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【医師監修】子どもの身長が伸びない「遺伝? それとも…」低身長の原因は?<パパ小児科医の子ども健康事典 第15話>

Woman.excite / 2019年3月18日 12時0分

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イラスト:ぺぷり


春は、園や学校で身体測定がある季節です。だんだんとわが子の身長が低いことが気になってきた人もいらっしゃるのではないでしょうか。

小児科でも「うちの子はどうして低いのですか?」「伸ばす方法はありませんか?」と相談をうけることが増えます。

身長が低い場合は、どのように考えたらよいのでしょうか?

■低身長かどうか? 目安となる母子手帳の「身体発育曲線」

子どもの身長が低い時、小児科ではまず母子手帳の中にもある「身体発育曲線」(※1)を確認します。6歳以上の場合は、小児内分泌学会の「横断的標準身長・体重曲線(0-18歳)」(※2)をご参照ください。

受診の時は乳児健診や幼稚園、小学校の身体測定の記録なども持っていくとわかりやすいでしょう。

この身体発育曲線に身長と体重に点をうっていくと、生まれてから現在までの身長や体重の伸びや変化を見ることができます。

グラフの「帯の部分からはずれると異常なのでは?」と不安になるかもしれませんが、必ずしも異常というわけではありません。このグラフはあくまで「分布」を見ているものです。

身長体重には個人差があり、比較的多い成長パターンに入るお子さんがこの帯の範囲におさまります。具体的には100人中94人ほどがこの範囲におさまり、比較的小さい3人もしくは大きい3人が帯の範囲外になります。

帯からはずれても必ずしも異常というわけではありませんが、何か病気が原因で体が小さい場合もありますので見極めるために受診が必要になります。

■低身長の原因となる5つの病気

身長は遺伝の影響が大きいため、ほとんどの場合は病気等の特定の原因を持たず、「特発性低身長」といいます。

特発性低身長であれば、よく食べてよく寝てよく運動して気長に待ちましょう。特別な方法はなく、ある程度遺伝子で決まっているのです。

一方、低身長をきたす疾患が隠れていることもあり、例えば以下のようなものがあります。

・ホルモンの問題である甲状腺機能低下症や成長ホルモン分泌不全症

・出生週数に比べて小さく生まれた場合に身長が伸びにくいSGA(small for gestational age)性低身長

・女の子のみに発症するターナー症候群

・骨や軟骨の病気である軟骨異栄養症

・心臓や腎臓などの機能障害 など

※病気のくわしい説明は、前出の小児内分泌学会ホームページをご参照ください。



身長体重はどのように推移しているかも重要で、あるポイントから急に帯からはずれだしたり、伸びが悪くなったりした場合には、何か病気が隠れている可能性が高くなるので、早めに受診したほうがいいでしょう。





■治療によって身長が伸びる場合も


イラスト:ぺぷり


低身長の原因によっては、治療によって伸ばす方法がある場合もあります。それは、成長ホルモン補充療法です。

これは一定の基準を満たせば成長ホルモンの注射を補充することで身長の伸びが期待できるというものです。自宅で保護者(または自分)が連日、成長ホルモンを注射することで、身長を伸ばすことが可能です。

劇的に伸びるわけではありませんが、何年間も継続して積み重ねていくと最終身長がプラスになります。

この治療の適応があるかは、病院でいくつかの検査を組み合わせて調べます。手のレントゲンで骨年齢(骨の成熟度合い)を見たり、血液検査で全体的な体のチェックとともに甲状腺ホルモンなどを確認します。

成長ホルモンは脳の下垂体という部分から出ていますが、頭のMRI撮影で構造的に問題ないか調べるとともに、ここからホルモンがしっかり出ているかどうかを成長ホルモン分泌刺激試験で調べます。これは成長ホルモンがよく出るような刺激を点滴や飲み薬によって加えたのち、血液検査をして成長ホルモンの数値を調べるものです。

薬剤を投与したのち30分おきに数回、血液検査をしてピーク値がどのくらいになるかをみます(頻回の採血が負担にならないように、点滴ラインを用いて痛みなく採取します)。

この試験により、あまり成長ホルモンが出ていない場合は、ホルモン補充の適応となり治療が可能です。逆にホルモンがよく出ていて補充の適応とならない場合は、今後しっかり伸びる可能性があるとも考えられます。

ちなみに前述のSGA性低身長は、治療適応の判断ができるのに見過ごされていることもしばしばあるので、出生の週数や体重をチェックしてください(治療適応は3歳以上から)。

検査は1日1種類お薬を用いて行い、それを何種類かするため数日間かかります。入院して行うことが多く、薬剤が3種類の場合は少なくとも3日間を要すると考えてください。

■気になる方は一度受診・検査を

実は、筆者は小柄で小学校の頃から背の順は前のほうでしたので、この検査を受けたことがあります。基準を満たさなかったので、治療はうけず自然にまかせました。

結果的には小柄のままですが、そこまで不便は感じていないのでこれはこれでいいかと個人的には思っています。私のように特に気にしていない人もいれば、いやいやどうしても身長が低いと困るという人もいて、身長が及ぼす影響は人それぞれで事情が異なるものです。

例えば、どうしても自衛隊に入りたい、客室乗務員になりたいという場合は身長制限がネックになる場合があります。また、女の子で身長体重曲線の帯の下のラインであれば、最終身長は約147cmほどですから、骨盤が狭くて将来、難産になる可能性は高まるでしょう。

治療をしていくかどうかは、本人の意志や将来の夢と、連日のホルモン注射などを天秤にかけて、総合的に決めていくことが大切だと思います。

身長が気になっている場合、検査で原因を調べることは重要で、場合によっては伸ばすための治療も可能です。検査には数日間の入院が必要になりますので、この春休みなどを利用して計画されてもいいかもしれませんね。



参考資料
※1:『母子健康手帳の様式について 省令様式』厚生労働省
※2:『低身長』日本小児内分泌学会





(パパ小児科医)

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