北川悦吏子『半分、青い。』のツイッター大暴れは意図的なものだった? その理由は……

wezzy / 2018年9月30日 0時5分

写真

 本日(9月29日)、北川悦吏子脚本のNHK連続テレビ小説『半分、青い。』がいよいよ最終回を迎える。ほとんどの週で平均視聴率20%超えをキープ。また、ツイッターでも放送されるたびに話題となるなど、一貫して注目度の高いドラマだった。

 『半分、青い。』が近年の朝ドラのなかでも突出してSNSで取り沙汰されるドラマとなったのは、視聴者の語りに北川悦吏子本人も率先して参加し、脚本執筆の裏話を明かしたり、「神回」を予告していたからという側面がある。

 2017年の元旦から始めた朝ドラの執筆作業はハードで、北川氏はその間2度も救急車で搬送され、病室で執筆した時期もあった。そんな満身創痍での脚本執筆を支えてくれたのは、ツイッターを通しての視聴者との交流であったという。「文藝春秋」(文藝春秋)2018年10月号掲載のインタビューのなかで、北川氏はこのように語っている。

<インターネットを通しての救いもありました。ツイッターを通して多くの方が熱い意見や感想を送ってくださっている。すごくハッとさせられる意見もあって、そこから発想したものをいくつか台詞に入れたこともあります。見ず知らずの、たくさんの人たちが私を支え続けてくれていて、感謝しきれません>

 ただ、『半分、青い。』放送中の北川氏のツイッターを振り返ってみると、彼女にとってそこにあったのは<救い>ばかりではなかっただろう。作品の内容に対してあまりにも否定的な意見が多いため、<最近、リプライに妙なものが入って、こわくて、読めなくなってます>とツイートしたこともあったからだ。

 『半分、青い。』と北川氏をめぐってツイッター上を飛び交ったのは肯定的な意見ばかりではなかった。むしろ、常に「炎上」とともにあった、ともいえるだろう。

 北川氏の炎上は『半分、青い。』の放送が開始される2018年4月からさかのぼること1年近く前、2017年3月の時点からすでに始まっていた。

 『半分、青い。』の時代設定は高度経済成長期から現代にかけてで、永野芽郁演じる主人公の鈴愛は1971年生まれの人物として描かれる。北川氏自身は1961年生まれで10歳差があるため、1971年生まれのリアルなライフストーリーを知る意図で、『三宅裕司のいかすバンド天国』(TBS)で好きだったバンドや、「バブル時代の象徴」として思い浮かぶものなど、当時の思い出をフォロワーに質問するなどしていた。

 北川氏の脚本執筆の助けとなることができることを喜ぶファンもいる一方、ツイッターでかき集めた不確かな情報をもとにリサーチを行う姿勢を疑問視する声も起きた。

 そうして放送が開始された『半分、青い。』は、登場人物の行動や強引な展開について賛否両論の声がたびたび起こるようになる。最終回直前でも、東日本大震災の物語への取り入れ方をめぐって批判が起きており、最後の最後まで論争を喚起し続けたドラマだった。



 そんなことから、放送が始まると、登場人物の行動やストーリーにモヤモヤを抱いた視聴者が「#半分白目」というハッシュタグをつけてツイッターに投稿する文化も定着。

 その結果、8月28日に北川氏は突如、自分自身に関するネガティブな投稿は見たくないので、これからはフォロワーからのリプライを見ないと宣言した。そして、フォロワーには「#北川プラス」のハッシュタグをつけて応援のコメントだけ送ってほしいと綴ったのだ。

<最近、リプライに妙なものが入って、こわくて、読めなくなってます。素敵なリプライも来るので、それは読みたい。ということで、北川さんこれは大丈夫というものに、#北川プラス とつけてください。そしたら、必ず読みます。ハッシュタグ検索もするので、私への暖かい感想はこちらへ。#北川プラス>

 北川氏は同時に<はっはっはっ。さすがに、アンチが、北川プラス!とは、打てないだろう^ ^!と踏み絵の意味もあります>ともツイートしていたが、案の定、「#北川プラス」のハッシュタグも大荒れ。批判的な意見を完全に排除しようとした態度が、余計に批判的な意見を呼び寄せる結果となった。

 このように、ツイッターにおける一連の炎上は、北川氏自らが火に油を注いでいた要素も強い。

 その象徴的な例が、律を演じた佐藤健をめぐる一件だ。

 北川氏は7月5日に<でも、みなさん、そろそろ律に会いたくないですか? そんなことは、ないんですか? TBS見ればいいんですか? 私は、見ませんよ>(現在は削除済み)と、佐藤健が出演するドラマ『義母と娘のブルース』(TBS系/2018年7月10日放送開始)を意識したツイートを投稿した。

 仕事仲間の活動を応援するツイートならまだしも、<私は、見ませんよ>はさすがに失礼で、これには多くの人から怒りの声が出た。

 ただ、実は、北川氏による一連の炎上ツイートは、「天然」ではなく、話題性になることも考慮したうえでなされた、意図的なものだったのかもしれない。2018年8月31日付「朝日新聞DIGITAL」のなかで北川氏はこのように語っている。

<黙って見ていればいいのに、参戦し、タグ荒れを起こし、『やってまった』と反省することも多いです(笑)。NHKさんからは何度か『北川さん、やめてください』って叱られました。脚本家自らが『明日は神回です』なんて予告するのを『自分から言うなんて不遜』ということだと思うんですが、自分にとっては神回なんです。『スタッフ、キャストも頑張りました!』ということです。ただ『見てね』と言うんじゃつまらない、翌日のネットニュースにもならないから>



 また、北川氏は「朝日新聞DIGITAL」のなかでこんなことも語っている。『半分、青い。』の物語が紡がれた裏側や、ドラマがつくられる制作過程をツイッターで見せていたのは、将来的にドラマ制作の世界に入ってくる若者のためだったと言うのだ。

<『半分、青い。』を作る過程の、私の精神、頭の中を見せる。そこには、苦しいけど、創作という自由があります。私は『私、作る人。私、見る人』の垣根を取り払いたいんです。作る楽しさを共有したい。朝ドラを見て、ツイッターを読んで、なんだか面白そうだなとドラマ作りに憧れ、自分もやってみたいと思う人が一人でも多く現れてほしい>

 とはいえ、北川氏のツイッターがここまで大荒れになり、本人も心身共に限界状態に追い詰められている様子を見ると、逆に「つらそうだな」と志望を変えてしまうのではないかと思わなくもないが……。ただ結果的に、そういったプレッシャーに耐えるだけの覚悟や胆力がなければ、脚本家として生き残ってはいけないということも伝えられたのかもしれない。

 北川氏が患っている炎症性腸疾患は難病で完治は難しく、いまでも苦しみのなかにいるそうだ。そんな北川氏を支えてくれたのは『半分、青い。』の仕事だった。前掲「文藝春秋」で北川氏は、<私を救ってくれたのは“書くこと”でした。怖いことを考えないために、仕事をする。仕事は全神経を集中させないと出来ないから、嫌なことも忘れていられます。(中略)日々ドラマの制作に夢中になった私は、いつの間にか病気の怖さをすっかり忘れていました。朝ドラは私の光だったんです>と語っている。

 北川氏のドラマへかける情熱はそれほどまでに強い。そう遠くない未来、次の作品が視聴者に届けられるだろう。ただ、そのときはSNSとの付き合い方には少し気を使ったほうが無用な軋轢を生まないような気がするのだが……、余計なお世話だろうか。

(倉野尾 実)

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング