なぜ赤ちゃんはスプーンを落とすのか? 赤ちゃんの驚きの学び能力とは 「いのちのはじまり」【前編】
Woman.excite / 2017年6月23日 6時0分
『いのちのはじまり:子育てが未来をつくる』
“育児に正解はない”とは、よくいわれることですが、そういわれても何が正解かを求めてしまうのが育児。「ここは叱るべきか」などと、自分の育児法に日々頭を悩ませている子育て世代の親御さんはけっこう多いのでは?
そういった中で、今回ご紹介するドキュメンタリー映画『いのちのはじまり:子育てが未来をつくる』は、良い意味で、子育てに関するひとつの指針を与えてくれる1作といっていいかもしれません。
■世界中の育児に奮闘する家庭の悩みと喜びとは
ブラジルのエステラ・ヘネル監督がてがけた本作は、ブラジル、アメリカ、フランス、イタリア、インド、中国など世界9ヶ国の、現在育児に奮闘中の家庭を訪問。
育休を経ての職場復帰時期について頭を悩ます母親や、世間からの目を気にしながら子育てをするレズビアンカップルなど、人種も社会的立場もさまざまな人々からそれぞれの育児の悩みや喜びを聞き出すとともに、ユニセフ本部でECD(乳幼児期の子どもの発達)世界キャンペーンを統括するピア・ブリットらいわば幼児教育のエキスパートたちへのインタビューを収録した内容になっています。
すべての言葉や提示内容をもちろんうのみにすることはできません。それでも子育て中の身としては、子育て方法についていろいろなことに気づかせてくれるエピソードが満載。子を持つ親としての見地に立ったとき、知ってて損はないと思える情報がたくさんあります。
■赤ちゃんは、“最高の科学者”
とりわけ、目からうろこともいうべきエピソードが子どもの頭脳メカニズムについて。おそらく日本では、「生まれたばかりの赤ちゃんの頭の中は白紙でまっさらな状態。そこからひとつづついろいろなことを学んでいく」と、認識されているのではないでしょうか?
実際、哲学者や心理学者、精神学者も長らくそういう認識できたそうです。でも、それはもう古い考え方。過去30年の研究から、現在では赤ちゃんは“この世界で最も学ぶ能力が高い存在”と判明し、“最高の科学者”と呼べるぐらいの能力を持っているそう。
赤ちゃんは理性に欠け、自己中心的で物事に集中することができないと思われてきました。でもじつはまったく逆。集中することしかできない存在だったのです。赤ちゃんは集中して身の回りで起きることに敏速に反応し、それらで得た情報を吸収・活用してこの世界を理解しているそうです。
たとえば小さなお子さんをお持ちのなら、何度言い聞かせても、子どもがスプーンを床に落とし続けるといった経験をしたことがあるのではないでしょうか? これも赤ちゃんが学んでいる証拠。赤ちゃん自身が「スプーンを落としたらどういうことになるのか?」と推測や仮設を立てて、予測どおりの反応になるのか、それとも違った反応があるのか? ひとつひとつ確認して学んでいるそうです。
こんなことを赤ちゃんが考えているとは正直驚き。でも、この見地に立つと、赤ちゃんもひとりの人格があることがよくわかって、子育てのストレスが少し和らぐのではないでしょうか。
■生活環境によって子どもの学習能力が異なってくる
この赤ちゃんの驚異の学習能力につながる話では、少しショッキングなデータも映画では示されています。社会階級別に子どもの聞く言葉を調査した結果、一般的な家庭の子どもより生活保護家庭の子どものほうが4歳時点で、聞いていた言葉の数が3000万語も少なかったそうです。
この言葉の数の差は思っているよりも重要とのこと。親が話しかけるたびに、乳幼児の脳は刺激されるそうで、親がいろいろと話すことで赤ちゃんは自分が家族の一員という帰属意識を深め、たとえば祖母や祖父の昔話などからより広い世界を知っていくそうです。
そう考えるとふだんからのコミュニケーションや触れあいはすごく大事。働きすぎといわれる日本人としてはちょっと考えさせられる事例です。“仕事が忙しくて子どもの顔をまともにみていない”なんていうお父さんにはちょっと耳の痛い話かもしれません。
■探求心や創造力が養われなくなってしまう原因は?
もうひとつ日本の親として耳が痛い話が示されています。それは、子どもにあまりモノを与えすぎないこと。じつは、子どもの自主性と創造性を伸ばす秘訣(ひけつ)は、自由を与え、モノは何も与えないことなのだとか。
身の回りにあるもので遊ばせれば、子どもは勝手に創造力を働かせて自分が望むものを作り始める。たとえば段ボールでおもちゃを作ってみたりする。そのような場を与えることが大切。なんでも与えてしまうと、むしろほしいものはすぐに手に入ると思ってしまって、探求心や創造力が養われなくなってしまう可能性があるそうです。
また、自分だけでいろいろと想像を巡らせる自由な場と自由を与えてあげることも重要とのこと。子どもは自由を与えられることで、自主性を学ぶ。それが自立していくことにつながっていくことが示されています。
もちろん、これらがすべて正解というわけではありません。でも、育児が一辺倒ではない、さまざまな子どもとの向き合い方があることを教えてくれます。この映画で語られていることを育児のひとつ参考にしてみてはいかがでしょう?
『いのちのはじまり:子育てが未来をつくる』
2017年6月24日(土)アップリンク渋谷、ユジク阿佐ヶ谷、7月1日(土)よりCINEMA Chupki TABATA、横浜シネマリン他にて全国順次公開
公式サイト:http://www.uplink.co.jp/hajimari/
公開記念トークショー(6月24日~7月1日)開催
(水上賢治)
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