笙子に私見「こんな些細なことで19歳の夢を潰すつもりか」
J-CASTニュース / 2024年7月19日 10時54分
-
3カブスが鈴木誠也の通訳・松下登威氏を解雇と米報道 “水原スキャンダル”とは「同様の状況でない」
スポニチアネックス / 2024年7月19日 8時8分
-
4佐野海舟容疑者 父が代表務めるオンラインサロン運営会社が謝罪「多大なるご迷惑…申し訳ございません」
スポニチアネックス / 2024年7月18日 21時57分
-
5岡田監督をブチギレさせた虎戦士は誰だ? 老将は「すごいことが起きてる」と意味深発言
日刊ゲンダイDIGITAL / 2024年7月19日 9時26分
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
エラーが発生しました
ページを再読み込みして
ください