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ゴール祭りは終わらない…/原ゆみこのマドリッド

超ワールドサッカー / 2023年4月8日 21時30分

写真:©Atlético de Madrid

「そりゃあ時間はあるでしょうけど」そんな風に私が首を傾げていたのは金曜日、アトレティコが来週水曜にイスタンブールでベシクタシュと2月のトルコ・シリア大地震の復興費用を集める親善試合をプレーするという記事をAS(スポーツ紙)のサイトで見つけた時のことでした。いやあ、確かに1月末にコパ・デル・レイ準々決勝でレアル・マドリー相手に敗退して以来、ヨーロッパの大会からも昨年中に完全撤退している彼らはずっと週1試合のゆったりペース。そのおかげもあって、ここリーガ11試合無敗を達成し、16節時には11もあったお隣さんとの勝ち点差を26節には5ポイントにまで縮めることができたんですけどね。

3月後半はインターナショナルマッチウィークによるparon(パロン/リーガの停止期間)も入り、残り試合もぽっきりリーガの11試合だけとなれば、コンドグビア、サウール、負傷がようやく治ったレギロンら、あまりプレーしていない選手たちが実戦不足に陥らないよう、親善試合もありかとは思うんですが、日帰り海外遠征までする必要ある?まあ、まだアトレティコ側からの正式発表がないため、本当にやるのか、TV放映はあるのかなど、疑問はいっぱいあるんですが、折しもその水曜にはマドリーがCL準々決勝1stレグをサンティアゴ・ベルナベウで開催。

つい先日、グラハム・ポッター監督を解任し、今週中には3月にバイエルンからサプライズ解雇されたナーゲルスマン監督やW杯後にスペイン代表との契約が切れたルイス・エンリケ監督らと後任決めの面接に呼びながら、最後はクラブのレジェンド、ランパール監督が今季いっぱい率いることが決まったチェルシーと、昨季に続いて同じラウンドで対戦するんですが、こうも立場が変わるとは皮肉。そう、去年は「5-5-0のシステムを破るのは難しい」と事実だったとはいえ、かなり失礼なことを言っていたグアルディオラ監督の鼻を明かすことができず、結局、マンチェスター・シティを準々決勝で破ることができなかったアトレティコながら、そこまではヨーロッパ最高のクラブ大会でプレーしていたってことですからね。

それだけに未だに週2試合ペースを継続し、CLでも昨年と同じルートを辿っているマドリーが羨ましかったりするんですが、どうやら今年の彼らは根性のremontada(レモンターダ/逆転劇)をコパで披露することにしたよう。というのもCL16強対決リバプール戦では1stレグに2点を先取されたものの、2-5と大勝をして、2ndレグもホームで1-0と2連勝だったのに比べ、コパ16強対決ビジャレアル戦では前半に2点を取られながら、後半に3点を挙げて2-3で勝ち抜け。アトレティコとの準々決勝でもモラタの先制点を終盤にロドリゴが帳消しにして、延長戦で3-1の勝利を掴んでいたからですが、その上、1カ月前の1stレグで0-1と負けていたコパ・クラシコ(伝統の一戦)の2ndレグときたら…。

そう、今週のミッドウィークはコパ準決勝が開催され、火曜にはサン・マメスで前半32分にウィリアムスのゴールで2試合合計スコアを1-1とされたオサスナが延長戦後半11分、パブロ・イバニェスのgolazo(ゴラソ/スーパーゴール)で得点。総合スコア2-1でコパ決勝進出常連のアスレティックを破り、18年ぶり、2度目のファイナリストとなった後、水曜にはカンプ・ノウでマドリーがここ3回のクラシコ、スペイン・スーパーカップ決勝、コパ、リーガで3連敗していたバルサに立ち向かうことに。それがどうにもベルナベウでの1stレグとは勝手が違い、前半は相手にボールを握られ、ずっと自陣エリア近くで守っているばかりのように見えたアンチェロッティ監督のチームだったんですが、実はこれ、カウンターのチャンスを伺っていたのだとは一体、誰に想像できたでしょう。

ええ、「A la que perdonas al Madrid pasan estas cosas/ア・ラ・ケ・ポエルドナス・アル・マドリッド・パサン・エスタス・コーサス(マドリー相手にチャンスを逃すとああいうことが起きる)」とチャビ監督も後で言っていたんですけどね。前半ロスタイム、ゴールを入れないといけないのにこのままじゃ、バルサにリードを広げられてしまうと私も心配になってきた頃、レバンドフスキのエリア内シュートをGKクルトワがparadon(パラドン/スーパーセーブ)したのがキッカケとなり、速攻カウンターがスタートします。クリアボールを拾ったロドリゴがマルコス・アロンソを突破して敵陣に向かう途中、ビニシウスにスイッチすると、エリア前まで持ち込んだ彼が゛ンゼマに一旦パス。エースが返したボールをシュートしたところ、クンデがゴールライン上でクリアし損ね、念を入れてベンゼマも蹴り込んだものの、2試合合計スコア同点の栄誉はビニシウスのものになりましたっけ。

まあ、こんな感じの予想外の失点だったため、その時はまだバルサも「En el descanso hablamos de que estábamos bien/エン・エル・デスカンソ・アブラモス・デ・ケ・エスタバモス・ビエン(ハーフタイムにはボクらの状態はいいと話した)」(セルジ・ロベルト)と余裕だったようですが、マドリーは再開して5分にはもう、畳みかけます。ええ、今度はモドリッチがドリブルでエリア前まで行きついて、ベンゼマにラストパスを送り、そのシュートが勝ち越しゴールとなってくれたとなれば、まさにその効果は「El primero te toca anímicamente y el segundo nos toca la moral/エル・プリメーロ・ノス・トカ・アニミカメンテ・イ・エル・セグンド・ノス・トカ・ラ・モラル(1点目で精神的にダメージを受けて、2点目は士気に影響した)」(セルジ・ロベルト)ってもんですよ。

これで逆に追いかける側に回ったバルサは一気に崩壊の道を辿り、13分には1stレグでミリトンのオウンゴールを引き起こしたり、リーガ・クラシコでも2点目を決める活躍をしていたケシエがエリア内でビニシウスの足を踏んでPKを献上。もちろんベンゼマがソツなく決め、3点目を奪ったマドリーだったんですが、何せ、デンベレ、ペドリ、デ・ヨング、クリステンセンと主力に負傷欠場者が多い相手はチームを強化したくとも、投入できたのはアンス・ファティ、エリック・ガルシア、フェラン・トーレスとW杯から帰って来た後、低調なパフォーマンスで3月にはデ・ラ・フエンテ監督の新生スペイン代表に呼ばれなかった選手ばかりでしたからね。

大砲レバンンドフスキも火を吹かず、ガビやアラウホがビニシウスに絡んで丁々発止を繰り返すシーンばかりが目立つようではとても反撃するどころではなかったかと。すると35分にはまたしてもカウンターから、ビニシウスのアシストでベンゼマがGKテア・シュテーゲンを破り、ハットトリックを達成って、え?彼、日曜のゴール祭り、6-0で勝ったバジャドリー戦でも3ゴール挙げていなかったかって?その通りで、シーズン前半は負傷が多く、試合も休みがちだったベンゼマですが、昨季も3月4月のCL16強対決PSG戦2ndレグ、準々決勝チェルシー戦1stレグで連続ハットトリックしていましたからね。

アンチェロッティ監督も「Ha tocado el interruptor/ア・トカードー・エル・インテルルプトール(スイッチが入った)」と言っていたように、春先にゴールづく選手なのかもしれません。これで0-4となったマドリーですが、終盤は普段出ない選手の虫干しに使われたバジャドリー戦とは違い、この日はアセンシオ、セバージョス、チュアメニ、ナチョと信頼できるメンバーをリフレッシュに投入。ちなみに40分にはバルベルデが代わる予定だったのを、「Calenté un poco porque no paraba de hablarle a la gente/カレンテ・ウン・ポコ・ポルケ・ノー・パラバ・デ・アブラルレ・ア・ラ・ヘンテ(ファンにずっと何か言っていて、ちょっと頭にきた)」というアラウホにど突き倒されていたビニシウスにしたのは、「Si veía otra se perdía la final/シー・ベイア・オトラ・セ・ペルディア・ラ・フィナル(もう1枚イエローカードをもらったら決勝に出られないんだから)、ピッチに居続ける意味はない」(アンチェロッティ監督)という理由だったとか。

結局、そのまま準決勝は総合スコア4-1というお釣りの十分来るスコアでマドリーが制したんですが、これには試合前日の記者会見まで深刻な表情を見せることの多かったアンチェロッティ監督も、「La caldera ha vuelto a la temperature/ラ・カルデラ・ア・ブエルトー・ア・ラ・テンペラトゥーラ(ボイラーの温度がまた戻ったようだ)」と満面の笑顔に。まあ実際、来週のCLチェルシー戦前にゴール量産体制が復活したのは心強いですしね。それが5月6日のコパ決勝、続くミッドウィークのマンチェスター・シティvsバイエルン戦の勝者と当たるCL準決勝と持続してくれれば、今季もマドリーはdoblete(ドブレテ/2冠優勝のこと)まっしぐらですって。

そんな中、クラシコの敗戦で勝ち点差が12に開いてしまったリーガだけは別なようで、コパ2ndレグの前には「リーガでもベルナベウでのコパでもウチは劣っていなかった。No merecimos perder y lo vamos a demostrar y no olvidéis que es una final/ノー・メレシモス・ペルデル・イ・ロ・バモス・ア・デモストラール・イ・ノー・オルビデイス・ケ・エス・ウナ・フィナル(ウチは負けるに値しなかったことを示そう。これは決勝だということを忘れるな)」と選手たちを鼓舞したというアンチェロッティ監督だったですけどね。カンプ・ノウのロッカールームで勝利を喜ぶ選手たちに、「1つウソを言った。決勝じゃなくて準決勝。決勝はこれからプレーしないといけない」とボケをかますと同時に、翌日を練習休みにして大喝采を受けるという一幕も。

うーん、週末のリーガ、ビジャレアル戦は土曜午後9時(日本時間翌午前4時)キックオフと、これだとバルデベバス(バラハス空港の近く)でのセッションが1回しかできないんですけどね。すんなり「昨季はマドリーに0-4で勝ったがタイトルが何も取れなかった。Este año pierdes 0-4 y puedes ganar la liga/エステ・アーニョ・ピエルデス・セロ・クアトロ・イ・プエデス・ガナール・ラ・リーガ(今年は0-4で負けてもリーガ優勝することができる)」と自分を慰めていたチャビ監督の言う通りになってしまうのもちょっと悔しい気がしますが、こうも連戦が続くとどこかで手を抜かない訳にもいきませんからね。

そうそう、その次の対戦相手、ビジャレアルのセティエン監督が多分、シメオネ監督なども同意するだろう、マドリーに対する意見を言っていて、曰く、「ゲームの主導権を握るのがいいのか、相手に任せるのがいいのかわからない。さっさとチャンスを作って点を取るのがいいのか、後半ロスタイムまでゴールを入れるのは待った方がいいのか。他との違いを際立たせる彼らの能力は、para gente como yo con un pensamiento lógico, es inexplicable/パラ・ヘンテ・コモ・ジョ・イ・コン・ウン・ペンサミエントー・ロヒコ、エス・インエクスプリカブレ(論理的な考えを持った自分のような人間には説明不可能だ)」だそう。

実際、コパ準々決勝で早い時間の先制点を挙げて逆転負けした後、リーガでは後半33分にリードしても結局、同点に持ち込まれてしまったアトレティコを見ていれば、それも納得ですが、まあコパ決勝進出のお祝い気分のマドリーが6位で、勝ち点4差で4位を目指しているビジャレアルとCLの足慣らしをする試合はともかく、今週末の他のマドリッド勢のカードも紹介しておくと。先陣を切るのは弟分のヘタフェで土曜午後6時30分(日本時間翌午前1時30分)から、アウェイ連戦の2試合目、レアル・アレナでのレアル・ソシエダ戦に挑むことに。

久保建英選手を擁する相手は前節ビジャレアルに2-0で負けるなど、最近調子を落としているんですが、来季のCL出場権を得られる4位を維持するという目標がありますからね。14位まで上がってはいても、降格圏と勝ち点差3しかないキケ・サンチェス・フローレス監督のチームには厳しい試練になるような。とはいえ、前節も難所サン・マメスでアスレティックからスコアレスドローを勝ち取った彼らとなれば、引分けぐらいには持ち込んで、ここ4試合無敗といういい流れを継続してほしいところですが、果たしてどうなるんでしょうか。

そして日曜午後9時からはラージョがアトレティコをエスタディオ・バジェカーノに迎える兄弟分ダービーなんですが、このところ、イラオラ監督のチームは7試合白星なしと停滞気味。ただ、5分け2敗と勝ち点はぽちぽち貯めていっているため、この調子で行けば、今季の残留確定予定ライン、42ポイントにはいずれ到達するかと思いますが、いい加減、ファンもすっきり勝利を祝いたい頃かと。前節バレンシア戦で負傷交代したアルバロ・ガルシアの先発出場に問題ないようなのは朗報です。

一方、今週は前節、ベティス戦に途中出場して決勝点を挙げたコレアをグリーズマンとの2トップにして練習していたアトレティコですが、木曜にその彼が休んだかと思えば、翌日には当人のお母さんが亡くなったというショッキングなニュースが。うーん、詳細はわからないんですが、マハダオンダ(マドリッド近郊)でのセッション開始前にはチーム全員が黙とうしていましたしね。メンフィス・デパイがまだリハビリ中なだけに、コレアがラージョ戦に出られないとかなり痛いんですが、こればっかりはねえ。代わって先発候補チームに入ったモラタの善戦を期待するばかりですが、シーズン前半戦は後半ロスタイムにファルカオにPKゴールを決められて、1-1で引き分けているだけにまた、今回も接戦になるのかもしれません。


【マドリッド通信員】 原ゆみこ
南米旅行に行きたくてスペイン語を始めたが、語学留学以来スペインにはまって渡西を繰り返す。遊学4回目ながらサッカーに目覚めたのは2002年のW杯からという新米ファン。ワイン、生ハム、チーズが大好きで近所のタパス・バルの常連。今はスペイン人親父とバルでレアル・マドリーを応援している。

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