嫌な記憶を良い記憶へ 未来へつなぐ心地良い香り
Woman.excite / 2015年12月9日 12時0分
今年もあとわずかとなってきました。今年、あなたがもっとも楽しかった記憶、もっとも嫌だった記憶は何でしょうか。
© satyrenko
記憶は、脳の海馬というところで記憶に刻む作業を行いますが、1つの細胞だけがその仕事を担うのではなくいくつかの細胞が活動し、連動してその記憶を刻みこみます。それを記憶の「エングラム(痕跡)」といいます。
苦しい記憶は楽しい記憶で塗り替えられる?!
例えば楽しい思いをした部屋へ行くと、その楽しさを再体験することができますが、それはその当時と同じ脳内のエングラムが活動しているからです。反対に嫌な思いをした場所へ行くだけで、その時の身体反応や不快な感覚を味わうこともありますね。その記憶を塗り替えることはできるのでしょうか?
© pathdoc
こんな興味深い研究があります。マウスをある部屋に入れて足に電気刺激を与えます。そうするとマウスはその部屋に入っただけで竦んだり、震えたりします。これはその部屋は怖いところだ、という連結が脳内で起こっているからです。
逆にその部屋にかわいいメスのマウスがいたとします。オスのマウスはIt’s a small worldを歌って楽しくてしかたありません(筆者の例えです。実際には歌っていませんが)。その部屋はオスのマウスにとっては楽しい部屋、というエングラムが組まれます。
そこで今度は、電気刺激により、怖い思いを体験したマウスの脳内の細胞群~エングラムに光をあてて活動をさせながら、メスのマウスを部屋に入れて遊ばせました。すると、恐怖で反応した同じエングラムでありながら、その部屋は楽しいという記憶が作られました。なんと、苦しい記憶が楽しい記憶に塗り替えられる可能性があるではありませんか。
記憶を塗り替えるには、記憶に連結した「感情」が大事
記憶にはその記憶に連動した情動、感情があります。記憶を脳に刻むのは海馬ですが、不快か、心地よいかは海馬の下流である扁桃体という部位が担当しています。その扁桃体にも嫌な出来事や楽しい出来事のエングラムがありますが、その扁桃体のエングラムに先ほどのような塗り替え作業を試みても、塗り替えることはできません。嫌な記憶は嫌なまま、楽しい記憶は楽しいままというのです。これはどういうことでしょうか。
© nyul
こんなことがあった、あんなことをした、という記憶は自分の情動や感情に強くリンクして脳内に保存してありますが、その時に感じた情緒面はかなり根強く心に残っています。逆にいえば、その時に体験する出来事に対してどのように感じ、思うか、がとても大事であるということではないでしょうか。電気ショックで嫌な思いをしたけれど、その部屋で楽しい出来事を体験して、心から楽しくできたという連携が大切なのです。記憶に連結した感情を切り離して、感情を変えようとしても変えられないということのようです。
香りの力を借りて、前向きな「快」のエングラムを作る
私は嗅覚が専門なので、すぐに香りと記憶に結びつけ考えてしまいますが、香りによって思い出す記憶は、良い思い出も嫌な思い出もあります。
でもなぜか、香りで思い出す記憶は心地よい出来事が多いのが特徴です。そしてその良い記憶をまた再現したい、その場所へ言ってみたい、と思うことも人間の心の不思議です。
© Mila Supynska
例えば、金木犀は人の心に残る香りの1つで、それに綴られるエピソードも美しい思い出が多いですが、なぜかそんな人が皆自分の庭に金木犀を植えたがります。夏に香取線香に火を付けるのも、なぜか懐かしい子供の頃を思い出すから、と言います。過去の美しい記憶が現在、そして未来に結びつく瞬間です。その香りで、また楽しく、新しい記憶が塗り替えられていく。世代を超えて、その香りが子供たちの楽しい記憶に刷り込まれていく。
© coldwaterman
日々、いろいろな出来事に遭遇するけれど、そのエピソードをなるべく嫌だ、不快だと捉えるエングラムを作らず、前向きに楽しいことへ向かうエングラムへと変えられたら、と思いませんか。香りにはそのお手伝いをする力があります。心地よい香り、素敵な香りを漂わせて、前向きに快のエングラムへと結びつけていきましょう。
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