「うちの子、なにか違うかも?」…多様な子どもたちの個性を伸ばす支援とは?
Woman.excite / 2020年12月21日 14時0分
子育てをしていると、つい周りの子どもと自分の子どもを比べてしまい、「うちの子周りの子と違うかも?」と感じるタイミングがありませんか? そんな多様な子どもたちの「何か違う」を大切な個性として、支援する方法について知っておくと、親子ともに、軽やかに生き抜いていけるヒントになるかもしれません。
書籍『子どものよさを引き出し、個性を伸ばす「教室支援」』には、ADHD(注意欠如・多動症)やASD(自閉スペクトラム症)といった傾向にある多様な子どもたちの個性をのばす方法について、具体的に書かれています。
書籍は学校での具体的な困りごとが4コマ漫画で紹介され、主に学校の先生の教育実践をサポートするために描かれています。しかし多様な子どもとの付き合いで悩む親御さんにも困りごとを解決する一助となります。
著者で日本の特別支援教育を牽引してきた高山恵子さんをはじめとして、教師や心理士、教授や医師など、多くの専門家が、支援策を提案してくれています。今回は書籍から、多様な子どもたちの支援方法について、ご紹介したいと思います。
NPO法人えじそんくらぶ代表。ハーティック研究所所長。臨床心理士。薬剤師。
専門はAD/HD等高機能発達障害のある人のカウンセリングと、教育を中心にストレスマネジメント講座などにも力を入れている。
■やるべきことがなかなかできない子、どう声かけする?
事例のうち、まずは、「やるべきことをなかなかできない子」について、見ていきたいと思います。
▼注意力が足りず、他のことで頭がいっぱい?
子どもに対して、「集中できていないのでは?」などと感じたことはありませんか? 授業や習い事の課題など、やるべきことがあっても、なかなか取り組むのが難しい場合もあるかもしれません。
子どもたちがやるべきことに手をつけられない理由はさまざまですが、なかにはADHDの3大特性の一つである、他のことに気が散る「不注意」が原因の場合も。
その場合は、「いま、もっとも注目しなければいけないものに注意する力」すなわち「選択的注意」が続かず、何かしていてもすぐに他のことに気がそれてしまっている可能性があります。だから、一見ボーッとしているように見える子も、頭の中は多動の状態になっている場合もあるのです。
▼なぜ、注意できないのかを考えよう
支援の方法としては、まずは子どもをよく観察するところから。「何でボーッとしているんだろう? という理由を探すところから始めましょう」(麻生先生)
注意できない理由の見立てができてから、子どもへの対応を考えてみることが大切だといいます。そのとき、子どもの様子をもとに、どういった声かけができるか考えることが重要です。
「集中できないのなら、小まめに声かけをする。心が別世界にいっているのなら、『3分後の図工室だよ』と見通しを伝える。状態の原因を見つけ、使える方法を選ぶという視点がもてると良いですね」(井上先生)
■すぐに怒る子、怒るのには理由がある
次は、何かあるとすぐに怒ってしまって、周りを怖がらせてしまう子の特性と支援策についてです。何かあるたびにすぐ怒ってしまう子どもたち。怒ってしまうのはどんな理由からなのでしょうか。
出典:『子どものよさを引き出し、個性を伸ばす「教室支援」』(小学館)
▼すぐに怒るのは、独特な感覚とストレス反応のせいかも
そんなに怒ることでもないのに、すぐに怒ってしまうと感じる場合には、もしかしたら「ASD(自閉スペクトラム症)」の傾向があるかもしれません。
その子からすると、ちょっとぶつかっただけなのに、なんで「ぶった」と言われるのだろうと感じているかも。独特な感覚を持っているがためにそうした行動に至っているだけで、本人には悪気が全くない可能性もあります。
また、一般的な感覚だと怖く感じるほどのオーバーリアクションを取ることもしばしばあります。しかし、そのリアクションの裏では、その子が強いストレス反応をしていると読み取ることもできます。
「このタイプの子を理解するキーワードは、『独特な感覚』と『ストレス反応』です。音や接触など感覚過敏がひどいとストレスが多く、それだけで疲れ果ててしまっている子もいます。『ちょっと触っただけ』が引き金となって、強烈なストレス反応が出る子もいます」(井上先生)
▼周りに、本人の特性を理解してもらえるように働きかけよう
まずは、周りの人たちに、その子にとって独自の感じ方があることをしっかりとわかってもらう必要性があるそうです。
「Dくんにとっては、突然、後ろから触られるのが、強い恐怖であるという、独自の感じ方を周囲に説明する必要があります。一方で、Dくんには、『突然触られたら、自分はとても怖いと伝えればいいんだよ』と、外的な言語を教えます」(麻生先生)
「『嫌なことは人によって違う』という切り口で、独特な感覚について伝えましょう」(井上先生)
■自分の世界で生きている子は、集中力が抜群
次に取り上げるのは、自分の世界で生きている一見マイペースなタイプの子どもたちです。いくら話しかけても全然聞いていないなという子どもたち、なぜ自分の世界に入り込んでしまうのでしょうか。
▼飽きずに、同じことが続けられる特性がある
自分の世界で生きるタイプの子どもたちは、とくに男の子に多いといいます。たとえば、休み時間に遊びに集中してしまい、チャイムが鳴ったことにも気づかないということも。こうしたことが続くと、「なぜ気づかないの?」「無視しているの?」と思ってしまいますよね。
「よく言えば、集中力が高いのです。この手の集中力は、物事を成し遂げるのに必要です。こういう子が、未来を変えていくのではないでしょうか?」(久保田先生)
▼大切なのは、気持ちの切り替え
大切なのは、子どもたちに気持ちの切り替えをちゃんとさせてあげること。
「この場合、切り替えができないことが問題だと思うのです。たとえば授業の前に、学級全体で背筋を伸ばして、深呼吸をしてはいかがでしょう?
身体に触れながら声をかけると、『聞く耳』のスイッチに切り替わることもあります」(久保田先生)
気持ちを切り替えてほしいタイミングで、体に触れながら声かけ、深呼吸やストレッチ、軽い体操などをすると効果的なのだそうです。
■「ママの心が平穏なら、大体のことはなんとかなる!」
本書の取材・執筆を担当された楢戸ひかるさんは、息子さんが保育園の年長時に広汎性発達障害と診断され、小学校時代に特別支援学級に通っていました。現在は高校生になった息子さんの子育てについて、楢戸さんにお話を聞きました。
まずは、図書館で発達障害関連の本を借りて読んでみました。10年以上前だったので、インターネットの情報が少ない時代だったことも大きいのですが、「いかに不確かな情報に振り回されないか?」どうかは、今も非常に重要だと思います。
――それから、相談に行かれたのでしょうか?
ある程度情報をストックをして、「心の準備」ができたら、いざ相談です。発達障害のことを最初に相談する相手は、発達障害についての知識がある人のほうがいいと思います。たとえば、ママ友に愚痴を言ってガス抜きをするのは私もよくやっていますし、とても大切なことですが、それはあくまで、「ガス抜き」でしかありません。
「うちの子、発達障害かも?」と気になっているのであれば、しかるべき相談窓口に行ったほうが、回り道をすることなく適切な対応策にたどりつけるのではないかと思います。
――子どもが学校に通っている時に、先生とはどうやってコミュニケーションをとっていましたか?
試行錯誤の繰り返しでしたね。子どもが3人いるので、「先生にもいろいろなタイプの人がいる。教師経験の違いや発達障害についての知識や理解は人それぞれ」という現実は理解しています。だから、先生に発達障害についての知識や理解があまりない場合は、深追いはしませんでした。
一方で、「この先生だったら話を聞いてもらえるかも」という場合は、なるべく学校に顔を出して、自分からコミュニケーションをとることを心がけました。
「わが子が定型発達の子より手がかかる」というのは事実だと割り切り、そこを忘れずに、相談やお願い事をすることが大切だと思います。また、学校の役員なども、できる範囲でなるべくお引き受けしました。「先生と顔を会わす機会が増えた方が、いろいろと話ができるかな?」という気持ちがありましたね。
――自分のお子さんが「他の子とは違うかも」と悩んでいるママに向けて、伝えたいことはありますか?
私は、「うちの子、他の子とは違うかも?」、「でも、大丈夫かもしれない」という無限のループを、頭の血管がすりきれるほど何年もグルグルと一人で考え続けていました。今思うと、一人で抱えてグルグル考え続けていた時期が最もつらかったです。だから、最初にお伝えしたいことは、「一人で抱え込んで悩まず、しかるべき機関とつながることが、発達障害の子の子育ての第一歩」ということです。
そして、とにかくママ自身がバテないこと! ママの心は子どもが育つ上での「胎盤」のようなものだと思います。「自分をケアする方法」や「助けてくれる人を探す」など、バテないための手札を増やすことを心がけてほしいと思います。メディアに登場するような「ステキなママ」でなくたって、大丈夫! ママの心が平穏なら、だいたいのことは何とかなりますよ。
ここまで、子どもたちの個性を伸ばす方法について考えてきました。将来、子どもたちが自立できる力を身につけるために、今できる範囲でその子にあった支援をしていくことが重要なのでしょう。楢戸さんの言葉のように、まずはママ自身の心を平穏に、子どもたちと過ごしていけるよう、ヒントを探していきたいですね。
(高村由佳)
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