海藻とはどんなもの?種類や海草との違いから多彩な利用方法まで紹介
Woman.excite / 2020年8月14日 11時0分
昆布やわかめ、海苔など海藻類は私たちの普段の食事にとって欠かせない食材ですよね。
海藻は、出汁をとったり、お味噌汁に入れたり、サラダにのせたりと幅広い料理で活躍します。
海藻を食べるのが大好きという方もいらっしゃると思いますが、意外と海藻の生態などについては、知らない方も多いのではないでしょうか。
今回の記事では、意外と知られていない海藻の生態や、海草との違い、海藻に含まれる栄養とその効能などについてご紹介します。
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■海藻とは
「海藻って、海に生息していることは知っているけど、どんな生態なんだろう?」「生態系でどんな役割があるのかなあ」という方に向けて、まずは海藻の生態や海藻が自然界で担っている役割について簡単にご紹介します。
・海藻の生態
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そもそも、海藻とは、「海の中で育つ藻類」のことを指します。
特徴のひとつは、樹木や野草のような地上に育っている植物と同じように、海の中で光合成を行っていること。海に注ぎ込む太陽の光と、海水に溶けている二酸化炭素を使って、自分の体に必要な栄養と酸素を作り出しているのです。
このように海藻が育つためには太陽の光が必要なので、海藻は、太陽光が海底に注ぎこむ海の浅瀬から数10メートルの水深までの沿岸部に生息しています。
海藻の体の特徴としては、葉・茎・根の区別がつかないということが挙げられます。植物は土にはやした根から栄養を吸収しますが、海藻には根のような器官はなく、岩場に体をくっつけるため固着の機能しか持っていません。海のなかでは、この固着機能を使って主に岩場にひっついています。
そのほかにも陸上の植物との違いがあります。植物は種によって繁殖しますが、海藻は海の中を泳ぐ「胞子」が繁殖に使われ、子孫を増やします。
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普段食べるいろいろな海藻は、その色によって大きく「紅藻類(こうそうるい)」・「褐藻類(かっそうるい)」・「緑藻類(りょくそうるい)」の3種類に分類されます。
普段の食事で見かける海藻の種類はそれほど多くはありませんが、実は海藻の種類はとても多く、日本近海だけでも1,500種類以上もの海藻が生息しているそうです。
また、昆布などの大型の海藻類は東北や北海道などの寒い地域で特によく育ちます。
逆に沖縄などの暖かい海では、大型の海藻類などはみられません。もちろん、沖縄の有名な食べ物「海ぶどう」のように、暖かい海でも小型の海藻類は豊富に採られています。
・海藻が担う役割
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なんといっても海藻は、沿岸部の「生産者」として大きな役割を持っています。海藻は太陽の光と二酸化炭素を使って、無機物から有機物を作り出して自分の体を作り上げ、さまざまな海の生物のごはんになっているのです。
そのほか、海藻が海底の岩場に育ち、森のようにしげることで、魚やほかの小さな海の生き物の生息地を提供するという大切な役割も持っています。魚の産卵場所になったり、小さな生き物たちが天敵から身を隠す場所としても役立っているのです。
海藻は、生産者として生態系を回していくのに必須な栄養分を作り出したり、生態系の維持にとって大切な生物の多様性を支えるという大きな役割を持っているんですね。
■海藻の種類
次は、意外と知られていない海藻の種類についてご紹介します。前述したとおり、海藻はその色の違いから大きく「紅藻類」・「褐藻類」・「緑藻類」の3種類に分類されます。ここでは、それぞれの種類について解説します。
・紅藻類
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その名の通り、海藻の色が赤みがかっているのが紅藻類の特徴で、水深が比較的深いところに生育しています。水深が深いところは、太陽の光が届きにくいのですが、そんな少ない光でも効率的に光合成を行うために、赤色の体を持っています。
紅藻類に分類される海藻のうち、食用になっている代表的なものは、ふりかけなどで人気のゆかり、江戸時代から有名な高級品であるアサクサノリ、ところてんや寒天の材料になるテングサなどがあります。
・褐藻類
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次は、多くの食用藻類が分類される褐藻類についてご紹介します。こちらには、褐色の藻類が含まれます。特に1mを超えるような昆布などの大型海藻は、主に褐藻類にみられます。
食用になっている褐藻類には、昆布・わかめ・もずく・ひじきなどが挙げられます。わかめは、緑色の見た目なのになんで褐藻類なの? と思われるかもしれませんが、火を通す前のわかめの色は、実は褐色なんです。
昆布はお出汁をとったり、和え物やお煮しめとして幅広く和食に使われていますし、わかめはお味噌汁の具材やサラダに入れると、とてもおいしいですよね。もずくはお酢でさっぱりと食べたり、お醤油・砂糖で味付けしたひじきの煮物も人気です。このように日々の食事に欠かせない多くの海藻が、褐藻類に含まれています。
・緑藻類
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最後にご紹介するのは、緑色の海藻が含まれる緑藻類です。主に浅瀬に生育しています。
佃煮やお好み焼きにかける青のり粉に使われるアオノリ類や、沖縄名物の海ぶどう、お味噌汁の具材として人気のアオサなどが緑藻類に含まれます。
・食用だけでも100種類以上!
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このように大きく3つに分類され、豊富な種類を持つ海藻。日本だけでも1,500種以上の海藻が生息していて、食用にしている海藻は100種類以上にものぼります。
海藻を食べるのは日本だけという話を聞いたことがあるかもしれませんが、実は、日本以外にもアイルランドやスコットランドなどでも海藻を食べる文化があるそうです。
■海藻と海草の違い
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ここまで海藻の生態や種類について紹介してきましたが、海藻と似た「海草」という言葉がありますよね? 「かいそう」や「うみくさ」と読まれる海草ですが、海藻と海草には、どのような違いがあるのでしょうか。
このふたつの言葉、似ているようで異なる生物群のことを指しています。ちなみに英語では海草は「sea grass」、海藻は「sea weed」という別の単語が当てられています。そこで、海藻と海草の違いについて解説します。
・『花』が咲くかどうか
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海藻と海草の大きな違いは、「花」が咲くかどうかです。海藻は花をつけず、胞子によって子孫を増やしています。一方海草は、海の中で育つ種子植物なんです。特定の時期がくると海の中でも花を咲かせ、そして種子を作って、子孫を増やします。
そのほか、海藻と海草は、その体の作りにも違いがあります。海草は、葉・根・茎の違いがはっきりしている一方で、海藻はこの根や茎の区別がはっきりしていません。
陸上の植物は、もとは海藻から進化した生物といわれており、陸上の植物が再び海のなかで生きられるように進化したのが、海草なんです。
・海草は食用ではない
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また、食用かどうかも海藻と海草の大きな違いです。これまでに紹介したように、100種類以上もの海藻が食用になっている一方で、人が食用にしている海草はありません。ちなみに、海に住む哺乳類ジュゴンは、海草を好んで食べるそうです。
有名な海草としては「アマモ」が知られていますが、アマモを含めても海草は、世界で60種類くらいしかないそうです。海藻は日本だけで1,500種類も知られていますので、種類の多さも海藻と海草では大きく異なるんですね。
・共通点もある
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もちろん、海藻と海草の共通点もあります。
まずは、両方ともに海に生育し、光合成を行う生産者であるということ。また海藻や海草が、魚や海の生物の生息場所や産卵場所を提供したり、天敵から小さな生物が身を守る隠れ家になっているというところも共通点です。
■海藻の利用用途【食材以外】
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わたしたちは、さまざまな種類の海藻を食材として口にしていますが、海藻は食用以外にも幅広い用途で使われています。そこで、食材以外の海藻の利用用途についてもご紹介します。
・肉加工品に
まずは、肉加工にも海藻が使われてることがあります。たとえばソーセージやハムといった加工肉製品を作るときに、海藻由来の成分を使うと、製品に弾力を持たせる効果があるそうです。
・シャンプーやコンディショナーに
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そのほか、紅藻類からとれるカラギーナンという成分は、シャンプーやコンディショナーに含まれています。
海藻は髪の毛にいいと言われているのも、納得ですよね。
・肥料になるもの
海岸地域で田畑を耕す地域では、海藻が古くから肥料として使われてきました。
海藻はカリウムなどのミネラル分が多く含まれることや、オーキシンと呼ばれる植物に大切なホルモンが豊富に入っていることで、植物の成長を促してくれるのです。
古くからは、ローマ時代にも海藻が肥料として利用されてきたそうですよ。
・科学技術の研究も進められている
海藻の中には、バイオエタノールを生成する種類があり、バイオエタノールの安価な供給のために海藻に関する研究が進められていいます。
そのほかテングサからつくられる寒天の培地が細胞培養に使われたり、織物の糸として海藻が使われている地域もあるそうです。
■海藻の栄養と効能
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海藻というと、栄養がたっぷりで、健康にもいいというイメージがある食材のひとつですよね。そこで、海藻が持っている健康に嬉しい栄養とその効能についてご紹介します。
・海藻の栄養
海藻には、評判通りさまざまな栄養素が含まれています。特に豊富なのが水溶性の食物繊維。そのほかマグネシウム・カルシウム・鉄などのミネラルが豊富に含まれます。
人気の海藻であるわかめには、カリウムが豊富ですし、昆布にはマグネシウムやヨウ素がたっぷりと入っています。また煮物にするとおいしいひじきには、カルシウムが多く含まれているんです。
くわえて海藻自体のカロリーは低く、脂肪分も少ないので、まさに私たちの健康にとってはメリットだらけの食べ物といえます。
でも海藻を食べるときに気をつけてほしいことが一点だけ。それは海藻の加工食品に含まれる塩分です。人気の海苔や佃煮には、塩分が多く入っているものがありますので、そういった加工食品を食べすぎると、塩分過多になってしまう可能性もあります。
・海藻の効能
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なんといっても私たちの健康にとって嬉しいのは、海藻に含まれる水溶性の食物繊維です。この食物繊維によって、一緒に食べた炭水化物や脂肪などの吸収がゆっくりとなり、食後の血糖値の上昇が緩やかになるという効果が期待できます。また便秘解消効果ものぞめます。
そのほか、カリウムには血圧を下げる効果、カルシウムには骨粗相症予防などにも良い効果が期待できるのです。最近の研究では、昆布やわかめを食べると内臓脂肪が減少するという成果も明らかになりつつあるようです。
■海藻をおいしく食べて健康に
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以上、意外と知られていない海藻の生態やその種類、海草との違い、海藻に含まれる栄養などについてご紹介しました。
私たちの身体に嬉しい栄養がたっぷりで、味もおいしく、ヘルシーな海藻。多くの種類の海藻を食べて、いろいろな栄養をバランス良く吸収したいですね。
(AYA)
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