『けもなれ』視聴率に反映された「共感するけどつらすぎて脱落」の声

wezzy / 2018年10月25日 17時15分

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 『獣になれない私たち(以下、けもなれ)』(日本テレビ系)の第3話が、24日に放送された。同ドラマは、『逃げるは恥だが役に立つ』(TBS系)や『アンナチュラル』(TBS系)を手掛けた野木亜紀子のオリジナル脚本。主人公・深海晶を演じる新垣結衣(30)との最強タッグに期待値が高まっていたが、数字はいまひとつとなっている。

 初回は11.5%(ビデオリサーチ調べ、関東地区/以下同)だった『けもなれ』だが、第2話は8.5%まで数字が下落してしまっている。第1話でハラスメントを受け続ける晶の姿を目の当たりにして、「仕事から帰ってきてドラマでもこれは辛い」という感想を述べる視聴者も多かった。

 晶の勤務する「ツクモ・クリエイト・ジャパン(TCJ)」のブラック企業ぶり、彼氏の無神経、愛想笑いで疲弊していく晶自身など、初回から「見ていてつらい」との感想がSNSに溢れた『けもなれ』。アシスタントなのに同僚の尻拭いに奔走し、顔がかわいいから重宝されると軽んじられ、セクハラ被害にも遭う晶はたしかに見ていてつらかった。

 第1話のラストシーンで晶は、いつものオフィスカジュアルではなく尖ったファッションで武装し、「ブラック労働からの脱却」を社長に直訴したが、そう簡単に“獣”にはなれない。

有給休暇中でも会社から電話 相変わらずのブラック激務

 第2話では、晶が勤めるツクモ・クリエイト・ジャパン(TCJ)の社長・九十九(山内圭哉/46)に業務分担の改善を直訴するところから始まる。九十九からの猛反発に慄く晶だったが、何とか出張明けに返答を出す約束を取りつけた。ちなみに、晶は物語終盤で“特別チーフクリエーター”という謎の役職への昇進を社長から言い渡されるだけで、業務内容に関しては何も変わらないという運命を辿る。
 
 そうとも知らずに九十九が出張から戻るまで、束の間の有給休暇をとることを許された晶。久々に穏やかな平日の朝を迎えられるかと思いきや、現実はそう甘くない。朝っぱらから同僚・松任谷(伊藤沙莉/24)の電話で起こされ、新人営業の上野(犬飼貴丈/24)が契約書を持ったまま無断欠勤していると告げられる。晶は休暇中にもかかわらず、「困る困る! 私ひとりでどうしていいかわかんない」と人任せの松任谷は結局、晶に上野の様子を見に行かせる。おまけに上野は晶に甘えて「好きになってもいいですか」と言ってくるわで、晶の心は全く休まらないのであった。

京谷に向かって「他の人を好きになりたい」と本音が

 そんな中、晶は以前派遣社員として勤めていた会社のバーベキュー大会に参加。その職場はかつて恋人の京谷(田中圭/34)と知り合った場所でもあり、会場では京谷と社員たちが歓迎ムードで出迎えた。馴れ初めも描かれ、田中圭と新垣結衣のキスシーンには胸キュン反応がSNSに溢れた。

 だが、そのキスで交際スタートしてから4年。一見ふたりの交際は順調に進んでいるようにも見えるが、京谷は失業した元カノの朱里(黒木華/28)と未だに同棲状態。“彼女の仕事が決まるまで”と居候させているも、そのことが原因で晶との結婚も同棲も先延ばしになっていた。

 その状態に傷ついている晶は、京谷に向かって「他の人を好きになりたい」と本音を漏らす。その言葉を受けて京谷も一応は真剣に晶と向き合うべく、朱里に対して新しい部屋の資料を渡し「引越し先の家賃を1カ月分だけ払うから」と提案するが、朱里は逆切れ。出て行く気も仕事を探す気もなさそうだ。



 というか、朱里は“獣”なのだと思う。コキ使われて散々な目に遭っている晶に、朱里は「辞めちゃえばいいのに」と言う。朱里だったら辞めているのかもしれない。また、晶が朱里の立場だったら、現彼女に気を遣って元カレの家に居候などできないだろう。“獣”になれないから。

 しかし朱里が生まれついての“獣”かといえばそうではないし、別れた元カレの家に4年も居座って引きこもり、新しい仕事を探さないのだって、だらしなくてイヤな奴だからじゃなく臆病心や葛藤からきているだろう。朱里は心を病んで前職を辞めている。京谷はそんな朱里を完全に突き放すことができない。

 『けもなれ』であからさまに“獣”として描かれているのは呉羽(菊池凛子)で、直感で生きる野生児とされている。晶は「いいなぁ、どうしたらそうなれるんだろう」とぼやくが、彼女は“獣”になれるのか。いや、そもそも“獣”ってなんだ? それが“人間”よりも良いものなのか? 本能は理性や配慮より大切なのか。結局のところバランス感覚なのだと思うが、『けもなれ』がどのような答えを提示していくのかが気になる。

『けもなれ』はここからが本番?

 同じようにこの現実社会には、“獣”になれない人々が大勢生息しているだろう。それゆえ『けもなれ』は大いに共感を呼んで『逃げるは恥だが役に立つ』(TBS系)のようにグングン数字を伸ばす話題作になるかと予想されたが、晶のしんどさに我が身を投影してつらくなり、「もう見ていられない」と脱落する視聴者もいるのだから、それほど事態は深刻なのかもしれない。しかも晶は幼少期に父親から虐待を受け、母親はマルチ商法にハマって絶縁中という生い立ちもしんどい。

 といっても、制作サイドだって単純に『逃げ恥』の二匹目のドジョウを狙ったわけではないだろう。問題意識があってこのドラマを制作していることは明らか。ただ、野木作品といえば、そこに広がるのは「優しい世界」というイメージがある。『逃げ恥』にしろ『空飛ぶ広報室』や『アンナチュラル』(ともにTBS系)にしろ、ドラマの登場人物なのに信頼を置けるというか、優しく誠実な人々が息をしていたのだ。

 働く女やイケメンだって、ステレオタイプな描き方はしていなかった。だから多くの視聴者に愛される作品だったのだと思う。しかしそれもひとつのファンタジーだ。『けもなれ』では、晶を取り巻く登場人物たちの“ウザさ”が目立ち、その点での視聴ストレスは確かにあるだろう。現実には、どうやっても共感できない相手もいるし、いくつかの方向から見てもだいぶ悪人だな、というような人もいる。

 ただ、野木脚本のドラマに期待する視聴者は非常に多いはずだ。丁寧に作りこまれていないはずがない、という信頼がそこにある。たとえば『アンナチュラル』では、最初は横暴なパワハラ法医学者のように見えた中堂系(井浦新/44)が、第3話以降、怒涛の好感度上昇をみせ、最終回に入る頃には“中堂ロス”が叫ばれるほど愛されるキャラクターになっていた。

 いかに大勢が野木ワールドの面白さにハマるかは、第3話以降も見てみないとわからない。

(ボンゾ)

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