きょうだいの性格「正反対に感じるのはどうして?」【イクメン脳研究者が教える“脳から考える子育て” 第5回】
Woman.excite / 2018年6月6日 19時0分
ⓒ Annchan-stock.adobe.com
2人目、3人目…と下にきょうだいができると、遊んだり食事をしたり、ふとした瞬間に「上の子と違うかも?」と思うことはありませんか? 上の子は真面目、下の子は自由奔放など、幼児や小学生になる頃には、きょうだいの性格の差もはっきり。
なぜ、同じ親から生まれ、同じ屋根の下で暮らしているのに、きょうだいで性格はこうも異なるのでしょうか? きょうだいと一緒に育つ子どもの脳内では、どんなことが起こっているのでしょうか?
脳研究者でご自身も子育て真っ最中の池谷裕二先生にお話をうかがいました。
池谷裕二先生 プロフィール
研究者、薬学博士。東京大学・薬学部教授。専門は神経科学および薬理学で、脳の成長や老化について研究している。『海馬』(新潮文庫)、『進化しすぎた脳』(講談社ブルーバックス)など著書多数。近著に『パパは脳研究者』(クレヨンハウス)がある。プライベートでは二児の父。
■きょうだいの性格「先天的な違い」はごくわずか!?
―― 同じ環境で過ごしているのに「きょうだいで性格が違う」と感じるママパパは多いようです。それはどうしてなのでしょうか? 生まれ順も影響していますか?
池谷裕二先生(以下、池谷先生): 生まれ順による心理的な影響は確かにあるでしょうね。でも、科学の目から見ると、きょうだいの性格にほとんど違いはないはずです。同じ親から生まれたきょうだいであれば、遺伝子も半分は同じですから。
―― そうなんですか!? わかるような、わからないような…。
池谷先生:きょうだいといえども、半分の遺伝子は同じですが、もう半分は違うわけです。きょうだいで片方だけが身長が高いなど、身体的な特徴と同じように、性格がまるで違うケースも中にはあります。
でも、周りにいるきょうだいのお子さんたちを思い浮かべてみてください。顔や体つきなどの外見が似ていることのほうが多いですよね? それなのに、どうして性格だけがまったく異なるといえるのでしょう? 性格を作り出している脳も体の一部ですから、本来はそっくりのはずなのです。二卵性の双子にも同じことがいえます。
■脳が「子どもの違い」をあえて見いだそうとしている
ⓒapple713-stock.adobe.com
―― なるほど。では多くの親が「うちの子たちは本当に性格が違うのよね」と感じてしまうのはどうしてなのでしょうか?
池谷先生:それは、脳の元来の目的が「差分検出器」だからだと思います。「差分検出器」とは共通しているものではなく、違いを見いだすこと。脳にはそういうクセがあるのです。
極端ですが、カエルを例にあげてみましょう。カエルには止まっているものはよく見えていません。動くものが小さければ虫だと思って舌を出し、大きければヘビだと思って逃げます。ヒトも視界の片隅で動くもの、すなわち違いがあれば、それを見ようとしますよね。「違いを見いだす」という意味では、人もカエルも同じなんです(笑)。
―― なんと、カエルと同じとは…! 衝撃が走りました。
池谷先生:さらにいうと、脳は違いを細分化しようとするんですね。ライオンから見れば、ヒトは全部同じですよね。でも、人間はそうは思わない。日本に住む私たちからすればアメリカ人と日本人は違うし、韓国人と日本人も外見は異なります。もっといってしまえば、隣の子とわが子は違いますよね。
そうやって細かいところにどんどん目がいくように脳はできているので、きょうだいの違いばかりに目が向くのです。本来の違いはごく一部であって、共通していることのほうが多いはずなのに。
■「性格が正反対」と感じるのは子どもをよく見ている証拠
―― 違いばかりに目がいくようにできているとは驚きました!
池谷先生:きょうだいの性格を正反対に感じるというのは、親としてお子さんたちをよく見ている証拠ともいえます。毎日頑張って子育てしているからこそ、見えてくるものですね。
ただ、気をつけてほしいのは、違いを見つけることが「アラ探し」になってしまうこと。例えば、出かけるときに上の子はさっさと用意するのに、下の子はマイペースで時間がかかるなど、きょうだいを見比べると、人はどうしても悪いほうに目がいきがちです。
「弟はできているのにどうしてあなたはできないの?」などと、きょうだい間での差別に結びつけないよう、その点だけは注意してほしいなと思います。
(コバヤシカヨ)
外部リンク
この記事に関連するニュース
-
のべ 1 万組以上の親子を診察した発達専門小児科医による「発達特性に悩んだらはじめに読む本」 9 月 27 日発売
PR TIMES / 2024年9月18日 15時45分
-
“一人っ子=わがまま”じゃない 強み生かせる親子関係の鍵は?
毎日新聞 / 2024年9月18日 5時1分
-
「同じ学校、同じ塾」でなぜ成績に差がつくのか 「頭脳のOS」をアップデートする"魔法の言葉"
東洋経済オンライン / 2024年9月5日 9時30分
-
実は、経験と学習がないとできない!? 赤ちゃんが「微笑む」ワケ【脳科学者が解説】
オールアバウト / 2024年8月29日 20時45分
-
「学校に行きたくない!」と言われたら…? 親にしてほしい最初の一歩【知っておきたい「不登校」のこと Vol.1】
Woman.excite / 2024年8月29日 15時0分
ランキング
-
1「SHOGUN」エミー賞受賞を喜ぶ人と抵抗ある人 日本人がアメリカで最多受賞した本当の理由
東洋経済オンライン / 2024年9月20日 13時0分
-
2「高齢者に炭水化物は毒」は大ウソである…長寿国では「パン、そば、うどん」をもりもり食べている事実
プレジデントオンライン / 2024年9月20日 15時15分
-
3朝食前に歯を磨かない人は「糞便の10倍の細菌」を飲み込んでいる…免疫細胞をヨボヨボにする歯周病菌の怖さ
プレジデントオンライン / 2024年9月20日 14時15分
-
4「ぜんたーい、止まれ!」その入場行進なんのため? 元体育主任が語る、運動会で廃止すべきこと3つ
オールアバウト / 2024年9月20日 20時35分
-
5「来来亭のラーメン」を16年以上毎日食べ続ける男性を直撃。体重の増減や健康診断の結果も教えてもらった
日刊SPA! / 2024年9月19日 15時54分
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
エラーが発生しました
ページを再読み込みして
ください