きっとバルサはもう秒読みしている…/原ゆみこのマドリッド

写真：©Atlético de Madrid

「よりによって今、お祝いするなんて無謀かもしれない」そんな風に私が不安になっていたのは月曜日、今週のミッドウィークリーガのマジョルカ戦でアトレティコがクラブ創設120周年記念イベントを開くと知った時のことでした。いやあ、これが先週までなら、チームは13試合無敗の6連勝中と絶好調だったため、わざわざレトロユニまで作って、大々的に祝おうとしているのも微笑ましく眺めていられたんですけどね。まさか、先週末のバルサ戦であれだけ残酷な現実を思い知らされた後にも関わらず、呑気に祝典を開くとは信じられなかったから。

え、それでも3月にシメオネ監督のアトレティコ指揮官として最多記録となる613試合達成を祝った時にはセビージャに6-1と大勝。選手たちがメデタイ気分になって、goleada(ゴレアダ/ゴールラッシュ)できるなら、毎試合、何かを祝ったらいいんじゃないかとまで思っていなかったかって?まあ、それはそうなんですが、実は10年前の2003年4月、アトレティコは今ではもう影も形もないビセンテ・カルデロンでクラブ創設100周年行事を開催。それこそ盛大に祝ったものですが、試合の方はオサスナに0-1で負ける体たらくで、どういう偶然か、その時の相手の指揮官は今回、マジョルカを率いてメトロポリターノに乗り込んで来るアギーレ監督なんですよ。

その後、彼はアトレティコの監督も務めていますし、マジョルカは日曜に弟分ヘタフェを負かして1部残留目安の勝ち点40に到達。となれば、今回は古巣に情を見せてくれるかもしれないんですが、はあ。せっかく勝ち点2まで迫り、レアル・マドリーから2位の座を奪い取るささやかな野望達成ですら、また5ポイントに逆戻りとなると不可能に見えてきますしね。今季残りは、もう1つの弟分ラージョが負けたせいで、勝ち点6に縮まった4位レアル・ソシエダとの距離をキープしつつ、お隣さんがコパ・デル・レイ決勝で優勝する前提で、リーガ3位での来年のスペイン・スーパーカップ出場ゲットを夢見るしかないって、アトレティコファンにとってはちょっと、やるせないかもです。

まあ、そんなことはともかく、先週末のマドリッド勢のリーガを振り返っていくことにしましょうか。始まりは土曜のレアル・ソシエダvsラージョ戦で、サンティアゴ・ベルナベウに行く前に私も近所のバル(スペインの喫茶店兼バー)で観戦していたんですが、前半11分にはオジャルサバルにゴールを決められるというドッキリが。幸い、その時はVAR(ビデオ審判)がよく見ていてくれて、直前にダビド・シルバがフラン・ガルシアをファールで倒していたことがわかり、ラージョは早期の失点を免れることに。その後、両チーム共、ハーフタイムまでにゴールは生まれず、0-0のまま始まった後半、とうとう12分にまたイシがやってくれたんです!

そう、センター付近でパスを受けたパチェコからボールを奪い、敵エリアまで爆走。その弾丸シュートが決まって、ラージョが先制したんですが、おやおや。何とその2分後、アイエンのクロスをノーマークだったセルロートにヘッドで叩き込まれ、あっという間に同点にされているんですから、困ったもんじゃないですか。そのすぐ後、イマノル監督は一気に選手3人を交代、丁度、久保建英選手が入ったところで私はお店を出ないといけなかったんですが、残念です。メトロで移動中は何とか、1-1をキープしていたラージョだったものの、アルバロ・ガルシアが出場停止、ファルカオが負傷でお留守番だったのも響きましたかね。サンティアゴ・ベルナベウ駅を出た辺りだった36分、またしてもアイエンが上げたクロスに今度はGKディミトリエフスキが後先を顧みずにジャンプ。

パンチングクリアとはならず、一緒に跳んでいたカルロス・フェルナンデスを押し倒しただけに終わったんですが、その前に彼がヘッドしていたボールがルジューヌに当たり、オウンゴールで決勝点を取られてしまうとはまったくツイていない(最終結果2-1)! これにはイラオラ監督も「Para pelear con equipos como la Real, no tienes que cometer errores como el que hemos cometido/パラ・ペレアル・コン・エキポ・コモ・ラ・レアル、ノー・ティエネス・ケ・コメテル・エローレス・コモ・エル・ケ・エモス・コメティードー(ソシエダのようなチームと争うにはウチがやったようなミスをしてはいけない)」と反省しきりだったんですが、でも大丈夫。

折しも2週間前、レアル・アレナを訪れ、やはり2-0と負けてしまったヘタフェもキケ・サンチェス・フローレス監督も似たようなことを言っていたんですが、続くホームでのバルサ戦ではスコアレスドローを勝ち取っていますからね。この水曜午後10時(日本時間翌午前5時)、エスタディオ・バジェカスに首位チームを迎える試合で残留を確実にするため、勝ち点40から少しでも上積みできるように頑張ってくれるだけで全然、いいですってば。

そして土曜最後の試合、マドリーvsセルタ戦が始まったんですが、この日のアンチェロティ監督はCLバージョンからスタメンを5人ローテーション。準々決勝チェルシー戦の2試合に集中していた間、ビジャレアルに負け、カディスには勝つという紆余曲折はあったんですが、この日はいい目が出ます。ええ、特にセルタに脅かされることもなく、淡々と進んだ前半42分、セバージョスが送ったパスをビニシウスがエリア内右奥まで持ち込み、アセンシオに折り返すと、彼がワンタッチで決めてあっさり先制しているんですから、これぞまさにシーズン11得点のFWを控えに持つチームの強みかと。

後半早々の3分にも今度はアセンシオのCKを、ほとんどポルトガル語みたいなスペイン語を話すカルバリャル監督曰く、「Se falló un poco en la marca a Militao, que es el único que la tenía individual. Fue un error colectivo/セ・ファジョ・ウン・ポコ・エン・ラ・マルカ・ア・ミリタオ、ケ・エス・エル・ウニコ・ケ・ラ・テニア・インディビドゥアル。フエ・ウン・エロール・コレクティボ(ただ1人、マンマークをつけていたミリトンへのマークミスがちょっとあった。集団的なミスだった)」という、マドリーのCBがヘッドで見事にゴールに沈め、2点目をゲットしたため、もうそこで勝負はあった感に。

まあ、終盤にはGKクルトワがイアゴ・アスパスの至近距離シュートをお馴染みのparadon(パラドン/スーパーセーブ)で防いだ後、セルタがCKを蹴る前にいきなり激怒。当人が試合後、「あのCKも1つのことだけど、敵2人がコーナーに行って、ショートで出すのがわかっているのに誰もカバーに行かないんだ。各自担当のゾーンがあるのはわかるけど、そういうのを見たら行かないと。それでうっかり点を取られようものなら、敵はまた試合に戻る。Hay que ser serios, jugar concentrados hasta el final/アイ・ケ・セル・セリオス、フガール・コンセントラードス・アスタ・エル・フィナル(真面目にやって、最後まで集中してプレーしないといけない)」と詳しく説明するなんてこともあったんですけどね。

クルトワがそんなに心配するまでもなく、試合はそのまま2-0でマドリーが快勝し、負けたカルバリャル監督もピッチで息子に頼まれたミリトンのユニをもらっているくらい、和やかな雰囲気で終わったんですが、むしろアンチェロッティ監督の心配はベルナベウのピッチ状態にあったよう。ええ、「El césped tiene un problema. Es evidente que la obra afecta/エル・セスペッド・ティエネ・ウン・プロブレマ。エス・エビデンテ・ケ・ラ・オブラ・アフェクタ(芝に問題がある。改装工事が影響しているのは明らかだ)」と記者会見でも言っていたように、張り替えても張り替えてもこのところ、すぐボコボコになってしまいますからね。5月9日のCL準決勝マンチェスター・シティ戦1stレグ前にはとうとう、今季4回目となる芝交換をすることになったのだとか。

え、グアルディオラ監督はチャビ監督程、芝の高さや湿り具合にうるさくないんじゃないかって?うーん、今季はハーランド中心のチームになったため、昔のように緻密なパスサッカーにはこだわっていないような気もしますが、1回の貼り替えにかかる30万ユーロ(約4500万円)程の費用もお金持ちのマドリーには苦にならないようですからね。ここはいい試合を見たいファンのためにもキレいにしておいて越したことはないかと。

その前にこのミッドウィークの彼らは火曜午後7時30分(日本時間翌午前2時30分)から、モンテリビでのジローナ戦。セバージョスは出場停止、ベンゼマは休養、リハビリ中のアラバ、メンディに加えて、足首を痛めたアザールもお留守番となりますが、果たして結果は如何に。アンチェロッティ監督は「Por la calidad de los dos equipos no hay 11 puntos de diferencia/ポル・ラ・カリダッド・デ・ロス・ドス・エキポス・ノー・アイ・オンセ・プントス・デ・ディフェレンンシア(2チームの質に勝ち点11の差はない)」と言っていたんですが、そのバルサもミチェル監督のチームと先日、0-0で引分けているだけに、決して油断はできませんよね。

そしてマドリーが首位と勝ち点差8でなく、11で次節を迎えることになった元凶の試合が翌日曜に行われたんですが、うーん、アトレティコは1月のメトロポリターノでのバルサ戦以来、ずっとリーガで負けていなくて、キックオフも午後4時15分とお日様の照っている時間だったため、シメオネ監督がカンプ・ノウでリーガ初勝利を挙げるには最高の舞台だと私も思ったんですけどね。累積警告で出場停止のマルコス・ジョレンテが免責にならず、当日になって、コケも筋肉痛でスタメン落ちという逆境もあったものの、開始1分前には2年の期間限定でお世話になったクラブに恩返ししようと、グリーズマンがエリア外からのシュートをゴールバーに直撃させるなんてシーンも。

でもねえ、実はこれ、吉兆ではなく、むしろこの日のアトレティコは撃っても撃ってもゴールが決まらないという凶兆だったようで、その後もコレア、再びグリーズマンが狙うもことごとく、今季ここまで脅威の9失点というGKテア・シュテーゲンに弾かれてしまったんですよ。すると0-0のままだった44分、エルモーソが片手を挙げて、何かをアピールしている間にラフィーニャにラストパスを出され、ヒメネスがボールを受けたフェラン・トーレスに詰めなかったせいもあったか、そのシュートがGKオブラクを破ってしまったから、さあ大変!

1-0で折り返した後半はどちらもよく撃っていく展開だったんですが、両GKが共にしっかり守り、いえ、アトレティコにはガビやレバンドフスキのシュートが枠を外れてくれるという幸運もあったんですけどね。コレアがモラタに代わっても大差はなく、ロスタイムにはデ・パウルのFKをヒメネスがヘッドしたところ、ボールがブスケツの腕に当たるなんてこともあったんですが、もちろん33試合連続してPKをもらえていない彼らに神風が吹くことはありえず。いやまあ、後でヒメネスなどは、「アルメリア戦でボクはオフサイドがあって助かったけど、esta vez entendieron que no era penal/エスタ・ベス・エンテンディエロン・ケ・ノー・エラ・ペナル(今回のは何でペナルティじゃないのかわからない)」と文句を言っていたんですけどね。

さりとて今季、コパやCLで4回、PKを蹴るチャンスをもらいながら、1度しかゴールにしていないアトレティコですからね。たとえ、この「Con las manos nadie sabe bien el reglamento(コン・ラス・マノス・ナディエ・サベ・ビエン・エル・レグラメント(誰もハンドに関して規則をよくわかっていない)」(オブラク)プレーがペナルティにされていたとしても、同点になったかは定かではなし。要は「No tuvimos la contundencia o la suerte necesaria/ノー・トゥビモス・ラ・コントウンデンシア・オ・ラ・スエルテ・ネセサリア(ウチには決定力、もしくは必要な運がなかった)」(シメオネ監督)せいで、1-0でバルサに負けてしまうことに。

結果、マドリーはまた首位と勝ち点差11に戻り、アトレティコは16差となって、水曜午後7時30分からのクラブ創設120周年記念マジョルカ戦を迎えることになったんですが、今は早々に選手たちが頭を切り替えてくれていることを祈るばかり。ちなみにその試合ではサビッチが出場停止、おまけに月曜には足指の骨折まで発覚したんですが、同様に検査を受けたコケは肉離れこそ、なかったものの復帰は微妙。おまけに休養バッチリだったはずのジョレンテも練習でケガをしたなんて聞くと、連勝が止まった反動が却って怖くなってきますよね。

そして日曜のマジョルカ戦ではボルハ・マジョラルが先制点を挙げながら、後半11分にイ・ガインに同点にされ、CKからライージョのヘッドで勝ち越された挙句、ロスタイムには再びイ・ガンインに止めを刺されて、3-1の逆転負けをしてしまったヘタフェはこのミッドウィークリーガ、アトレティコと同じ水曜午後7時30分から、コリセウム・アルフォンソ・ペレスでアルメリアと対戦。何せ、この黒星のせいで一時は余裕のあった降格圏との差もまた、勝ち点1に戻ってしまいましたからね。加えて今回の相手はギリギリ17位ながら、18位と同じ勝ち点となると、まさに死肉を喰らい合う争いというか、直接ライバルを叩こうと向こうも必死になってかかってくるはずですが、ヘタフェにとって心強いのはここ5試合、ホームで無敗を継続していることでしょうか。

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【マドリッド通信員】 原ゆみこ
南米旅行に行きたくてスペイン語を始めたが、語学留学以来スペインにはまって渡西を繰り返す。遊学4回目ながらサッカーに目覚めたのは2002年のW杯からという新米ファン。ワイン、生ハム、チーズが大好きで近所のタパス・バルの常連。今はスペイン人親父とバルでレアル・マドリーを応援している。