叱られながらやる勉強はなぜ身につかないのか(「幸せ力」の育て方 Vol.6)
Woman.excite / 2015年12月2日 4時15分
どうしたら勉強を楽しいと思えるようになるの?
「勉強しなさい」「どうしてこんな問題が解けないの」と子どもを叱っていませんか。
叱られると、子どもは勉強嫌いになるだけでなく、脳のパフォーマンスまで落ちてしまいます。
子どもが本来持っている脳のパワーを最大限に引き出すためには、どうしたらいいのでしょうか。
子どもの発達心理学が専門の内田伸子先生にお話を伺いました。
© Sergey Nivens - Fotolia.com
学んだことがすぐ身につく子どもと、なかなか覚えることができない子どもの違い
それは、脳のしくみに秘密があると内田先生は言います。
「脳の中に海馬(かいば)という部分があります。
海馬は、体験の記憶を記憶貯蔵庫に転送する宅配便屋です」
海馬が働くと、たくさんのものが記憶されるようになります。
「海馬のとなりに、扁桃体(へんとうたい)という部分があります。
扁桃体は、好き嫌いや快不快感情を判断します」
扁桃体が快適な状態だと、海馬がよく働くので、そのときの記憶はどんどん記憶貯蔵庫に入っていきます。
「楽しさや心地よさを感じているときは、お子さんが自分の世界についての認識をつくり上げたり、知識を覚えたりしやすい状態です。
反対に、叱られながら勉強をしていると、扁桃体が不快感でいっぱいになってしまいます。
すると、海馬は働きが鈍くなり、記憶力が低下します」
脳をフルに動かすためには、扁桃体が勉強を快感だと思ってくれるよう、楽しみながら取り組む必要があるのですね。
どうしたら勉強を楽しいと思えるようになるのか
「自分から知りたい、学びたいと思う意欲や好奇心を育てることが大切です。
どんなことでも、自分からやろうとしないと、なかなか身につきません。
自分からやりたいと思ったことは、習得が速いのです」
自分で興味を持ってやってみようとしたり、考えて何かをつくったりする能力は、大人から教えられて身につくものではありません。
子ども自身の好奇心を、大人が邪魔せず、見守ってあげることが大切なようです。
また、子どもにたくさんの体験をさせ、それが学校の勉強とつながる、だから勉強って楽しいよね、という気づきを促してあげられるといいですね。
そして、子どもが勉強に取り組んでいる姿勢そのものを褒めてあげましょう。
夜型生活は、脳の働きを悪くする!
脳がしっかり働くためには、睡眠も大切です。
睡眠時間が短いと脳や発育に悪影響があることはもちろんですが、もう1つ気をつけなければいけないのが「眠りと目覚めのリズム」です。
「生後4ヵ月までに眠りと目覚めのリズムがきちんと作られないと、その習慣が小学校の高学年になっても直らず、昼間はボーっとしている子どもになってしまいます」と内田先生は言います。
それでは、学校の勉強が頭に入ってきませんよね。
「また、眠りと目覚めのリズムがバラバラだと、脳がうまく働かず、発達が遅くなるおそれがあります。その上、情緒的にとても不安定になりやすくなります」
赤ちゃんの頃から早寝早起き、離乳食が始まったら朝ごはんを食べる習慣を身につけさせ、子どもの生活パターンとリズムを守ってあげてください。
(佐々木月子)
今回取材に協力してくださったのは
内田 伸子先生
十文字学園女子大学特任教授・お茶の水女子大学名誉教授・学術博士。
専門は発達心理学、認知心理学、保育学。国立教育政策研究所「幼児の論理的思考の発達調査プロジェクト会議」(主査)、最高裁「裁判員制度の有識者会議」(委員)、文化庁国語審議会委員なども務めるほか、NHK Eテレの「おかあさんといっしょ」の番組開発やコメンテーター、ベネッセの子どもチャレンジの監修、しまじろうパペットの開発、創造力知育玩具「エポンテ」(シャチハタ)の開発なども担当。著書は、『発達心理学―ことばの獲得と教育』(岩波書店)、『よくわかる乳幼児心理学』(ミネルヴァ書房)、『子育てに「もう遅い」はありません』(冨山房インターナショナル)など多数。
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