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マルタ五輪とW杯に6大会連続出場のレジェンド/六川亨の日本サッカーの歩み

超ワールドサッカー / 2024年8月16日 22時0分

写真:Getty Images

パリ五輪女子サッカーで、3度目の銀メダルを獲得したブラジル。過去のメダルも含め3度の銀メダル獲得に貢献したのが、背番号「10」のユニホームでチームを牽引したマルタだった。

今年38歳になる彼女のプレーを初めて見たのは08年の北京五輪だった。五輪はIOC=JOC(日本オリンピック委員会)の管轄下のため、フリーランスに取材のIDが出ることは基本的にない。サッカーダイジェストなどサッカー専門誌の記者やカメラマンも同様で、ナンバーなども含め雑誌社は雑協という組織から人材を派遣する共同取材という形を取ってきた(近年はインターネットメディアやネットTVなどの台頭でそれも変化してきていることだろう)。

そんなフリーランスがなぜ北京五輪を取材できたかというと、FIFA枠でサッカー単一競技に限って取材できるIDが出たからだった(これはリオ五輪でも出たが、開催国にFIFA枠はないため東京五輪は取材できなかった)。

前置きが長くなったが、初めてマルタのプレーを見たときの衝撃は「凄い」の一語だった。類い希なサッカーセンスで攻守に渡りチームに貢献。ストライカーとしてスピーディーなドリブルとしなやかなフェイントで対戦相手を翻弄した。とりわけ驚かされたのは、自分の身体を自分が思った通りに動かすことのできる身体能力の高さだった。

女子サッカーの選手にもスピードのある選手、パワーのある選手、フィジカルに優れた選手は数多くいる。ただ、プレーの意図は見ていてわかるものの、思った通りに身体を動かせない選手も当時は多かった。ワンテンポ遅れるのだ。しかしマルタは違った。意のままに自分の身体を操って、ハイパフォーマンスを発揮していた。

そんな彼女のことをネットで調べると、国際大会は03年のW杯がデビューでベスト8に進出。五輪は前回アテネ大会が初めてで、銀メダルを獲得していた。そのプレーから「女ロナウジーニョ」とか、「スカートをはいたペレ」のニックネームがつけられていたが、当時の彼女のプレーはまさに「女ロナウジーニョ」だった。

メキシコW杯が開催された1986年生まれのマルタは、18歳で04年アテネ五輪の銀メダルに輝くと、4年後の北京五輪でも銀メダルを獲得。五輪はその後も12年ロンドン(準々決勝になでしこジャパンに敗退)、16年リオ五輪、21年東京五輪、そして24年パリ五輪と6大会連続出場し、パリ五輪では3度目の銀メダルを獲得した。

しかしながらパリ五輪では最終戦のスペイン戦でレッドカードをもらい、2試合の出場停止処分を受けてしまう。マルタの五輪もここで終焉を迎えるかと思ったが、チームは3位でグループリーグをクリアすると、準々決勝で開催国フランス(1-0)、準決勝では優勝候補のスペインを4-1と撃破して決勝戦までたどり着いた。そして後半16分にピッチに立ち、有終の美を飾ったのだった。

残念ながらパリ五輪はノーゴールに終わり、五輪の連続得点は5大会でストップした。とはいえ、この記録を破る選手が今後も出てくることはまずないだろう。

W杯も03年の初出場でベスト8に勝ち進み、07年はチームを準優勝に導くと同時に得点王とMVPを獲得。その後も11年、15年、19年、23年と6大会連続して出場し、6大会通算17ゴールは大会記録である。昨年のW杯ではブラジルが初めてグループリーグで敗退し、マルタ自身も「これが最後のW杯になる」と引退を示唆した。

次回W杯は3年後の27年、マルタも41歳になる。そして開催国はブラジルである。過去ブラジルは、男子はW杯で優勝5回、五輪優勝は1回を誇る。ところが女子はW杯と五輪はいずれも“ランナーズアップ”に甘んじている。「サッカー王国」を自負するだけに、女子とはいえ自国開催だけにタイトル獲得は絶対条件になることだろう。果たしてマルタは現役を続行するのかどうか。なかなかニュースは入ってこないかもしれないが、彼女の動向は気になって仕方がない。


【文・六川亨】
1957年9月25日生まれ。当時、月刊だった「サッカーダイジェスト」の編集者としてこの世界に入り、隔週、週刊サッカーダイジェストの編集長や、「CALCIO2002」、「プレミアシップマガジン」、「サッカーズ」の編集長を歴任。現在はフリーランスとして、Jリーグや日本代表をはじめ、W杯やユーロ、コパ・アメリカな

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