SI事業が抱える構造的な課題を、ローコード開発で解決する
週刊BCN+ / 2024年3月21日 9時0分
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ローコード開発プラットフォーム「GeneXus」を提供するジェネクサス・ジャパンと週刊BCNは2月29日、共催セミナー「このままでいいのか、SIビジネス~ローコード開発で、ITベンダーは『DX支援者』になれる~」を開催した。目下、SIer各社の業績は堅調だが、エンジニアを中心に人手が不足する中、開発効率を高め新たなテクノロジーにも対応しなければ、中長期的な事業継続が難しい時代になりつつある。セミナーでは、ユーザー企業がSIerに期待する役割と、GeneXusを活用したシステム開発ビジネスの変革について講演が行われた。
(取材・文/日高 彰)
●DXでIT投資が 基幹から現場へシフト
基調講演では、市場調査やIT戦略コンサルティングを展開するアイ・ティ・アールの内山悟志・会長/エグゼクティブ・アナリストが、国内におけるDXの推進状況とSIerに求められる役割について解説した。
内山会長は「IT活用の主戦場が変わり、投資する分野の比率が変化しつつある」と指摘。従来、企業のIT支出は財務・会計や人事、購買管理といった基幹系のアプリケーションと、それを動かすためのITインフラに集中していたが、今後は特定の業種・業務に特化したシステムや、新規事業創出のための投資の比率が高まるとの見方を示した。このためSIerのビジネスも、基幹系からユーザー企業の事業により近い領域へシフトする必要があるという。
大手企業を中心にシステムを内製化する動きが顕著になっているが、国内のユーザー企業がシステムをすべて自社開発するのは現実的ではなく、今後もSIerが果たす役割は重要となる。ただし、内山会長は「ユーザー企業のIT部門が要件を決め、設計・実装はSIerが行うという、これまでの関係ではうまくいかない」と強調した。今後SIerには、「ユーザー企業が自社だけではできないことを、ユーザー企業と同じ目線で伴走する」役割が期待されるとし、互いにアイデアを出し合いながら、ユーザー企業のビジネスをアジャイル的に成長させていく支援が求められていると述べた。
特に今後、優秀なデジタル人材を抱えDXの先頭を走るユーザー企業は、クラウド事業者や、とがった得意分野を持つテクノロジー企業を直接指名するようになる。従来のSIerが生き残るには、ユーザー企業のDXに企画・構想化の段階から伴走する能力が必要となると内山会長は説明した。
●ビジネス要件を起点に開発できる
続いて、ジェネクサス・ジャパン技術サポート部コンサルティング課の松本右・マネージャーが、ローコード開発プラットフォームGeneXusの概要を紹介した。最近ではさまざまなローコードツールが市場に登場しているが、松本マネージャーは、「GeneXusは30年以上にわたってさまざまなテクノロジーを吸収し続けており、それらを活用して最終的なアプリケーションのアウトプットを実現してきた実績がある」とアピールした。
変化し続ける業務に合わせてアプリケーションを改善する際、新たな言語やOS、デバイスなどの技術的な要件が足かせになることがあるが、GeneXusは基幹システムの開発に用いられるJavaやCOBOLから、Webサービス向けのHTML5やJavaScript、モバイル端末(Android、iOS)のネイティブアプリなど、さまざまな言語でのアプリケーション生成に対応している。松本マネージャーは「プログラムはユーザーニーズ、プロセス、現実の結果であるべき」と話し、テクノロジー面の課題を開発プラットフォーム側で吸収し、ユーザーが求める要件に応じて開発できるのがGeneXusの特徴だと強調した。
また、自然言語で業務要件を入力すると生成AIがそれを分析しアプリケーションを自動生成する「GeneXus Next」を現在開発中であることを披露した。
●収益と顧客満足度をともに向上
さらに、営業部の堀口一雄・担当部長が、GeneXusを開発基盤として導入するSIerにとってのメリットと、同社が提供している支援内容を説明。GeneXusを活用することで生産性が高まり、SI事業の収益向上が期待できるほか、プロトタイプを素早く作成可能なため、ユーザーに要件を確認しながらソフトウェアを開発できる点などが、導入済みのSIerからは評価されているという。
GeneXusを検討するSIerに向けては、Eラーニングによる30日間の研修プログラムや、60日間試用できる評価版などを提供しており、標準的には3カ月前後でGeneXusを用いた開発スキルの習得が可能としている。堀口担当部長は、「SIer各社からは、『早く安く確実に作れるようになった』『プロトタイプ開発の導入によりコストオーバーが防げた』といった声をいただく」と紹介した。
この日のセミナーでは、05年にジェネクサス・ジャパンとパートナーシップを結び、システム開発事業にGeneXusを活用しているSIerのウイングから、樋山証一会長が登壇し、ローコード開発の導入で同社のビジネスがどのように変化したかを紹介した。
樋山会長は、GeneXusを採用した目的を「会社の将来を明るくするため」と説明。かつての同社は同業他社からの再受託が中心で、残業や納期間際の徹夜が常態化していた。働きやすい環境とより高い報酬を社員に提供し、継続的な成長を図るため、トップ判断でGeneXusを導入。当初は得意客の中小企業向けに活用していたが、口コミやマスコミを通じて大手企業にも評判が伝わり、現在はGeneXusの導入支援も手がけている。
最大の成果は「それまで下流工程が多かったのが、上流にも踏み込めるようになったこと」(樋山会長)だといい、ユーザー企業の要件を直接聞き取ってシステムを開発するビジネスに進出できたことで、前出の目的を達成。リピート率の向上や、製品販売や企画といった職種の採用にもつながった。今後は業務を知るユーザーが自らシステムを改善できるよう、「市民開発」の支援も手がけていきたいとした。
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