カッコ悪くて何が悪い!? 飾らないありのままの育児を描く荻並トシコの魅力
Woman.excite / 2018年10月26日 14時0分
『トシコ、母になる。」(萩並トシコ/三才ブックス)
どんなハードな育児の場面でさえ、ユーモラスな切り口で笑いに変え、育児ママたちの癒やしや共感を集める荻並トシコさんのコミックエッセイ。
ウーマンエキサイトで連載中の「荻並トシコのどーでもいいけど共感されたい!」でも、思わずクスッと笑えるエピソードが盛りだくさん。「育児のあるある」から「まさかの出来事」まで、独自の感性で面白おかしく描ききっています。
そんな荻並さんが注目を集めるきっかけとなったブログの作品を書籍にまとめた「トシコ、母になる。」は、当時2歳だった息子のハルくんとの日常を描いた痛快コミックエッセイ。
乳児と幼児の間を行ったり来たりする2歳児ならではの難解な子育てに共感しつつ、もらい笑いが止まらない一冊です。
そこで今回は、荻並ワールド全開の「トシコ、母になる。」の魅力に加え、ストーリーやタイトルに込められた荻並さんの思いをお届けします。
東京都杉並区在住。4歳差の男の子と女の子、2児の子育て奮闘中。出産をきっかけに「息子の様子を描きとめたい!!」と個人ブログで漫画を描き始める。「auヘッドライン」のエンタメランキング第1位、月間250万PV超の育児4コマ漫画をまとめた「トシコ、母になる。」(三才ブックス)を販売。auヘッドラインにて「トシコ、母になる。」連載中。
■“人に話すほどではないけど、忘れたくない…”、そんな育児の日常を描く
そもそも荻並さんがブログで漫画を描き始めたのは、家族や友人に向けて、日々のハイライトを発信するためだったのだとか。
人に話すほど特別なことではないけれど、自分にとっては意味のある育児の日常を忘れず残しておきたいという想いを込めて、漫画を描き続けていたといいます。
確かに育児は小さなことの積み重ね、思い通りに進まないことだって山ほどあります。そんなつらいことも、楽しいことも泣いて笑って自分らしく乗り越える荻並さんの姿には、励まされるような気持ちにさえなります。
そして作中の母トシコとイヤイヤ期真っ盛りの2歳の息子ハルくんとのやりとりは、いつもシュールな笑いにあふれています。
例えば、卒乳に向け、徐々におっぱいを制限していた時期に体験した電車内でのエピソード。
「パイ」
あぁ~まさに母にとっては赤面もののシーン。
「もし自分だったら…」なんて思うとおそらく、いや確実に笑えないであろうシチュエーションも、荻並さんの手にかかれば、泣きたくて格好悪い母の姿がなんともおかしくも愛おしく見えるのが不思議。
「もう勘弁してくれ~」な母の心の叫びをユーモラスな切り口で描いてくれることで、つらい子育ての瞬間を笑い飛ばせる心の余裕を与えてくれます。
■タイトルに込めた想い、「母になる。」で変わったこと
世間の母親像にしばられない、あくまでマイペースな子育てを実践する荻並さん。しかしそんな彼女にも母親になったことで自分の中である変化が生まれたといいます。
それが、母になって確実に優しさが増したことだったそう。
産後すぐには、産まれたばかりの息子を抱いては泣き、外国で10人亡くなったという新聞の見出しで泣き、まさに母性のインフレ、優しさのインフレを起こすほどの異様なモードに…。
COLUMN vol.01「トシコ、母になって…。母性のインフレが起こったあの日」(P46)より
通常の精神状態に戻ってからも、「皆、母から生まれた」という大前提で世界を見られるようになったことで、“優しさの一定値を引き上げる”ことにつながったといいます。
そんな今の自分の姿を“ちょっといいな″と感じていることから、あらためて母になった実感を込めて「トシコ、母になる。」というタイトルをつけるにいたったそう。
一人の女性から母へ、守るべきものが増えたことで、背負う責任はときに重たくも感じるけれど、人として成長する機会を与えられたことで、母になったことへの喜びと感謝を感じる荻並さんの想いが伝わってきますね。
そして、母になって変わったことはこれだけにはとどまらず、ププッと笑えるエピソードとしても描かれています。
「夜の外出」
「もうこれ、自分のことみたい!」と笑わずにはいられないママたちもいるのでは?
育児がつらくて、もう逃げ出したいと思うことだってあるのに、夜のフリータイムをせっかくもらっても、口ずさむのは、すっかり耳慣れた育児ソングなんて…。
母になって変わることは山ほどあり、ときに失なったものに目がいくこともあるけれど、そんな母の姿をシュールにおかしく描いてくれることで、笑いと共感で心が救われることがあるんですよね。
■イヤイヤ期の言動…「うちだけじゃないんだ!」に救われる
本書の面白さを引き立たせてくれるのが、何といっても2歳男児のハルくん。イヤイヤ期全開のその行動に母トシコも頭を悩ますことばかり。
しかし、トシコとハルくんのやりとりを眺めていると、なぜか不思議と心が軽くなるんですよね。なぜか…!? その理由はきっと、「これってうちだけじゃないんだ」っていう安心感にあるのではと思います。
まずは最強2歳児のこんな一コマ。
「多彩」
特にイヤイヤ期真っただ中の子どもを持つママたちなら、ハルくんの行動は「やめて~」の連続のはず。なのに、不思議と笑えるうえに、普段のわが子の謎の言動がひも解かれ、読み進めるうちわが子に対する愛おしさがじんわりわいてくるんです。
育児で八方塞がりになると、ついほかの子と比べて、「なんでうちの子は…」みたいにネガティブな気持ちになったりするもの。自分の子以外は、なぜかおとなしく、いい子に見えてしまうことってあるんですよね。
まるでわが子だけが、“ダメな子”みたいに感じることもあるけれど、現実は決してそういうわけじゃない。
ただ毎日必死で子育てしていて、ふと周りが見えなくなっただけ…。
そんなときに、ページを開いてトシコとハルくんのやりとりを見ていると、「そういえば、うちの子も同じようなことしてたな~」なんて、わが子を引きで見られることで、ママの心がすっと軽くなるんです。
■つい忘れがちになる…幼きわが子との「いま、このとき」
「トシコ、母になる。」では、見慣れたはずの育児の場面が荻並さんのフィルターを通して描かれることで、まるで子どもとのやりとりを追体験しているような感覚に陥ります。
日々育児と格闘し、泣いて、笑って、子育てしているトシコの姿はちょうどあの日、あのときの自分のよう。
だけど、ただつらいと感じるだけで、果たしてトシコのように子どもと正々堂々と渡り合い、大切な時間として刻んでいるのだろうか? なんて、思わず自問したくなるんですよね。
日々の育児に追われて、つい忘れてしまう大切なことも、トシコとハルくんの日常が教えてくれるような気がします。
本書にもトシコとハルくんのほほえましい一コマがおさめられています。
「フォロー」
思い通りにならなくてイラッとすることもあるけれど、子どもながらに精一杯の気持ちを込めて、ママを元気づけたいという想い。
ハルくんなりにフォローする姿は、かわいすぎて、笑わずにはいられませんが、ほんわかやさしい気持ちになれるエピソードです。
育児はもちろん大変なものだけど、「飾らず、自分らしく、子どもと楽しもう」という気負いのないメッセージが本書のなかにはたくさんちりばめられています。
■荻並トシコさんからのスペシャルコメント!
最後に、「トシコ、母になる。」上梓から2年を経た荻並トシコさんに、今のお気持ちを伺いました。
発売から2年越しのご紹介ありがとうございます!!
このあと、2人目が産まれたりなどしていて、物理的には今の方が忙しいのですが…
この1人目が2歳頃のときの方が、初めてのことだらけで精神に余裕がなかったな~と思います。
自分自身を面白おかしく描くことで、なんとか平静を保ってきたのかも?
(それは今もか?)
今読み返すと、当時はこんなこと考えていたんだ!! ぎゃー恥ずかしいー!! ということのオンパレード…
息子2歳のときの記憶の冷凍保存であり、積極的に開けたくないけど捨てられはしないタイムカプセルみたいな、そういう存在です。
けっして、美しい内容ではありませんが、みっともない所も含めて真剣に取り組んだ1冊です!!
ぜひ手にとっていただいて、私の状況に共感できる方はハラハラしながら、そうでない方は、鼻で笑って読んでいただけたらと思います。
追伸:特に2歳過ぎても卒乳していない人にオススメです!!
荻並トシコ著(三才ブックス)1,080円(税込)
「うちのことかと思った!」「もらい笑いした!」「ゆるっとした育児にホッとした」
背伸びナシの母子のドタバタ日常劇に、クスッと笑って癒やされるママが続出! 「auヘッドライン」のエンタメランキング第1位、月間250万PV超の育児4コマ漫画が、書き下ろしやエッセイを加えて待望の書籍化。
●荻並トシコさんのブログ:荻並トシコのブログ
●荻並トシコさんのウーマンエキサイトの連載:『荻並トシコのどーでもいいけど共感されたい! 』
(倉沢れい)
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