『コウノドリ』原作者が語る綾野剛、きっかけは戦場のような出産の光景
Woman.excite / 2017年10月9日 13時0分
『コウノドリ』コミックの楽しみのひとつが、鈴ノ木先生の息子さんによる挿絵です。ときにクスッと笑えるものもあり、テーマによっては重くなることもある心をふわりと軽くしてくれます
青年誌『モーニング』(講談社)で連載中の漫画『コウノドリ』。産科医の鴻鳥(こうのとり)サクラを主人公に、周産期医療の現実と、医者や家族の心の動きが丁寧に描かれています。
「無脳症」や「夫のDV」など、ときには読み進めるのがつらくなるテーマを扱いながらも読者の支持は高く、青年誌での連載にも関わらず、お母さんたちにも多く読まれている作品です。6月にはコミック第18巻が発売され、2015年にはTBSでドラマ化もされました。10月にはドラマの続編が決定していることからも『コウノドリ』の反響の多さがうかがえます。
『コウノドリ』を描き続けるうえで大切にしていることや伝えたいことは何か。原作者の鈴ノ木ユウ先生に聞きました。
■ドラマ化が決まってもよろこびすぎない理由
―『コウノドリ』ドラマ化の続編が決まりました。お話を聞いたときの心境はいかがでしたか。
「ああ、そうなんだ」という感じで、よろこびすぎずに目の前の締め切りに集中するようにしていました。「やったー!」と両手をあげてよろこんだのに「やっぱり映像化の話はナシになりました」と言われたとき、上げた手を下げるのは恥ずかしいじゃないですか(笑)。
―ご自身の作品が実写化されたことで、何か変化はあったのでしょうか。
鴻鳥先生を演じる綾野剛さんには、少なからず影響を受けています。鴻鳥先生は個性が強いキャラクターというわけではないので、漫画的には描きにくいんです。綾野さんに形にしてもらったことで、描きやすくなった部分はあると思います。
■命の誕生や出会い…『コウノドリ』執筆に至る経緯
「何かあったときには、夫婦間で話し合うことが大事。無関心になるのがいちばんよくないですよね」と鈴ノ木先生。言葉の端々から奥さまへの想いが感じられ、自分の気持ちを言葉で伝えることの大切さを教えてもらいました
―息子さんの誕生が『コウノドリ』を描きはじめるきっかけのようですね。
息子の出産に立ち会ったことは大きかったです。とはいっても、がんばっていたのは妻で、僕は助産師さんに無理やり分娩室に連れて行かれてすみっこでプルプルしていただけでしたが…(笑)。
僕は息子のことがとにかくかわいいと思う一方で、子どもをもつ親として出産に関して何も知らなかった。入口となったのは、「なんで逆子だと帝王切開になるんだろう」という疑問。親としてそれくらいは知っておくべきだろうという気持ちが「描きたい!」につながったんでしょうね。
―作品のテーマを探している時期でもあったのでしょうか。
そうですね。僕はフォークシンガーということもあり、『コウノドリ』を描く前は音楽ものの漫画を短期連載していました。雑誌の編集者から「人気ランキングで11位に入ったら本格的に連載してもいいよ」と言われたものの、結果は12位。「(連載してもしなくても)どちらでもいい」と言われたので、それなら連載はやめて新しいテーマを探すことにしました。
―りんくう総合医療センター産婦人科部長の荻田和秀先生との出会いもありました。
息子を取りあげてくれたのが荻田先生でした。妻が先生からピアニストの名刺をもらったと聞き、「ピアニストで、産婦人科で、“ゴールドフィンガー”だ!」と先生をモデルに漫画を描こうと思いました。
妻の幼なじみが産婦人科医だったことも関係しています。その友人は、病院からの呼び出しがあるから、銭湯に入るときもポケベルを持っているそうです。産婦人科医ならではともいえるエピソードを聞いて、「漫画で描いたらおもしろいんじゃないか」と妻と話しました。
―実際に、産婦人科に取材にも行かれているそうですね。
りんくう総合医療センターには、1年に2回くらいの頻度で取材に行き、荻田先生が大阪から上京されるときには食事をすることもあります。取材のときは、産科や麻酔科、救命救急科を1日で回らないといけない。その場の空気や雰囲気をできるだけ体に入れようと思っているので、終わるとすごく疲れますね。
―実際に分娩も見学されたとか。
帝王切開や自然分娩など、たくさんの出産を見学して、出産は一人ひとり違うものだと感じました。じっと痛みに耐える人もいれば、痛さに耐え切れず叫ぶ人もいる。改めて、女性はすごいと思いました。僕は低血糖になってしまいましたけど(笑)。
■思い描いていたのとは違った! 息子誕生エピソード
『コウノドリ』原作者の鈴ノ木ユウ先生は、一児の父。「もう9歳だから産毛が濃くなってきているんですけど、それでもかわいい(笑)」と息子さんへの愛情をにこやかに話していました
―『コウノドリ』からは、分娩時の音や声が聞こえているのかと錯覚するほどの臨場感が伝わってきます。
取材を通して、さまざまな出産を見てきたからかもしれません。状況的に難しいこともあり緊急帝王切開は見学したことがありませんが、先生の話を聞いて写真を見せてもらい、自分でイメージをふくらませて描いています。
あとは、やはり妻の出産のときの印象が強く残っています。妻はどちらかというと難産で、息子が生まれるまでに丸2日かかりました。最後には先生が妻に馬乗りになっていたくらい。これまで自分が思い描いていた出産とはちがい、まさに戦場のような光景。僕は何もできずに遠くから眺めていたら、突然「バチン!」という音が聞こえて、息子が生まれました。
―赤ちゃんを最初に見たときは、どう思われましたか?
「汚ねえな」でした(笑)。赤ちゃんってもっときれいなものかと思っていたけど、実際には血液や白い膜がついているんですよね。そのうえ、「甲府のガッツ石松」といわれる僕の父と似ていたので、「ああ、こっちか…。ごめんね」と思ったくらいです(笑)。
気持ちが変化があらわれたのは、初めて抱っこしたとき。「ちゃんと育てられるのか」「仕事しなきゃ」という気持ちと同時に「生きているんだ」という実感もわき起こり、体が震えました。分娩時のことや子どもが生まれたときのことは、作品を描くうえですごく大事にしています。
―息子さんに話すこともあるのでしょうか。
「おまえが生まれた日は雨が降っていて〜」と、息子の誕生日には毎年話すようにしています。息子は9歳なので、さすがに「またかよ」という反応はされるものの、うれしそうな顔もしているのでまんざらでもないのかなと(笑)。
―毎年、家族で共有できるのはいいですね。
大事なことなので、忘れてはいけないと思っています。妻は必死だったから覚えていない部分もあるけど、僕は鮮明に覚えている。出産が夜中に終わって、妻がやっと食事ができるとなったときのおかずがチャーハンだったことや、僕が帰りにカツ丼を食べに行ったことまで話します。家族で話をしたあとケーキを食べるのが誕生日の過ごし方ですね。
―最後に「ウーマンエキサイト」の読者にメッセージをお願いします。
作品の中には、鈴ノ木先生ご本人かも(?)と思われるキャラクターが登場します。今回のインタビューをヒントに探してみては?
『コウノドリ』には、扱うテーマによっては読み進めるのがつらくなることもあります。誰もが読める漫画とは思っていないので、「ぜひ読んでください!」とは言えません。ただ、読んだあとに「家族がいてよかった」と感じてもらえたらうれしいですね。
『コウノドリ』には、妻の妊娠・出産に無関心な“ダメ旦那”も何度か登場します。自身も「ダメな旦那だった」という鈴ノ木先生ですが、青年誌で描くことで「自分はこうならないようにしよう」と思ってもらえたらいいと話していました。
命の尊さを再確認するとともに、子どもをより愛おしく感じられる。『コウノドリ』を読んだあとにそう思えるのは、息子の誕生時の記憶をいまも心に刻み続ける鈴ノ木先生の想いを受け取っているからなのかもしれません。
コウノドリ
https://goo.gl/1KYwzx
(畑菜穂子)
外部リンク
この記事に関連するニュース
-
韓国初「自然妊娠」で五つ子誕生
KOREA WAVE / 2024年9月23日 14時0分
-
「アラフォー5度目の出産」宮崎麗果、第5子出産を報告! 「決して楽ではなかった」「本当に嬉しい」
オールアバウト / 2024年9月17日 11時55分
-
帝王切開に保険は適用できる?どのくらいお金はかかりますか?
ファイナンシャルフィールド / 2024年9月10日 5時45分
-
突然の卵巣のう腫宣告、そして帝王切開の傷が開いているですと…? マンガ100人の更年期#99
OTONA SALONE / 2024年9月1日 11時30分
-
【漫画】妊娠後期、逆子を解消する「外回転術」とは?「物理的にやるんですね」「先生の仕事人っぷりが凄い」
まいどなニュース / 2024年8月28日 19時20分
ランキング
-
1どんな時にスマホを買い替える? 3位スペック不足を感じた時、2位故障した時…1位は?
まいどなニュース / 2024年9月23日 16時0分
-
2「高くても低くてもダメ」血糖値の正しい整え方 人格破綻まで招きかねない「低血糖」の恐怖
東洋経済オンライン / 2024年9月23日 17時0分
-
3痛くて腕が上がらない…【医師監修】五十肩という思い込みには要注意!痛みの原因と病状セルフチェック
ハルメク365 / 2024年9月23日 11時50分
-
4226kmを走破「世界一超人の91歳」その驚く肉体 20年間食べ続けてきた「食事メニュー」を公開
東洋経済オンライン / 2024年9月23日 10時0分
-
5コーヒーよりもはるかに効果的…88歳医師が「長生きしたいならこれを飲むべき」と強く勧める"飲み物"
プレジデントオンライン / 2024年9月23日 15時15分
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
エラーが発生しました
ページを再読み込みして
ください