岡山県倉敷 美観地区に学ぶ 心が通った町づくりが伝えてくれるもの
Woman.excite / 2015年10月2日 12時0分
岡山県の倉敷にある美観地区、様々な映画やドラマで使われるこの町並みはどこを取ってもフォトジェニック。そして実は各地からのアクセスも良好。そんな倉敷美観地区にこの秋は行ってみませんか? 今回は町の魅力を支える人たちをご紹介します。
近くて魅力がいっぱい倉敷美観地区
岡山県倉敷市は江戸時代には幕府の天領として栄えた場所。なかでも「倉敷美観地区」は一歩足を踏み入れると美しい町並みと懐かしさが感じられます。また、和と洋が入り混じる古きよき日本の町並みとして、伝統的建造物群保存地区にも指定されています。2014年には電線の地中化工事も完了し、電線に邪魔されない町並みと空を楽しむことができるのです。
観光客は年間340万人以上! 新幹線と在来線を使って東京から3時間半、大阪から1時間半、博多から2時間少々、と本当に近い。少し早起きをしたら日帰りも可能な近さ。小旅行にもぴったりですね。
そんな倉敷美観地区には見所が満載。格子窓の歴史的な町家やなまこ壁の蔵、船流しや世界的な照明デザイナーによるライトアップ、エル・グレコの「受胎告知」やクロード・モネの「睡蓮」など世界的な西洋美術のコレクションが見られる大原美術館… など。どれもが歩いて見てまわれる距離にあります。
しかし今回は、ガイドブックには載っていない、美観地区を守る人たちのお話を伺いました。
新しいことにチャレンジしながら古きを守る人々
「美観地区はいつ来てもイベントがありますね」と言われることが多いそうです。そしてそれらの大小のイベントはそれぞれ町の有志の発案であったり、観光局が主催であったり、自治体の主催であったり、小さな町のカフェやレストランの企画であったり… 町全体で情報を発信していることに驚かされます。
そして、いま、若い世代も町の魅力作りに大きな力を発揮しています。美観地区の中には町屋をリフォームして作られたおしゃれなカフェがたくさんあります。そこで人気の自家焙煎コーヒー店を営む小林恭一さんに、美観地区との関わり方を伺いました。
「美観地区は一つの組織が町を作っているわけではなくて色々なグループがイベントを企画しているんです。活性化にはまず自分たちも楽しまないといけないと思います。
いま、自分が作りたいのは “音楽を奏でる町” です。倉敷には音楽大学もありますが、あまり披露する場所がないのが現状です。これからは若い人たちが発信する場やチャンスを作って行く事も大事だと思います。ふっと来て音楽を奏でる場があってもよいと思うんです。
自分が出来ることは若手のミュージシャンや地元のアーティスト、作家さんなどにお店の空間を提供して、より多くの人に知ってもらい楽しんでもらうことだと思います」
またもう一軒所有している店舗でも、小林さんの発案で地元の大学生たちが週末のカフェ経営にチャレンジをしています。
「経営からコーヒーの基本的な入れ方などの指導はしましたけど、今ではメニュー作りからお店のコンセプトも学生たちに任せています。何かやりたいという気持ちは形にしていけるようにしてあげたいんです。
自分がやりたいのはどちらかと言うと昔ながらの喫茶店。コーヒーを楽しむ場所ではあるけれど、人とのつながりが持てる場所、ハブのようにみんなのアイディアの拠点になればいいなって思います」
魅力の源は暮らす人々にあり
この町の魅力は観光用に作りこまれているのではなく、そこで暮らす人々の “本物の生活の息遣いを感じることができる” ことでもあります。
実は美観地区の中にはコンビニエンスストアがありません。立ててはいけないと言う条例は無いそうなのですが、住民が美観地区の中には必要がないと感じるからなのだそうです。
「美観地区にはコンビニや夜型の飲食店はないのは、人がまだちゃんと住んで生活をしているから。もしここが繁華街のようになったら、生活している人たちや年寄りが町から出て行ってしまう。今まだこれだけの建物が並んで観光客の人たちにも一日楽しんで過ごしてもらえる場所はそうない、だからこそ暮らしているもの同士のコミュニケーションは大事。この町を人が住まない映画村のようにしてはいけんとおもうんよ」
と話してくれたのは、美観地区の中で奥様と二人で国内外の木工おもちゃなどを取り扱うおもちゃ屋「伊勢屋」の店主であり、「倉敷伝建地区をまもり育る会」の事務局を務める角谷義浩さん。
角谷さんがメンバーとして力を入れているもののひとつに「倉敷町家トラスト」があります。
倉敷町家トラスト代表理事・中村泰典さんによると、空き家になってしまった建物をただ朽ちさせてしまうのはもったいない。『まちに灯をともす』を合言葉に、美観地区周辺にすむ住民など、市民有志によって発足したNPO法人で、美観地区の町家を現代的で機能的に再生させて、訪れた人たちが快適に暮らすように滞在できる施設を作っています。
そうすることによって、地域の生活文化が継承されると同時に美しい景観を保つことも可能になりました。
「丁寧な暮らし」を町屋で学ぶ
また倉敷町屋トラストが中心になって去年から毎年10月に行っているイベント「備中 no 町家 de クラス」はなんと期間中に50近くのプログラムを美観地区を中心に備中の各地の町屋などで体験することができます。
中村さんにイベントを始めたきっかけを聞いたところ「ハードだけでは魅力はちゃんと伝わらないからソフトの面でも伝えて行こうと思いました。特別なものはないんやけど、当たり前の町屋生活の文化、これをわしらの世代、50代、60代がもうすでに知らない、そうすると次の世代に引き継げない。自分が知らないことは次には繋げられない。例えば黒竹とモス地から “はたき” を作る講座もありますが、もうハタキは使わない人が多いでしょう? でも、はたきを知ることで丁寧な掃除を知ることが出来るんです。
特別な伝統文化ではない何気ないことを知ることって大事なんだと思います。“丁寧な暮らし”をもう少しやってみるのも良いんじゃないかと思います。」
ただ形だけの保存ではなく、自分たちの生活もしっかりと大切にしているからこそ美観地区は “本物の魅力” に溢れています。倉敷美観地区で生活する方々のお話から今回強く感じました。
ガイドブックには載っていない暮らす人たちの思いや “丁寧な暮らし” を感じに行ってみませんか?
取材協力/
koba coffee 倉敷川店
住所:岡山県倉敷市本町5-27
TEL:086-425-0050
時間:10:00~18:00
定休日:火曜(祝日の場合は営業)
http://www.koba-coffee.com/
伊勢屋
住所:岡山県倉敷市本町4-5
TEL: 086-426-1383
時間:9:00~19:00
定休日:月曜
http://kuralica.net/iseya/
倉敷町屋トラスト
住所:岡山県倉敷市東町1-21
http://kurashiki-machiya-trust.jp/
イベント「備中 no 町家 de クラス」
開催期間:10月23日~11月3日
http://machiya-class.net/events.html
(山本ミッシェール)
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