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のぶみ氏「あたし、おかあさんだから」にモヤモヤするのはどうして? 原因はここにあった…

Woman.excite / 2018年2月7日 12時30分

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©kazoka303030- stock.adobe.com


どうしてこの1曲に、ママたちはモヤモヤするのでしょうか…。

動画配信サービスのHuluで始まった親子向け番組「だい! だい! だいすけおにいさん!!」で、絵本作家のぶみ氏の作詞による「あたし、おかあさんだから」という歌が流れ、その歌詞が「母親の犠牲を美化している」などとしてTwitterなどネットで炎上しています。

のぶみ氏が「『あたしおかあさんだから』発表」と歌のリリースを告知したTweetには、200件以上の批判のリプライが寄せられました。テレビの地上波放送で流れたわけでもないのに、「あたし、おかあさんだから」はどうしてこんなに炎上してしまったのでしょうか?

原因のひとつは、歌を歌う番組MCの横山だいすけさんがNHK Eテレ「おかあさんといっしょ」11代目うたのおにいさんであり、9年間にわたって乳幼児を育てるママたちに寄り添ってきたメジャーな存在だから。

もうひとつの原因は、作詞をしたのぶみ氏がママたちの間で物議を醸すのは今回が初めてではなく、以前から彼のベストセラー絵本「ママがおばけになっちゃった!」などの内容に違和感を抱くママが少なからずいたからでしょう。この歌詞が拡散された時「また、あの人?」と即座に反発する動きになったと思われます。

■歌の中の“おかあさん”はワンオペ育児で大変すぎる!?

「あたし、おかあさんだから」の歌詞は、ひとりのママの物語として綴られているようです。内容を追ってみると、そのストーリーは…

以前はひとり暮らしをし、ネイルしてヒールはいて働いていた女性。若い頃はやせていて、好きなことばっかりして好きなものを買っていた。自分のことばかり考えていた。

(おそらく結婚・出産し)お母さんになって爪を切ってパートに出るようになった。

毎朝5時に起きて、料理は苦手だけれど頑張って作り、好きなおかずは子どもにあげ、カレーも子ども用の甘いカレーしか作らない。

子どもの好きな新幹線の名前を覚え、テレビも子ども向けのものばかり見ている。夜中に遊びに行ったり、ライブに行ったりすることはやめた。自分用の服も買わなくなった。

でも、それらをすべてやめても、おかあさんになってよかった。あなた(子ども)のことばっかり考えている。


という流れ。まとめると、「母親になってあきらめたことがいっぱいあるし、育児はしんどいけれど、子を持った喜びには代えられない」というメッセージになっているようです。

■「実際の育児はそんなに我慢ばかりではない」という違和感

のぶみ氏がFacebookなどで「お母さんだから我慢していることは何ですか?」と呼びかけ、実際のママたちの声を集めて歌詞を書いたというだけあって、ひとつひとつのエピソードはそれなりにリアルです。

例えば、子育て中のママが友だちから「子どもできたら、大変なことって何?」と質問された場合、「唐揚げ作ると、ほとんど子どもに食べられちゃう」、「辛党なのにカレー辛口にできないんだよね」、「ライブには2年ぐらい行ってない~」などと(笑)付きで答えそうなことばかり。

ひとつひとつはちょっとした愚痴ていどなのに、それを歌詞の中で“ひとりのお母さん”に全部背負わせ、「お母さんだから頑張るの」と言わせてしまったとたん、歌詞から漂いだす悲壮感たるや! 

ママたちがこの歌詞に抱いた違和感は、第一に「私たちの子育ては、ここまで大変じゃない。なにもかも我慢しているわけではない」ということではないでしょうか。実際に、Huluの番組でこの歌が流れた時は、番組で募集したらしき母子のハッピーな写真が映し出されていました。

歌詞ではネイルをやめた“おかあさん”ですが、写真にはきれいにネイルしているママも出てきましたし、歌詞では自分の服を買えない“おかあさん”ですが、写真にはおしゃれな母子コーデをしているママもいました。どうも実際のママたちと歌の中の“おかあさん”にギャップがあるのです。

多くの場合、子育てってこんなに悲惨なものじゃないはず。私たちママを“かわいそうな”存在にしないでほしいという思いが、反発を呼んだのかもしれません。
 
 

■ママが死ぬという衝撃的な幼児用絵本にも批判があった

“かわいそうなお母さん”は、のぶみ氏の絵本にも登場します。ベストセラーにもなった「ママがおばけになっちゃった!」では、おっちょこちょいゆえに交通事故で死んでしまったママが、ひとり息子のかんたろうの前に幽霊として現われ、「(あの世に)行かないで」と息子に大泣きされて自分も泣いてしまいます。

それ自体は泣ける話ではあるのですが、版元の講談社は対象年齢を「3歳から」としており、同社のサイトには「冒頭でママが死ぬ、衝撃のベストセラー」というキャッチコピーも載っています。それについて、親子の愛着形成が大切な幼児期にこの本を読むことで、子どもたちに「お母さんが死んでしまう、いなくなってしまう」というこれ以上ないほどの大きな不安を与えていいのか? という指摘もされてきました。

ママと子どもがボロボロと大泣きして「さよならしたくない」と言い合うこの絵本。のぶみ氏のほかの作品でも「ママのスマホになりたい」、「おこらせるくん」など母子の関係を描いたものでは、最後におかあさんが涙を流して、子どもも泣くというウェットな展開が多いように感じます。

母と子だけの完全なる愛の世界。これらの絵本には一度も「お父さん(父親)」が描かれず、まるで、お父さんがいないかのようなことになっています。

■「あたし、おかあさんだから」の世界にはお父さんがいない…


©Paylessimages- stock.adobe.com


「あたし、おかあさんだから」の歌詞にも、お父さんはいっさい出てきません。この父親の不在が、ママたちに違和感を抱かせるもうひとつの理由になっているのではないでしょうか。

歌詞に登場するお母さんは、毎朝5時に起きて家事に育児にパートにと追われているのですが、その間、お父さんは何をしているのでしょうか? お父さんは、休日ぐらい“子鉄”の息子に付き合って新幹線を見に行き、その間、お母さんを好きなライブに行かせてあげればいいのでは?  お母さんにパート代で自分の服を買ったらいいよと言うことだってできるはずです。

Twitterでこの歌の内容に反発する「#あたしおかあさんだけど」というハッシュタグが生まれ、ママたちが次々に「私はお母さんだけど、おしゃれや趣味を楽しんでいるよ」と投稿しました。そこから、さらに育児しない夫のことを愚痴るハッシュタグ「#おまえおとうさんなのに」へと広がっていったのは象徴的です。

お母さんにとって、育児はこの歌で歌われるような苦行ではない。けれど、育児の負担がお母さんばかりにのしかかっている現状は不公平だと思っているし、もっとお父さんが育児を分担するようになってほしい。そんなふうに考えているママたちの願いを、この歌は「あたし、おかあさんだから」つまり「あなたはお母さんなんだから我慢しなさい」と封じ込めているようにも聞こえるのです。

のぶみ氏はTwitterで「これはママおつかれさまの応援歌」とも説明しましたが(現在そのツイートは削除)、「不公平な状況を我慢している“おかあさん”ってすごい!」と男性の立場から言われても、馬鹿にされているようにしか思えないのかもしれません。
 
 
(小田慶子)

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