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子どものきき手「いつ、なぜ、どうやって決まる?」【どうして9割が右ききとなったのか? きき手の不思議 第1回】

Woman.excite / 2019年7月11日 20時0分

写真


ⓒgera85-stock.adobe.com



お絵描きをしたり、お箸を使ってごはんを食べたり…。器用に指先を使うようになると、わが子が右ききなのか、左ききなのかが分かってくるようになりますよね。

けれど、なかには「左も右もどっちも使っている…」「左ききみたいだけど、なおしたほうがいいの…?」という不安や疑問がわいてくる人もいるようです。

そこで今回は『左対右きき手大研究』(化学同人)の著者である八田武志先生、に子どものきき手にまつわる疑問についてうかがってきました。


お話をうかがったのは…

関西福祉科学大学学長
八田武志先生


専門分野は、脳と行動とのしくみ解明を目指す神経心理学。特に左ききの脳のしくみ、左右脳の働きの違い、中高年者の加齢による脳の働きの様子を調べ、脳機能低下を予防する研究をおこなっている。



■「右ききか、左ききか」きき手は何歳ごろに決まる?

――わが子がスプーンやフォークを使ってごはんを食べはじめたとき「この子のきき手はどっちかな?」と気になったことがありました。そもそも左きき、右ききというのは、いつ頃から分かるものですか?

八田武志先生(以下、八田先生):親が子どものきき手に関心を持ちはじめるのは、2歳ごろからが多いでしょうか。でも2歳だと、きき手はまだ確かではないんですね。

――何歳くらいから分かってくるんですか?

八田先生:そうですね。アメリカの著名な発達心理学者の研究によると、0~1歳ではまだ左手、右手のどちらを多く使うなどの偏りは見られません。

2~3歳になると偏りは多少あるけれども、どちらの手も使っている状態になります。そして4~6歳になるともっぱら片方の手を使うようになり、7~14歳で安定して一方の手を使うという結果が出ているそうです。

――長い…! きき手が決定するまでには、思ったより時間がかかるんですね…!

八田先生:人が手を自由に動かし、細かい運動ができるようになるには生まれてから5年以上の年月が必要になります。きき手が分かるのは自由に手先を動かせるようになってから…の話なんですね。

――なるほど! きき手の判明は身体の発達とも関係しているんですね。

■「9割が右きき、1割が左きき」その意味は?

――先生、世間では圧倒的に右ききの人が多いですよね。右ききの私は、左ききの人に出会うと昔からなぜか「かっこいい…!」と思ってしまうのですが(笑)。右ききの人が多いことに理由はあるのでしょうか?

八田先生:研究によれば、きき手の決め方や文化差による違いを考慮しても、全世界で右ききではない成人は10%程度といわれ、90%は右ききといわれています。

――左ききの人は10人中、1人…! やっぱり少ないですね…。

八田先生:「なぜ右ききが多いのか?」という疑問は多くの人が持っているかもしれません。でもこの問いに対する明確な答えは「今のところない」といえるでしょうね。

――右ききが多いのはなぜなのか。はっきりとした理由は解明されていないということでしょうか?

八田先生:そうです。考えられる説はいくつかあるのですが…。現時点で私がお答えするとすれば「右ききが生存に適していたため」でしょうね。

――右ききが生存に適している…?

八田先生:人は生まれてから死ぬまでの発達過程で、環境と相互に関わり合いながら遺伝子情報があらわれます。

手の運動は、脳の運動野がコントロールしています。手指の運動に関しては、右ききの人は左脳の運動野、左ききの人は右脳の運動野の働きが優れるようになるんです。

人類の祖先には、このような左右脳の差を持たないケースも存在していた可能性はありますが、右ききの遺伝子情報を持つ方が、なんらかの理由で生存に適していた、と考えられるのではないでしょうか。

――右ききが生存に適しているのなら、どうして全員が右ききではないのでしょうか?

八田先生:左ききの人がいなくならないのは、左ききの人も人類にとって重要な役割を担っているからでしょう。

右ききが生存に適している理由、左ききが担っている重要な役割は、残念ながらはっきりとした答えはまだない状態です。

でも、全員が右ききにならず、1割の左ききが存在しているのは事実ですよね。この事実が何を示すのか? これからの研究で明らかにされていくかもしれませんね。






■子どものきき手はどっち? 簡単に見極める方法


ⓒ kai-stock.adobe.com


――子どものきき手がどちらかハッキリしないと、もやもやすることもあります。きき手を見極める方法などはあったりするのでしょうか?

八田先生:きき手を見極めたいときは、片手で行う日常生活での動作について、どちらの手を使うかをたずねる質問紙法というのがあります。

――質問紙法…?

八田先生:片手動作をできるだけたくさん挙げたうえで、判別力の高い動作を再現性などをふまえたうえでふるいにかけます。さらに、統計学に基づく手続きをへて、10~20項目程度に精選して作成されたのが、質問紙法です。

――質問紙法に答えていけば、きき手がある程度は分かる…?

八田先生:そうですね。大体の傾向は知ることができます。でも片手で行う動作は、例えば近年出現したスマホでの文字打ち動作などのように時代とともに変化していくので注意が必要です。

ただし、質問紙法は大人のきき手を見極める場合に有効で、文章の理解力などを考えると、幼児や年少の児童には不向きでしょう。

――なるほど…。では、わが子のきき手を見極めるにはどうすればいいのでしょうか?

八田先生:先ほどもいいましたように、きき手が分かるまでにはある程度の時間がかかります。質問紙検査よりも簡単な動作を行わせることで判定するのが良いでしょう。

――具体的にどんな方法になりますか?

八田先生:身体の正面、右側、左側にオモチャなどを置いて、どちらの手で取り上げるかを観察することです。オモチャの位置に関係なく、距離が近い・遠いに関係なく、手を正面でクロスしてでもオモチャを取り上げる場合は、その手をきき手とみなして良いでしょう。

――なるほど…! それは分かりやすいですね。何度か位置を変えてオモチャを置いてみる。どちらの手で取ろうとするかで、その時点でのきき手が分かるんですね。

■きき手を決めるのは遺伝子? 大人になってもきき手が変わらない理由

――先生、大人になってから自然にきき手が変わることってありますか?

八田先生: 気づかないうちに自然にきき手が変わることはないでしょうね。

――大きくなってからきき手を変えるのは相当難しい…ということですか?

八田先生:そうですね、難しいです。その理由として、きき手は遺伝子情報による脳の働きで、手指の運動をコントロールしているからです。つまり一定の年齢になると遺伝によって左右どちらからの手を偏って使用する傾向が生まれる、ということです。

――持って生まれた遺伝子情報にそって、きき手が決まる…。

八田先生:そうです。きき手の変更は絶対不可能ではありませんが、あらわれてきた遺伝子情報に逆らうことになりますよね。だから、自然に変わるのは無理なんですね。

――自然にさからって変えようとするのは、大変なんですね。

八田先生:そうですね。運動行為は自動性が強いのが特徴です。だから一旦できた左右手の運動プログラムは、意識しなくても自動的に発動します。

そのため、消したり変えたりするのは簡単ではありません。もし変えようとするなら、かなり意図的な訓練作業が必要になると思います。




子どものきき手は遺伝情報にともない、自然に決まること。きき手がしっかりとあらわれるまでには数年の月日が必要なことが分かりました。まだまだ知りたいきき手のこと。次回は「左ききは右ききになおすべき!?」というテーマでお話をうかがいたいと思います。

参考図書:
『左対右きき手大研究』(化学同人)
著 八田武志


「なぜ右ききが多いの?」「きき手はどうやって決めるの?」「スポーツ選手は左ききが有利?」などなど。世の中の「きき手」にまつわる素朴な疑問やうわさについて、研究例を基に紹介。きき手の不思議を探求する一冊。




(すだ あゆみ)

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