米New Relic日本法人 オブザーバビリティプラットフォームの活用方法を説明 週刊BCN主催セミナーで
週刊BCN+ / 2023年5月25日 9時0分
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週刊BCN主催のオンラインセミナー「SIer必見!『DX時代のクラウド移行“2.0”』~企業のクラウド移行を成功に導くために~」が4月27日に開かれ、米New Relic(ニューレリック)の日本法人が、同社の提供するオブザーバビリティ(可観測性)プラットフォームの活用方法を説明した。オブザーバビリティ製品は、SIerが顧客に提供する価値の向上のために活用できるとし、競争力の強化につながるとアピールした。また、従来主流だった運用段階での利用に加え、開発環境での利用も進んでいると紹介した。
(取材・文/大畑直悠)
●顧客体験の向上に寄与
セミナー冒頭では霹靂社の本多和幸代表(週刊BCN前編集長)が登壇し、IT業界の動向を解説した。本多代表はITRの調査レポート「IT投資動向調査2023」を参照し、コロナ禍におけるビジネス環境の変化とDX推進の機運によって、国内のIT投資意欲が高まっていると紹介。そうした状況下で、ユーザー企業による内製化や、外資系大手IT製品メーカーのコンサルティング部隊が上流のプロセスを支援しつつ、ユーザーの一番近くで企業のDXに伴走する事例が増加していると説明した。一方で、「SIerは実装支援的な役割にとどまる事例が増え、存在感や提供できる価値が低下してきているのではないか」と問題提起した。
さらに本多代表は「ビジネスの変革(プロセス)と連携を取り、恒常的にシステムを最適化しながら運用していくという観点では、メーカーのコンサルではニーズを満たせない。コンサル部隊のリソースはまだまだ小規模だ」と話し、顧客のDXをトータルで支援するSIerの役割は大きいとし、「国内ではIT人材が不足しており、SIerによる支援は必要不可欠だ。新たな市場を生き残り、日本社会全体のDXをけん引してほしい」と呼びかけた。
次にニューレリック日本法人の技術統括コンサルティング部の中島良樹氏が登壇し、同社が提供するオブザーバビリティプラットフォーム「New Relic」について解説した。中島氏は、システムの基盤をクラウドに移行することで、単にコストや業務を削減するだけではなく、顧客エンゲージメントの向上と新規ビジネスモデルの創出につなげることを「クラウド移行2.0」と位置づけた。その上で「オブザーバビリティの活用方法として、システムが問題なく動いているかの監視だけではなく、ユーザーと直接関わるサービスを監視できることが必要になっている」と話し、「New Relicは顧客体験の向上に寄与する」と強調した。
New Relicはオンプレミス/クラウド環境の統合監視だけではなく、顧客に提供するサービスに関するアプリケーションを、その特性に合わせて監視できる。中島氏は「パッケージアプリケーションやSaaSのパフォーマンスは、ユーザー企業側での改善が難しい面もあるが、稼働状況を正確に知っておくことは、顧客に対する打ち手を考える上で重要だ」とした。その上で、エンドユーザーがアクセスした際の一連の操作フローをシミュレーションする「New Relic Synthetics」といった機能を説明。「SIerは、内製化では気づけないシステムやサービスの改善を提案してほしい。New Relicはそのための武器になる」とアピールした。
また開発段階におけるNew Relicの活用についても解説し、「本番環境に移行した後の障害対応にかかる負担を軽減できる」と語った。具体的な活用ケースとして、アプリ内部の挙動や性能の監視、エラー原因の特定や、性能テスト、バージョン更新時のバージョンごとの性能・エラー率の比較などができるとし、「開発段階のさまざまなテストで得た知見を用いて本番運用をすれば、より強固なシステム運用ができる」と話した。
●先行者利益が出る領域
セミナーの後半ではニューレリック日本法人の岩田皇輔・シニアアライアンスマネージャーが登壇し、パートナー戦略を紹介した。同社はパートナープログラムとして、リセラー向けのプログラムやマネージドサービスプロバイダー(MSP)向けのプログラムなどを用意しており、現在、伊藤忠テクノソリューションズやアイレット、クラスメソッドのほか、アプリケーションの開発に注力するSaaSベンダーなどのパートナーがいる。
岩田マネージャーは「リセラーやMSPにより良い利益をもたらすプログラムになっている。導入支援やコンサルティングも提供している」と述べた。グローバルで実施している認定資格プログラムについては、現在、ローカライズを進めており、今年の夏頃のリリースを予定しているという。
続けてNRIデジタルでの導入事例について解説した。NRIデジタルは、開発段階からNew Relicを活用し、開発チームがアプリケーションの性能問題の原因を特定・対応する時間を短縮しているのに加え、アプリケーションのリリース前の統合テストにもオブザーバビリティを取り込むことで、品質向上にもつなげている。
岩田マネージャーは「直感的に使えるダッシュボード機能や、アプリケーションパフォーマンスモニタリングの際に、ソースコードを変えなくても済むなど、開発者にとって使いやすいことが、NRIデジタルとの協業につながった」と説明。「SIerのエンジニアが顧客にオブザーバビリティの活用を支援できている事例は、正直まだ多いとは言えない」と話し、NRIデジタルの取り組みは先進例の一つだとした。
また、オブザーバビリティの市場動向として、数年前と比べて認知度が高まっているとし、米Gartner(ガートナー)が発表した2023年の「戦略的テクノロジのトップ・トレンド」にも、オブザーバビリティが挙げられている点に言及。その上で、「オブザーバビリティは現在、市場で最も注目されている技術の一つだ。NRIデジタルとの取り組みは一朝一夕だったわけではないが、オブザーバビリティの活用に向けて一歩踏み出してほしい」と訴え、「まだまだ先行者利益の大きい領域」との認識を示した。
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