「子どもは生まない!」究極のバリキャリ系モンスターワイフ襲来【リアル・モンスターワイフ、再び 第23回】
Woman.excite / 2018年8月4日 21時0分
夫の愛が冷めてゆく…それは、妻にモンスターワイフの影が見えるから…。
©milatas- stock.adobe.com
過去、「企業戦士」という言葉がありました。ワークライフバランスが高らかにうたわれる現代、その言葉は消滅したかと思いきや、そうでもない現状を皆さんもご存じでしょう。今では、最前線で男性と肩を並べて闘う「女性企業戦士」も珍しくありません。
ビジネスシーンで自分の立場や利益を守るためには、シビアな損得勘定やドライな割り切りも不可欠。確かに社会で上を目指していくには、そうした「武装」も必要でしょう。けれども、そんな企業戦士の鎧(よろい)が完全に肌に張りついて、もはやプライベートでも脱ぎ去ることができなくなってしまったら…それは考えものです。
今回は、家庭でもドライな理論武装を解除できなくなってしまった妻のエピソードをご紹介します。
■パワハラ、セクハラに歯ぎしり「家でも企業戦士」の妻
「バリキャリ系モンスター 私利死守魔」代表:茉莉(仮名)32歳の場合
「茉莉、おかえりー。夕飯もうすぐできるよ」
都心にほど近いスタイリッシュな新築マンション。家具は少なく、ホテルの部屋のようなすっきりした家だ。明るく出迎えた夫の亮平に、茉莉は「ただいま」と一言素っ気なくこたえ、そのまま自分の部屋に消える。
オーダーメイドのスーツを脱ぎ捨てると、バッチリメイクをふき取りシートでゴシゴシ落とす。その間、茉莉はずっと、奥歯をかみしめていた。
「冗談じゃないわよ…パワハラの原点はまさにこれだわ」
茉莉は大手商社で海外営業を担当している。同期の女性社員の間で、彼女は出世頭ともてはやされていた。
けれど、明らかに自分よりも能力が劣るとしか思えない男性同期たちが、次々と昇進していく。そんな現実に直面するたび、茉莉は死ぬほどくやしい思いをしていた。それでも「男の何倍も努力して、実績で勝負してやる」と、自分をふるい立たせてきたのだ。睡眠不足だろうが、熱があろうが、生理痛がひどかろうが、常に背筋を伸ばして仕事に向かっている。
接待のため、嫌いなお酒も“訓練”して強くなった。「営業は見た目も実力のうち。デブは体調管理もできない意思が弱い人間と思われる」と自分を鼓舞し、時間さえあればジム通い。人脈を広げようと、朝は早起きして異業種交流の朝活にいそしんでいる。SNSは仕事関係のビジネスパーソンばかりとつながっている。英語で書き込むこともしばしば。ビジネス用語を調べながら投稿したりすると、時間がたつのを忘れるほどだ。
残業、人脈作りのSNS、パワーブレックファースト…。朝食も夕食も夫婦そろって取れない日が続くこともある。そんなことに構ってはいられない。
「誰にも負けたくない」
茉莉は全力で努力していた。それなのに…残業中に上司から、国内のマイナー部署への異動を打診された。目の前が真っ暗になった。あわてて上司に食ってかかると、彼は気まずそうに茉莉に言った。
「稲田さんって結婚して、えーっと、3年目? あ、セクハラとかって思わないでくれよ。やっぱり年齢的にも、子どものこととか考えるでしょ? となると、海外営業って激務だからさ…。国内担当の部署のほうが、育休からの復帰後も、何かと融通が利くし。ほら、うちは育休制度ばっちりフルサポートだからさ」
「もっと仕事で結果を出すまで、妊娠・出産など一切考えるつもりはありません!」
茉莉は上司をにらみつけ、そう言い残してオフィスを飛び出してきたのだ。
■「くやしくないわけ?」家でも仕事モードの妻にうんざり
食卓についても、茉莉の頭の中では上司の言葉が際限なくリプレイされていた。メイク落としの時に使ったヘアバンドがそのままで、眉間に寄ったシワが丸見えだ。イラつく茉莉には、夫が用意してくれマーボーナスの味すらわからない。
亮平は大手電気機器メーカーに勤務している。帰宅時間は茉莉よりも早いことが多く、そうした日には夕飯を用意して妻の帰宅を待っている。食卓の重苦しい沈黙を破るように、亮平は明るい声を出して言った。
「あ、そう言えばさ、俺の後輩の小宮。あいつ今度、フランスに赴任だって。すごいよなー」
「栄転ね」
茉莉のトゲを含んだ口調に、亮平はビクリとする。
「後輩に先越されて、くやしくないわけ? 私だったらそんなの絶対に嫌。後輩に出し抜かれて、よくヘラヘラしてられるわね」
まただ、と亮平は思った。先を越されるとか、出し抜かれるとか。茉莉はいつから、こんな闘争心の塊のような人間になってしまったんだろう。
茉莉が頑張っているのは、よく分かる。それは分かるが、このギスギスした空気は耐えがたいものがある。ここは会社ではなく、2人の家なのに…。
亮平はもう楽しい雰囲気を作ろうとするのをあきらめて、自分が用意した夕飯をひたすらかき込んだ。
■「私のキャリアを犠牲にしろ?」夫に海外単身赴任を強いる妻
©metamorworks- stock.adobe.com
茉莉の猛抵抗で、国内部署への異動の危機が過ぎ去りつつあったある日。帰宅すると、亮平がいつになく興奮した様子で出迎えた。
「茉莉、俺、アメリカ赴任になった! でかいプロジェクトに参加できそうなんだ」
茉莉は表情を変えない。
「それは、おめでとう」
あーあ、やっぱり、男ってだけで得よね…。そんな本音が顔に出ないよう注意しながら、茉莉はどうにか口角を上げて見せた。
「頑張ってね。私は行けないけど」
うれしそうだった亮平の顔が、一瞬にして暗くなった。
「茉莉だって、アメリカに住んでみたいって言ってたじゃないか。だから俺、いつも部長に『海外赴任するならアメリカに』って言ってあって…」
「それは私の実力が認められて、自分がアメリカに派遣されたらの話よ。駐在員の妻として、夫にくっついて行くなんてゴメンだわ」
亮平はしばらく黙り込んでしまったが、やがて言葉を選ぶようにして言った。
「向こうに行ったら、少なくとも3年は戻って来られないんだ。結婚する前、子どもは2人欲しいって話し合ったよね。となると、そろそろ…」
「じゃあ、子どもはあきらめましょ」
あまりにキッパリとした、まるで相手を切り捨てるかのような茉莉の物言いに、亮平は絶句した。対する茉莉の頭の中は、自分の夫と上司が結託して、自分のキャリアをブチ壊そうとしているイメージでいっぱいになっている。
「つまりあなたのキャリアのために、私のキャリアを犠牲にしろって言ってるんでしょ? どうして私が、あなたの犠牲にならなきゃいけないの? 男女は平等、夫婦は対等でしょ。あなたについて行くために、私が仕事をやめる? あなたの子どもを生んで育てるために、私が仕事をあきらめる? どう考えたって不公平じゃない」
一言の反論も許さないような、バッサリとした茉莉の口調。どこまでも冷たくドライな妻の態度に、亮平は反論する気力が消え失せるのを感じた。
結局亮平は、一人で渡米する決心をした。亮平の出発までの3カ月間、もともとギクシャクしていた夫婦仲は一層冷え切ったものになっていった。
■「子どもを作る気はありません」義母への言葉に夫は…
亮平が忙しく引越し準備を進めていた、ある日曜日。自宅の電話が鳴ったので茉莉が出ると、相手は亮平の母親だった。
茉莉はこの昔気質な義母が、昔から苦手だ。義母は、結婚したら女性は家庭を最優先すべきで、子どもを生み育てることこそ女性の最高の幸福だと信じて疑わないタイプ。案の定、義母は単身で渡米する息子を案じる小言を並べ始めた。
「亮平はああ見えて、昔から寂しがり屋なところがあるから。しっかり者の茉莉さんがついて行ってくれたら、本当に心強いのにねぇ。それに、亮平のお給料で十分食べていけるでしょ? 何もそんなに必死になって、共働きしなくたって…。妊娠や出産だって、早ければ早いほどラクよ。体力的にね」
「子どもを作る気はありませんから」
茉莉はピシャリと言った。もうウンザリだった。誰もかれも、子ども、子どもって。私は“生む機械”じゃない。
「私の仕事は、育児をしながら片手間にできるような仕事じゃないんです。産休・育休なんて言いますけど、一度、戦線離脱したら元いた場所には戻れませんから。それにお給料のことをいうなら、私のほうが稼いでるんですよ。亮平さんもお義母さんもそんなに子どもをご希望なら、亮平さんが生めたらよかったのに。残念」
電話の向こうで、義母が息をのむのが分かる。ふと気配を感じて振り向くと、亮平が背後から茉莉を見つめている。その目は何だか、他人を見るような目だった…。
プライベートなどそっちのけ。全力で仕事に邁進(まいしん)する茉莉さん。けれども、その「頑張り」は、いつしか「突っ張り」に。社会で自分を守るために理論武装をしてきたのでしょう。これを夫と将来について率直に話し合うべき場にまで、そのまま持ち込んでしまうようになりました。
自分のキャリア、自分の立場、自分の利益…損得勘定や自分の意見の主張ばかりに固執するようになってしまった茉莉さんは、その後どうなったのでしょうか? そして、シビアな現代社会で頑張るあなたも、茉莉さんほどはいかないまでも、「私利死守モンスター」の卵を抱えていませんか?
次回ご紹介するチェックテストで確認してみてくださいね。
(三松真由美)
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