女子フィギュア紀平梨花とザギトワの対立構図を煽る『とくダネ!』因縁のライバル強調する報道は選手に良い影響を与えるのか

wezzy / 2018年12月13日 10時5分

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 12月7日~9日にかけて開催されたフィギュアスケート・GPファイナルで、16歳の紀平梨花選手が初優勝を飾った。シニアデビュー初年度、GPシリーズ初出場での優勝は、2005年の浅田真央以来13年ぶりの快挙である。紀平の夢は、2022年の北京五輪で金メダルを取ることだといい、それも不可能ではないとメディアは大いに沸いている。

 今に始まったことではないが、日本の女子フィギュアスケート選手の層は厚い。現在も宮原知子、坂本花織、三原舞依、本田真凛などそうそうたるメンバーが揃っており、日本国内だけでも代表枠をめぐり激戦状態だ。平昌五輪金メダリストのアリーナ・ザギトワ(ロシア)、平昌五輪4位の宮原、平昌五輪6位の坂本らの主力選手を抑えて優勝を遂げた紀平に、メディアの注目が集まるのは自然ことだ。

 GPファイナルから一夜明けた12月10日、朝のニュース番組やワイドショーは紀平の初優勝について多くの時間を割いて伝えていた。紀平の初優勝を祝福し、紀平の今後に期待を寄せるにとどまらず、今回、紀平に女王の座を明け渡した格好となったザギトワと紀平の比較も盛んに行われている。

 ザギトワは紀平と同学年の16歳ということもあってか、メディアは早速“紀平vsザギトワ”の構図を描き、対決を煽り始めているようだ。

 なかでも『とくダネ!』(フジテレビ系)は、紀平とザギトワ、両者についてくまなく比較していた。フィギュアスケート評論家の佐野稔氏は、GPファイナルでの紀平とザギトワの得点内訳について懇切丁寧に解説し、紀平がザギトワに勝てたのかを検証。紀平のトリプルアクセルの出来栄えについてもパネル写真を用いて「肩に全く力が入っていなくて、下半身のほうにグッと力が下りてる」などと細かく説明する一幕もあった。

 同番組では、ザギトワには“女王の重圧”がかかっていたとの見立てを紹介。ショートプログラムに挑む直前に「私の前にスケートをする女子のパフォーマンスを見ないようにしています」と話していたというザギトワ。試合後には「神経質になっていた」「考えすぎてしまったことが問題だった」「それでもリンクに出て自分の演技をしなければならなかった」と憔悴、ショートから一夜明けた会見で紀平について聞かれた時には「その質問は答えなくてもいいですか?」と返答えていたのだという。

 佐野氏は、GPファイナルの公式練習について触れ、「ザギトワさんの目の前で紀平さんがぽんぽんポンポントリプルアクセルを跳んでいると、やっぱりいい気はしないですよね」「オリンピックチャンピオンのプライドみたいなのが邪魔したのかもしれない」と推察していた。

 ザギトワは、フリー試合の後に「何も考えないで自分にとって最高の演技をするべきだった。今までの自分を超える演技を」「だってどんなに望んでも今すぐ氷に立ってトリプルアクセルを跳ぶことはできないんですね」と語ったとのことで、ザギトワが紀平を強く意識していることがうかがえるとしていた。

 『とくダネ!』がザギトワの一連のコメントを紹介したのは、“紀平vsザギトワ”の構図をより強調するためだったろう。このような構図は、女子フィギュアスケート界になくてはならないものなのだろうか。記憶に新しいものは、浅田真央vsキム・ヨナだ。



 先に頭角を現したのは浅田真央で、2004~2005年シーズンでは、ジュニアグランプリファイナル(以下、JGPファイナル)でトリプルアクセルを決めて優勝。全日本ジュニア選手権と世界ジュニア選手権でも優勝した。翌2005~2006年には、先述した通り浅田はGPファイナルで優勝、浅田のいないJGPファイナルではキム・ヨナが優勝した。両者が出場した世界ジュニア選手権ではキム・ヨナが優勝して浅田は2位。年齢制限のため2006年トリノ五輪出場資格を得られなかった浅田に、2010年バンクーバー五輪での活躍を期待する声は大きかったが、キム・ヨナの存在ゆえ「真央ちゃんのひとり勝ちではない」と見る向きも台頭。以後は毎シーズン、大会の度に“浅田vsキム・ヨナ”報道が過熱し、両者は常に比較され続けた。

 2006年トリノ五輪で荒川静香が金メダルを獲得した時も、同大会で4位だった村主章枝との確執が盛んに報じられ、荒川と村主がいかに対照的なタイプで、お互い相手が「目の上のたんこぶ」であったか騒ぎ立てられていたことが印象深い。女子フィギュアスケート選手は、何かと対立構図を用いて語られやすい。当人たちの意識はさておき、“因縁のライバル関係”が強調されていく。“選手vs選手”というよりも“女vs女”という意味合いなのかもしれない。同じフィギュアスケートでも、男子選手同士について“因縁のライバル関係”との煽り方をされるだろうか。

 無論、フィギュアスケートとて得点を競うスポーツなのだから、選手同士が比較されてしまうのはやむを得ない面もあるだろう。ただ、『とくダネ!』などのいわゆるワイドショーが女子選手同士を“ライバル”として徹底比較した報じ方をすることが、選手たちに良い影響を与えるかどうか。そのような報道が過熱すれば、選手たちの練習の妨げになるだろう。無闇に煽らず、よきライバルとして肯定的に捉えることは出来ないものだろうか。

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