ク・ハラの死と、指先で人を追い詰めるネットバッシング。「ソルリ法」議論の矢先に

wezzy / 2019年11月26日 17時55分

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 11月24日、「KARA」元メンバーのク・ハラがソウル市内の自宅で亡くなっているのが見つかった。日韓両国のファンに悲しみが広がっている。先月には、ク・ハラの親友でアイドルグループf(x)元メンバーのソルリも自死しており、韓国の芸能人に差し向けられるネットの誹謗中傷問題は、社会問題へと発展しつつある。

 ク・ハラは今年6月からは日本の芸能プロダクションに所属しており、19日には日本での全国ツアーの最終公演を終えたばかりだった。昨年、元交際相手との暴行問題やリベンジポルノ被害を訴えて騒動となり、今年5月にはソウル市内の自宅で自殺未遂を起こして一命を取りとめ、日本での再起を図っていた矢先のことだった。

 5月に起こったク・ハラの自殺未遂の背景について、6月17日付の「スポーツソウル日本版」は、彼女が元交際相手とのトラブルを抱えていたにもかかわらず、一部ネットの悪質な書き込みに悩まされていたことが影響していたと伝えている。

 自殺未遂騒動から復帰後、ク・ハラはSNSのストーリー機能で<これからは悪質なネットユーザーへの対応に乗り出す。善処はしない><私の精神の健康のためにも、皆さんに綺麗な言葉を使ってほしい。穢れのない目で見る人になってほしい>とコメントをしていた。

 彼女の訃報を受けて、ク・ハラ側は公式文を発表。<現在、ク・ハラさんの遺族をはじめ知人たちの心理的な衝撃と不安が大きいです。これについて、メディア関係者の方々やファンの方々からの弔問をはじめ、デマや推測報道はご遠慮くださいますよう、切にお願い申し上げます>と訴えている。

f(x)ソルリの自死とネットの誹謗中傷

 ク・ハラを悩ませていたように、韓国のネット社会では芸能人に対する誹謗中傷が絶えない。2007年に歌手のU;Nee(ユニ)、2008年に女優のチェ・ジンシルが自ら命を絶った際にも、ネットの中傷がその原因であったと当時の「中央日報」など一部メディアが報じていた。

 そして今年10月14日、アイドルグループf(x)のソルリも、ネットバッシングに悩んだ末に自死している。ソルリの親友であったク・ハラは、SNSで「あなたの分まで一生懸命生きる」と涙ながらに追悼のコメントを寄せていたばかりだったが、ソルリの死は、韓国国内に大きな衝撃を与えた。

 2004年に子役として芸能界入りしたソルリは、長い芸歴の中で異性関係やSNSの投稿内容などに対するネットの誹謗中傷に心を痛めてきた。2014年には芸能活動を一時休止しているが、この時所属事務所は次のコメントを発表している。

<ソルリが相次ぐ悪質なコメントや事実ではない噂による苦痛を訴えるなど、精神的にも肉体的にも非常に疲れており、事務所にしばらく芸能活動を休みたいという意思を伝えてきました。これを受け、弊社は慎重に議論した結果、本人の意思を尊重することはもちろん、アーティストを保護するために活動を最小限に抑え、しばらく休息を取る予定です>

 しかし活動復帰後も、誹謗中傷は止まなかった。ソルリがSNSにブラジャーをつけていない写真を投稿すると、その度に激しいネットバッシングが発生。韓国バラエティ番組『悪質リプライの夜』(JTBC2)に出演した際、ソルリは中傷のコメントの数々に対して果敢に言い返していたが、その一方で「どこにでもカメラがついているみたいに感じられて、一時期は路地裏ばかりを歩いていた」とも告白していた。

「ソルリ法」に向けて世論が高まる

 11月19日付の「ニューズウィーク日本版」によると、ソルリの死を受けて、韓国では悪質な書き込み(コメントが人を死にまで追い詰めることから「指殺人」と呼ばれる)に対する批判が高まり、社会問題化しているという。

 韓国ポータルサイトの「daum」を運営するカカオは、10月末に芸能ニュース記事のコメント欄を閉鎖。また、国内最大のポータルサイト「NAVER」も、ニュース記事内の悪質なコメントを自動で削除する機能を導入するなど、対策に乗り出している。

 また、一向に減らない悪質コメントを「法で取り締まるべき」という世論も高まっており、10月に韓国国会では情報通信サービス提供者に誹謗中傷表現を削除する義務を追加した「情報通信網利用促進及び保護に関する法律」の改正案が発議。悪質コメント関連の改正法も発議されるなど、ソルリの急逝を受けた動きがみられている。この一連の法案は「ソルリ法」と呼ばれ、多くの支持を受けているという。

韓国ネット社会におけるミソジニーとミサンドリー

 韓国のネット社会においては、2010年に設立されたネット掲示板「日刊ベストストア」(通称「イルべ」と呼ばれる、日本の5ちゃんねるのような匿名掲示板)では、女性を「キムチ女」などと呼ぶ女性嫌悪(ミソジニー)に基づいた悪辣な書き込みが多く見られている。イルべにおいて誹謗中傷の対象になるのは女性芸能人だけに限らないが、2017年にはアイドルグループ「TWICE」のミナへの殺害予告事件が発生していた。

 一方で、このネット上のミソジニーに対抗するように、2015年には男性嫌悪(ミサンドリー)の匿名掲示板「メガリア」(のちに「womad」が派生)が現れて、双方の対立は深まっている。

 こうした一部ネットの動きの影響もあって、韓国女性におけるフェミニズムへの関心が高まり、社会問題に関心の高い女性芸能人やアーティストの間では、フェミニズムに根差した発言も多く見られた。亡くなったソルリもそのひとりで、今年4月に韓国の憲法裁判所が堕胎罪を違憲であると判決を下した際にはSNSで<栄光で誇らしい日ですね! すべての女性に選択を>と喜びを投稿していた。ただし、これも激しいネットバッシングの対象となっていたことは言うまでもない。

 対岸の火事ではない。日本のネット上でも、芸能人の一挙手一投足やSNS投稿に対して心ない言葉を投げかけるネットバッシングは日常茶飯事だ。ミソジニーやミサンドリーに基づいたネットの書き込みも多く見られる。

 国を問わず、ネットユーザーは画面の先には傷つく心を持った生身の人間がいることを忘れてはならない。自らの書き込みが他人をどこまでも追い詰める可能性があることを知っていれば、投稿ボタンをクリックする前に一度立ち止まることができるだろう。

 ク・ハラ、ソルリの命が、心ないネットバッシングによって絶たれてしまったことはあまりにも悲しい。ふたりの冥福をお祈りしたい。

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