明らかにフェーズが変わった日本代表、強豪国になるためのカギは選手たちが日々磨く勝利と結果へのメンタリティ【日本代表コラム】
超ワールドサッカー / 2023年11月24日 7時15分
「ホームで5-0、そしてこのアウェイへの長距離移動、時差、気候の違い、色々なアクシデントがある中でも、選手たちがプロセスを、まずはしっかりと凡事徹底してくれたと思います」
森保一監督が試合後の記者会見で語った言葉。移動、負傷者、気候の違い…日本では放送や配信がなかった2026年北中米ワールドカップ(W杯)アジア2次予選グループ第2節でシリア代表戦。中立地のサウジアラビアでの戦いとなったなか、日本は0-5で快勝。初戦のミャンマー代表戦に続いて、5ゴールを奪っての圧勝だった。
この試合を多くの日本人が観られなかったことはとても残念だと思う。W杯予選がテレビでやらないことなど異例中の異例ではあるが、マネーゲームに屈しないという判断は評価できる点でもある。足元を見られては終わりだろう。
試合は2試合続けての5ゴールを奪っての快勝。結果だけを見れば楽勝にも思えるが、そんな簡単な試合ではなかった。
確かに実力差はある相手。格下という表現も間違ってはいないが、そうした相手に過去のW杯予選で苦戦してきた事実は多くの人が知っているはずだ。
カタールW杯のアジア予選でも、日本は簡単には行かなかった。初戦となったアウェイのミャンマー戦では0-2というスコアに終わり、タジキスタン代表には0-3、キルギス代表には0-2と、楽観視できる試合は特にアウェイゲームでは少なかった。
コロナ禍という難しい状況もあった中で、ホームではモンゴルに6ゴール、ミャンマーに10ゴール、タジキスタンに4ゴール、キルギスに5ゴールという結果だったが、アウェイゲームでは、格下と呼ばれる相手にその昔も苦しんでいた。
しかし、今回の2試合はどちらも5-0。シリア戦は30分間は攻め込みながらもゴールが奪えずにいたが、「貴重なゴールだった」と森保監督が語った久保建英(レアル・ソシエダ)の豪快ミドルを皮切りに、上田綺世(フェイエノールト)が連続ゴールを決め、後半にも2ゴールを重ねた。
実力差がある相手にも苦戦していた過去を考えれば、この2試合でどちらも5ゴールを奪えたことは非常に大きな成長を感じられたと言える。引いた相手も押し切れてしまう力を、今の日本代表は兼ね備えていると言えるだろう。
森保監督も「自分たちの成長、前進に向けて、集中を切らさず戦ってくれたことは、良かった」と語り、気を緩めずに戦い抜いたことを評価していた。これはヨーロッパで戦う選手たちが日々重ねているメンタリティの強化、勝利、結果への貪欲さが出たと言えるだろう。チーム内での競争、そしてヨーロッパの大会での強豪クラブとの対戦なども、その成長に繋がっているはずだ。
そしてもう1つ注目すべきは、この2試合で招集した24選手全員がピッチに立ったということだ。ミャンマー戦ではリスク回避のためにメンバーから冨安健洋(アーセナル)が外れた一方で、急遽追加招集した佐野海舟(鹿島アントラーズ)がデビューした他、4年ぶりの日本代表活動に参加した渡辺剛(ヘンク)も途中起用。さらに、GK前川黛也(ヴィッセル神戸)もデビューさせていた。
主力を温存し、2人をデビューさせた上で5-0で快勝。より難しい戦いになると予想されたシリア戦に主力を万全の状態でぶつけ、スタメンも9人を変更。そのシリア戦でもなかなか代表活動でゴールを奪えずに苦しんだ上田綺世(フェイエノールト)は2ゴールを記録し、2試合で5ゴールの大暴れ。さらに菅原由勢(AZ)、細谷真大(柏レイソル)は初ゴールを記録。結果、24名全員がしっかりとピッチに立ち、各々が結果を残した。
さらに言えば、三笘薫(ブライトン&ホーヴ・アルビオン)や板倉滉(ボルシアMG)、古橋亨梧、前田大然、旗手怜央(いずれもセルティック)ら、負傷者がそもそも不在でもあった。格下相手ではあるが、ほぼ2チームの編成でともに5点差の勝利。これは、これまでの日本代表では成し遂げられなかった戦いであり、簡単なことでは決してない。それだけのレベルに今の日本がいるということだろう。
2026年の北中米W杯には「8.5」枠というアジアの枠があり、これまでの予選の戦いを考えれば日本が出場しない可能性の方が低い。
ただ、それであってもアジアでNo.1であることはしっかり示さなければならず、その上でチームとしての底上げ、全体のレベルアップも本大会までにしなければ、目標であるW杯優勝は達成できないのも事実だ。
今回2試合では正直なところ、相手の強さには期待はできなかった。ただ、日本はブレず、自分たちの基準で戦い、そして5-0を続けるという結果を残した。この結果を掴めてこなかったのはこれまでの日本であり、今の森保ジャパンはそれを成し遂げる力を持ち始めているということだろう。
カタールW杯を挟み、日本は着実に階段を上がっている。レイヤーで言えば、いくつも上に行ったと言っても良い。W杯後にドイツ代表に勝ち、トルコ代表に勝ち、歴代最長の8連勝に伸ばしていることはマグレでもラッキーでもない。そういうレベルに日本がなりつつあるということだ。
もちろん、目標達成にはまだまだ力が足りないことは事実。ただ、可能性が少しでも高まっているというのも事実だ。あとはより力のある相手に警戒された時にどう戦えるのか。日々選手たちが所属クラブで研鑽を積んでいることも、日本代表の強化に繋がっている。勝ちながら修正していき、成長していくというスタイルを予選のプレッシャーが減ったことでより活かしていきたいところ。次は2024年元日のタイ代表戦。ヨーロッパ組を招集することが難しいと考えられるタイ戦では、また新たな選手が見られることになるはずだ。それでも、1年のスタートに多くの日本国民にその強さを見せつけてもらいたい。
《超ワールドサッカー編集部・菅野剛史》
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