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スペイン復権への道は遠い…/原ゆみこのマドリッド

超ワールドサッカー / 2023年3月31日 20時0分

写真:©︎RFEF

「また地獄のハードスケジュールが戻ってくるのね」そんな風に私が同情していたのは木曜日、そろそろ代表戦気分を返上すべく、4月の試合予定を眺めていた時のことでした。いやあ、1月から9週連続週2試合ペースを継続していたレアル・マドリーでしたが、3月第2週にはようやく今年初めてフリーとなるミッドウィークが到来。翌週はCL16強対決リバプール戦2ndレグがあったものの、週末のリーガ・クラシコ(伝統の一戦)の後はインターナショナルマッチウィークのparon(パロン/リーガの停止期間)に入ったため、とりわけベンゼマ(フランス代表を引退)、クロース(同ドイツ)、リュディガー(公式戦がないためドイツ代表をお休み)、アセンシオ(スペイン代表非招集)ら、各国代表のお勤めがなかった選手たちにはいい息抜きになったかと。

それが4月に入った途端、いえ、まずこの日曜午後4時15分(日本時間午後11時15分)、サンティアゴ・ベルナベウに残留争い真っ只中にいる16位のバジャドリーを迎える24節は何せ、もうリーガは先日、首位バルサに負けて差が勝ち点12まで拡大。ほとんど追い越せる可能性がなくなってしまったため、それこそ来週水曜のコパ・デル・レイ準決勝クラシコ、0-1負けの1stレグの結果をカンプ・ノウで引っくり返すという、根性のremontada(レモンターダ/逆転突破)に向けた足慣らしになりそうなんですけどね。

実はその先もマドリーの週2試合ペースは続き、5回ある4月の週末全てにリーガが入るのは当然ですが、12日と18日にはCL準々決勝チェルシー戦がセットアップ。最終週にはミッドウィーク開催リーガもあって、要は30日間で9試合をこなすことに。これはEL準々決勝マンチェスター・ユナイテッド戦があるセビージャの8試合とあまり差がないように見えますが、他のマドリッド勢など、4月は6試合だけですからね。そして5月第1週もミッドウィークリーガがリピートし、あとは勝者の自己責任となりますが、コパ決勝は5月6日。そして第2、第3週はCL準決勝、5月最終週はまたミッドゥークリーガとなるため、アンチェロッティ監督のチームは再び、9週連続で週2試合ペースになることもありえるって、いやホント、私まで気が遠くなりそうですよ。

まあ、あまり先のことまで考えてクラクラしていても仕方ないので、今は火曜にスペインがグラスゴーでプレーしたユーロ2024予選2節がどうだったのか、お話ししていくことにすると。いやあ、これが初っ端から驚かされっぱなしで、まずはスタメン。U21代表時代から、デ・ラ・フエンテ監督はローテーションを習慣にしているとは聞いてはいたものの、まさか土曜に3-0と快勝したノルウェー戦から、一気に8人も変えてくるとはこれ如何に。

要はリピートしたのがGKケパ(チェルシー)、ロドリ(マンチェスター・シティ)、ミケル・メリーノ(レアル・ソシエダ)の3人だけだったんですが、うーん、ラ・ロサレダ(2部マラガのホーム)で終盤ピッチに入り、2ゴールを挙げたホセル(エスパニョール)の先発抜擢はわからないでもないんですけどね。DFラインまでカルバハル(マドリー)、ラポール(マンチェスター・シティ)、ナチョ(マドリー)、バルデ(バルサ)から、ペドロ・ポロ(トッテナム)、ダビド・ガルシア(オアスナ)、イニゴ・マルティネス(アスレティック)、ガヤ(バレンシア)へと完全に面替わりしていたのには私も懸念しか沸かず。案の条、開始早々の7分、ポロがエリアのすぐ外で転倒してロバートソン(リバプール)を逃がすと、エリア内奥からラストパスを出され、マクトミネイ(マンチェスター・ユナイテッド)に先制ゴールを決められてしまうって、一体、どうなっているんでしょう。

それでも前半残りは積極的に攻めて、ホセルがヘッドを2度程、撃ったスペインだったんですが、1本はバーを直撃、もう1本はGKガン(ノリッジ・シティ)にキャッチされてしまってはねえ。1-0で始まった後半頭から、デ・ラ・フエンテ監督はポロとオジャルサバル(レアル・ソシエダ)に代え、カルバハルとニコ・ウィリアムス(アスレティック)を入れていたんですが、もうこの日は右SBに呪いでもかかっていたとしか思えません。だってえ、6分にはカルバハルが自陣でティアニー(アーセナル)にボールを奪われた上、相手の独走を許し、エリア内奥からのラストパスが今度はダビド・ガルシアを経由して、再びマクトミネイがゴールを挙げているんですよお。これでキプロス戦での2ゴールと合わせて2試合4得点って、もしや彼、負傷で泣く泣くスペイン戦を諦めたハーランド(ノルウェー、マンチェスター・シティ)に憑依でもされていた?

その後はミケル・メリーノをイアゴ・アスパス(セルタ)に、ホセルをボルハ・イグレシアス(ベティス)にと手持ちのサラ(スペイン人の得点王)たちを投入して、反撃を図ったデ・ラ・フエンテ監督だったんですが、まあ、ハムデンパークの芝が伸びていたため、「El balón rodaba muy lento/エル・バロン・ロダバ・ムイ・レントー(ボールの転がる速度がとても遅かった)」(セバージョス/マドリー)という事情もあったようですけどね。更にアトレティコからマンチェスター・シティに移ってすでに4年目、流暢になった英語でロドリも「It's the way they play, but for me it's rubbish, always wasting time, provoking you, always they fall. For me, this is not football(それが彼らのプレースタイルなんだろうけど、ゴミみたいなもんだよ。常に時間稼ぎして、ボクらを挑発して、すぐ倒れる。自分にとって、あれはサッカーじゃない)」と怒っていたんですが、いやいや、この世界はゴールが入って何ぼ。

それどころか、試合も終盤になるともう、スペインは右往左往するばかりで、ええ、昨年中など、絶不調のアトレティコの試合で酷いプレーには慣れていたはずの私まで、目が点になる程だったんですけどね。おまけに34分、スペイン最後の交代カードが18才のMFガビ(バルサ)って何?ええ、ダニ・オルモ(ライプツィヒ)は筋肉痛でベンチ外でしたが、2月から週1ペースになり、しかもここ数試合は控えスタート。体力が余りまくっているモラタ(アトレティコ)を温存する理由が一体、どこにあるんでしょう!そのまま2-0で負け、試合前に「スペインのパフォーマンスがちょっと落ちてくれたら、ウチはポジティブな結果を得られるだろう」と発言。実はFIFAランキングではノルウェーより1つ上の42位だったスコットランドのクラーク監督の予告通りになっているんですから、まったく困ったもんじゃないですか(スペインは10位)。

うーん、それでもデ・ラ・フエンテ監督は「Con el resultado no estoy content/コン・エル・レスルタードー・ノー・エストイ・コンテントー(結果には満足していない)が、この4日間で練習したプレーをチームが見せてくれたことには満足している」と話していたんですけどね。どうもこれまで、スペインマスコミはルイス・エンリケ前監督に対する反感から現監督を持ち上げていたようなところもあったんですが、結局、効率的な攻撃ができなかったり、ゴールが決まらないという、前任者の時代と同じ欠点が露呈してしまった今は少々、風向きが変わりそうな気配も。

まあ、ユーロ予選に関してはその日、ノルウェーがジョージアと1-1で引き分けたのもあって、スペインは2連勝したスコットランドの下で2位ですし、6月のネーションズリーグ・ファイナルフォーを挟んで、9月から再開する残り6試合で3位以下に終わったとしても、彼らにはネーションズリーグのグループ1位特典、12チーム中3チームがユーロに行けるプレーオフ参加権がありますからね。よってそれ程、心配することはないんですが、どうにもU代表から昇格してきた監督には私もいい思い出がなくてねえ。

そう、スペイン黄金期の礎を作った故ルイス・アラゴネス監督の前、2002-04年を担当したイニャキ・サエス監督は1998年U21ユーロ、1999年U20W杯、2000年シドニー五輪優勝と輝かしい経歴の持ち主だったんですが、その業績を支えたチャビ(現バルサ監督)やカシージャス(元マドリー)もA代表に上がっていたユーロ2004にはプレーオフ経由で出場して、グループ敗退する惨状。今はウォルバーハンプトンを率いているロペテギ監督も2013年U21ユーロで優勝したものの、2016年から率いたA代表では2018年W杯開幕直前、マドリーの監督就任発表に怒ったルビアレス会長にクビにされてしまったなんてこともありましたっけ。

その前例を鑑みると、U19やU21でユーロ優勝、東京五輪でも銀メダルを獲ったデ・ラ・フエンテ監督も大人の代表で果たして、上手くいくのかどうかわからないんですが、とにかく次の試合は6月ですからね。その時までには今回、ケガで来られなかったペドリ(バルサ)、ジェラール・モレノ(ビジャレアル)らも治っているはずですし、逆にシーズン残り試合で負傷する選手もいるかもしれないとなれば、今、あれこれ悩んでも仕方ないってことでしょうか。

そしてマドリッド勢の週末の試合についても触れておくと、土曜に先陣を切るのは弟分のヘタフェ。代表戦直前のセビージャ戦で勝利して、降格圏から一気に13位までジャンプアップしたキケ・サンチェス・フローレス監督のチームですが、まだ18位とは勝ち点3差しかないとあって、サン・マメスでのアスレティック戦には500人のファンが応援に行く予定だとか。幸いトルコ代表のアルメニア戦で負傷したと言われていたエースのエネス・ウナルも大丈夫だったようで、2試合目のクロアチア戦でも先発していましたからね。相手は来週火曜のコパ・デル・レイ準決勝、1stレグでオサスナに1-0と先勝されて迎える2ndレグの方が大いに気になっているはずなので、きっと勝機はあるはずです。

一方、兄貴分は両方とも日曜試合で、先にベルギー代表予選1節だけで早退してきたクルトワも回復。2月21日のCL16強対決リバプール戦1stレグでハムストリングを痛め、そこからずっと休んでいたアラバ(オーストリア)もエストニア戦で復帰したマドリーが累積警告のナチョ抜きでバジャドリー戦を済ませた後、通常はホームゲームとアウェイに分かれて重ならないようになっているため、かなり珍しいんですけどね。午後9時(日本時間翌午前4時)から、アトレティコもメトロポリターノでベティス戦を迎えることに。

いやあ、お隣さんと違い、彼らはもう今季のホームゲームがリーガの6試合しかないためか、今週火曜にはモロッコvsペルーの親善試合なども開催していたんですけどね。丁度、メトロポリターノの直近2試合ではセビージャ、バレンシアにgoleada(ゴレアダ/ゴールラッシュ)で勝っているだけにファンも期待して駆けつけてくれかと。ただ、今回の代表戦週間では1人だけ被害者が出ていて、メンフィス・デパイ(オランダ)がジブラルタル戦でゴールを挙げた後、試合終盤に負傷。水曜に検査を受けたところ、太もものケガで全治2週間だそうですが、え?ならば、デ・ラ・フエンテ監督がモラタをスコットランド戦で使わなかったのはラッキーじゃないかって?

まあ、結果的にそうなりますが、予選2戦目のアイルランド戦では0-1の勝利と苦労したものの、オランダ戦ではゴールを挙げるなど、相変わらずグリーズマンも好調ですからね。カラスコもドイツとの親善試合で得点しましたし、アルゼンチンのW杯優勝祝勝親善試合パナマ戦、キュラソー戦のどちらも出番がなかったコレアはちょっと気の毒でしたが、その分、アトレティコに集中してもらえるかと。ちなみに相手のベティスは6位でCL圏内入りを狙っているんですが、もう3位の彼らとは勝ち点6差になってしまいましたからね。

おまけにカナレスが10月のカディス戦で2枚イエローカードをもらい、退場させられたのはマテウ・ラオス主審の企みだったと、2月のバジャドリー戦の後で蒸し返した件について、いきなり4試合の出場停止処分の裁定が下ったり、フェキルは負傷中だったりと、やや戦力的に苦しいようですが、アトレティコも油断は禁物。せっかくリーガ11試合無敗を続けているのですから、この調子を維持して、過密日程が始まる2位マドリーとの勝ち点5差を少しでも縮める方向で行ってもらいたいものです。

そしてもう1つの弟分、現在8位とヨーロッパの大会出場圏から落ちてしまったラージョは月曜試合でバレンシアにメスタジャで挑むんですが、とにかく今はここ6試合白星なしというスランプを抜け出さないと。ええ、7位のアスレティックとは勝ち点が同じなので、弟分仲間が善戦してくれれば、コンフェレンスリーグ出場圏にはすぐ戻れるんですけどね。U21スペイン代表の親善試合に駆り出されていたカメージョ、遥々日本までコロンビア代表の親善試合で行ったファルカオら、各国代表選手の負傷も聞かれてないため、18位と降格圏に沈むバレンシアとの試合を利用しない手はないかと。実際、勝ち点が39になれば、もう1部残留達成も見えてきますし、イラオラ監督のチームもここが踏ん張り時ですよね。


【マドリッド通信員】 原ゆみこ
南米旅行に行きたくてスペイン語を始めたが、語学留学以来スペインにはまって渡西を繰り返す。遊学4回目ながらサッカーに目覚めたのは2002年のW杯からという新米ファン。ワイン、生ハム、チーズが大好きで近所のタパス・バルの常連。今はスペイン人親父とバルでレアル・マドリーを応援している。

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