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【医師監修】溶連菌感染症「抗菌薬が効かない、熱が下がらない…」もしかして?<パパ小児科医の子ども健康事典 第16話>

Woman.excite / 2019年4月10日 21時0分

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イラスト:ぺぷり


子どもが熱を出す原因の多くは「かぜ」であり、数日間で自然に熱が下がるため、抗生剤(抗菌薬)が必要な場面は限られます。

では、抗生剤が必要となるのは、どんな病気なのでしょうか? 今回は、抗生剤がよく効く病気の一つである溶連菌感染症について解説します。

■溶連菌感染症「診断、治療、家での過ごし方」

溶連菌(=A群溶血性連鎖球菌)は細菌の一種で、主に4歳以上に発熱やのどの痛み、頭痛などの症状を認め、ときにおう吐や腹痛をともなうこともあります。

扁桃腺がはれて赤くなり、首のリンパ節がはれたり、舌がイチゴのように赤くなるイチゴ舌や、体に発疹を認めることもあります。せきや鼻水などのいわゆるかぜのような症状は乏しいことも特徴です。

主に咽頭炎や扁桃炎を起こしますが、とびひなどの皮膚感染症を起こすこともあります。

診断
溶連菌を疑う症状があり、のどを綿棒でこする迅速検査で陽性が出たら、溶連菌による咽頭炎と診断されます(時間はかかりますが、培養検査をするとより正確です)。

このとき発熱などの症状はなくても、検査で陽性が出てしまう健康保菌者という場合があり(約15%)、解釈には注意が必要です(※1)。

治療
ペニシリン系といわれる抗菌薬が第一選択薬で10日間内服が必要です。溶連菌によく効くお薬ですので、内服して1~2日もすれば熱は落ち着くでしょう。その他の抗菌薬が使用される場合もありますが、ペニシリンアレルギーなどの限られたケースに限られます。

家での過ごし方
溶連菌は抗菌薬がよく効く感染症ですので、1~2日ほどで熱は下がるでしょう。

学校の登校停止基準も「抗生剤治療開始後24時間をへて、全身状態がよければ登校可能」となっています(※2)。治療を開始して24時間経過していたら感染力はないので、学校にいったりお友だちと遊んだりしてもOKです。ただし10日間の内服をしっかりと続けていることが条件です。

■溶連菌感染症「実は怖い合併症」治療のメリット4つ

この溶連菌、実は無治療でも3~5日で自然に熱が下がります。

自然によくなる病気になぜ抗菌薬が必要なのでしょうか? 主に、次の4つのメリットがあります。

1. 発熱期間を短縮することができる。

2. 感染拡大を防ぐことができる。

3. 化のう性合併症を予防できる。

4. リウマチ熱の予防ができる。


発熱期間を短縮できることは大きなメリットですし、唾液などを介したきょうだいやお友だちへの感染拡大も防止できます。

化のう性合併症とは、扁桃腺やリンパ節などにうみができるもので、ときに点滴や外科的治療が必要なことがあり予防は重要です。

リウマチ熱とは、溶連菌に感染して2~4週間後に関節炎や心炎、発疹や舞踏病(体の一部が意図せず勝手に動く)などさまざまな症状を認める合併症です。

とくに心炎では、後遺症として心臓の機能障害が残る場合があり、予防はとても重要です。日本ではまれですが、治療を十分に受けられない国ではリウマチ熱に苦しむ子どもが大勢います。

発症から9日以内に抗菌薬を投与すれば予防可能とされ、溶連菌の治療の最も重要な目的です。

そのほかの合併症として、発症から2~3週間後に起こる急性糸球体腎炎もあります。これは腎炎を起こして、たん白尿や血尿が出現し、尿が少なくなり、体がむくんで高血圧を起こしたりします。このような症状が出たら必ず受診が必要です。

ただし、腎炎については、抗菌薬をしっかり飲んでいたとしても予防することはできないので、早く見つけるために2~3週間の期間は体のむくみや尿の状態などを注意して見ておくことが大切です。






■抗菌薬が効かない! 別の病気が潜んでいるかも…

抗菌薬を服用しても熱が下がらない場合は、どうすればいいのでしょうか?

原因のひとつに、化のう性合併症が考えられます。うみをつくっている場合、飲み薬では十分治療できないので、必ず病院で相談してください。

もしくは、別の病気にかかっている可能性もあります。溶連菌陽性の結果が、前述の「健康保菌者」を示しているだけで、実は発熱の原因がほかにあるのかもしれません。


イラスト:ぺぷり


例えば、インフルエンザ+溶連菌の健康保菌者だった場合、抗菌薬を飲んでもメインのインフルエンザが改善しない限り熱は下がりません。

また、溶連菌は川崎病に症状が似ているところがあります(【医師監修】高熱が5日以上…「カゼではないかも?」子どもがかかる川崎病とは?<パパ小児科医の子ども健康事典 第14話>参照)。

発熱、リンパ節腫脹、発疹、イチゴ舌など共通する症状があるので、川崎病+溶連菌の健康保菌者という場合もありうるのです。この場合、溶連菌治療の抗菌薬内服を続けていても改善はせず、川崎病の適切な治療時期を逃してしまう危険性があります。

溶連菌の診断で抗菌薬を内服しても改善しない場合は、見直す必要があるので必ず受診してください。

発熱の原因が溶連菌と確定できれば、抗生剤がよく効くすっきりとした病気です。

しかし、大事なのは、溶連菌と診断されているのに、抗生剤を飲んでも熱が下がらないときです。何か合併症はないか、実はほかの病気ではないのか? さまざまなことが考えられますので、再度受診して診察をうけてください。



参考資料
※1:「小児感染症マニュアル2012」(東京医学社)
※2:学校保健安全法「登校停止基準」






(パパ小児科医)

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