パレルモ風カポナータ 【ソムリエが教えるワインと簡単リッチ飯 vol.3】

Woman.excite / 2020年10月3日 8時0分

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皆様こんにちは!ソムリエ佐藤尊紀です。
誰もが食べてる、作ってる、いつでも手に入る食材とリーズナブルでみんなに喜ばれるワイン。今日のあの人の感動も、そして私の満足も今夜のテーブルで「無条件の喜び」を分かち合えたら。

今日もそんな一皿を、みなさまとご一緒に。
「愛」の隠し味と一工夫でいつものお料理をアップデート。
今夜のテーブルも、ワイングラスと音楽とあなたのお料理で素敵な夜になりますように。

前回、前々回とブルゴーニュから南のプロヴァンスに移動しました。ワインは全くのニューワールド、アメリカ産でしたが…。今回はさらに南下して地中海を渡ります。
ワインはホロ苦くさわやかな 「グリッロ」を。お料理は甘酸っぱくてミステリアスな 「カポナータ」を。

今夜はイタリアの最南端シチリアへ。

往々にして勃発する抗争劇 「ラタトゥイユ V.S. カポナータ」に視点を当てて進めて行こうと思います。

「カポナータは野菜のトマト煮込みだっけ?」
「ラタトゥイユと同じでしょ?」
「地域によって呼び方がちがうだけ?」
「揚げると炒めるの違いじゃなかったっけ?」

などなど、実は意外とわかっていそうでちゃんとわかっていなかったこの2つ。

今回、改めてあれこれ調べてみると、色々な意見に遭遇しましたが、まあ、結論は出ず。だからいつでも抗争で論争なんですけど。 ラタトュイユは味付けも塩コショウとシンプルに完成されていて、 カポナータはシチリア内でもかなり地域性がありました。

さてさてその起源とは?またまた パレルモ風とは何なのか?お料理を進めながらちょこっと触れてみましょう。

■パレルモ風カポナータ

調理時間 35分 1人分 403Kcal


レシピ制作:佐藤 尊紀



<材料>
前菜として4人分
ゆでタコ足(刺身用) 200g
ニンニク(大) 1片
唐辛子(大) 1本
玉ネギ(中) 2/3個
セロリ(小) 2本(約100g)
ズッキーニ 1本
赤パプリカ 1個(約100g)
黄パプリカ 1個(約100g)
ナス(小) 4本(約320g)
グリーンオリーブ 15個
ブラックオリーブ 15個
ケイパー 30g
ケイパー(漬け汁) 大さじ1
レーズン 50g
白ワイン(フェウド・アランチョ・グリッロ) 50ml
アンチョビ(フィレ) 6本
水煮トマト(ホール:缶) 1缶
寿司酢 100g

塩 少々
ホワイトペッパー 少々
オレガノ 少々
オリーブ油 大さじ4

<盛り付け用>
 イタリアンパセリ 少々
 ユズ皮(乾燥パック等) 少々
 EVオリーブ油 少々

<下準備>
・パレルモ風のキモである「タコ」は「足先が映える」ので大事な足先は少し長めにカット。それ以外は足の付け根に切り込みを入れ、2cm角に切ります。



・ニンニクは上下を落として皮をむき、縦に半分に。芯は残すと焦げやすいので取り除きましょう。そして断面を下にし、包丁の背で平らにつぶします。



ニンニクは潰すことで香りが出やすくなります。オリーブ油に香りを移すことでその後にソテーしたものに風味が増します。


・玉ネギは芯を取り、頭を落として皮をむきます。縦に半分にカットし、外側3枚ほどと内側とをバラします。半割りのままカットすると、大きさに差ができてしまい、ソテーした時に細かい物から焦げていきます。また煮込などでは細かいものが溶けてしまいソースが濁ります。今回は玉ネギの外側だけを使ってサイズを整えます。






具材は極力ですが大きさを揃えることで食感や口当たりが整います。味だけでなくここも美味しさにつながるポイントです。野菜炒めなどでは特に大きな差が出ますので、食材カットの大きさにこだわってみてください。完成時、盛り付け時の見栄えも変わります。


・セロリは両側のエッジと真ん中あたりの筋をピーラーでむき、幅2cmほどで斜めにカット。この斜めカットが盛り付け時に立体感を作りやすく、見た目も美味しそうになります。



・ズッキーニは頭とヘタを取り、縦に4等分に。種が多いようなら包丁を寝かして削ぎ落として下さい。種の部分は煮崩れしますし、水が出るので。面取り的な効果もあります。大きさによりますが2cmほどに切りそろえると1本を8等分くらいでしょうか。



・パプリカは溝に沿って4等分に。ワタを取り除いたらそれぞれを縦2等分に切り、90°回転させて8等分に。硬さはほぼ同じなので色は分けても分けなくてもOKです。






パプリカもピーマンも、溝の内側にそってワタが付いています。そこを上手く4つにカットすることにより、タネやワタの処理が格段に楽に、そして綺麗に処理できます。


・ナスは乱切りにすると加熱時に溶けて煮崩れしますので、皮を残して2cm幅の輪切りに。皮が身をしっかり囲ってくれるので、ナスの最大の楽しみ「トロッと感」を満喫できます。実は カポナータは「ナスが主役らしい」






ナスはとにかく「ヘタに付いているトゲ」に注意。結構細くて手に刺さったまま残ると、テンション下がります。真ん中辺りを摘んでトゲのある頭を切り落とし、クルッと180°回転。今度はお尻の先をカット。すべてカットしたらボウルに入れて、つかる程度のお水に。小さじ1程度の塩(分量外)を入れ上にペーパータオルをかぶせます。塩水に浸すことによりアクが抜け、加熱前の変色を防ぎ、また過熱後の発色をよくします。10分程したらバットでペーパータオルで挟み、しっかりと水気を取りましょう。


・オリーブは特に色分けしなくても構いません。すみません、ただの「計量映え」でした。自己満足。でもお料理に自己満大事かと。



・ケイパーお好きな方は増量してください。私は大好きなのでいつもたくさん入れちゃいます。器に測ったらそこに漬け汁も一緒に。

漬け汁は塩味のあるビネガーです。ケイパーの香りもついていますので調味料としても優秀です。僕は「ケッパービネガー」と呼んでいて、パスタの味付けなどでも使用しています。酸味と塩味を補ってくれるので、使わない手はないかと。


・レーズンと白ワインをあわせておく。 レーズンを使うのは ラタトゥイユとの1番大きい違いです。更にはカポナータの中でも シチリア特有かも。

白ワインも同じ器に計量することで、程よくふやかすことができます。一石二鳥。


・アンチョビフィレは混ぜればすぐに溶けるのでカット不要。今回は料理のコクと全体の塩味のはアンチョビでコントロールします。

・水煮トマトは、ザルとボウルを重ねた「ザルボウル」に空けたら、ホールのトマトを一つずつ手に取り、簡単にほぐしつつ、固いヘタや芯、そしてタネを取り除く。でもタネ取りは大変なので無視してもOK。気になり出すとキリが無いので…



ホールトマト缶はまず先にラベルを剥がす。職場としてのキッチンでちゃんと分別しないと、先輩にめっちゃ怒られます。現代人のマナーとしても大切。蓋を開けてからだと中身をたらしたり、手が汚れたり不都合が多いので、先に剥がしましょう。そして蓋は取り切らず最後は残して下さい。意地になって取ろうとすると、確実にトマトがはねます。服、その他が汚れます。これはかなりテンション下がるポイント。回避すべし。


・寿司酢は個別に容器へ計量しても良し、トマトの器に合わせて計量しても良し。入れるタイミングが同じです。すみません、これも「計量映え」で自己満でした。

・オリーブ油はソテー用です。その都度で計量してもそれほど手こずらないと思います。事前に大さじ1と大さじ3に分けるなら、もちろん楽は楽。

・盛り付け用のイタパセは乾燥してしまいますし、香りも飛んでしまうので、カットはカポナータ完成後でも良し。ユズ皮はフレッシュだと尚良しですが乾燥物が扱いやすいです。スーパーのスパイスコーナーによくあります。



※計量は細かい容器でも良いですし、大きなバットやお皿でも良いですが、食材に触れる前にある程度の数を用意しておくと、いちいち手を洗ったり拭いたり、そういう手間が省けます。段取りが良いか悪いかが、意外とお料理上手のポイントだと思います。味はレシピで決まるけど、段取りを身につけるのは知識とセンスなので。料理が楽チンなる方法を身につけるのもコツ。

※今回のお鍋は、どちらも28cmの物を使用しました。

※ここまでの下準備で約20分です。

※本当は「松の実」も入れたかったけど、スーパーに無かったので今回は割愛。入れれば更にコクがでるのですが…








<作り方>
1.煮込用の深鍋にオリーブ油大さじ1、唐辛子とニンニクを入れ中火に。隣のテフロンフライパンには残りのオリーブ油大さじ3とズッキーニを入れ中火に。ニンニクがこんがり色付いたら玉ネギとセロリを投入。そしてお塩をひとつまみ。玉ネギの水分を出し甘みを引き出します。隣のズッキーニは皮を上にして内側をこんがり焼いて下さい。この「こんがり」が甘みとコクを引き出します。








ニンニクの色付けはお鍋の下に小さいフライパンなどを挟み、できたら斜めにしてオイルを集めると色付きやすく、オイルに香りも移りやすいです。でもとても不安定なので無理しない程度に。


2.玉ネギをかき回しつつバラけたらパプリカ投入。かき混ぜながら、隣のズッキーニが程よく色付いているはずなので、トングで裏返し皮目も焼きます。オイルがだいぶ温まって来ているので1分ほどで、すぐに皮目も焼けてくると思います。フライパンを反時計回りに揺すって、ズッキーニ達をくるくる回せたら火加減も均等になります。



因みにワイングラスをくるくる回すことを「スワリング」と言います。基本は右利きなら反時計回りに。もし回しすぎてワインが外に飛び出しても、目の前の人ではなく自分にかかる仕組みです。まわす回数も基本は優しく3回くらいに。少し空気に触れさせる為です。ここで一度鼻を近づけ香りをチェックします。このワインは痛んでいないか?この品種の独特の香りか?この産地の特徴的な香りか?開けたてなら香りが閉じていますので、個性が開いていなければ、もう一度スワリングを…。という感じです。実は私のプロフィール写真はその瞬間でした。


3.ズッキーニをお鍋に移します。フライパンの方は多めのオイルで揚げ焼きにしていますので、トングで一つ一つ取り上げるよりも、アク取りでまとめて引き揚げた方が安全で早いです。



普段から揚げ物率が高ければ、かなり重宝しますのでお持ちでなければ是非。メーカーにこだわらなければホームセンターや100円ショップにもあるかと思います。


4.空になったフライパンは引き続き中火で、よく水気を切ったナスを投入。断面がフライパンに接するようにトングで整えて下さい。 カポナータはナスの色付きがポイントです。



古くは1790年ごろに文献が残って位いるそうですが、元々はスペインのメインディッシュとしての魚料理だったとか…。でも当時は魚が高級品であり庶民はナスを魚に見立てて調理していたそうです。その名残を残したままシチリアに渡ります。シチリア島の右端のパレルモではタコを入れたり、他の地ではエビが入ったり、またまたナポリではパンが入ったり、と地域性があるようです。


5.と言うことで、おナスちゃんはじっくり5分ほどかけてしっかりと焦げ目をつけてあげましょう。その間に隣のお鍋ではお野菜達に程よく火が入っている頃です。タコ、オリーブの実、ケイパー、アンチョビ、オレガノ、そして白ワインで戻したレーズンもまとめて投入。オレガノはお好みです。



塩とハーブは最後にナスもトマトも入ったところで最終調整しますので、ここでは決めきらなくても良いです。私はハーブが好きなのでメリハリが付くように多めに入れます。


6.お鍋を方を混ぜつつ、フライパンもチェック。ナスが両面とも良い色になっていませんか?程よく焼けたら一度ペーパータオルの上に取り出してしっかり油を切ります。そして両面に塩を振って下さい。



感覚としてはフライドポテトの塩加減くらいでしょうか。そのままナスを食べたとして、美味しく感じられる程度のお塩加減です。


7.お鍋の方は全体が馴染んで来ましたか?アンチョビも溶けていることと思います。ここでトマトジュースと寿司酢を入れます。本来はワインビネガーと砂糖を入れるレシピが多いようですが、ここはアレンジで。シチリア産の白ワインとレーズンを多めに使ってなるべく自然な甘みと酸味を目指します。





カポナータラタトゥイユもう一つの大きな違いは「甘酸っぱさ」だそうです。南仏の ラタトゥイユがシンプルに塩コショウで味付けをするのに対し、元々がスペイン発祥でアンダルシアの港町マラガの酒精強化ワイン(マラガ酒=甘いワイン)を使った カポナータはその独特の 「甘酸っぱさ」が特徴のようです。


8.木ベラで鍋底をかき回し、水分が1/3くらいになってきたら完成も間近。しっかり煮詰める事でトマトと寿司酢の酸が甘味に変わります。最後に残ったナスとトマトの果肉を入れましょう。もしここで湯気がたくさん立ち登って、蒸発が早そうなら、少し火加減が強いのかもしれません。一度弱火にして下さい。ナスを崩さないように優しく混ぜたら、味見をしましょう。お好みで塩コショウをして味を整えて下さい。








とにかく予想以上に熱いので味見は本当に本当に気をつけてくださいね。ナスがトロトロで激熱危険地帯なのです。お好みでオレガノも追加して香りをおぎないましょう。煮物は一度冷ますと味が馴染むので、翌日が一番の食べごろです。


9.ここまでで、お鍋を火にかけてから15分くらいでしょうか、おそらく左右を交互に忙しかったと思います。お疲れ様でした。リズミカルに楽しんで頂けてたら嬉しいです!盛り付けはクルッと巻いた「タコの足先」と「2色のオリーブ」そしてゴロっと「大きいナス」を口のあまり大きくない器に高く盛り付けて下さい。細かすぎないイタパセを無造作にふって、エクストラバージンとユズ皮をアクセントに。柑橘の香りが、料理とワインの相性を引き立てます。


■「甘酸っぱい記憶」は大切な思い出
シチリアといえば、かの有名な「ゴットファーザー」の舞台。マフィアの抗争が劇的な音楽とともにドラマチックに展開します。仁義なき戦いです。今回は南仏の 「ラタトゥイユ」と南伊の 「カポナータ」の抗争が見え隠れしました。この料理に限りませんが、料理の定義はよく議題に上がります。どのレシピが正しいのか?この料理の発祥はどこなのか?誰が最初に作ったのか?

しかしそんなことはどうでも良いのです。料理はヒラメキであり、食べさせたい誰かがいて、その人を思いながら、心を込めて作る、そんな最高に楽しい「表現の一つ」なのだから。料理もワインも、恋愛も、人生も、その人にしかない、その土地にしかない、その時々の、それぞれの個性があるから魅力的なんだと思う。あのワインを飲んで思い出すことも、この料理を食べて思い出すことも、思い出したく無いことも。

「甘酸っぱい記憶」は大切な思い出。

でも今夜は目の前にいる人と、無条件の喜びを分かち合えたら、抗争なんて起きやしない。
少しホロ苦いグラスの「グリッロ」がより目の前の甘味を引き立たせてくれる。
今夜の料理とワインが、素敵な記憶の一枚になりますように…



E・レシピで作り方をもう一度チェック↓



(佐藤尊紀)

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