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楽しみが残って良かったのかもしれない…/原ゆみこのマドリッド

超ワールドサッカー / 2023年2月28日 21時30分

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「たった1日でリーガにお別れから、今季3冠達成も可能になるなんて」そんな風に私が驚いていたのは月曜日、スポーツ各紙の論調がやたらレアル・マドリーに楽観的になっているのに気がついた時のことでした。いやあ、土曜の夜、マドリーダービーで勝ち点2を取りこぼした直後は、翌日曜のバルサの相手が下位のアルメリアということもあり、誰もが首位との勝ち点差が8から10に広がるものと思い込んでいたんですけどね。残り15試合でそれだけの大差を引っくり返した前例もなかったため、もうマドリーもCLとコパ・デル・レイに専念するしかないと言われていたのが、まさかルビ監督のチームが救いの手を差し伸べてくれるとは!

そう、ライバルが引分けていたことを知りながら、パワーホース・スタジアムで前半24分にエル・ビラルが決めた1点を返せず、バルサは1-0で敗戦。予想と真逆に首位と2位の差が7に縮まることになったんですが、つまりこれって、3月19日のリーガ・クラシコ(伝統の一戦)にマドリーが勝てば、あとは宿敵がどこかで1敗1分けしてくれるのを待てばいいってこと?実際、CLでは16強対決リバプール戦1stレグで2-5と大勝し、ほぼ準々決勝進出が決まっているようなマドリーですし、木曜午後9時(日本時間翌午前5時)からはコパ・デル・レイ準決勝クラシコ1stレグで傷心の相手を更に叩きのめすチャンスもありますからね。

これはとうとう、私もバルサ以外ではついぞ見たことのない3冠優勝を目撃することができるかもとちょっと、心がザワついていたりするんですが、それにしても対照的なのはチャビ監督のチームの凋落ぶりで、彼らは先週木曜のEL16強対決進出プレーオフ、マンチェスター・ユナイテッド戦2ndレグで2-1と負け、総合スコア4-3で敗退。それでもアトレティコと違い、コパもあるし、リーガも首位となれば、むしろミッドウィークに気が散るヨーロッパの大会がなくなって、残り試合に全集中できるのは却って、怖いなと思っていたのはきっと、私だけではなかったかと。

1月のスペイン・スーパーカップ決勝クラシコでもかなりの実力差を見せて、優勝していただけに正直、コパでの対戦も心配していたんですが、いやいや。デンベレがまだリハビリ中なのに加え、先日はペドリも負傷で離脱。おまけにマンU戦、アルメリア戦ではかなり期待外れだったとはいえ、今季25得点しているエースのレバンドフスキまで筋肉痛で全治2週間となり、日曜の試合に欠場したアンス・ファティが木曜までに回復してくれることが唯一の希望って、何せ、マドリーは中日も1日多いですしね。おまけに会場がサンティアゴ・ベルナベウとなれば、まだメンディ、アラバ、ロドリゴは別メニューながら、俄然、アンチェロッティ監督のチームが有利になってこない?

まあ、コパに関しては水曜の準決勝もオサスナvsアスレティック戦の北国対決ですし、私もぬるい目で見守っているんですが、それより今は先週末のマドリッド勢の試合をお伝えしていかないと。土曜はまず、ダービー直前の時間帯で弟分のラージョがカディスとヌエボ・ミランディージャで対決したんですが、うーん、この試合、ようやく出戻りのRdT(ラウール・デ・トマス)が先発デビューとなったんですけどね。レギュラーCFのカメージョ共々、前半にゴールを決めたものの、どちらもオフサイドでスコアには挙がらず。すると両者無得点のままだった後半29分、セルジ・グアルディオラにエリア内からシュートを撃ち込まれ、ロスタイムも10分以上ありながら、1-0で負けてしまったんですよ。

いやあ、グアルディオラは昨季、バジャドリーからのレンタルでラージョに加わり、ファルカオが負傷中の時などに頑張って、7得点とチームに貢献してくれたFWなんですけどね。今季はアトレティコからカメージョがレンタル修行に来たためか、カディスに移ったようですが、2018-19シーズンにはもう1つの弟分、ヘタフェでもプレー。そのせいで何となく親近感を覚える選手なんですが、降格圏の18位にいたカディスを16位に上昇させる決勝点を入れるとは随分、頑張っているじゃないですか。

逆にラージョは9位のままながら、5位ベティスと勝ち点が6差に開いてしまい、日曜最後の試合でセビージャとの激戦で2-3と勝利。結果、7位に上がったオサスナに1差と追い上げられることになったんですが、そのオサスナと今週ミッドウィーク、コパ準決勝を戦うアスレティックが日曜のリーガの相手なのは、イラオラ監督のチームの方が中日が多いのもありますし、精神的消耗度も違うため、ちょっとツイているんじゃないでしょうか。

そして土曜は久々に午後9時以外の時間帯、曇りでお日様は見えなかったものの、まだ明るい午後6時30分キックオフのマドリーダービーを見にサンティアゴ・ベルナベウに向かった私だったんですが、試合前のピッチでは先週の火曜、CL16強対決リバプール戦1stレグがあった日に83才でお亡くなりになったクラブのレジェンド、La Sexta(ラ・セスタ/6回目のCL優勝)の功労者かつ、昨年10月からは名誉会長に就任していたアマンシオ氏追悼のセレモニーが開催。4人の演奏家が生で奏でる音楽がしめやかに場内に響き渡る中、いきなり激しいにわか雨が降ってきて、スタンド上部でも改装工事の続くスタジアムの天井の梁の間から水滴が落ちてくる座席があったのは気の毒でしたが、もしかして、それで先発する選手たちの体も冷えてしまったのかもしれませんね。

まあ、試合数の多いマドリーがモドリッチやカマビンガを温存したせいもあったんでしょうが、どちらのGKにも大した見せ場のないまま、最初に不幸に見舞われたのはアトレティコでした。ええ、23分にはピッチの外に出るボールをバルベルデから守っていたレイニウドが倒れて負傷。ここ4試合のうち3試合を1-0で勝っていたチームの堅守をGKオブラクと共に支えていた左SBが担架退場となったのは大ショックで、いえ、この時点ではまだケガが右ヒザ前十字靭帯断裂、全治6カ月の重傷だったというのはわかりませんでしたけどね。急遽、ヒメネスが入り、エルモーソが左に回して、何とかアトレティコはハーフタイムまで無失点で切り抜けます。

この辺は1月のコパ・ダービー、前半にモラタのゴールで先制しながら、後半に追いつかれ、延長戦で逆転敗退した経験を踏まえ、おまけにリバプール戦では2点先行された後、発現した伝統のremontada(レモンターダ/逆転劇)体質を見せつけられたばかりですからね。尚且つ、無敗の4試合のうち、唯一、1-1で引分けたヘタフェとの兄弟分ダービーでも後半序盤に先制しながら、追いつかれたこともあって、シメオネ監督も得点の目安は後半30分以降。なるたけ遅い時間にリードして、セルタ戦やアスレティック戦のように相手に反撃のいとまを与えず、逃げ切ろうという算段だったんじゃないかと思いますが、そこは常に負のハプニングと背中合わせのマドリー戦。

後半頭からバリオスに代え、コレアを投入して、FWを2人にしたものの、12分にはマルコス・ジョレテンテがケガでレマルと交代することに。それはまだ許容範囲の逆境だったものの、マドリーもいよいよ本腰を入れ、クロース、セバージョス、アセンシオがモドリッチ、カマビンガ、チュアメニに代わってすぐ後のことでした。そう、皆の目がエルモーソのスローインに注がれている中、センター付近で倒れているマドリー選手が1人。それはリュディガーで、コレアが背後にまとわりつく相手を手で払ったのが、codaso(コダソ/肘打ち)を見舞ったとして、そのアクションを目撃していたらしいヒル・マンサーノ主審がレッドカードを出したから、ビックリしたの何のって。

ええ、後でシメオネ監督も「Un contacto no es un golpe/ウン・コンタクトー・ノー・エス・ウン・ゴルペ(接触プレーは殴打とは限らない)。リュディガーは194cmもあるのに小さいコレアの腕が当たって引っくり返った。すぐ起き上がったし、そんなに凄い打撃だったら、プレー続行もできないだろう」と文句を言っていたんですけどね。要はたとえ、肘が胸に当たったとしても、問題はその強度で、コレアの行為はせいぜいイエローカードというのが世間全般の意見だったんですが、こんな時に限って、VAR(ビデオ審判)から何も言ってこないって、どういうこと?

うーん、この試合の前にあった今季のダービーでは、リーガ前半戦でエルモーソが、コパ・ダービーではサビッチが退場しているアトレティコなんですけどね。この日の先発CBコンビがその2人と知って、何事もなく終わる訳がないと嫌な予感がしていた私だったものの、今回、白羽の矢が当たったのがFWのコレアとはホント、どこまで彼らは祟られているのか。いやあ、これにはGKオブラクも「Últimos cinco derbis con tarjeta roja, quizá en el próximo empecemos con uno menos/ウルティモス・シンコ・デルビス・コン・タルヘタ・ロハ、キサス・エン・エル・プロキシモ・エンペセモス・コン・ウノ・メノス(直近のダービー5試合でレッドカードだから、次の試合は最初から1人少ない人数で始めたらいいかもしれない)」なんて皮肉を言っていましたが、ダメですよ。それじゃ9人になっちゃいますって。

え、それでも初志を貫徹したシメオネ監督は何とか10人で無失点を貫いていた31分、点を取るため、満を持してモラタを投入したんだろうって?そうなんですよ!おまけに見事にその狙いが当たり、33分には彼が敵陣でファールを受け、「Contra diez lo que no puedes hacer es regalar faltas, porque esa es la única amenaza que les quedaba/コントラ・ディエス・ロ・ケ・ノー・プエデス・アセール・エス・レガラル・ファルタス、ポルケ・エサ・エス・ラ・ウニカ・アメナサ・ケ・レス・ケダバ(10人相手でやっちゃいけないのはファールを献上すること。だって、それが相手に残された唯一の脅威なんだから)」とGKクルトワを怒らせることに。

ええ、そのFKをグリーズマンが蹴ったところ、ヒメネスがヘッドでゴールに叩き込んでくれたんですから、呆気に取られたの何のって。まさに計画通り、試合終了まであと15分、もう死ぬ気で守り倒すだけだったんですが、うーん、これでも早すぎたんですかねえ。「Sabíamos que el Madrid en los finales de los partidos es muy peligroso/サビアモス・ケ・エル・マドリッド・エン・ロス・フィナレス・デ・ロス・パルティードス・エス・ムイ・ペリグローソ(試合終盤のマドリーがとても危険なことは知っていた)」(シメオネ監督)にも関わらず、いよいよ40分、アトレティコは同じヘッドでやられてしまったんですよ。

こちらはモドリッチの蹴ったCKを18才のカンテラーノ(RMカスティージャの選手)、前節オサスナ戦でのアシストで一気に注目を集めたアルバロ・ロドリゲスが192cmの長身を生かし、初ゴールを挙げたんですが、彼の父親の話によると、当人は10才の頃から、毎日、40、50本もヘッドを練習してきたのだとか。昨今の研究からすると、あまり小さいうちからヘディングをするのは脳に良くないようですが、それより、その時、アトレティコの選手が誰も彼に付いていなかったのは何故?

うーん、それはヒメネスも後で「Evidentemente, hay una desatención,/エビデンテメンテ、アイ・ウナ・スアテンシオン(明らかに不注意があった)。マドリーの選手交代の後、エリア内で誰が誰をマークするのか、ボクらは知らなくて、結果的にヘッドした選手に誰もついていなかった」と反省していたんですけどね。おそらくナチョがアルバロに代わってすぐ、自分たちが得点したため、そのお祝いやら何やらでウヤムヤになっていたんでしょうが、いかにもアトレティコらしいポカじゃないですか。幸いその日はそれ以上、マドリーのレモンターダ精神は発揮されなかったため、試合は1-1で終わったんですが、せっかく次の試合でレアル・ソシエダがバレンシアに1-0で負けながら、彼らは3位浮上のチャンスをみすみす逃してしまいましたっけ。

まあ、おかげでマドリーにはリーガ優勝の可能性が残り、アトレティコも土曜のセビージャ戦に勝利して、順位を上げていけばいいだけなんですが、それより大変なことになっていたのが残留争いに絶賛参加中の弟分ヘタフェ。そう、彼らは前節バレンシアに勝って降格圏を脱出しながら、先週末はカディス、バレンシア、そしてアルメリアと競争相手が勝利したため、月曜にビジャレアル戦に挑む前には16位から、再び19位に沈んでいたんですけどね。それでも勝てば、また降格圏外で1週間を過ごせるはずだったものの、まさか前半9分にエネス・ウナルのゴールで先制しながら、ハーフタイム間際にチュクワゼ、後半にはモラレスに決められて、4連敗中だった相手に2-1で逆転負けしてしまったから、さあ大変!

おかげでこの土曜はまた残留圏まで勝ち点2差となったのを引っくり返すため、アルメリアに6-2、アスレティックに2-3と連勝中のジローナをコリセウム・アルフォンソ・ペレスで勝たないといけなくなってしまいましたが、もしや、ビジャレアルをラージョと同じ勝ち点の7位に上げてしまったのもちょっと、弟分仲間にすまなく思っている?何にしろ、14位のセビージャから19位のヘタフェまでは勝ち点3差の中に6チームがひしめきあっているため、ダントツ最下位のエルチェを除き、しばらく降格圏脱出の闘いは毎節、ジェットコースター状態になるかもしれませんね。


【マドリッド通信員】 原ゆみこ
南米旅行に行きたくてスペイン語を始めたが、語学留学以来スペインにはまって渡西を繰り返す。遊学4回目ながらサッカーに目覚めたのは2002年のW杯からという新米ファン。ワイン、生ハム、チーズが大好きで近所のタパス・バルの常連。今はスペイン人親父とバルでレアル・マドリーを応援している。


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