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もし溺れたら「浮いて待て」。次に親がすることは?【水の事故から子どもを守る! 第3回】

Woman.excite / 2018年7月25日 7時0分

もし溺れたら「浮いて待て」。次に親がすることは?【水の事故から子どもを守る! 第3回】


© たけたけ - stock.adobe.com


夏に毎年発生する水辺で子どもたちが亡くなる事故。万が一溺れたり、沈んだりしてしまっても、対処法を知っていればその生還率は大きく上がると言われています。もしも溺れてしまったら、何をすれば命が守れるのでしょうか。

水の事故から子どもたちを守る予防策について伺った前回に引き続き、今回は水の事故に遭ったときの対処法について、水難学会会長で長岡技術科学大学・大学院の斎藤秀俊教授に話を聞きました。

■「浮いて待て」で生還率が高まる


「浮いて待て」講習会(提供:水難学会)


――もしも溺れてしまったときは、どうすればいいのでしょうか。

何よりも「浮いて待て」というキーワードが重要です。「浮いて待て」とは、背浮きになってプカプカ浮いて、救助が来るまでの間、呼吸を確保するための方法のことです。

流されてしまったら、一度落ち着いて体の力を抜き、息を吐くのを我慢して背浮きになると、プカプカと浮き上がるのです。慌てて手をバタバタして息を吐いてしまうと、どんどん沈んでしまいますが、体の浮力を使えば、簡単に浮くことができます。

――背浮きとはだれでも自然にできる姿勢なのですか。

そうですね、背浮きをするときに体に息をためて、じっとしていれば自然とそのような姿勢になります。もし沈んだり、深みにはまったりしても、息を吐かないようにして、10秒くらい待っていれば、自然と浮いてくるんです。注意するのは、呼吸をしばらく吐かないように我慢することですね。

浮いてから姿勢を安定させるためには、「あごを上げる」、「手足をバタバタさせずに大の字にする」も効果的ですが、基本的には自分が楽な体位でいいと思います。

――口と鼻が水面に出るようにするのですね。

息を体にためているとき、人の体はだれでもその2%が水に浮きます。その2%の部分として、口と鼻だけを水面から出しておくことが大切です。ですから、「浮いて待て」のポーズをしている間は、基本的には息をためておいて、苦しくなったら素早く吐いて吸うのを繰り返します。呼吸法のコツも大切なので、その点も覚えておいてください。

――靴は履いておいた方がいいのですか?


「浮いて待て」講習会(提供:水難学会)


靴を履いてれば、その浮力を利用して、足を浮かすことができます。人間は足から沈むため、背浮きになっていても、足が浮いてくれれば、岸面に浮いていられるのです。

こうすれば、水のベッドに寝転がるような感じで、体力を消耗せずに水面にずっと浮いていられるので、救急隊が来るまでの間、ゆったりとした気持ちで待てばいいだけです。夏は水も冷たくないので、呼吸さえ確保できれば生還率は高まります

――背浮きの姿勢は、どんな水辺でもできるのでしょうか。

どこでもできるのですが、海は塩分濃度が高いので、ほかの場所よりも浮きやすいという特徴があります。「浮いて待て」で重要な息をためておく呼吸法も、じつは海では必要ないくらい、浮く力が大きいのです。


■もしも子どもが溺れたら、親がすべき行動とは
水の事故はなぜ起きる?

© bohbeh - stock.adobe.com


――もし子どもが溺れてしまったら、親はどのような手順で対処すればいいですか。
1.まずは子どもに「浮いて待て」と声を掛ける
2.素早く119番に通報する

子どもがきちんと「浮いて待て」の姿勢を取れて、安定して呼吸を確保できていれば、これだけで十分です。

――浮く物を投げるといいという話も聞きますが…

私は背浮きの姿勢がきちんと取れていれば、何が何でも物を投げる必要はないと考えています。投げた物を取ろうとしたりして、せっかく安定して浮いている子どもがバランスを崩したら却って危険だからです。また、投げた物が当たって衝撃を受けて姿勢を崩してしまう可能性もあります。

しかしその場にランドセルやペットボトルがあれば抱きかかけることで、浮力体として利用でき、より楽に「浮いて待て」が行えます。


「浮いて待て」講習会(提供:水難学会)


一番重要なのは、子どもに「浮いて待て」と声を掛け続けること。子どもが不安にならないよう、救助が来るまで「がんばれ」などはげましの声を掛け続けてあげましょう。

■大人の方が子どもより生還率が低い!

――子どもが溺れたときに周りの大人が助けに行ってはいけないのですか。

飛び込んで助けに行くことは絶対にしてはいけません。素人には水辺に落ちた人を救うことは非常に難しく、あとから飛び込んだ人が亡くなってしまうこともよくあるのです。

2017年の警察庁のデータでは、水の事故に遭った中学生以下の子どもの生還率は87.3%でした。一方で大人は53.5%で、子どもよりもかなり低い数字なんです。じつを言うと、50%を超えたのは初めてで、これでも徐々に上がってはきています。

私たちは、全国の小学校で「ういてまて教室」を開いていて、服を着たままどのようにすれば水に浮かぶことができるか子どもたちに教えています。こうした教室の効果もあって、溺れたら浮いて待つことの重要性を認識している子どもたちが増えているように感じています。今後は、親子向けの「ういてまて教室」を開催し、大人にも教えていくことが大きな課題ですね。

――子どもが危険なとき、どうしても助けに行きたい場合はどうすればいいですか。

親としては、助けに行きたいと思うのはあたり前ですよね。子どもの近くまで行ったら、そこで親子一緒に浮いていてください。助けようという考えは捨てて、近くで一緒にプロの救助を待つのが賢明です。子どものところに行く前に、119番に電話をするのを忘れないようにしてくださいね。

――子どもを持つパパやママに伝えたいことはありますか。

とにかく、「水辺で親子の時間を楽しんでください」と伝えたいですね。水の事故があるからといって水を避けるのではなく、ぜひ予防策や対処法を頭に入れた上で充実した水遊びの時間を過ごしてほしいと考えています。

人間は呼吸さえ確保できていれば、そうそう亡くなることはありません。「浮いて待て」を知っているということを強みに、みんなで海や川、プールを楽しんでくださいね!
斎藤秀俊さんプロフィール
水難学会会長 斎藤秀俊教授

米国ペンシルベニア州立大学材料研究所博士研究員や茨城大学工学部助手を務めたのち、2003年から長岡技術科学大学教授。2009年から2015年まで同大学の副学長を務め2016年から現職。2011年から同時に水難学会会長として多角的に活動している。

(高村由佳)

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