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タイ戦からアジア杯を展望/六川亨の日本サッカー見聞録

超ワールドサッカー / 2024年1月4日 21時30分

写真:©超ワールドサッカー

元日初となる代表戦は、日本がタイを5-0と一蹴した。森保一監督はCBに藤井陽也、トップ下に伊藤涼太郎、左FWに奥抜侃志の代表初招集の3人を起用。タイとの実力差から無難な守備に終始した藤井は別にして、伊藤も奥抜もアグレッシブに仕掛けていたものの、連係という点で時間不足だったことは明らかだった。

さらにタイがDFラインを下げてスペースを消してきたこともあり、1トップの細谷真大、右FWの伊東純也も飛び出すスペースがなくて困惑気味。それでも伊東や田中碧が積極的にシュートを放ったものの、タイの身体を張ったシュートブロックにあい前半の日本の決定機はゼロだった。

ところが後半から伊藤に代わって堂安律、奥抜に代わって中村敬斗が投入されると、トップ下の堂安が攻撃を活性化。堂安が攻撃の起点となって田中が先制点を決めると、中村も代表5試合目で5ゴールと相変わらず得点嗅覚の鋭さを発揮。交代で代表デビューを果たした川村拓夢も代表初ゴールを決めるなどゴールラッシュで元日の代表戦を締めくくった。

前半から防戦一方で後半は足が止まった感のあったタイだが、やはり堂安や南野拓実がいると攻撃の流れがスムーズだ。例えば堂安は、伊東の足元にパスを出すのではなくスペースに出して伊東の持ち味を引き出していた。そうした相互理解が前半と後半の大きな違いだった。

そして18時30分に発表されたアジアカップに臨む代表メンバーに、細谷と、ボランチでスピーディーな攻守とタテへの速いパスで攻撃の起点となった佐野海舟が招集されたのは当然と言っていいだろう。

逆に田中と鎌田大地が招集外になった理由を森保監督は明言しなかったが、2人とも1月のマーケットで移籍の噂があるだけに、森保監督も気遣ったのではないだろうか。21年9月2日のオマーン戦で、アーセナルへ移籍したばかりのCB冨安健洋の招集を見送ったことがある。今回も同様のケースとすれば、日本人監督ならではの采配と言える。

さて、日本はタイ戦後にドーハへ移動し、9日にヨルダンとテストマッチを行い(非公開)、14日のベトナム戦に臨むことになる。左足首を負傷した三笘薫も「回復は順調。大会途中で起用できる見通し」のため今回招集したと森保監督は明かした。

4年前のUAE大会では、監督に就任してテストマッチ5試合でアジアカップに挑んだため、試合中のベンチワークも控えめで、どちらかというと選手がどこまで自主判断できるか見極めているような印象が強かった。結果的に決勝までたどり着いたものの、初戦のトルクメニスタン戦から準々決勝のベトナム戦まで5試合すべてが1点差という薄氷を踏む勝利だった。

しかし今回は、W杯でドイツとスペインを倒し、去年のテストマッチでもドイツとトルコを粉砕するなど国際Aマッチ9連勝で乗り込むだけに、他国のマークは一層厳しくなることが予想される。元日のタイ戦と同様、守備ブロックを固めてスペースを消してくることが予想されるだけに、ガマンの時間帯が続くだろう。それでも5度目のアジア制覇が森保ジャパンのノルマであることに変わりはない。

日本としては、前線からのプレスで素早く相手ボールを回収したら、幅と深さを使ってボールを動かし、相手の消耗を誘いたいところ。スタメンとしては右からDF陣は菅原由勢、板倉滉、冨安健洋、中山雄太。ボランチは遠藤航と守田英正で、前線は右から伊東純也、堂安律、中村敬斗で1トップは浅野拓磨か前田大然が有力だろう(上田綺世はタイ戦もベンチ外)。

しかし森保監督は攻守に強度のインテンシティを求めるため、また「より多くの選手が高いレベルでプレーしていて、競争も熾烈になっている」と話しているので、ターンオーバーを採用する可能性が高い。W杯ではどの試合も守備に時間を割かれるだけに、特に前線の選手は消耗が激しくなるからだ。

「前回は優勝できなかった悔しさもある。世界で勝つために、アジアでは確実に勝っていきたい」(森保監督)――オフト、トルシエ、ジーコ、ザッケローニと歴代の優勝監督はいずれも外国人監督だった。日本人監督として初の戴冠は、義務と言ってもいいだろう。


【文・六川亨】

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