太夫と花魁の違いとは? 調べてみると奥が深い「遊女の歴史」(後編)【夫婦・子育ていまむかし Vol.6】
Woman.excite / 2022年10月1日 13時0分
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ウーマンエキサイトをご覧の皆さん、こんにちは。tomekkoです。
前回は古代から中世(戦国時代末期)までの遊女たちの意外な姿を見てきました。
時代劇などで見るイメージとはずいぶん違って驚きましたか?
夫にこの話をしても最初はよく理解できなかったようで…。
それでは、いつもとは違う格好のおこんさんと、慶長年間(江戸初期)の京都四条河原に行ってみましょう…!
阿国歌舞伎(おくにかぶき)とは?
そこで演じられていたのは、戦国時代から江戸時代への転換期の話をするのに外すことはできない「阿国歌舞伎」。
出雲国の歩き巫女だったという阿国(おくに)が率いる一座は都で一世風靡しました。阿国はジプシー的巫女兼芸能者ですね。
阿国歌舞伎は、女性が男装し、当時流行していたかぶき者 (他と異なる服装や行動をする若者) を取り入れた「かぶき踊」を演じて人気となったようです。
これも現代の感覚だとなかなか受け入れ難いのですが、江戸時代までの性愛対象って異性に加えて「若衆(未成年男子)」も対象として存在していたんですよね。(詳しくは同性愛の歴史をご参照ください)
つまり男装(女装)して演じるという男女が入れ替わった内容は、異性愛に限定されず、どの立場の人にとっても関心が高く注目を集めやすい演目だったのではと…。これを遊女屋が真似し始めると風紀が乱れるとのことで禁じられ、すると若衆を売る陰間屋が真似していき…最終的に「成人男性」だけが歌舞伎を演じてOKというルールに落ち着いて現代に至ります。
そして異性装や変わった服装で舞踊に興じるブームって、実は時代の混迷期・転換期によく起こるなぁと。
平安時代末期には白拍子舞。
戦国末期には歌舞伎。
江戸末期にはええじゃないか踊り。
そして…ちょっと飛躍してるって言われるかもしれないけれど、個人的には1980年代のディスコブーム。
異性装や派手で変わった服装で踊るというのは、文化の爛熟期と不安定な社会情勢への庶民の反発が強まっている時期に流行りがち…と考えられませんか?
その視点で見ると阿国は、まるで中世の終わりを告げにきた存在に見えます。貴と賤、聖と俗、男と女、いろんな両極間の媒介者であり自由の象徴でもあった中世までの遊び女(あそびめ)が活躍するのはここまで…です。
自由は失われ…管理された街へ
阿国歌舞伎ブーム後、幕府によって島原に移転された傾城町は、塀に囲まれた場所に遊女たちを集住させ、主に特権階級の接待をする場所となりました。遊女たちはいずれかの遊女屋に所属し、支配され管理される生活に変化していきました。
同時に、それまで曖昧に兼ねていたような宗教性を失っていきます。
江戸前期の寛文の頃の史料からは、太夫と呼ばれる全てにおいて優秀な最高級遊女を筆頭に序列を作り、着るものから髪型までを取り決めて管理するようになっていたことがわかります。
幼少期(禿)から素質のある子をマニュアル通りに育て、個性よりも完璧性を追求した遊女。中世までのイメージとずいぶんかけ離れていきますね。
太夫と花魁の違いとは?
ちなみにとてもよく似ているようだけど京都・島原のトップの称号である太夫と、時代劇などで見る江戸・吉原のトップ、花魁は実は全然違うんです。
「太夫」とは元々能や舞踊に優れた者に与えられる称号であり、また島原の太夫の中には「正五位」を授けられ天皇と謁見できた人もいたとか。芸能や貴人の接待に重きを置いていたことがわかります。
一方この島原を模して江戸に作られた吉原は、同様に江戸幕府公認の遊郭でありながら、犯罪を犯し非人となった女性や人身売買で売られてきた子どもなどが遊女にされることが多く、一握りの高級遊女以外は奴隷的な生活を送っていたのも事実でしょう。江戸吉原は庶民も手を伸ばせば届くような娯楽の場として発展し、目的も性的なことが中心となっていきます。
花魁という呼び名は、禿が「おいらの太夫でありんす」などと言うところを省略し「おいらん」と短くなったのが始まりという説があり、禿を従えるクラスの高級人気遊女という意味の敬称のようです。
こちらの江戸吉原が、現代の遊郭・遊女のイメージに近いのではないでしょうか。
…お気づきでしょうか?
遊女には、古代から長きにわたって築き上げられてきた歴史があるにも関わらず、普段私たちがイメージするのは、江戸吉原の遊女・遊郭のみとなっているのです。
歴史を学んで身に付く力とは?
私は遊女という職業・商売形態を全肯定したいわけでも、酷い目にあった女性たちがいるという事実を伝えずに子どもたちに良いイメージを植え付けたいわけでもありません。どちらかというと、大人には都合の悪いことも史実は史実として伝えていくべきだと思っているクチです。
でも今回このテーマで2回に渡って書いたのは(これまでの記事にも共通しているんですが)、現代の私たちが知っている(つもりになっている)歴史なんて流れのほんの一部をだったり、意図的なムーブメントでいかにも伝統のように作られた比較的新しい価値観だったりすることもあるのです。
ネットでなんでも調べられる時代だからこそ、簡単にわかったつもりになってしまい浅い理解で止まってしまうことって…歴史に限らずよくありますよね。
興味を持ったことだけでもいいので、物事の流れを知って情報を整理していろんな角度から正しく全体像を捉えられる人に自分もなりたいし、これからの子どもたちに必要な力ではないかと思っています。
(tomekko)
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