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子育ては親だけの責任?「私だって迷惑をかけたくない…」【今日からしつけをやめてみた 第5回】

Woman.excite / 2019年6月18日 17時0分

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マンガ・イラスト/あらいぴろよ



公共の場では静かに、邪魔にならないように…。子どもとのお出かけは周囲への気遣いでドッと疲れるというママ、多いですよね。

わが子を育てるのはもちろん自分だけれど、どうしてここまで周囲に気を遣わなければならないのでしょうか?

今回は「子育ては親だけに責任がある」という世間一般の風潮や子どものしつけについて
『今日からしつけをやめてみた』(主婦の友社)を監修された柴田愛子先生にうかがいました。







お話をうかがったのは…

「りんごの木 子どもクラブ」代表 柴田愛子先生

「子どもの心により添う保育」をモットーにした「りんごの木 子どもクラブ」代表。絵本作家。 保育者。育児書の執筆、雑誌への寄稿だけでなく全国で保育者向けセミナーや母親向け講演会をおこない支持を得る。NHK『すくすく子育て』出演。園で行っている「子ども達のミーティング」はテレビ・映画で取り上げられ「子どもの力を最大限に引き出している」と話題に。



■子どものしつけ「それって、おかしくない?」



マンガ・イラスト/あらいぴろよ



――先生は『今日からしつけをやめてみた』のなかで「ママを脅かすしつけはいらないのでは?」という提案をされていますよね。では、ママやパパ自身が「子どもにどうしてもこれだけは伝えたい!」というしつけについては、どのようにお考えですか?

柴田愛子先生(以下、柴田先生):そうね。伝えたいことってあるわよね。例えば「出されたものは食べる」というのがある。それは、残さず食べてほしいと思う「根拠」があればいいと思うの。

――根拠、ですか…?

柴田先生:「残さず食べなさい」というしつけの理由として「残したら、つくってくれた人に失礼でしょ」という人がいる。これ、ちょっと変じゃない…?

つくってくれた人がいるのは分かるけど、だからおなかがいっぱいでも、すごく苦手なものでも苦しみながら食べなさいってことでしょ。それは、ちょっと変かなと思うのね。

――残さず食べるのはいいことだと思うし、自分も親からそういわれてきました。でも、はっきりとした根拠ってなかったかもしれません。

柴田先生:前にりんごの木クラブで遠足に行ったとき、お弁当がひっくり返ってしまった子がいた。中身は焼きそばだったんだけど、落とした子はそれを拾ってね…。1本ずつ水道の水で洗いはじめたの。

――え…!

柴田先生:洗った麺をお弁当箱に戻して、ゆすいで、食べはじめた。私は「え、食べるの?」と聞いたの。そしたら「そうだよ、食べなきゃいけないんだ」というのね。結局、全部食べたのよ。

――全部ですか…!

柴田先生:そのあと、子どもを迎えにきたお父さんに聞いたの。「お宅は、食べ物は残しちゃいけないとしつけているんですか?」って。そしたら「そうなんです」って。

「どうして、そうやってしつけているんですか?」と聞いたら「僕の家は裕福じゃなかった。だけど食べることは親がきっちりやってくれたから、今の僕の体がある。僕はこの体があるから今、家族を養っていける。だから親に感謝している」と。

――ふむむ…。

柴田先生:そして「これ、やり過ぎですか?」って私に聞いたのね。だから「お宅のお子さんだから、それでいいと思います」と答えたの。それにね「妻はけして料理が得意じゃない。その妻が一生懸命つくっている姿を見たら、残していいっていえないですよ」だって…。いいお父さんでしょ! 

でも、お母さんは「落ちたものは食べなくても良かったのに…」って。そしたら、お弁当を落とした子は「え? 食べなくて良かったの?」だって。今度からこの子は落としたものは食べなくていいって分かるわよね。

――そうか…! そうですね。食べなくていいときもあることが分かりましたね。

柴田先生:こんなふうに、しつけはそれぞれの家によって違う。だから世間一般のしつけを取り入れたら数十、数百あるかもしれないけれど、親が大事にしていることを子どもに教えていけばそこに大きな柱ができる。

そのあと、子どもがどう育っていくかは、その子の問題。苦しかったらしないし、感謝していたら同じようにやっていく。そうやって、つないでいくものなんじゃない? 親の思いを受け継いでいくことのほうが、きっと大事だと思う。





■もっと頼って、もっと迷惑をかけて! 孤独をはね返す豊かな子育て



ⓒMonet-stock.adobe.com



――自分流のしつけでいいんですね…! 子育ての一般論にあてはめるより、自分流でやると自分もしっくりくる感じがします。

柴田先生:そうね。お母さんはいろいろなものに脅かされることが多い気がするし、人を頼らない人も多い。「他人に迷惑をかけちゃいけない」というお母さんもいるわね。

――あ、私もそうでした。夫も頼りにならないし、子育てはひとりでやらなきゃいけないものだと…。

柴田先生:うんうん、そういうお母さんには「迷惑はかけるもの。迷惑をかけて人は生きていく。かけないのは孤独でしかない」って私はいうわね。

――迷惑をかけたくない、と思うのは孤独…?

柴田先生:迷惑をかけて、かけられるような人間関係をどれだけ築いているかが、お母さんや子どもの豊かさであると思うの。迷惑をかけられる人を何人持っているか。それが「生きやすいこと」につながる。

りんごの木クラブでも具合の悪いお母さんがいると、おうちまで子どもを送り迎えするのね。お弁当をつくったりして。

子育ては思うようにいかないものだから、自分が動けないときに「お願い!」っていえる関係を持っていると、生きやすいじゃない? 国や行政に頼ってもなかなかうまくいかないから、そんなときは地域力、友だち力なんかが力を発揮するわね。

――何かあってもお願いできる人が側にいれば、ママも心強いですね…。

柴田先生:そうね。でも、なかにはお手伝いしたら「本当に申し訳ない…」って私に謝るお母さんもいた。

だから私は「頼まれるって、うれしいんだよ」と伝えたの。「お願いできますか?」といわれると、私が役に立てる! って、うれしくなる。あなたには申し訳なく思うことでも、私にとってはうれしいことなのって(笑)。

――そんなふうにいわれたら、泣いてしまいます(涙)。

柴田先生:「何かお返しがしたい」といわれたけど、それは違う人にするといい。ありがたかったことは「ありがとう」っていえばそれでいい。その人に返すのではなくて、今度は違う人の役に立つ。元気になったときに、頼まれたらうれしいって思う出来事がきっとあるから、そのときのためにお返しはとっておいてほしいわね。

■子どものしつけは親だけの責任?



マンガ・イラスト/あらいぴろよ 



――少しずつでも人を頼りにできたら「私はひとりなんだ」という子育て中の孤独が薄らいでいきそうですね。そもそも「まわりに迷惑をかけたくない」という思いは「子育ては親がするもの」という世間一般の空気感が影響しているようにも思えます。

柴田先生:しつけって「子どものため」というより、周囲の目が怖いからやっているのかもしれません。

例えば、電車の中で子どもが騒いだら「しーっ」というでしょう? でも黙るのは一瞬(笑)。親だって困ってるのよ。

――そうです、そうです! いちばんなんとかさせたいと思ってるのは私たちなんです…!

柴田先生:そうよね。そんなときって、親じゃない別の大人が「うるさいよ」っていえばいいと思う。子どもは親じゃない人からいわれると、ビクっとするわよ。

――確かに、すごくびっくりしそうですね(笑)。

柴田先生:困っている人に対して「親であるあなたがなんとかしなさい」って冷たくない? いくつになっても子どものことは親のせい。一生、親が責任を持っていかなきゃいけないなんて、そんなバカな話ある?

――私も、そう思っていいんでしょうか…?

柴田先生:子どもと大人は生まれたときから違う人間で別人格なの。だから、子どもがうるさくしたときに「本当に困っちゃうよね。元気なのはありがたいんだけどね~」っていってくれる人がいたら、どんなにありがたいかって思う。「親だけがしつけなさい」という考え方は違うんじゃないかしら。

――そういう考えの人が増えたら、肩身の狭い思いをするママもきっと減っていきますね。

柴田先生:保育園の建設で反対運動があったりするけど、反対する人は自分の子育てのときはうるさいなんて思わなかったと思う。でも、静かな環境でずっと過ごしていると、気になるようになってしまうのね…。

自分の不都合は、遠ざけて排斥する風潮なんでしょうね。何よりも自分だけが大事。子どもがいてこその社会なのにね。

でも、実をいうと私も「うるさい」と思うことはあるのよ。遠足でたくさんの子どもたちが電車に乗ってきたりすると、車両を変えたくなったりします。

でも、ふと子どもの表情が目に入ると、「ああ…そうか、うれしいのね」って、はしゃいでいる子どもたちの気持ちが伝わってくる。自分の遠足のときの光景さえ浮かんでくると「楽しんできてね」なんて気分になるのよね。

子どもを物体として見ていると「自分を脅かすもの」に感じる人もいるかもしれないけど、そんなときは表情を見てほしい。人として見ると表情があって、自分自身に置き換えたりできるのね。

――子どもたちの顔を見ると、気持ちが変わることもある…。

柴田先生:そう。そう考えると「うるさい」と思うのは、こちら側に余裕がないときなのかもしれないわね。





■しつけなくても子どもはできる! あなどれない「観察力」

――先生、ここでちょっと疑問です。自分流に根拠のあるしつけだけを実践してみたものの、本当にそれだけで社会のマナーや礼儀などが身に付くのか、不安になるママもいるかと思うのですが…。

柴田先生:そうね。いいエピソードがあるわ。あるとき、りんごの木に通っている4~5歳の子どもたちを、隣の保育園の園長先生が招待してくれたのね。

お正月に獅子舞がくるイベントだった。イベントが終わったあとで園長先生が「今から年長さんは部屋の中でお茶のお点前をいただきます。一緒にどうですか?」と誘ってくれたの。

――楽しそう…!

柴田先生:でも「うちは無理です(たぶん、落ち着いていられない)」って断ったの。園長先生は「そんなこといわず、どうぞ」って…。

だから子どもたちに「これからごちそうしてくれるようだから、おじゃましようか?」と相談したの。そうしたら、子どもたちは玄関のほうにバーっと走っていって、靴をきちんとそろえてなかに入ったの。りんごの木では一切靴なんかそろえないのに…。

――「ここは、ちゃんと靴をそろえるべき」と分かっている…?

柴田先生:そう。きちんとする場所は「分かってる」ってことよね。

それから部屋の中でも正座してるのね。お菓子にあんこ入りのおまんじゅうが出たんだけど、あんこが苦手な子が中身を知らず、口に入れてしまった。

ペッと吐き出すかと思ったら、私の顔を見て「どうする…?」って泣きそうな顔をしてるの(笑)。「紙に包んで…」と小声でいったら、紙にそうっと包んだのね。

――ここでは、いつもみたいにペッと吐き出しちゃいけない、と思ったんですね。

柴田先生:そうかもね。こんなふうに子どもは大人を見ている。それに大人がどういうことを好むか、分かっていると思うの。だから家の中ではちゃめちゃでも、外にいくと「おはようございます」っていったりするじゃない?

外だと良い子っているわよね。これは外面が良いというより、場をわきまえる子なの。

――場をわきまえる子…。

柴田先生:保育園の園長先生に「ちゃんとした子どもたちですね」っていわれて、私「はあ…(苦笑)」って。そのあと「何か質問はありますか?」って園長先生がいったら、子どもたちは「はい! はい! はい!」って手を上げて。

「なんで、これはこうなんですか?」って質問攻め。そこは空気を読むんじゃなくて、自分を持っている。そこでのふるまいを心得ているんだと思ったの。

――場をわきまえて、ふるまう。知りたいこと、興味のあることは素直に聞く(笑)。その姿勢って、すごく理想的ですね。




心にストンと落ちる。柴田先生のお話はそんな表現がぴったりです。

「子どものことは親だけの責任」という空気感に「私がしっかりしなきゃ」「迷惑をかけちゃいけない」と息苦しくなっているママは多いのではないでしょうか。

みんなが心にゆとりを持てるような社会。そのためにまずは自分の心を楽にしてあげようと思いました。

参考図書:
『今日からしつけをやめてみた』(主婦の友社)
あらい ぴろよ (イラスト), 柴田 愛子 (監修)


「小さいうちから、きちんとしつけないと…」そうしておこなわれる「しつけ」は子どもにどんな影響を与えているのか? しつけなくして、親子が笑顔になる方法はあるのか? 子どもの目に映る世界は、大人が見ている世界とは違うもの。親子でストレスの溜まる「しつけ呪縛」から解放される一冊。




(すだ あゆみ)

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