美奈子「お前らのため」は“誰のため”か 『ザ・ノンフィクション』に見る親のエゴ

wezzy / 2019年8月20日 19時5分

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 20日放送の『ザ・ノンフィクション』(フジテレビ系)は、13日の前編に続く「新・漂流家族 2019夏 ~美奈子と夫と8人の子供~後編」だった。今年2月に大きな反響を呼んだ美奈子さん一家の密着映像「新・漂流家族」の続編である。

 「ビッグダディ」こと林下清志さんとの結婚・離婚で有名になった美奈子さんは、2015年5月に元プロレスラー・佐々木義人さんと再婚。美奈子さんには6人の子どもがおり、義人さんは初婚にして6人の子持ちとなった。2017年4月には六女が、昨年11月には七女が誕生し、子どもは8人に。一家は埼玉県で4LDKの中古一戸建てで暮らす。

 今年2月の「新・漂流家族」は義人さん美奈子さん家族の現在に密着したもので、育児方針を巡っての夫婦喧嘩や義人さんの家出。義人さんと10代後半の長男・長女の確執もある中、美奈子さんは七女を出産したところまでが放送された。



 そして「新・漂流家族 2019夏」は、2月の放送終了後の佐々木家に改めて密着。美奈子さんと義人さんは相変わらず育児方針で喧嘩をしているそうだが、夫婦関係が悪いというわけではなさそうだった。義人さんが、美奈子さんや子どもたちを「全力で幸せにしたい」と奮闘していることは見て取れる。しかし問題は、義人さんの奮闘を子どもたちがどのように受け止めているということだ。

 13日放送の前編では、19歳の長男と17歳の長女がそれぞれ高校を中退したことが明らかになった。義人さんと衝突して家を飛び出し、仕事も長続きせず、その日暮らしを送る長男。美奈子さんは長男に会いに行き、義人さんについて「今までのお父さん」の中で「誰よりも子どものことは思っている」と言い、「家族みたいになれたら」「みんなで仲良くなれたらそれが一番」と理想を語った。

 「長男のため」に色々と注意してきたという義人さんだが、10カ月ぶりに家に戻った長男を「腐ってる」「逃げすぎてる」と罵倒。リスクを伴う治験モニターのバイトがしたいという長男に「そんなのやれよって言う親がいるかよ!」と怒鳴り散らしたが、義人さんなりに“父親”として、長男に接している。ただ、怒鳴られ、罵倒されるほうはどう思うか。

長男のバイト無断欠勤にまたも怒りが爆発

 20日放送の後編、再び家で暮らし始めた長男はバイトを探し始めるが、さほど焦る様子はなく、履歴書も美奈子さんに書いてもらう。「やりたいことがわからない」そうだ。一方、高校中退後にアルバイトから契約社員になった長女は仕事にも慣れ、自立を目指している。

 家に戻って2カ月後、長男はようやくバイトが決まり働き始める。が、その数週間後、寝坊がきっかけで無断欠勤し、辞めると言い出した。仕事に慣れてくると人間関係が面倒くさくなってしまうという長男の言い分を聞き、義人さんの怒りは爆発。「社会に通用しないんだよ、こんなんじゃ」と長男の胸倉を掴み、自分の目の前でバイト先に連絡するように言う。美奈子さんもまた「お前1人で生きていけるわけじゃねえんだよ、わかったか?」「迷惑かけたことくらい謝れ」と長男を怒鳴った。

 緊迫のリビング。義人さんは、“父親”として長男に熱く語る。

「お前のためを思って言ってるんだよ!」
「(関係ないという長男に)関係あるんだよ! 関係あるから考えてるんだよ!」
「俺とミナがお前のことをどれだけ話したと思ってる」
「やる気ないだけだろ? ただゲームして遊んでいたいだけだろ? 自分の好きなことだけやっていたいだけだろ?」
「(俺のことを)嫌いでいいよ。だけどお前のことを思って言ってんだよ」
「お父さんって、父親ってこういうものじゃないの?」

 元プロレスラーの体格に、大きな怒号。有無を言わせぬ迫力だ。だが長男は、言葉少なながらも反論した。美奈子さんが今まで付き合ってきた男性は、「みんな一緒だった」「言葉だけだった」「普通のお父さんだったら、言われてもしょうがないと思うよ」と。彼にとって、これまでの男たちも義人さんも、「普通のお父さん」ではない。義人さんは「実の父親だったらいいのか」と解釈していたが、美奈子さんの著書によれば長男の実父も美奈子さんに暴力を奮っていた。暴力的に相手を屈服させようとし、「わかったか!」と怒鳴るようなやり方が、「父親」のスタンダードなのだろうか?

 美奈子さんは、母親の自分や“父親”である義人さんがどれだけ長男のことを思っているのかを涙ながらに語る。

「なんでここまで熱くなって話すかわかる?」
「みんなあんたのことを考えているからだよ」
「自分のためなんかじゃないからね」
「(長男が)もっと楽しくこれから生きていけるには、どうしたらいいかって」
「お前らのことを考えて色々やってきたから、謝る気はない! 直すつもりもない」
「お前らのことばかり考えているし」

 それでも長男の態度が素っ気ないと見ると「全然伝わっていないね……」と夫婦は嘆くのであった。美奈子さんとしては、これまで自分が様々な男性と紆余曲折ありながらも、なんとか子どもたちを育ててきたことを、長男に感謝してもらうことで報われたいのかもしれない。

 しかし「子どものため」という言葉に偽りはないのだろうが、これまで親の都合で(居住地や進学先の決定など)長男長女を振り回してきたことは事実。彼らは「新しいお父さん」や、「新しいお父さん候補」にも、過去、裏切られ続けてきたわけである。その気持ちはどうなるのだろう。親が子に、「あたしだってつらいんだ、でも頑張っている、わかってよ」と押し付ける構図は、おかしいのではないだろうか。長男に自立を急き立てる以前に、まず長男の傷ついた心や存在を肯定することが先ではないか。

キャンプで家族がひとつに…?

 そして6月下旬、家族は“ひとつ”になるためにレンタカーで1泊2日のキャンプに向かう。バーベキューを囲みながら義人さんは、長男と長女に自分の気持ちを語る。

 長男には「本当に好きな道を行けばいいと思うよ。人に迷惑をかけないで生きていく、それだけ」、長女には「今一生懸命働いて、本当にすごいと思っている」「色々ごめんねって感じだよ」「心配して色々うるさく言ってきちゃったけどそれはわかってほしい」と、涙を流した。

 義人さんと美奈子さんは、長男と長女に、“自分たちがどんな子どもたちを愛し、子どもたちのことを思っている”のかをどうしてもわかってほしいようだ。

 義人さんは、美奈子さんや子どもたちに「家族みんなで力を合わせて頑張って行こうよ。お前らが笑ってやっていけることが、俺とミナが一番幸せなんだ」と呼びかけ、エンディングでは番組スタッフに「久しぶりにまとまれたって感じで」「嘘偽りなく会話できる家族にしていきたい」と明るく希望を語った。

根深い家族幻想

 義人さんと長男・長女との確執を、夫婦は“家族の課題”と捉えているようだ。義人さんの他界した母親のお墓参りに訪れた時も、美奈子さんは「今家族がぐちゃぐちゃだから、(義人さんの母親が生きていたら)なんて言ってくれたのかなって思うと……」と泣き、義人さんは「もっとちゃんとした父親にならなきゃと思って」と言う。

 美奈子さんは、義人さんとギクシャクしたままの長女にも、「気兼ねして下のリビングに来れないとかすげー寂しいじゃんか」「そういうのもなくしていけたらいいな」「自分の子どもではないけど途中からお父さんになってくれたわけじゃん」と、義人さんと「親子」「家族」として仲良くしてほしいと訴えている。

 だが、少なくとも長男・長女は、義人さんに“父親”としての振る舞いを求めているようには見えなかった。“ちゃんとした父親”がどういうものなのか、そこに共通の正解はない。ただ、威厳がどうとかではなく、人と人との関係として、暴言や暴力が介在する関係は健全とは言えないだろう。

 2月の放送で、義人さんは美奈子さんとの結婚について、美奈子さんの子どもたちに懐かれ「いいなってなっちゃった」「もうほっとけなくなっちゃった」と言い、長男にも「何で俺が美奈子と一緒になったかっていうと、お前らをもっと幸せにさせたかったから」と語っていた。七女が誕生した際も、「家族のために生きていく」「父親だと認めてもらえるよう、色々な問題を解決して頑張りたい」と決意表明した。

 しかし、義人さんのそういった決意や強い思いゆえの暴走は、子どもたちを怯えさせている側面もあるように見えた。善意から来る行動が必ずしもありがたいものかといえば、そうではない。子どもたちは、やたらと怒鳴り散らされ、さんざん自分を否定されても、母親の愛する男性を「父親だと認め」なくてはいけないのだろうか。父親とはそういうものなのだろうか?

 美奈子さんにとって義人さんは、大喧嘩してもすぐに仲直りできるパートナーであり、絶対的な味方である。だとしても子どもたちが、“母の再婚相手”である義人さんと“親子”の関係になる必要はあるのだろうか。夫婦の一連の言動は、「良い家族をつくりたい」がゆえの“自己満足”のようにも見えてしまう。彼らにとっての「良い家族」とは、何なのだろう。

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