タブーばかりのジャニーズ帝国「崩壊」は芸能界の健全化につながるか

wezzy / 2019年7月17日 6時35分

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 7月9日、ジャニーズ事務所の代表取締役社長・ジャニー喜多川氏が亡くなった。日本を代表する芸能界の大物の訃報に悲しみの声が多くあがり、ジャニーズアイドルのファンたちからはジャニー氏への感謝の言葉が溢れている。

 ジャニーズ事務所は、1970年代から現在にいたるまで、日本における男性アイドル市場を独占し続けてきたが、それはひとえに、タレントの才能やエンターテインメントの善し悪しを見るジャニー喜多川氏の確かな審美眼があったからこそなし得たものだ。

 その功績にはジャニーズ事務所の所属タレントも敬意をもっている。一部の所属タレントにとっては、ジャニー氏に対する尊敬の思いと、自分を育ててくれたという恩義だけが会社に籍を置き続ける理由なのではないかという見立ても多い。

 そうした背景から、6月中旬にジャニー喜多川氏が倒れたとの報が流れてから、社長の代替わりに伴う“ジャニーズ帝国の崩壊”が囁かれるようになった。

ジャニーズ事務所のメディアコントロール

 SMAPを育てた飯島三智氏が、ジャニー氏の姪であるメリー喜多川氏の“文春誌上パワハラ”を経て退社して以降、ジャニーズ事務所はメリー氏の実娘である藤島ジュリー景子氏が全面的に取り仕切るようになった。

 ジャニー氏の逝去を受けてジャニーズ事務所の新社長に就任するのも藤島ジュリー景子氏になるのではないかと言われている。

 だが、ジュリー氏が統括するジャニーズ事務所の新体制に不満を持つタレントは少なくないようだ。

 「週刊文春」(文藝春秋)2019年7月4日号では、その一人としてKinki Kidsの堂本剛をあげた。堂本剛はジャニー氏を慕っているが、一方でジュリー氏とは距離がある。そのため「ジャニーさんがいなくなったら事務所を出る」と漏らしていると報じている。

 中居正広も同様だ。「週刊文春」は、SMAP解散をめぐる話し合いで強硬派だった彼がジャニーズ事務所に残ることになった最大の理由はジャニー氏への仁義であり、ジャニー氏がいなくなってしまったことで取り沙汰されている独立問題に結論が出る可能性を示唆している。

 その他にも、TOKIOの長瀬智也、関ジャニ∞の錦戸亮など、ジャニーズ事務所から退所希望であることをかねてより噂されるタレントは多い。2020年には会社にとって最大の稼ぎ頭である嵐も活動休止になることが決まっている。

 ジャニーズ事務所の緻密なメディアコントロールは、「彼らを使うなら、ウチのタレントは出さない」「ネガティブな情報を報じるなら、付き合いを控える」という高圧的な駆け引きを巧みに行い、包囲網を張り巡らせたことで完成した。だがこれは、「ウチのタレント」の市場価値がとてつもなく高いからこそできたことである。そして言うまでもなく、これがまかり通ってしまう業界構造は不健全だ。

ジャニーズタブーを恐れるメディアはスキャンダルを報じない

 圧倒的なタレントパワーをもつアイドルを多数抱えるジャニーズ事務所に対して、メディア、特に地上波テレビは忖度し続けてきた。ジャニーズタブーはメディアを縛り、不公平な報道を当たり前のものとしてしまっている。

 その典型例といえるのが、ジャニーズのタレントによるスキャンダルをワイドショーはほとんど扱わないことだ。

 元TOKIOの山口達也のように警察沙汰になって社会部が扱う案件になれば話は変わるが、SMAP時代の稲垣吾郎が公務執行妨害と道路交通法違反で逮捕されたとき、テレビニュースは「稲垣吾郎容疑者」ではなく「稲垣吾郎メンバー」と呼称した。山下智久が書類送検されたときも、「書類送検」ではなく「捜査書類を送付」と伝えるメディアがあった。

 ジャニーズなど大手事務所と無関係なタレントのスキャンダルは大々的に報じても、Hey! Say! JUMPの中島裕翔による痴漢騒動や、NEWSの小山慶一郎と加藤シゲアキによる未成年飲酒強要騒動はまったく触れないか、触れたとしてもスポーツ新聞の切り抜きを紹介して終わりといったことが日常化している。

 これではタレント側も、どんな醜聞も事務所が揉み消してくれるという安心と慢心で増長しかねない。

ジャニーズ事務所による男性アイドル市場支配

 ジャニー氏の訃報を受けて、芸能事務所・ライジングプロダクションに所属するダンス&ボーカルグループのメンバーによるツイートが話題を呼んだ。

<ジャニー喜多川様のご冥福を心よりお祈り致します>(ISSA・DA PUMP)
<素敵なグループを数多く生み出し、僕は沢山の影響を受けました。
ジャニーさんがいらっしゃらなかった
僕は歌って踊る事を始めていなかったかも知れません。
今いるダンスボーカルグループは皆んなそうだと思います。
ジャニー喜多川様のご冥福を心よりお祈り致します>(橘慶太・w-inds.)
<突然の訃報に驚いております。
ご冥福をお祈り致します>(千葉涼平・w-inds.)
※すべて原文ママ

 彼らのツイートが注目を集めているのは、事務所の垣根を越えてジャニー氏の生前の業績に思いを馳せたメッセージを送ったから、というだけではない。彼らが複雑な思いを飲み込んで、哀悼の意を表したであろうことが伝わってくるツイートだからである。



 ジャニーズ事務所が強大な力をもったことによって起きた弊害のひとつに、ジャニーズ事務所以外のアイドル的人気を持つ男性グループへの妨害があることはまことしやかに囁かれてきた。

 なかでも特に被害を受けたとされているのが、1997年デビューのDA PUMPと、2001年デビューのw-inds.であった。

 事件が起こったのは、1997年11月14日放送回の『ミュージックステーション』(テレビ朝日系)。この日、DA PUMPとKinki Kidsが共演する予定だったのだが、生放送にKinki Kidsの姿はなかった。これは、DA PUMPの勢いに脅威を感じたジャニーズ事務所による“恫喝”のボイコットであると言われている。

 これ以降、DA PUMPは2018年まで『ミュージックステーション』に出演しておらず、w-inds.も同様に出演の機会に恵まれていない。

 現在、LDH所属のダンス&ボーカルグループや、K-POPアイドルは問題なく『ミュージックステーション』に出演できており、ジャニーズグループとも共演している。

 しかし1990年代後半から2000年代前半にかけての時期、明らかにおかしな空気が流れていたのは事実であり、現在でも、超特急、BOYS AND MEN、Da-iCE、DISH//といった非ジャニーズ系男性アイドルが『ミュージックステーション』への出演に恵まれていない。もしかしたら、これらのグループも状況の変化を受けて、『ミュージックステーション』に出演することもあるかもしれない。

帝国の崩壊は良い影響をもたらすか

 ジャニー氏はタレントへの性的虐待の問題など毀誉褒貶のあった人物ではあるが、新人発掘やプロデュースの能力は不世出のものであった。

 巷間言われているような大物所属タレントの大量離脱がなかったとしても、長期的に見れば、事務所の力の弱体化は避けられない可能性が高いだろう。

 だが、これを“帝国の崩壊”“落日”と憂うことはない。なぜなら、あまりに偏りすぎた権力を正常化し、メディアと芸能事務所のいびつなパワーバランスを是正するきっかけになり得るからだ。

 芸能界にとってもメディアにとっても、新しい時代に向けた変化のきっかけになるのかもしれない。

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