【医師監修】妊娠中期のおなかの張りはガス? 張る原因と対処法
Woman.excite / 2019年11月27日 21時30分
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妊娠中期はおなかがふっくらとしてきて、「おなかが張る」状況もわかりやすくなります。
ママはおなかが張ると不安になるかもしれませんが、その原因と対処法は複数存在します。そこで今回は、おなかが張るさまざまな原因とその対処法を詳しく紹介していきます。
成城松村クリニック院長 松村圭子先生
婦人科専門医。1995年広島大学医学部卒業、同年広島大学付属病院産婦人科学教室入局。2010年、成城松村クリニックを開院。女性の「体の健康」「心の健康」のために、一般の婦人科診療だけではなく女性のあらゆる面をトータルにケア。講演、執筆、TV出演など幅広く活動。
著書に、『女30代からのなんだかわからない体の不調を治す本』(東京書店)、『医者が教える女性のための最強の食事術』(青春出版社)など多数。
■妊娠中期におなかが張る10の原因
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そもそもおなかが張るってどういうこと?
妊娠中は体の変化が著しいです。おなかの赤ちゃんはどんどん成長していて、ママのおなかもどんどん大きくなっていきます。そこに「黄体ホルモン」という「妊娠の成立や継続に深く関わるホルモン」が加わり、いくつもの症状が出てくるのです。
「おなかが張る」症状はそのなかのひとつです。赤ちゃんの成長とともにママの子宮も大きくなっていきます。子宮は「平滑筋」という筋肉でできていて、袋のような形をしています。この子宮の平滑筋が収縮すると、ママは「おなかが張った」と感じるようになるのです。
妊娠中に分泌される黄体ホルモンは、おなかの張りが起こらないように作用するのですが、子宮以外の部分にも関わってしまうため、体のあちこちでマイナートラブルが起こってしまうのです。
ここからは、妊娠中期に起こりがちな「おなかの張る原因」に焦点をあて、詳しくみていきましょう。
参考サイト:日本看護協会「妊娠」
妊娠中期におなかが張る原因1: ガスがたまっている
おなかの張りでまず考えられることは「おなかにガスがたまっている」ということ。これは妊娠中期に限らず起こることでもあります。
ただ、妊娠中のおなかのガスがたまる原因として、妊娠中に分泌される黄体ホルモンが関係します。黄体ホルモンは消化管のぜん動運動の低下を招き、腸管からのガス排出がスムーズにいかなくなり、おなかにガスがたまっていくのです。
消化管の機能は個人差がありますが、たまったガスは物理的に排出しなくてはなりません。そこでおすすめなのが「ガス抜きのポーズ」です。
1.まず仰向けに寝て、両足をそろえて伸ばします。
2.次に、息を吸いながらで片方の足を曲げてひざを抱えます。
3.息をはきながら、曲げた足を胸に引き寄せて、呼吸5回する間キープします。
4.反対の足も同様に行います。
これはおなかの張りやガス抜きに効果的なので、毎日の生活に取り入れてみては? ただし、おなかが出て難しい場合は、できる範囲で調整しましょう。
妊娠中期におなかが張る原因2: 便秘
妊娠すると、おなかの胎盤から多くの黄体ホルモンが分泌され、消化管のぜん動運動が低下します。すると水分吸収が多くなり、便が硬くなってしまう「弛緩(しかん)性便秘」になりやすいのです。
また、妊娠中期になると子宮が大きくなってきたことによって、外側から腸が圧迫されるため便秘を起こします。これは妊婦の約50%が訴えている症状でもあります。
予防や治療方法としては、以下の方法があります。
・朝食は欠かさずに食べる
・早起きを心がけ、時間の余裕をもつ
・食物繊維をしっかりとる
・仕事中でも便意があったらトイレに行く
参考サイト:
東彼杵郡医師会「おなかが張る(腹部膨満感)」
徳島県医師会「妊娠と便秘症」
妊娠中期におなかが張る原因3: 動きすぎた
妊娠中のママが家事や仕事などで動きすぎても、おなかの張る原因になります。とくにつわりが治まったあとは、「ようやく不快な気持ち悪さから解放された」ということで、家事や仕事をまとめてこなしたくなるのもわかります。
ただ、やはり過度な動きすぎには注意が必要です。自律神経やホルモンバランスの関係で、1日に何回か子宮収縮を繰り返すのは普通にあることです。
しかし、疲れているとそれ以上の「さらなるおなかの張り」を引き起こしてしまいます。張ったと思ったら、一度休憩をとりましょう。横になれる状況ならば横になって、しばらく安静にすることが大切です。
妊娠中期におなかが張る原因4: 激しい胎動
妊娠中期では赤ちゃんも少しずつ大きくなり、「胎動」を感じるママも多くなってきます。胎動とはおなかの中の赤ちゃんが動いて、赤ちゃんの体がママの子宮の壁に当たって、動きを感じる現象です。
妊娠5~6カ月ころには胎動がわかり、妊娠週数が進むにつれてだんだん力強くなっていきます。赤ちゃんは20~40分の周期で寝たり起きたりを繰り返しているため、同じ周期で動いたり、大人しくなったりします。ときには激しい胎動によって子宮収縮が起こり、おなかが張ってくることもあります。
妊娠中期におなかが張る原因5: 疲れがたまっている
疲れがたまっているときは、おなかも張りやすくなっています。妊娠中は何でも無理は禁物です。疲れたら早めに休憩をとりましょう。
毎日の睡眠も大切なので、十分寝るように心がけてください。心も体も休息をすることでリラックスして、おなかの張りもおさまってくるでしょう。
妊娠中期におなかが張る原因6: 性行為後
妊娠初期はつわりがあって性欲が減退していることがあります。つわりが落ち着いてくる妊娠中期では性欲が戻ってくる人もいるでしょう。経過が順調な場合は性行為も問題ありません。
ただし、無理な体勢やおなかに負担のかかるような姿勢はさけていきます。また、妊娠中の女性は、通常時にくらべ性器が充血しているため、激しいことはやめて、静かに行うことが好ましいです。感染予防のためにコンドームは装着しておきましょう。
注意したいのは性行為前後のおなかの張りです。行為中からおなかが張ることがありますが、そのときは行為を中断して安静にします。一過性のものであれば問題ありません。胸への刺激も子宮収縮の原因となるため、無理に行うことはさけましょう。
行為後の張りが気になる場合には、しばらく横になって安静にして様子をみておきましょう。
妊娠中期におなかが張る原因7:おなかを締め付ける服や下着
おなかの張る原因で、服や下着の締め付けすぎがあります。妊娠5カ月をすぎたころに犬の日の「安産祈願」で「帯祝い」をする風習がありますが、これも少々気を付けなければなりません。
というのも、おなかが重くなってきて、おなかを安定させるために腹帯やベルトを使用する方が多くなってきます。使うのは良いのですが、使用方法がまちがっていたり、しっかり支えようときつく装着してしまったりすると、逆効果になる可能性もあります。
使用方法が適切でないと、締め付けすぎて、逆におなかの張りを招いてしまうことがあるので、注意しましょう。
妊娠中期におなかが張る原因8:冷え
夏に起こりやすいのが、冷房による体の冷えです。暑い時期におなかが大きいと生活しにくいうえ、疲れやすくなり、何かと大変です。
職場でも冷房が効いた部屋にいることが多いかもしれませんが、体を冷やしてしまうとおなかの張りを招きやすくなります。さらにはおなかを壊す原因にもなり、体調を崩しやすくしてしまうので、妊婦はとくに要注意です。
体が冷えてしまいそうな場合は、カーディガンを1枚はおったり、ブランケットをひざにかけたりなど、対策をしておきましょう。
また、冬の寒い時期の冷えなら、暖房を入れたり、靴下を重ね履きしたりなど体が冷えないように温める工夫をしましょう。
妊娠中期におなかが張る原因9:前駆陣痛
「前駆陣痛」とは、妊娠中期から後期に起こる、おなかの一部に出てくる陣痛のような痛みです。痛みは出産ほど強くはないものの、子宮が収縮することで起こり、おなかも張ってきてしまいます。しかし、これは多くの人が妊娠中の経過でたどる反応なので、過度の心配は不要です。
前駆陣痛は起こるタイミングも不規則で、原因も明らかではないものがあります。しかし主に、「妊婦が活動的に動いたとき」「尿を我慢していたとき」「性行為後」「脱水傾向のとき」に生じやすいと言われています。
これらの状況は赤ちゃんにストレスがかかりやすいため、赤ちゃんの血流を保つために前駆陣痛が起こり、子宮が収縮したりゆるむなどして血液を調整している状態です。
前駆陣痛が起こってしまったときは、リラックスして安静にすること、水分補給を十分にすること、などで対処しましょう。
妊娠中期におなかが張る原因10:ストレス
「ストレスは万病のもと」といいますが、おなかの張りに対してもストレスをためるのは良くありません。ストレスはホルモンバランスや自律神経を乱す原因となるからです。ホルモンバランスや自律神経を乱してしまうと、子宮が収縮し、おなかが張りやすくなります。
とくに妊婦はおなかが大きくなるにつれて、体が動きにくくなり、ストレスを感じやすいです。さらに揺れ動く体調の変化や今後の出産育児に対する不安など、精神面でもストレスがたまりやすいです。
上手にストレスを発散できるように、おいしいものを食べたり、休日に友人と出かけたりなど、工夫をしてリフレッシュすることをおすすめします。
マタニティーライフを自分なりに楽しく過ごせると、おなかの張る回数も減ってくるでしょう。
■妊娠中期におなかが張ったら受診したほうがいい?
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受診せず様子を見ていいのはこんな時
おなかが一時期張ったとしても、横になるなど安静にしておさまってくる場合は問題ありません。原因としては、ママは活動的に動きすぎてしまったり、生理的な子宮の収縮だったりなどが考えられます。
つわりが落ち着いてくると、気分が上がってどんどん動きたくなってしまいますが、無理は禁物です。こまめに休憩を取りながら、体調を管理するようにしましょう。
受診したほうがよい場合も!
反対に「これは受診したほうがいい」というケースは、安静にしていてもおなかの張りがおさまらない場合です。痛みの間隔が短くなっていったり、痛みがだんだん強くなったりするときは「切迫流産」(流産が差し迫った状態)や「切迫早産」(早産が切迫した状態)の可能性があります。
また、出血を伴う場合はすぐに受診しましょう。流産や早産の可能性や、妊娠中期以降に起こりやすい「常位胎盤早期剥離」(出産前に子宮から胎盤がはがれてしまうこと)などのトラブルも考えられるからです。出血があった場合は必ず原因を解明する必要があるため、早めの受診をおすすめします。
参考サイト:
日本産科婦人科学会「早産・切迫早産」
おなかの張りが心配なときに行うNSTとは
NST(ノンストレステスト)とは、ママのおなかの張りや赤ちゃんの心拍数を確認する方法です。妊婦のおなかに分娩監視装置という2種類のセンサーをつけ、子宮の収縮状態や赤ちゃんの心拍数をはかっていきます。
計測時間は約40分間で、赤ちゃんが元気かどうかを確認します。赤ちゃんは寝たり起きたりを20〜40分間ごとに繰り返すため、赤ちゃんがおなかで起きている場合は20分ほどで完了することもあります。
■妊娠中期の夜におなかが張りやすい時は寝方をチェック
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うつぶせ寝や仰向けはNG?
妊娠中期は安定期ですが、おなかはだんだん大きくなってきています。妊娠前にうつぶせ寝が好きだった人はその体勢がしたくなるかもしれませんが、そろそろおなかが圧迫されて苦しくなってきます。寝方によっておなかも張りやすくなってくるでしょう。
仰向け寝も、妊娠中期からはおなかが張りやすくなり、おなかが重くて寝られなくなってきます。足がむくんだり、つったりなどの不快な症状も出やすくなります。
さらに仰向け寝は、大きくなった子宮が脊柱の右側にある下大静脈を圧迫し、低血圧になる「仰臥位低血圧症候群」(ぎょうがいていけつあつしょうこうぐん)を引き起こす可能性もあります。うつぶせ寝や仰向け寝はできるだけ控えておきましょう。
参考サイト:日本救急医学会「仰臥位低血圧症候群」
いい寝方はある?
妊娠中期以降でおすすめしたいのは、抱き枕を使って、横向きで寝ることです。座布団やクッションや枕を使用し、できるだけ楽な姿勢で寝てみましょう。低反発の素材やさらさらしたビーズクッションなどは使いやすいかもしれません。
また、おすすめの体勢で「シムス位」というものがあります。これは、横向きになり、上側になる足を前に出して、ひざを床につける体勢です。この体勢を参考に、抱き枕などを使用し、一番寝やすく、楽な体勢で眠りにつくのがいいでしょう。
■妊娠中期におなかが張った時の対処法7つ
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対処法1:安静にする
おなかが張ったら、第一は安静にすることです。安静とは座ることではなく、横になって休むこと。おなかが張ったまま動くのはおすすめできません。外出先ではすぐに横にはなれない状況かもしれませんが、ベンチがあれば浅く座って、背もたれにたっぷり体を預けて休憩し、おなかの張りが治まるまで待っておきましょう。
対処法2:体を温める
おなかの張りは冷えが原因の場合もあります。とくに夏場の冷房効いた部屋では、いつの間にか体が冷えてしまうことがあるので気をつけます。冬ならひざ掛けをしたり、足先から冷え込まないように厚手の靴下をはいてみたり。温かい飲み物で一息いれるなど、工夫してみましょう。
対処法3:無理しない
妊娠中は安定期でも無理は禁物です。妊娠初期よりつわりが治まり、体調が落ち着いてくることから、仕事もプライベートもどんどん行動してしまうママがいます。気持ちは分かりますが、自分の体調と相談して行うべきです。ときどき小休止を入れて、無理をしないように心がけましょう。
対処法4:ストレスや疲れはためない
「おなかが張る原因」の部分でも記載がありましたが、ストレスや疲れはホルモンバランスや自律神経を乱す一因になります。ホルモンバランスや自律神経が乱れると、子宮が収縮し、おなかが張る原因になります。休日はのんびりおいしいものを食べる、疲れたらしばらく横になるなど、疲れをためずにリラックスできるよう、日々の生活を見直すのもいいですね。
対処法5:ゆったりとした服装で
おなか周辺を締め付ける服や腹帯はおなかが張る原因になるのでやめておきましょう。ゆったりした服装で、体を楽に動かせることが一番です。
対処法6:軽い運動を取り入れる
気分転換になる適度な運動やストレッチをするのはおすすめです。ストレス解消にもなって、心も体も健やかになるでしょう。おなかの張る回数も少なくなってくるかもしれません。軽い運動をしながらゆっくりと深呼吸すると、さらにリラックスできそうです。
対処法7:食事にも気をつけて
最後に食事です。ママの健やかな体は毎日の食事からです。主食を中心にしっかりとり、エネルギーを蓄えましょう。不足しがちなビタミンとミネラルは副菜から摂取し、体をつくる肉や魚などの主菜も適量にし、バランスよく食べます。アルコールはやめておきましょう。
参考サイト:
厚生労働省「妊産婦のための食生活指針」
厚生労働省「妊娠中と産後の食事について」
■まとめ
妊娠中期のおなかの張りに悩むママは多いと思います。ただおなかが張る、といってもご紹介してきた通り、原因はさまざまです。「今、なぜおなかが張っているのか」自分では原因が分からなかったとしても、自覚症状があれば、早めに休養しましょう。
また、出血があるなど、何か心配ごとがあれば、すぐに産婦人科を受診するように心がけていきましょう。
参考資料:
・日本看護協会
・東彼杵郡医師会
・徳島県医師会
・日本産科婦人科学会
・日本救急医学会
・厚生労働省
(斉藤カオリ)
外部リンク
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