『かいけつゾロリ』原作者が語るゾロリの最終回!? ゾロリの“ママへの思い”に涙! 【昔の子ども、今の子ども。】
Woman.excite / 2017年11月29日 11時0分
『映画かいけつゾロリ ZZ(ダブルゼット)のひみつ』原ゆたか先生インタビュー
いたずらの王者を目指すゾロリと、その子分・イシシとノシシの旅を描いた『かいけつゾロリ』シリーズは、今年で30周年を迎えます。
今回は、原作者である原ゆたか先生にインタビュー。子どもたちに圧倒的な人気を誇る児童書「かいけつゾロリ」シリーズに込めた思いや、11月25日公開の『映画かいけつゾロリ ZZ(ダブルゼット)のひみつ』の制作秘話まで、たっぷりと語っていただきました。
「かいけつゾロリ」シリーズ原作者 原ゆたか先生。本シリーズの中に、自らキャラクターとしても出演!
■本嫌いの子に“ページをめくる楽しさ”を伝えたい
© 2017 原ゆたか/ポプラ社,映画かいけつゾロリ製作委員会
――まずは『かいけつゾロリ』が誕生した経緯について教えてください。
もともとは、みづしま志穂さん原作の「ほうれんそうマン」シリーズに出てきた敵役なんです。はじめは10冊くらい続けば御の字かなと思っていたので、こんなに続くなら子どもでも描けるような簡単なキャラクターにしておけば良かったなぁって思っているんだけどね(笑)。
私は絵描きで、もともと児童書には挿絵を描いていました。でも絵を使ってページをめくる楽しさをもっと演出できるんじゃないかと思って。そこで、「レイアウトも全部やらせてほしい」とお願いしていたら、最終的には出版社から「じゃあ描いてごらん」と言われて、すべて自分で描くことになったんです。でもそこで、人に文句を言うだけだったら、いかに簡単だったか気付くわけ(笑)。
――やってみて、初めて難しさを知るというやつですね(笑)
そうなんですよ。だから白紙の原稿用紙をドサッと渡されたときは、すごく困っちゃって。でも私は映画が好きだったので、いろんな作品を組み合わせればいい本ができるかもと思ったんです。
だからそのときは、本が嫌いな子がどんどんとページをめくりたくなって「気がついたら一冊読みあげていた!」という本を作りたいという気持ちでした。
『かいけつゾロリのかいていたんけん』と『かいけつゾロリのちていたんけん』表紙カバー。イラストがつながるように制作されている
大人って、自分が小さい頃に読んでいたおもしろい本のことは忘れてしまって、いま、「子どもに読んで欲しい本」を読ませようとするものなんですよね。でも、大人が読ませたがるような小難しい本って、子どもの頃、私は全然おもしろくなかった。
子どもは親父ギャグやおならが大好きだし、僕はそんな時期を経て、大人になるものだと思うんです。だから、子どもたちにもそこは通らせてあげてほしい。そしてそれを使って本を読む楽しさを教えたいなと思うんです。
――ゾロリをとおして、伝えたいメッセージなどはありますか?
はじめは、何か意図をもってゾロリを描き始めたわけではなくて、ただおもしろい本を描きたかっただけ。でも、ママに頼ってばかりいたゾロリが、ママが死んじゃったことで自立せざるを得なくなる。しかも子分のイシシとノシシがくっついたので、しっかりした人にならなきゃいけなくなっちゃったんですよね。
けれども、社会ってそういうことなのかなって。挫折もあるしイヤなこともいっぱいある。でもそれを乗り越えて前に進まなくちゃいけない。いま思えば、ゾロリはそういうお話なんだと思います。
『映画 かいけつゾロリ ZZ(ダブルゼット)のひみつ』に登場する怪獣のラフ画
――では、『かいけつゾロリ』が大切にしていることはありますか?
戦わない。人を傷つけない。ハラハラドキドキさせることかな。学校の図書室にも並ぶものだから、殺伐としていないものを描かなきゃと。敵を懲らしめることはするけど、いかなる理由があっても相手をやっつけるということはしたくないと思っています。
■転機はテレビアニメ化! キャラクターの変化に衝撃
――シリーズには、原先生が登場するのも特徴ですよね!
最近は顔を出さない作家さんが増えたけど、昔は描く人が漫画に出てくるのが普通だったんだよね。赤塚不二夫さんとか手塚治虫さんとか、昭和の作家さんはみんな自分が描く漫画に出ていたので、読む人もすごく身近に感じていた。
サイン会とかで子どもたちは、僕のことを「原ゆたか」というキャラクターだと思っているから、着ぐるみに会うような感覚で会いに来てくれる(笑)。でも、5歳くらいの子と対等におしゃべりができるのも楽しいし、良かったかなと思っています。
――先生のことをキャラクターだと思っている感覚は、すごくわかる気がします(笑)。では、「かいけつゾロリ」シリーズにとっての転換期などはありますか?
テレビアニメ化するとき(2004年)に、「イシシとノシシの違いは?」とかいろいろと細かく聞かれて、このタイミングで設定を決めたことが結構ありますね。
イシシとノシシは、その前に一度映画で描かれているんだけど、言葉もなまっているし、ヒゲも生えていてもっとおじさんみたいだったの(笑)。でも、アニメ化する際に急激にかわいくなって、そこからファンも増えました。私は意外とアバウトに描いてきたところがあったので、初期の頃は自分でもイシシとノシシを間違えて、指摘の手紙をもらったりしていたんですよ。
――それはすごい裏話ですね!
うん(笑)。ゾロリは、本当は格好良くありたい人なのに、失敗してガクッとなることもある。そこで、山寺宏一さんならカッコイイ声からおもしろい声まで出せるから…ということでお願いしたらOKをいただけて。それからは本を描くときにも、頭にはゾロリの声が浮かぶようになって、いろんなことがまとまってきたように思います。
■結婚? 放浪続行?…ゾロリ一行の行く末とは
© 2017 原ゆたか/ポプラ社,映画かいけつゾロリ製作委員会
――では、今後の「かいけつゾロリ」について教えてください。
まだいろいろ詰めなきゃいけない部分はたくさんあるんだよね。ゾロリは妖怪学校の先生と仲が良いから、本当は妖怪なのかな? とか、私もゾロリの謎について埋めていっているような感じです。
最終的に、ゾロリは結婚してお城を築いて終わりにしたほうがいいのか、それとも、まだどこかで旅を続けていると想像させる形にしたほうがいいのか…まだまだ悩み中です。でも、読みたいと言ってもらえるうちは、描き続けたいと思っていますよ。
『かいけつゾロリのちていたんけん』原 ゆたか (著, イラスト)/ポプラ社
――先生、そうしたら永遠に描き続けないといけないですよ!(笑)。では、30周年というタイミングで、過去にさかのぼらせようと思った理由を教えてください。
今回の映画では、テレビアニメのときにもお願いしていた脚本家の吉田玲子さんが、「過去にさかのぼってみたい」と提案してくれたんです。あまり世界観が離れてしまってはいけないので、私からは「全員を傷つけないで、ハラハラドキドキがあって、そこそこ幸せな終わり方にしてほしい」ということだけお願いしました。
じつは、コスチュームに込められた“ママの思い”がわかるシーンは、本当は本のラストで使おうと思っていたんです。でも、今回それを使ってもらうことにしました。ゾロリとゾロンド・ロン(ゾロリの父親かもしれない人物)の、ゾロリーヌ(ゾロリの母親)への愛が交錯するというおもしろさもあって、すばらしい作品に仕上げていただいたと思っています。
■「自立を教えて」原ゆたか先生から子どもたち&パパ・ママへ
© 2017 原ゆたか/ポプラ社,映画かいけつゾロリ製作委員会
――映画ならではの魅力はどこにありますか?
やっぱりアクションだよね。本は動かないから限界があるけど、藤森雅也監督は飛行機やメカが得意な方ということもあって映像に迫力もありますし、ぜひ観ていただけたらうれしいです。
ゾロリのやさしさもよく描けていたし、百田(夏菜子)さんの声にもキュンキュンきちゃうし…ときどき登場する「原ゆたか」だけが問題だな(笑)。
――いえいえ、ばっちり好演でしたよ! それでは最後に、「かいけつゾロリ」が大好きな子どもたち、パパ・ママへのメッセージをお願いします。
子どもたちには、とにかく人生を楽しんでほしいし、幸せになってほしい。そのためにも、本当に好きなことを見つけてほしいなと思います。好きなことを突き詰めていくと、大変なこともあるけれど、楽しみもあるからね。そこにたどり着くまでがんばってほしいです。
親御さんには、子どもたちに自立の仕方を教えてあげてほしいです。なんでも手をかけてしまうと、一人で社会に出るときに立ち向かえない。子どもは案外、やらせてみると、できちゃうものなんだよね。
ゾロリも悪さをするけど、ついつい人の良さが見え隠れしてしまうのは、やさしかったママの育て方があってこそ。子どもに手を貸さないのは勇気がいるけれど、自分たちがいなくなっても飛び立てるように、少し目をつぶってあげることも大切じゃないかなと思います。
■『映画かいけつゾロリ ZZ(ダブルゼット)のひみつ』
11月25日(土)シネ・リーブル池袋、全国イオンシネマほかロードショー
原作:原ゆたか(『かいけつゾロリ』シリーズ/ポプラ社刊)
監督:藤森雅也
脚本:吉田玲子
特別出演:百田夏菜子(ももいろクローバーZ)
声の出演:山寺宏一 愛河里花子 くまいもとこ 他
公式HP:http://www.zorori-movie.jp/
(nakamura omame)
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