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パパも頑張っています! 男性歌人がうたう「育児と子育て」の短歌

Woman.excite / 2016年3月22日 4時15分

パパも頑張っています! 男性歌人がうたう「育児と子育て」の短歌

遊ぶ父と娘のシルエット


© hakase420 - Fotolia.com


前回は、子育てまっさかりの女性歌人がうたった子育て短歌をご紹介しました。今回は、パパになった男性歌人にうよる子育て短歌です。

赤ちゃんが産まれる前からお腹の中で育てている女性にとって、つわりに苦しみ、陣痛に耐えて、ようやく対面したわが子は自分の分身のような存在。ところが男親にとっては、わが子の誕生はうれしい反面、戸惑うことも多いようです。
現代歌壇で活躍中の男性歌人たちは、父親になることや育児、子育てをどのように考えているのでしょうか?

父になる違和感?

「陰暦の八月みたいにずれている 二十五歳の父であること」 吉川宏志『夜光』

吉川氏は父親になった不思議さを、太陰太陽暦にたとえました。
陰暦とは、日本では明治5年まで使われていた暦(旧暦)です。月の満ち欠けを基準に「月」を決め、太陽の動きをもとにして「年」を数えます。
よって毎月1日はかならず新月になり、15日頃が満月になります。そのため現在の暦よりも1ヶ月ほど遅れます。だから、陰暦の8月を新暦に直すと秋になってしまいます。
慣れ親しんでいる暦なら、真夏の8月に鈴虫が鳴き、すすきが生えているのは、なかなか理解しがたい感覚ですよね。

「乳足らぬ 夜に鮎太が泣きはじむ 歯のない歯茎を我は見ており」 同上

まだ、歯の生えていない新生児の口のなかはまっくら闇。そこにピンクの歯茎があるのは、なまなましく見えるものです。泣き出した息子をながめながら、作者は「歯がない歯茎」を発見した自分自身を客観視している、そんな歌です。ママよりもパパは、わが子を客観的に観察しているのかもしれませんね。
しかし、歌集はクールな作品ばかりではありません。

「頭(ず)の中で石の割れたる感じして 子の頬を撲つ飯食わぬ子を」同上

「遊びたい 寝るのは嫌と子は泣けり こんなにわれは眠りたいのに」 同『海雨』

子育てを歌にして詠むことで、人間くさい本心が見え隠れして、作品世界に奥行きが広がっています。


父と母とで異なる、子が育つ楽しさと戸惑い

「子が乳を飲まなくなりし寂しさと いうを聞けどもついにわからず」 松村正直『やさしい鮫』

「子とふたり ならんで用を足すときの 何だろうこのかなしみのごときは」同上

子が育つ楽しさと戸惑いにも、男女で温度差があるようです。
しかし、卒乳の寂しさも、子と2人並んで用を足すときの哀しみに似た感覚も、ある意味では同じ気持ちだと言えるでしょう。
赤ちゃんが、すこしずつ小さな人間に成長していく過程は、かすかな鈍痛をともなうものかもしれません。

「出勤の前のひととき 仰向けの二十一本の子の歯を磨く」 同『午前3時を過ぎて』

だからこそ、毎日が新しい感情の連続で、父も母も子の時間もまぶしく輝いているのではないでしょうか。


お父さんも頑張っています!
働きざかりの男性が、育児や子育てを頑張る姿は増えてきました。

「聞けよ 父は何でもなんでも出来るのだ 母乳をくれてやる以外なら」 本多稜『こどもたんか』

「はっきりと言える言葉はまずママでその次がイヤっ他はまだなし」 同上

「抱き上げてむすめの涙乾くまで夕べの町をあるいていたり」 同上

本多稜の作品『こどもたんか』は父親の立場で、全編を子育ての作品だけで構成した歌集です。
これは、1,000年をこえる短歌史上初の挑戦です。

本多氏は『こどもたんか』の「あとがき」に、子育ての楽しさをこのように語っています。

「子育ては、発見の毎日。人生の復習でもある。子供の目を通して見る世界はなんと輝きに満ちていることか。その輝きを、ちいさな欠片でもいいから形のあるものにとどめておきたい」

父親歌人としてのこうした作品が増えて、男性の育児参加が、もっと当たり前のことになってほしいですよね。パパは、授乳のほかは、何だってできるのですから!

(有朋さやか<フォークラス>)

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