【AWS re:Invent 2022】クラウド市場の競争軸はインフラから「データ活用」へ
週刊BCN+ / 2022年12月15日 9時0分
記事の画像
米Amazon Web Services(アマゾン・ウェブ・サービス、AWS)は11月28日から12月2日(米国時間)までの5日間、毎年恒例の同社最大のイベント「AWS re:Invent 2022」を米ラスベガスで開催した。無数の新たな機能が発表されたが、その中で特に強調されていたのは、データ活用のためのツールと、特定の目的のための専用サービスだ。パブリッククラウド市場ではもはや、インフラではなく、より上位のレイヤーが主戦場になろうとしている。
(取材・文/日高 彰)
「世界中に広がっているインフレ、半導体不足などサプライチェーンの混乱、エネルギー価格、そして(ウクライナでの)戦争、さらにパンデミックが多くの人々に影響を与えている。このような不確実な時代には“削減・減速”したくなるもの。しかし多くのユーザーが、経済が不確実だからこそクラウドに投資すべきであると考えている」
AWSのアダム・セリプスキーCEOは、3年ぶりにコロナ禍以前と同じ規模で開催したre:Inventの冒頭でこのように述べ、先行き不透明な時代だからこそクラウドの果たす役割は重要度を増しているとアピールした。AWSの大手顧客である民泊サービスの米Airbnbは、新型コロナで旅行業界が大きな打撃を受けた際、クラウドへの支出を直ちに27%削減し、宿泊需要の回復に合わせてITインフラを再起動することで、サービスの改善を継続しながら厳しい時期を乗り越えることができた。「正しいツールを使えば、どのような環境でも生き残り、成功することができる」(セリプスキーCEO)。
多くの企業にとって、爆発的に増加するデータをいかに活用し、ビジネスにおいて有益な情報を得るかが課題となっている。セリプスキーCEOは、データ活用を成功させるためには、「正しいツール」「(データの)統合」「ガバナンス」「洞察」が必要とし、同社はそれぞれのテーマに対して適切なクラウドサービスを提供すると強調。例えば、正しいツールとしては、サーバーの運用やキャパシティの設計に頭を悩ませることなくデータを管理できるよう、サーバーレスのデータ分析サービスを充実させている。今回のre:Inventでは、非構造化データの検索や可視化が可能な「OpenSearch Service」もサーバーレスに対応すると発表された。
データの統合に関しては、データベースサービスの「Aurora」と、データウェアハウスサービスの「Redshift」の「ゼロETLインテグレーション」を発表した。従来はデータを分析する場合、データのETL(抽出・変換・ロード)処理を行うために大量のカスタムコードを書き、必要なパフォーマンスが得られるようインフラを設計する必要があったため、データの準備ができるまでに数日を要することもあった。今回のインテグレーションにより、複数のAuroraデータベースからETLなしでRedshift上にデータを統合し、AWSの機能や、サードパーティのアプリケーションや他のクラウドで分析クエリーを実行できるようになったという。
ガバナンスでは、組織全体のデータの共有や管理を支援する「DataZone」を発表。事業部門がデータを扱う際に適切なガバナンスがなくシャドーITなどが用いられた場合、セキュリティやコンプライアンス上の危険が高まるだけでなく、データが不完全になりビジネス上の目的も果たせなくなることがある。しかし、逆に厳格に管理しすぎると、データ活用のアイデアや、データを起点にしたビジネス変革などにとって障害となる。DataZoneは複数の部門、サービス、データベース、サードパーティーアプリケーションに分散するデータに対して一元的なポリシーを適用できるサービスで、部門間でのデータを介したコラボレーションも促進するとしている。
洞察については、自然言語での分析が可能なBIサービス「QuickSight Q」の強化を発表。機械学習技術によるビジネス予測が可能になったほか、「なぜ2022年1月の売上高が伸びたのか?」といった、ユーザーの「なぜ」に対して理由を答える機能を追加した。
今回のre:InventでAWSがデータ活用に加えて多くのソリューションを発表したのが、特定の目的のための専用サービスだった。中でも大型のサービスが、機械学習によってサプライチェーンの可視化・最適化を支援する「AWS Supply Chain」だ。
購買管理、注文管理、倉庫管理などのデータをこのサービスに接続することで、それぞれのシステム間で互換性のないデータを理解・抽出し、統一されたデータモデルに自動的に変換する。得られたデータからリアルタイムでビジュアルなダッシュボードが生成され、サプライチェーン上のボトルネックや潜在的な在庫切れリスクを自動的に発見し、問題の深刻度をランク付けすることが可能という。ECサービスである「Amazon.com」のノウハウが投入されているため、特に小売業のユーザーにとって強力なサービスとなっている。
AWS独自のハードウェアを用いた「Nitro V5」など、インフラのレイヤーでも多数の新発表が行われたが、いずれの発表もデータの爆発的な増加によって発生している問題を解決し、データをビジネスに活用するためのツールを提供するという点でテーマは共通していた。データ活用のためのサービスは米Google(グーグル)などの競合他社も前面に出して訴求に力を入れており、パブリッククラウド市場における競争の主軸になったと言えるだろう。
外部リンク
この記事に関連するニュース
-
Akamai、マイクロセグメンテーションを Amazon Web Services に拡張、またZTNA を強化して最適なアプリケーションパフォーマンスを実現
PR TIMES / 2024年11月21日 13時15分
-
『AWS最大イベント『AWS re:Invent 2024』最新情報の要点をクラウドエンジニアが解説』というテーマのウェビナーを開催
PR TIMES / 2024年11月19日 11時15分
-
CData、「Lakehouse Federation」と「CData Connect Cloud」を製品連携
週刊BCN+ / 2024年11月15日 16時44分
-
Amazon Web Services, Inc. 主催「AWS re:Invent 2024」に2年連続で出展
Digital PR Platform / 2024年11月13日 13時0分
-
【ウェビナー】Google Gemini<生成AI>で最先端のデータ活用基盤を手に入れる!
PR TIMES / 2024年10月30日 11時45分
ランキング
-
1日経平均株価が再度上昇するのはいつになるのか すでに「日柄調整という悪材料」は織り込んだ
東洋経済オンライン / 2024年11月25日 9時30分
-
2関西財界訪中団、邦人の安全確保に懸念 短期ビザ免除再開に期待も 投資意欲は持続
産経ニュース / 2024年11月25日 18時19分
-
3さようなら「サトーココノカドー」52年の歴史に幕 クレしん“聖地”まだまだ激変か? 街の人からは惜しむ声
乗りものニュース / 2024年11月25日 17時12分
-
4スエズ運河の船舶通過激減 パナマも、供給網負担重く
共同通信 / 2024年11月25日 16時29分
-
5災害に備えて家に食料を蓄えていますが、出先の対策が全くできていません…。普段から何を持ち歩けばよいでしょうか?
ファイナンシャルフィールド / 2024年10月24日 3時50分
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
エラーが発生しました
ページを再読み込みして
ください