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今頃、イスタンブールに行っても…/原ゆみこのマドリッド

超ワールドサッカー / 2023年4月14日 22時0分

写真:©Atlético de Madrid

「境遇も対照的なら、結果も対照的だったわ」そんな風に私が思い返していたのは木曜日、珍しくミッドウィークの前夜に揃ってプレーしたマドリッド2強の試合をスポーツ紙で読みながら、振り返っていた時のことでした。いやあ、リーガでここ12試合負けなしのアトレティコはとうとう、かの日には11もあったレアル・マドリーとの勝ち点差を2ポイントにまで縮小。今週末にもお隣さんから2位の座を奪うという、慎ましやかな野望が達成できそうなんですけどね。それが水曜にトルコ日帰り遠征となった親善試合ではあっさりベシクタシュに2-0と敗戦。

要はやっぱり今季のアトレティコにはリーガとミッドウィーク開催の大会を両立するだけの余力はなかったと判断すべきなのか、リーガでの大躍進もW杯前のヨーロッパ完全撤退、そして1月末のコパ・デル・レイ敗退あってこその賜物と思うべきなのか、迷ってしまうんですが、それだけにバルサに大きな差をつけられているとはいえ、CL出場圏内は余裕でキープ。コパ・クラシコ(伝統の一戦)を逆転で制して、決勝進出を勝ち取った後、今週もCL準々決勝チェルシー戦1stレグでしっかり2-0と先勝し、6月10日にイスタンブールで行われるCL決勝に向けて、着実に前進しているマドリーの強さが羨ましかったりするんですが、とりあえず、水曜の両者の試合がどんなだったか、お伝えしていくことにすると。

その日の午前中、久々のミッドウィークのお出かけとなったアトレティコは負傷中のメンフィス・デパイ、レイニウドを除き、トップチーム全員と複数のカンテラーノ(アトレティコBの選手)を連れて、イスタンブールへ移動。2月のトルコ・シリア大地震の復興基金援助を目的としたベシクタシュとの親善試合は午後7時30分キックオフで、丁度、マドリーのチームバスが大勢のお出迎えファンの声援を受けながら、スタジアムの工事区画へ入って行く時間と重なることに。サンティアゴ・ベルナベウへ行く前、近所のバル(スペインの喫茶店兼バー)のTVでそれを眺めつつ、スマホを無料ネットTV中継に繋いでみると、予想通り、アトレティコのスタメンには先週、母親を亡くしてラージョ戦を欠場。火曜から練習に戻ったコレアも含め、控えとカンテラーノがズラリと並んでいるって、やっぱりこれ、プレー時間の少ない選手の足慣らし用試合だった?

うーん、開始から5分までにはキャプテンマークを巻いたコレアがエリア内からのシュートを2度も放ち、どちらも敵GKに弾かれてしまうなんてこともあったんですけどね。途中出場で常にチームに貢献している彼とは違い、他の選手たちにはリーガ戦でどうしてお鉢が回ってこないのか、納得できる理由があるんです。ええ、前半25分には中盤でコンドグビアがボールロストしたのをキッカケにボールをベシクタシュに繋がれ、エリア内左からのゲドソンのシュートでGKゲルビッチが破られてしまうとはこれ如何に。

私がメトロに乗っている間も、火曜にランパード監督の記者会見に行った際にはスタジアム周辺をすっぽり囲っていた仕切りのシートも全て取り除かれ、試合用モードに戻ったベルナベウに着いて、8階の高みにある記者席から両チームのアップを見ていた時も、fondo sur/フォンド・スール(南側ゴール裏席)に「La historia continua Madrid hay uno solo/ラ・イストリア・コンティヌア・マドリッド・アイ・ウノ・ソロ(歴史は続く。マドリーは1つしかない)」という横断幕が広がり、ピッチに選手たちが入場して来る時間になってもアトレティコは点を取ることができず、いよいよ、眼下ではマドリーvsチェルシー戦がスタート。それが折しもシメオネ監督のレギュラー一斉投入となる10人交代と重なったとなれば、私がどちらに集中していいか迷ってしまったのも仕方ない?

いえ、開始1分にはチェルシーがカウンター攻撃に出て、1月からレンタル移籍しているジョアン・フェリックスが、うーん、別にアトレティコが今、CL決勝トーナメントにいないのは自分のせいじゃないと証明したかった訳じゃないと思いますけどね。1人抜けてマドリーのエリアに入ったんですが、ミリトンのマークもあって、シュートはあっさりGKクルトワがセーブ。以降はだんだん、先日のカンプ・ノウでのコパ準決勝2ndレグでバルサを0-4とgoleada(ゴレアダ/ゴールラッシュ)した時のスタメンを並べたマドリーが押すようになり、とうとう21分には先制点が入るんですから、さすがじゃないですか。

そう、あとでビニシウスも「Todos los jugadores que vistan esta camiseta saben que jugar la Champions es muy especial/トードス・ロス・フガドーレス・ケ・ビスタン・エスタ・カミセタ・サベン・ケ・フガール・ラ・チャンピオンズ・エス・ムイ・エスペシアル(このユニを着る選手は皆、CLがとても特別だということを知っている)」と言っていたんですけどね。この日はカルバハルがエリア外から入れたクロスを彼が足を伸ばして蹴ったところ、ボールはGKケパに弾かれてしまったものの、バルサ戦の1点目と同様、ゴール前にしっかり詰めていたベンゼマが押し込んで、得点者の栄誉はキャプテンのものに。

いやあ、スタンドがスタジアムDJに合わせて、「カリム・ベンゼマ」と3度もゴールコールをしているのを聞きながら、2-3と負けたリーガ前節のビジャレアル戦と違って、この調子ならマドリーは大丈夫そうだと思い、再び視線をスマホの画面に向けた私でしたが、まさにその瞬間のことでした。グリーズマンやマルコス・ジョレンテのシュートシーンは見逃しながら、後半43分、サビッチがゲルビッチにユルユルのバックパスを送り、ヌクドゥに奪われた挙句、ベシクタシュに2点目を奪われてしまうところを目撃したのは!その先は中継映像が不安定になり、いつしか画面が固まってしまったんですが、ええ、ええ、最後まで見なくたって、2-0で負けたのはわかりますって。

こんな有り様ではすべての試合レポートが、「大事なのは結果ではなく、アトレティコが人道支援のチャリティに貢献したことだ」という結びに終わっていたのも仕方ないんですが、ベルナベウのピッチではもう1人のアトレティコOBが36分に見せ場を作ることに。ええ、クルトワがスターリングの至近距離シュートをparadon(パラドン/スーパーセーブ)して、またしても「Salvar un gol siempre vale mucho, si meten el 1-1 ahí nos puede dar un golpe mentalmente/サルバル・ウン・ゴル・シエンプレ・バーレ・ムーチョ、シー・メテン・エル・ウノ・ウノ・アイー・ノス・プエデ・ダール・ウン・ゴルペ・メンタルメンテ(失点を防ぐのは常に大きな価値がある。もし1-1になっていたら、ウチがメンタル面で打撃を受けるかもしれないからね)」と、試合後に自画自賛を聞かされることになったんですが、おかげで試合は1-0のまま、ハーフタイムに入ります。

そして後半はチェルシーが不運に見舞われ、9分にはクリバリーが負傷。代わってマドリッドのサッカーファンには懐かしい元ヘタフェのククレジャがピッチに入ったんですが、CLでプレーできる程、成長したのねと私が感慨に浸っていたのも束の間。何と14分には彼のカバーが遅れ、ケパの守るゴール一直線に駆けて行ったロドリゴを止めるため、チームメートのチルウェルが後ろから腕を掴んで倒してしまったから、さあ大変!ファールはエリアの外だったとはいえ、最後のDFとして、レッドカードで退場となれば、ランパード監督もシステムを変えざるを得ませんって。

そこで20分にはジョアンとスターリングがハバーツとチャロバーに代わったんですが、交代策が成功したのもマドリーの方でした。というのも26分にはロドリゴとカマビンガが下がり、アセンシオとリュディガーが入ったところ、その3分後に前者が2点目を挙げてくれたから。こちらはCKからのプレーでモドリッチがショートで出したボールをクロースがエリア内のビニシウスへ。彼が折り返したボールをアセンシオがワンタッチで撃ち込み、それがgolazo(ゴラソ/スーパーゴール)になってくれたとなれば、追加点を待ち侘びていた観客がどんなに盛り上がったことか。

2点差になったところでランパード監督は負傷上がりのチアゴ・シウバとカンテを引っ込め、マウントとギャラガーを入れたんですが、うーん、昨夏に8人、1月にも8人と計6億1100万ユーロ(約900億円)も戦力補強に使い、欧州クラブ界の度肝を抜いたチェルシーなんですけどね。3月のスペイン代表戦でGKを務めたケパも「Hemos tenido tres entrenadores, cambios en la plantilla y nos está costando/エモス・テニードー・トレス・エントレナドーレス、カンビオス・エン・ラ・プランティージャ・イ・ノス・エスタ・コスタンドー(ウチは監督が3回、選手たちも変わって、そのツケがきている)」と言っていたように、先発したジョアンもエンツォ・フェルナンデス(ベンフィカから移籍)もほとんど貢献できず。

昨年中はCLグループリーグで当たったシャフタールでベルナベウ体験を済ませていたムドリクなど出場もせずと、むしろ2020-21シーズン準決勝でマドリーを退けた時の主力メンバーだったハバーツやマウントが入ってからの方が怖い気がしたのは私だけ?実際、マウントのシュートをリュディガーが体を張って止めていなければ、1点差に迫られていたところでしたしね。終盤にはモドリッチ、クロースもスタンドの拍手を浴びながら、それぞれセバージョス、チュアメニと交代し、そのまま試合は2-0でマドリーの先勝となったんですが、何せ準々決勝はもう来週、火曜には2ndレグが到来。

昨季はスタンフォード・ブリッジで1-3と勝利した後、ベルナベウでは0-3と逆転され、それを終了間際に奇跡のremontada(レモンターダ/逆転劇)で2-3にして、決勝進出となった彼らですが、今季はホーム、アゥエイの順序が逆ですからね。それだけにアンチェロッティ監督も「Hemos tomado ventaja pero tendremos que sufrir/エモス・トマードー・ベンタハ・ペロ・テンドレモス・ケ・スフリル(ウチはアドバンテージを得たが、苦労することになるだろう)」と決して気を緩めてはいませんでしたが、さて。16強対決の時に訪れたリバプールファンと比べると、応援が地味な気がしたチェルシーファンでしたが、果たして「スタンフォード・ブリッジでは特別なことが起きるかもしれない」というランパード監督の願いは実現するのでしょうか。

え、でもその前にマドリーは週末のリーガ戦があるんじゃないかって?その通りでこの土曜午後9時(日本時間翌午前4時)からは、ヌエボ・ミランディージャでのカディス戦に挑むことに。相手は前節、カナレス、ルイバルの退場したベティスに0-2と勝利し、降格圏と勝ち点差4ある14位に上がったんですが、まあ残留争い勢の一角ですからね。チェルシー戦2ndレグを中2日で迎えることを考えると、今はアンチェロッティ監督もバルサが前節、意外にもジローナと0-0で引分け、首位と勝ち点差15になるところを13になるだけで済んだとか、3位のアトレティコが2差に迫っているとか、そんな些事にはかまけず、先週末のビジャレアル戦並にローテーションを採用してくるのでは?

そのバルサの方は日曜午後4時15分(日本時間午後11時15分)にヘタフェ戦なんですが、キケ・サンチェス・フローレス監督のチームは実はホーム3連勝中。いえ、ここ2試合はアスレティックと0-0、レアル・ソシエダに2-0負けとアウェイで白星がなく、相変わらず降格圏まで勝ち点3差という、綱渡り状態は続いているんですけどね。相手はデンベレ、ペドリ、デ・ヨング、クリステンセンら、負傷者は誰も戻って来ないようなため、何とか勝ち点をゲットして、コリセウム・アルフォンソ・ペレスのファンを喜ばせてほしいかと。

そしてヘタフェの直後、日曜午後6時30分から、シビタス・メトロポリターノに弟分と同じ勝ち点30の16位、アルメリアを迎えるのがアトレティコなんですが、気になるのはここずっと、週1でしか稼働していなかった彼らが水曜の親善試合を挟んで、どういう状態になるのか。まあ、ここ12試合リーガ無敗を続けてきた選手たちもベシクタシュに負けて、敗戦の悔しさを思い出したはずですし、レギュラー選手たちは30分程しか、ボダフォン・パークでプレーしていませんからね。デパイはまだですが、コレアは復帰しましたし、ぽっきり残り10試合、全勝するぐらいの気概で彼らも挑まないと、CLやコパ決勝といった注目度の高い試合が続くお隣さんに話題を独占されてしまいますよ。

一方、もう1つの弟分、前節は兄弟分ダービーでアトレティコの前に1-2と屈し、とうとう白星なしが8試合になってしまったラージョは金曜試合でオサスナと対戦。いやあ、相手は先週、コパ準決勝2ndレグでアスレティックと1-1で引分け、18年ぶり、クラブ史上2度目の決勝進出を果たし、週末の最下位エルチェとの試合にも2-1で勝って、お祝いを続けていたんですけどね。さすがに1週間も経てば、気分も落ち着くはずですし、また5月6日のマドリーとの決勝で頭がいっぱいになって、リーガが疎かになる可能性もなきにしろあらず。丁度、両者は勝ち点差1で8位、9位と近いところにいますし、ダービーで退場したルジューヌは出場停止なるものの、そろそろイラオラ監督のチームには残留確定ラインに到達してもらいたいところです。


【マドリッド通信員】 原ゆみこ
南米旅行に行きたくてスペイン語を始めたが、語学留学以来スペインにはまって渡西を繰り返す。遊学4回目ながらサッカーに目覚めたのは2002年のW杯からという新米ファン。ワイン、生ハム、チーズが大好きで近所のタパス・バルの常連。今はスペイン人親父とバルでレアル・マドリーを応援している。

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