【医師監修】母乳はいつまであげていい? 断乳・卒乳のタイミング

Woman.excite / 2019年11月21日 21時30分

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断乳や卒乳は、母乳育児の最後にして最大の難関であるといえるでしょう。ママと子どもの大切なコミュニケーションタイムであることから、できればいつまでも授乳したいと考える人もいるかもしれませんね。

果たして、母乳はいつまで与えるものなのでしょうか。このコラムから、ママが納得のいく答えが見つかりますように。


【監修】
イシハラクリニック副院長 石原新菜 先生


小学校は2年生までスイスで過ごし、その後、高校卒業まで静岡県伊東市で育つ。2000年4月帝京大学医学部に入学。2006年3月卒業、同大学病院で2年間の研修医を経て、現在父、石原結實のクリニックで主に漢方医学、自然療法、食事療法により、種々の病気の治療にあたっている。クリニックでの診察の他、わかりやすい医学解説と、親しみやすい人柄で、講演、テレビ、ラジオ、執筆活動と幅広く活躍中。

著書に、13万部を超えるベストセラーとなった『病気にならない蒸し生姜健康法』(アスコム健康BOOKS)をはじめ、『「体を温める」と子どもは病気にならない』(PHP研究所)等30冊を数える。


■母乳はいつまであげる?

母乳育児のメリット・デメリット


赤ちゃんの栄養源である母乳。母乳を与えることは赤ちゃんのおなかを満たすほかにも多くのメリットがあり、厚生労働省では母乳育児の優れた点として次の6つを挙げています。


1.免疫学的感染防御作用がある
2.成分組成が乳児に最適であり、代謝負担が少ない
3.アレルギーを起こしにくい
4.出産後の母体の回復を早める
5.母子相互関係の良好な形成
6.衛生的、経済的で手間もかからない

アレルギーが出にくく、赤ちゃんを病気から守るための免疫物質も含まれている母乳は、赤ちゃんにとって良いことづくめの栄養です。このほか、母乳を飲むことで赤ちゃんの口や舌、脳の発達を促したり、SIDS(乳幼児突然死症候群)の発生率が低くなることも注目されています。



また、母乳育児は赤ちゃんだけではなく、ママにとってもメリットがあります。体の回復が早まるほか、母乳を分泌することによって消費エネルギーが増大。授乳が自然な産後ダイエットにもつながるといわれています。

メリットがある一方、デメリットも。それは、母乳の量が足りているかわかりにくいこと。ミルクとは違って母乳は飲んだ量が目に見えないので、ちゃんと母乳が出ているのか不安に感じてしまいますよね。

目安として、
1.体重が増えているか
2.赤ちゃんの機嫌は良いか
3.授乳間隔が3~4時間あいているか
4.うんちの回数がいつもより減っていないか

以上の4つをクリアしていれば、母乳の量は足りていると考えられます。しかし、個人差があるので、普段から赤ちゃんの状態を観察しておくことが大切です。

参考サイト:
厚生労働省「授乳・離乳の支援ガイド(2019年改訂版)」
厚生労働省「妊産婦のための食生活指針―「健やか親子21」推進検討会報告書―」
参考書籍:『母乳育児ミルク育児の不安がなくなる本』(主婦の友社) 監修 渡辺とよ子



母乳育児の実態


近年、母乳育児への関心は高まるばかり。母乳で育てることを希望する人は多く、妊娠中の女性を対象にした厚生労働省の調査では、子どもが生まれたら母乳で育てたいと回答した人が全体の9割以上にものぼりました。

実際に母乳で育てているママも多く、10年ごとに実施されている調査によると、母乳で育てている人の割合は増加傾向にあります。

注目したいのが、母乳育児を選択するワーキングマザーが増えている点。平成27年度の調査では、平成17年度とくらべると母乳育児をしているワーキングマザーの割合が22.6ポイントも増加しています。

仕事をしている間、ママと赤ちゃんとは離ればなれ。だからこそ、母乳育児のスキンシップがよりいっそう必要だと考えるママが多いのかもしれませんね。

参考サイト:厚生労働省「平成27年度乳幼児栄養調査(2016)」



母乳はいつまであげてOK?


授乳をママと子どもの大切なコミュニケーションととらえるならば、母乳をいつまであげても問題はありません。実際、最近では2歳以降になっても母乳をあげるママは多いようです。

しかし、いつまでも母乳を与えていいとはいっても、成長に伴って母乳だけでは栄養不足になってしまいます。母乳だけを栄養源とするのは、生後5~6カ月ころまで。それ以降は母乳をあげながらも、主な栄養摂取元は離乳食となるようにシフトしていきましょう。

参考書籍:『母乳育児ミルク育児の不安がなくなる本』(主婦の友社) 監修 渡辺とよ子



WHOの見解


世界保健機関(WHO)によると、生まれてから1時間以内に初乳を飲むことが赤ちゃんにとって重要なのだとか。初乳は「最初のワクチン」と考えられるほど、赤ちゃんに必要な栄養素や免疫が豊富です。また、初乳を与えることで乳腺を刺激し、その後の授乳がスムーズに進むという効果もあります。

さらにWHOでは、生後半年間は母乳だけで育て、その後は離乳食と併せて最低でも2年以上母乳を与え続けることを推奨。母乳で育てることで乳幼児を病気から守り、同時に母親の乳がんや卵巣がん、産後うつなどのリスクが軽減されるとしています。

参考サイト:世界保健機関(WHO)「2018年世界母乳育児週間」



母乳の栄養はいつまであるの?


母乳の成分が変わったり、ママの食事内容によっては母乳の味が変わることもあります。なんと、1回の授乳の中でも、最初は低脂肪で、しだいに高脂肪へと変化するのだとか!

また、出産から日がたつにつれ、母乳の栄養も変化がみられます。母乳に含まれるたんぱく質や鉄分は出産直後からゆるやかに減少し、産後300日までには半分になってしまいます。母乳の栄養が減ると聞けば心配にもなりますが、そのぶん赤ちゃんが母乳を飲む量が増え、生後6カ月ころまでは赤ちゃんに必要な栄養量はまかなえるのでご安心を。

さらに、このころになると離乳食が始まります。母乳から摂取できる栄養量は減ってしまっても、離乳食から栄養がとれるようになるので心配はいりません。

母乳はいつまで出るの?


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赤ちゃんの母乳を飲む量が減るにしたがって、母乳の分泌量もだんだんと減ってきます。裏を返せば、赤ちゃんが母乳を飲み続けていれば、いつまでも母乳は分泌し続けるということです。

断乳や卒乳後は残った母乳を搾乳する必要がありますが、搾りすぎると母乳はまた分泌を続けてしまいます。もう母乳が必要ないことを脳に認識させるためにも、3日ほど搾乳せずにおきましょう。胸が張ってしまったときには全部搾るのではなく、張りを少しだけ解消する程度にするのがポイントです。

参考書籍:『母乳育児ミルク育児の不安がなくなる本』(主婦の友社) 監修 渡辺とよ子







■母乳はいつまであげよう…断乳と卒乳の違いとは
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母乳やミルクを与えるのを完全にやめて、栄養の摂取方法を離乳食に移行することを「断乳」や「卒乳」といいます。しかし、この2つには大きな違いがあるのです。

断乳とは


赤ちゃんの意志とは関係なく、母乳やミルクをやめることを断乳といいます。ひと昔前までは、1歳になるのをきっかけに母乳をやめることが勧められていたそう。

近年では、ママが病気になって薬の服用が必要になったり、職場復帰を機に断乳をする人が多いようです。

卒乳とは


子どもの成長を機に、ママが赤ちゃんに言い聞かせたり、子どもが自らの意志で飲まなくなることを卒乳といいます。最近では断乳よりも卒乳を選ぶママが多いようです。

子どもが自然に母乳やミルクを欲しがらなくなるまで見守る自然卒乳や、卒乳にむけて言い聞かせながら授乳回数を減らしていく言い聞かせ卒乳というスタイルがあります。

参考書籍:『いちばんやさしいはじめての母乳育児』(成美堂出版) 監修 SOLANIN(ソラニン)



断乳すべき? 卒乳まで待つべき?


離乳食が1日3回になり、食事からきちんと栄養がとれるようになったら、断乳や卒乳をしても問題ありません。しかし、いつまで授乳を続けるかを判断するのは難しいですよね。

ママが体調を崩して薬を飲むことになったのをきっかけに、授乳をやめるのはよくあるケース。しかし、一般的な薬の多くは授乳中にも服用でき、薬の成分が母乳に出たとしてもごくわずかで、赤ちゃんに影響を与える可能性は低いとされています。また、予防接種を受けたあとも同様に授乳を続けても問題はありません。

まだまだ授乳を続けたいのに、薬の服用を機に断乳や卒乳したり、体調が悪いのに薬を飲むのを我慢する必要はありません。体調が悪いときは産婦人科にかかり、授乳中であることを伝えて薬を処方してもらうと安心です。

2歳を過ぎても母乳で育てられている子どもは世界で49%。日本でもいつまでに断乳や卒乳をさせるべきといった目安は定められていません。断乳するにしても卒乳するにしても、まずはママが自分の気持ちに納得して進めることが大切です。

参考サイト:
厚生労働省「授乳・離乳の支援ガイド(2019年改訂版)」
ユニセフ「世界子供白書2017 栄養指標」



■母乳はいつまで続ける? やめるときの注意点
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子どもの数だけ母乳をいつまであげるかは変わる


子どもが成長するスピードはそれぞれ違います。同じように、断乳や卒乳にチャレンジしたり、成功するタイミングだって、みんな違って当たり前です。

卒乳をしても大丈夫だとされる条件として、形のある食べ物を食べることができ、離乳食から必要な栄養がとれていることや、ストローやコップを使って十分な水分がとれることが挙げられます。

同じ月齢でも発達には個人差があるので、同じタイミングで授乳をやめることはできないでしょう。また、授乳が親子のスキンシップとして重要な意味を持っていて、親子関係や子どもの心に影響が出るおそれがある場合は、無理に卒乳する必要もありません。

母乳がいつまで必要になるかは、子ども次第。子どもの成長に合わせて、卒乳までの成長を見守りたいものです。

参考サイト:
日本歯科医学会「小児の口腔機能発達評価マニュアル」



母乳をやめるときの注意点1:いつも以上にスキンシップを


赤ちゃんの体はもちろん、心にも栄養をもたらしてきた授乳。卒乳や断乳をすると、授乳に代わって赤ちゃんの心を満たすスキンシップが必要です。

たとえば、寝かしつけ時の添い乳の代わりに読み聞かせをしたり、背中をトントンしながら添い寝をしたり、いつもより少しだけ長く抱っこして触れ合う時間を持つのもいいかもしれませんね。

母乳をやめるときの注意点2:おっぱいのケアも忘れずに


授乳の回数が徐々に少なくなっていく卒乳であった場合、乳房の張りが少ないため、特別なケアは必要ないでしょう。しかし、断乳や突然の卒乳だった場合にはケアが必要です。残っている母乳を搾乳して出し切ってしまいましょう。

このとき、搾乳の回数や量は、卒乳前の授乳回数や量を超えないこと。搾乳することで乳腺が刺激され、母乳の量が増えてしまいます。少しずつ回数を減らしながら出し切りましょう。

■まとめ

母乳育児をいつまで続けるかは人それぞれ。まわりが断乳や卒乳をしたからといって、焦ることはなさそうです。いつやめるかよりも、子どもとママが納得して母乳を卒業するほうが大切。

ママと子どもの納得のいく答えは、周りの人たちの中ではなく、自分たちの中にあるのかもしれませんね。

参考資料:
厚生労働省
世界保健機関
ユニセフ
日本歯科医学会
・『母乳育児ミルク育児の不安がなくなる本』(主婦の友社) 監修 渡辺とよ子





(河野能子)

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