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子どもの頭はどうして大きい? 秘密は脳の働きにあった【榊原先生、教えて! 子どもの体の不思議 第2回】

Woman.excite / 2019年1月31日 12時0分

子どもの頭はどうして大きい? 秘密は脳の働きにあった【榊原先生、教えて! 子どもの体の不思議 第2回】


©Anastassiya- stock.adobe.com


子育て中は「子どもの体って不思議だなあ」と思うことが、たくさんありますよね。

例えば「大人に比べ、体は小さいのに頭が大きい」と思ったことはありませんか? 子どもの頭はその小さな体に不釣り合いなくらい大きいですよね。

また、久しぶりに会った友人から「赤ちゃんの顔つきが、生まれてすぐの時とは変わったね!」と言われ、そういえば…気づくこともあるでしょう。

子どもの頭はどうして大きいのか? 顔つきが変わるとは一体どういうことなのか? 小児科医でありお茶の水女子大学名誉教授・榊原洋一先生に「子どもの顔・頭」にまつわる不思議をいろいろと教えてもらいました。




お話をうかがったのは…

医師・お茶の水女子大学名誉教授
榊原洋一先生

お茶の水女子大学人間発達教育研究センター教授。東京大学医学部卒業。専門は小児科学、小児神経学、発達神経学など。小児科医として発達障害児の治療にかかわる。著書は『大人が知らない子どもの体の不思議』(講談社)など多数。




■子どもの頭はなぜ大きい?

――前から気になっていたのですが、大人に比べると赤ちゃんの頭ってすごく大きいですよね。体のサイズからすると、もっと小さくても良いような気がするのですが、何か理由があるのでしょうか?

榊原洋一先生(以下、榊原先生):子どもの頭が大きいのは、脳の大きさが体に対して大きいということがあげられます。なぜ体に対して、脳が大きいのか。これには、人の体の中で脳がどう働いているのか、そのシステムに関係があるんですね。

――システム?

榊原先生:そうです。人の体は働きによって大きく8つのシステムに分けることができます。例えば、心臓や肺は「呼吸循環器系」、胃や腸や肝臓は「消化器系」、骨髄や赤血球なんかは「血液系」、リンパ節や胸腺は「免疫系」、骨格筋や骨は「骨格系」などと呼ばれていますね。

――「~系」というのが、システムのことなんですね。聞いたことがあるものもあります。

榊原先生:こうしたシステムのうち、脳に関係するものが「神経系」です。

――頭の大きさと関係してくるのが神経系?

榊原先生:はい。システムの中でも神経系は、もっとも負荷のかかる部分といわれています。どのシステムも人が生きるために不可欠なんですが、神経系はほかのシステムにはない仕事をこなす役割があるんです。

■赤ちゃんの頭の大きさと「神経系」の関係とは?

――ほかにはない仕事…?

榊原先生:はい。システムの中には急いで完成させる必要がなく、人間の成長に合わせて、長い時間をかけて形作られていくものもあります。

でも、神経系は違うんですね。神経系はお母さんのおなかの中にいるときから、生命のリズムを維持する働きや、手足・胴体を動かす働きをしているんです。

――お母さんのおなかにいるときから、神経系は働き始めている?

榊原先生:そうです。でも、おなかの中にいる間は、それほど働かせる必要はないんです。それがいったん子宮の外に出ると、環境が激変します。

――居心地のいいお母さんのおなかから、急に外に出てくるわけですもんね…。赤ちゃんにしてみれば「なんだ、ここは!」ってびっくりすると思います(笑)。

榊原先生:そうです。赤ちゃんは生まれてすぐ、まぶしい光、さまざまな音、体に感じる重力といったものにいきなり対応しなければなりません。それに成長するにつれて、立って歩いたり、指先を細かく動かしたり、言葉の使い方なども知っていかなければなりませんよね。

実はこれらは基本的に、すべて神経系の受け持ちなんです。だから神経系は生まれたその瞬間から、いっそう活動を活発化させていくんです。

――なるほど。体が小さいうちに神経系の働きがものすごく活発になるから、最初から脳、つまり頭が大きくなっているということでしょうか?

榊原先生:そうです。これには脳の発達スピードも関係しています。脳を中心とした中枢神経は、成長や発達にともなって、フル回転で機能を発揮しなければなりません。そのため赤ちゃんの脳の中では、機能を充実させるための「突貫工事」が急ピッチで進められているんです。

――短時間で一気に発達しようとするんですね。

榊原先生:乳児から幼児期前半は、人生の中で脳の発達がもっとも著しい時期といわれています。神経系の発達はほかのシステムに比べ、とても早い時期に行われるんです。

だから、小さな子どもの頭が大きく見えるのは「脳が大きい」から。そして脳が大きくなるのは「神経系を急いで作り上げなければならないから」といえるでしょうね。







■「子どもの“顔つき”が変わった」どうして?


© Jirus- stock.adobe.com


――子どもの顔を見ていると、小さいころとは顔つきが変わったように感じることがあります。赤ちゃんのころは男女差があまりないように感じるのですが、顔つきの変化はどうして起こるのでしょうか?

榊原先生:顔は成長するにつれて変化していきます。要因はいろいろですが、頭蓋骨とその中にある脳は、4歳くらいまでに急激に大きくなるので、顔の形が大きく変わる時期でもあるんです。だからこの年齢で「顔つきが変わった」と感じるお母さんもいるかもしれません。

――顔の大きさや形って、印象に影響するものなんですね。

榊原先生:影響すると思います。一般的には目や口、鼻の配置などが大きく変わると、顔の印象も大きく影響を受けると思うでしょう。それもありますが、実は皮下脂肪や顔の表情をつくる表情筋の発達なども、印象を大きく変えるんですよ。

――顔の皮下脂肪や、表情をつくる筋肉も、顔を印象づける要因になっている…?

榊原先生:子どもの顔を見ると、皮下脂肪が多くてふっくらと丸顔であることが多いですよね。これは人に限ったことではなくて、動物全般に当てはまることなんです。ふっくらと丸顔であることで、かわいい印象を周りに与えているんです。

――確かに、ふくふくとした真ん丸のほっぺを見ていると「かわいいな~」と思いますし、抱きしめたくなります(笑)。

榊原先生:大人になると皮下脂肪が薄くなり、重力の影響もあって、顔はどんどん細長くなっていくんです。丸顔から、細長い顔に変わっていく。

だから、印象が変わったように見えるんですね。それから、日常的にどんな表情をしていることが多いか、表情筋をどう使っているかということも、顔つきの印象変化に関わってくると思います。

――なるほど。顔のパーツ、大きさ、脂肪、表情筋のつき方…。顔つきを変える要因はひとつじゃないということですね。

榊原先生:そうです。いずれにせよ、顔つきは「急に変わる」ということはありません。顔の印象は年齢とともに少しずつ変化していくものなんですね。


今回は、体の中のシステムなどちょっと難しいお話もありましたが、赤ちゃんの頭が大きい理由について知ることができました。神経系はお母さんのおなかの中にいるときから少しずつ働き、この世界に誕生してすぐにフルスピードで発達し始めているんですね。

先生のお話をうかがったことで、赤ちゃんは生まれた瞬間から「生きることに一生懸命」と感じ、がんばれ! がんばれ! と応援したい気持ちが芽生えました。小さな体の中ではさまざまな変化が起こり、日々新しい何かが生まれているんですね。

次回は、「子どもの寝相はどうして悪い?」「寝るときに手足が温かくなるのはなぜ?」など、子どもの睡眠にまつわる疑問についてお話をうかがいます。お楽しみに…!

参考図書:
『大人が知らない子どもの体の不思議』(講談社)
榊原洋一著


子どもと大人はどう違うのか。それは単に大きさだけの違いではありません。どうして夜泣きをするの? どうして寝相が悪いの? どうして落ち着きがないの? 子育て中に親が抱く「答えが見つかりにくい質問」にエビデンスの精神で解答することを試みました。子どもの心と体の不思議を理解する、手助けとなる一冊。




(すだ あゆみ)

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