2度の産休を経て、10年間勤めた会社を退社するきっかけは、小1の壁だった【ママが転職するとき。 第2回】
Woman.excite / 2017年5月31日 7時0分
![2度の産休を経て、10年間勤めた会社を退社するきっかけは、小1の壁だった【ママが転職するとき。 第2回】](https://media.image.infoseek.co.jp/isnews/photos/womanexcite/womanexcite_E1494417881117_0-small.jpg)
仕事をするも辞めるも、今までは自分の思いひとつで自由に選択できていたはず。けれど、子どもを持つと環境を替えたいと感じていても、いろいろな絡み合う事情により、一歩を踏み出せる人は多くはないようです。
今、ママにとって大きなハードルとなっている「転職」。さまざまなケースのママたちの転職ストーリーを連載で紹介していきます。
■酒井桃子さんの「転職するとき」
アヤキッチン合同会社「もぐもぐ子ども調理室」企画運営担当。10年間勤めた会社を2016年退社し、代表の潮田彩さんが出張型の子ども向け料理教室として活動していたもぐもぐ子ども調理室に参画し、新たにキッチンスタジオという拠点を設けてレギュラーレッスン形式での料理教室にシフトさせた。約1年間かけ新しく事業化した「もぐもぐ子ども調理室」は2017年4月にオープンしたばかり。 http://kodomo-chouri.com/
【酒井桃子さんの出産後の転職歴】
▼1社目 クリーク・アンド・リバー社 正社員
2010年9月第1子出産 → 2011年4月復帰
2013年3月第2子出産 → 2014年4月復帰
▼退職後、フリーランスに
約1年をかけてアヤキッチンの合同会社化と、キッチンスタジオオープンに向けて奔走
▼アヤキッチン合同会社を立ち上げ「もぐもぐ子ども調理室」事業化
2017年4月にアヤキッチン合同会社を立ち上げ、小金井市にキッチンスタジオを構え、定期的に通える子ども向け料理教室をスタートさせた
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部内初の産休育休、時短勤務取得は、子どもと後に続く人のため
30歳を過ぎた頃、正社員登用で長く勤められて納得できる仕事をしたいと思うようになり、友人の紹介で、クリエイティブに特化した人材派遣や制作請負を行っているクリーク・アンド・リバー社へ転職しました。
当初は大手広告代理店のアウトソーシング事業を行っている部門に所属し、部門役員のもと、部門係数や工数管理など、社内メンバーの環境づくりを主に行っていました。役員が優秀な方だったので仕事範囲がどんどん広がり、サポートする私も必然的に多忙になっていきました。
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2009年に結婚しましたが、それまでと変わらず夜遅くまで残って仕事をするような毎日でした。そんな中で妊娠を知り、2010年9月に長女を出産しました。
勤めていた会社には産休育休制度はありましたが、私が働く部署は若いスタッフが多く、実際に出産して制度を取得した人が今までにほぼいませんでした。そこで妊娠や出産について自身でもいろいろな情報を集めながら、同時に会社の制度についても問い合わせたりして、バタバタと出産準備を進めていきました。
9月に出産するために7月から産休に入り、翌年3月まで育休を取得しました。部署で初めての産休育休取得者となったので、これから子どもを持つことになるだろう後輩のためにも、子どもを持っても頼りになると言われるような仕事をしたかったのですが、ただでさえ時短勤務の形態でちゃんと仕事ができるだろうかと、復帰前はすごくプレッシャーを感じたことを覚えています。
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実際に復帰してみると、想像以上に子どもは熱を出したり具合が悪くなったりするので、仕事中に鳴る携帯電話にビクビクすることもありました。
保育園からの電話になかなか出られなかったり、出ても仕事を誰かに任せて帰らなくてはいけない心苦しさから、上司に報告するまでに時間がかかったりすることもしばしばありました。
保育園の父母会長を引き受けたことが、「転職」のきっかけに
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仕事復帰をして2年後の2013年には2回目の産休を取得し、3月に長男を出産しました。翌年4月、二人の子どもは同じ保育園に通えることができたので、時短勤務で仕事を再開し、子育てと仕事の毎日は繰り返されていきました。
そんなとき、子どもたちが通う保育園のママ友に、2015年度の父母会長を勧められ、安請け合いで引き受けたことが、今回の転職へと繋がっていったのです。
私たちの暮らす市では、市、NPO団体、保育園など公立施設の三者で実行する、アートに親しむことを目的としたイベントを行う取り組みがあるのですが、それが2015年度は子どもたちの通う保育園で実施することが決まっていたんです。ただ単に父母会長を受けるのは躊躇があったのですが、そのイベントがあることでおもしろそうだなと思い、なんとなく引き受けてみました。
父母会というものは、保護者同士の間に分かりやすい上下、利害関係がなく、そこに集まる人たちはみんな純然たるボランティアの精神でやってくれています。そんな人たちに、いかに気持ち良く参加し、協力してもらうには……と、普段の仕事とは少し違うところの気遣いや進め方を学んだ思いがしています。
結果、イベントは成功をおさめ、年度の役員会自体も滞りなく終了し、役員をやってくれた保護者の方たちは「楽しかった」「やってよかった」と言ってくれました。私自身もボランティアで私の大事な時間を使うのだから、子どものためではなく、まずは自分が楽しまなきゃと思ってやっていました。
そんな役員の仲間の一人に、今回一緒に事業をすることになった潮田(※編集部注:代表兼講師を務める潮田彩さん)がいたんです。
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代表兼、料理の講師を務める潮田彩さん
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「もぐもぐ子ども調理室」のスタジオキッチンにて
もともと潮田は出張型の子どもの料理教室をやっていて、事業を拡大したいという思いを持っていました。そんなときにちょうど父母会の集まりの後に二人で話をしていて、「酒井さんのような人に私の仕事の営業的なサポートをしてもらえたらいいのにな~」と伝えられて。
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そのときは「いつか一緒に仕事をしたいですね」と終わったのですが、家に帰り一人で考えてみると、それはとてもありがたい話でぜひ行きたいと思うようになってきて。
それで翌日夫に「やってもいい?」と相談すると「いいよ!」と言われ、すぐに潮田に「一緒にやろう」と連絡したんです。潮田はたった1日でこんな展開になってびっくりしていました(笑)。
辞める理由のなかった会社を辞めたのは「やりたいことを見つけた」から
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転職への動機は、実は潮田から誘いを受ける少し前からありました。それは長女の小学校入学が現実的になってきたころからです。
昨年夫の仕事のポジションが変わり、週に1~2日は出張をするようになりました。今でさえふたりの子どもを迎えに行って帰宅するのはなんだかんだ19時になります。でも小学校へ入ると、今の仕事内容や勤務形態では19時に保育園から学童へと迎えに行くようになることがどうしても難しいと思うようになりました。
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私自身、勤続10年になりますが、その半分が母であり時短勤務で働く期間となりました。仕事を続けるうえで上を目指したい思いもありましたが、今の仕事からキャリアアップすると、次はマネージャー職になります。
そうなれば下にメンバーを抱え、より密に時間を過ごすことが想像されますし、私自身もメンバーと一緒にいたい!と思うだろうと予測できたので、時短勤務でマネージャーになっても自分の理想とするマネジメントができないのではないかと思っていました。そんな時の潮田の誘いだったので「これだ!」と思い、乗りました。
そうと決まればすぐに会社に報告をしました。上司には「辞めてほしくないけど、すっごく楽しそうだね」と言ってもらいました。10年も勤めた会社をそんな理由で辞めるの? と思う人もいたかもしれませんが、時間に制限があるからとかではなく、「ほかにやりたいこと見つけちゃった。じゃあね、お先!」って楽しそうに辞めていったらカッコいいかなと思って(笑)
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1年経った今、合同会社化してスタジオキッチンも作り、定期開催のクラスも走り出しました。今は始まったばかりですが、一人でも多くの子どもたちに定期的に通ってもらい、自分自身の成長を感じてほしいです。
そしてその成長をお父さん、お母さんにもシェアして、たくさんの自信をつけていってほしいと思っています。「もぐもぐ子ども調理室」はどの企画に参加しても「とにかく楽しい!」がモットーです。
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「なんかあそこ、いつも楽しそうなことしている!」って大人にも子どもにも思われるような、そんな場にしたいと思っています。
Q:転職をして家庭環境は変わりましたか?
A:朝の登園でゆっくり歩いてあげたり、医者にこまめに通ったり自由に使える時間は少しできたと思います。でもスタジオができるまでは自宅が仕事場だったので、子どもとの時間にもPCに向かったりすることも多く、子どものとの時間が単純に増えたかといえば、そうではないかもしれません。
でも、子どもたちが撮影のモデルになったり、ワークショップに参加したり、親が働く姿を間近で見られることが、この先いい経験に繋がるといいな、と思っています。
Q:仕事をする上で気にかけていることはありますか?
A:以前の上司に言われた「今の会社の業務だけでなく、どこへ行っても重宝される人間になれるよう、自分のマーケットバリューを常に考えながら仕事をしなさい」ということを意識しています。
自分が市場に出たらどのくらいの価値があるのかを考えるというもので、この転職でも「アヤキッチンには営業、広報が必要で、且つ運営、実行部隊も足りていない。もし私が参加したらそのすべてに応えられるかも」と思えたから、すぐに飛び込めたんだと思います。
Q:これから転職する人へのアドバイスをお願いします!
A:「ここが嫌だからこっちへ行きたい」ではなく、「こっちがいいから行く!」というように、無理矢理でもいいからポジティブな理由に変換したほうがいいと思います。
あとは「子どものため」が理由の転職もオススメしません。本当のことをいうと小1の壁とかいろいろ事情があるんだけど、そうではなく自分のための転職、としたほうが、後々子どものためにも自分のためにも気持ちがいいと思います。
Q:具体的に転職をしたい人にオススメすることはありますか?
A:自分には今何ができて、この先1年後、何年か後に何をしたいとか、頭の中でだけでも自分自身のレジュメを作ってみることをおすすめします。年に1度くらいやっておくと頭の中を整頓するのに良さそうです。そうすることで転職したいと思ったときにすぐに行動に移せると思います。
皆が躊躇する父母会長を引き受けてみたことが、すべてにつながったんだと言った酒井さん。何よりも自分が楽しみたいという雰囲気と自信は、周りの人に連鎖し影響していくのだと思いました。
この転職に対しても「先見の明があると思うんです」と言い切ったその自信が、結果的に理想とする仲間や場所を引き寄せているようでした。
(赤荻瑞穂)
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