衣服も子どもの発達に影響を及ぼしている!?
Woman.excite / 2015年10月1日 13時0分
人間は、ほかの哺乳動物ほどの体表面の毛がないため衣服を身につけていますが、肌に直接触れるという意味では、衣服は人間にとって一番近くに存在する外的環境だと言えます。そんな衣服と子どもの発達との関係について見ていきましょう。
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一番身近な外的環境「衣服」の身体への影響
普段衣服を着ていてもあまり意識することはないかもしれませんが、皮膚が衣服から受ける触覚は、思っている以上に光やにおいといったものと同じく自律神経や中枢神経、体の免疫機能に影響を与えています。
幼稚園に通う児童に、柔らかい肌触りのものとかたい肌触りのものにわけて木綿の肌着を着せた実験があります。この実験では、かたい肌着を着せられた児童はそれがストレスとなり、尿の中のコルチゾールという物質が増加しました。コルチゾールは成長ホルモンの働きを抑える物質です。
一方、柔らかい肌着を着せられた児童では、人間の免疫システムにおいて病原体を攻撃してくれる免疫グロブリンの増加が見られました。体が病気とたたかう能力が上がったということができます。
かための肌着を身につけたとしても、人間の皮膚感覚は10分ほどもすると麻痺してしまい、不快に感じることもなくなります。しかし、同じ実験を大人に対して行ったところ、たとえ不快さを感じなくなったとしても体温をコントロールする機能や中枢神経系の機能が鈍化するといった結果が見られたといいます。
こどもの体温の状態を調べることができるマネキンを使った実験では、幼い子どもはまだ体の体温調節機能が未熟であるため、気温が氷点下付近や40℃付近になるような極端な気温条件下にある場合、大人以上に注意を払う必要があることがわかっています。
このように、大人以上に子どもにとっては衣服の性能は重要であることが分かります。しかし、一方で販売されている子供服に関する快適さや機能性の科学的な研究はあまりなされていないのが現状です。
服選びは自己表現の手段
人間にとって衣服は肉体的な影響を与えるだけのものではありません。社会的な規範であったり自分を表現するための手段というような意味合いも含まれるため、衣服は人間の心理にも大きな影響を与えます。
特に子どもころは、“自分”というものを形成している時期ですので、社会的な規範や自分を表現するということに影響を与える衣服の側面は大人よりも重要である、といえるかもしれません。
衣服の選択にはその人の内面であったり心的な特徴が反映されます。そういう観点から見ると、子どもにとっても自分の着たい服を選ぶというのは自分自身を表現する手段であり、さらには自立のためのはじめの一歩であると言えます。
そのため、仮に親の目から見て趣味ではなかったり、多少規範から外れたような服の選び方をしたとしても、それを頭から否定してしまうのはよくありません。そういうことが続けば子どもの自尊心が傷つき、子どもの自己肯定感に深刻なダメージが及びかねないからです。
最近、小さな子どものブランド志向や流行の追求が話題になっていますが、こうした考え方が出てくるのは自然な心理だとする専門家もいます。
しかし、自分の考え方や価値観がきちんとできあがっていない段階においては、雑誌に掲載されているモデルと自分の体型を比べてしまってコンプレックスを持ってしまうといったようなマイナスの影響を受ける可能性もあります。そうなってしまうと、衣服を選ぶ際にも、自分らしさの表現という意味合いではなくそうしたコンプレックスを隠すための手段になってしまいかねません。
子どもが自分自身を好きだと思えることはかなり重要です。そのためには親や周囲の人たちがその子どもが自分自身をありのままに表現できるように、子どもの考えをきちんと認めてあげることが大事になってきます。子どもが自分を好きになることができれば、衣服を選ぶことそのものを楽しむことができるようになり、自分を表現する手段として衣服を利用することも上手になっていきます。
服を着ることは子どもの発達を促す
子どもたちがお昼寝をする時に、自分でパジャマに着替えるという取り組みを行っている保育所が増えています。
子どもたちは床に座り、上のパジャマの首を自分の膝の方に向けて床に置きます。そのまま手で首のあたりを持って背中にはおるようにすると、手を通した後に上着の表裏が違ったり上下逆さまに着てしまうことがなく上手に着ることができます。
うまくはおることはできたものの、ボタンをはめる段になってちょっと困ってしまう子もいますが、そこは保育士さんたちが上手にアドバイスをすることでなんとか自分でやり遂げます。子どもたちはパジャマが自分一人できちんと着られたといって得意そうです。
パジャマをはじめ、服の脱ぎ着というのは子どもの発達にとってものすごくプラスになります。手や指の複雑な動きを訓練するにはうってつけだからです。また自分一人でできた、という達成感は子どもたちをより意欲的にさせることができます。子どもたちが夜寝るときにも、いらいらしないで子どもにやらせてあげることには大きな意味があります。
30年ほど前、NHKで「パジャマでおじゃま」という番組が始まり、子どもたちが悩みながらパジャマを着る姿が人気を呼びました。この番組を企画したプロデューサーは、子どもにパジャマを着させることが子どもにとって知育効果があるということに気づいたといいます。
大人から見ればパジャマを着るというとなんでもないことのように思えますが、例えばパジャマのボタンを間違えずにすべてはめるという行動ではボタンとボタンの穴がそれぞれ対応するという概念が確立されていなければなりませんし、ボタンをはめる順番を理解している必要があるだけでなく、平たいパジャマを体にまとうには立体としての認知力が必要になる、といった具合です。
動物と対比し、人間が特有に行う行動としては、言葉や道具を使うといったものがありますが、この衣服を身につけるという行動もそうした本質的な行動の1つです。子どもがなかなか上手に服を着ることができないといらだつかもしれませんが、そこは自分の子どもが知的な面で成長している過程なのだといったように見方を変えて、楽しんで観察してみてはどうでしょうか。
子どもはいつ頃から自分で服を選ぶのか
子どもが自分の考えで服を選び始める時期についての調査があります。それによると、小学校の高学年になってくると子どもは自分の存在を客観視できるようになってきますが、それと共に自分の着る服を選び出しはじめるということが分かっています。
子どもがシチュエーションごとにどんな服を着るのか、その服を誰が選んでいるかを調べたところ、結婚式や葬式、入学式といったような公の場面では母親という結果が多く、より日常的な、例えば通学する時や休日に外出する時などは自分で選ぶという結果が多くなっています。
ある場面でどんな服を身につければいいかという社会的な規範については、子どもは親を通じて身につけていっています。女の子は母親の服装の好みをモデルに、男の子は父親の言動をモデルにしてそうした規範を身につけていっているようです。
(子育ての達人)
(子育ての達人)
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