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衝動的に欲しいものを買ってしまう…お金のトラブルを抱えがちな子どもへの金銭教育【発達障害と診断された息子の中学高校生活 Vol.3】

Woman.excite / 2024年6月1日 7時0分

衝動的に欲しいものを買ってしまう…お金のトラブルを抱えがちな子どもへの金銭教育【発達障害と診断された息子の中学高校生活 Vol.3】

大学生となった次男の湧太は、小学校の頃、支援級に通っていました。今は支援を必要としていませんが、彼が家庭にいるうちに、できる限り様々なトライ&エラーをして欲しいと思っています。なぜなら、トライ&エラーで得る経験値は財産だからです。

今回は、生きていくための必須項目、「お金との付き合い方」のトライ&エラーについて、我が家の事例を紹介します。

■発達障害があるとお金のトラブルを抱えがち


© aijiro - stock.adobe.com


発達障害があるとお金のトラブルを抱えがちであることは、多くの支援者が指摘しています。
【発達障害の特性があるがゆえに抱えがちな困りごと】
(1)衝動的に欲しいものを買ったり、やりたいことやってしまう
(2)見通しを立てるのが苦手なので、計画的にお金を管理するのが難しい
(3)予算に関係なく、好きなものには徹底的にお金を使ってしまう

幼い頃の息子は、(1)(2)が該当していました。「このままだとマズイかも!」と考え、金銭教育には力をいれることにしました。

■子どものお金の使い方をどうやって把握する?


© aijiro - stock.adobe.com


まずは、彼のお金の使い方を知るために、お金を精算制にしてみました。中高時代のおこづかいは3,000円。その他の必要経費は、「下記の精算用紙とレシートを提出すれば、後日精算します」という制度です。


母がエクセルで自作した精算シート


お金の使い方は、優先順位をつけることが必須です。そのためには、大きく3つの項目に分け考えます。緑はインフラ、黄色はコスト、グレーはクッションです。
【緑:インフラ】
生活をする上でのインフラとなる費用です。将来的には家賃、水光熱費、通信費などです。
中高生で考えると、部活の遠征や塾に行く際の交通費、学校から塾に行く間の腹ごしらえや時間調整のために入るカフェ代をカウントしました。

【黄色:コスト】
生活をする上での、ランニングコストです。将来的には、食費、日用品といった生活費です。
中高生で考えると、パンやおにぎりといったお弁当以外に食べる捕食代(中高生男子は、いつもお腹がペコペコです)、文房具代、書籍代などをカウントしました。

【グレー:クッション】
イレギュラーなお金のことです。将来的には、レジャー費、交際費などです。
中高生で考えると、お友だちとの外食やレジャー費です。

クッション費については、「500円以上の部分」かつ「親が納得するようなプレゼンができれば」精算します、というルールでした。たとえば、休みの日に友だちと遠くに遊びに行った時の交通費や食事代を一部負担するといったところでしょうか。

この制度の良い点は、経費精算なので「お金が足りなくなると、精算せざるを得なくなる」ということです。「精算用紙を提出すれば現金が手に入る」と脳の報酬系を刺激する仕組みを作ることで持続可能な制度となりました。

■息子の動きが透けて見える優秀な手がかり

思春期は、親子の会話の少ない時期です。「必要経費にするためのプレゼン」など、精算にまつわるアレコレが親子の大切なコミュニケーションになりました。


© soulgems- stock.adobe.com精算は、ぐちゃぐちゃのレシートを広げるところから始まります


予想外の副産物として、レシートの優秀な探偵ぶりをあげたいです。息子が買い食いをしているレシートを見ることで、「こんなものを食べているんだ。この時間に、ここにいるんだ」と、息子の動きが透けて見えました。お金の流れは、本当に正直です。


■無駄遣いは注意すべき?


© aijiro - stock.adobe.com


私は、息子に対して、「無駄遣いをやめなさい」とか「節約しなさい」と言ったことはありません。むしろ、お金の小さな失敗を経験させたいと考えています。

たとえば、「友だちと遊びに行く予定があるのに、お小遣いが足りない。どうしよう!」とか「あの時無駄遣いしなければ、今〇〇円あるはずなのに!」といった感情経験です。

最初から、お金を上手に使える人なんていません。お金の小さな失敗は、冒頭でお話した「トライ&エラーでしか得ることができない経験値」です。本人が感情経験を素直に感じとれるよう、家庭内に、失敗も含めてお金の話を自然にできる雰囲気を作っておくことが大切だと思います。

■「お金の失敗をさせない」ことより大切なこと


© siro46 - stock.adobe.com


成年年齢の引き下げで18歳、19歳の若者は、未成年者取消権(親などの同意なく行った契約を取り消すことができる権利)を使えなくなりました。

「お金の失敗は、誰にでも起こり得る」という気持ちで親が構えていれば、子どもが実際に金銭トラブルを抱えてしまった時、親に相談がしやすいとも思います。

もっとも困ることは、子どもがお金のトラブルを抱えたまま、誰にも相談できず、問題が大きくなってしまうことです。

高校を卒業するまでに、「この子のお金の使い方はどんな感じかな」と子どものお金の使い方の癖を親が把握しておくこと「お金の失敗は誰でもするんだから、何かあったら相談できる」という親子関係の構築は大切だと思います。

■もし子どもが金銭トラブルに巻き込まれたら…?


© arc image gallery - stock.adobe.com


少し余談になりますが、子どもから金銭トラブルの相談を受けた時、保護者も動揺するでしょう。でも、大丈夫!

保護者は「このトラブルは、どこに相談すればいいのかな?」ということを子どもと一緒に考えてください。

「相談先を子どもと一緒に調べ、考える」という保護者の姿勢があるだけで、子どもは心強いと思います。

相談窓口は、下記などがあります。
◎金融庁:「中学生・高校生のみなさんへ」
「基礎から学べる金融ガイド」が、ダウンロードできます。お金のベーシックな知識は、これを読むと良いでしょう。また「基礎から学べる金融ガイド」の31ページ以降は「トラブルに注意」という項目となっており、相談窓口が記載されています。

お金を請求された場合、支払ってしまった後に取り戻すことが難しい場合もあるので、支払う前に、相談した方が良いでしょう。保護者の側にも、「問題を一人で抱え込まずに、早めに相談機関と繋がる」という感覚が必要です。

■発達障害の診断を受けた息子の今!


© One - stock.adobe.com


わが家の金銭教育について、息子はどう感じていたのでしょうか? 本人に聞いてみました!
湧太:精算制度のおかげで、浪費してしまった次の月は節制するなど、「自分で自分のお金は、コントロールできる」という感覚を持てるようになりました。

■発達障害のある子はずっとこのまま?という不安


©polkadot - stock.adobe.com


いかがだったでしょうか? 3回に渡って、発達障害と診断された息子の中学高校生活に伴走して考えたことをまとめてみました。

子どもに発達障害の特性があると、育児最前線にいるママは本当に、本当に大変です。いくら大変でも、ママには「育児をしない」という選択肢がない以上、毎日をゼーハーと“こなす”しかないですよね…。お疲れさまです。

でも、そんな日々を懐かしく思い出せる日が来るんです。私は、ある時、ふっとそんな日がやってきました。

発達障害がある子の成長スピードは、定型発達の子の7割くらいと言われています。幼い頃や学齢期だと、周囲の子どもと比べてできないことが多すぎて「ずっとこのままなんじゃないか」という気持ちになることもありますが大丈夫!! 

「オムツがとれた」「立てた」「おしゃべりができた」といった時代、「あれ? うちの子、発達が遅い? 大丈夫かな?」などと気になっていたことはありませんか? でもあとから考えれば、それはたいした時差ではなかったですよね…。

発達のスピードはゆっくりかもしれませんが、発達障害がある子も確実に成長します。子どもが育つ力を信じて、その子なりの育ちを見守れると良いですね!

最後に最近の私の話をひとつ。「ふつう」という枠に入らない子を育てている母ばかりで話をする機会があった時のことです。「私たちは、ヘビーな子育てだったがゆえに、いろんなことを考えざるをえなかった。そんな時間は、振り返った今となっては貴重だったよね」というのは、全員一致の見解でした。


© Adobe Stock - stock.adobe.com


発達障害のある子を育てていると、途方に暮れることも多々あります。でも、大丈夫! 子どものことを一生懸命考えている自分を大切に扱いながら、自分なりの歩幅で歩いていけば、いつの間にか楽になる日が来るのだと実感を込めて思います。そして、そんな日々こそが人生の財産なんです。
本記事はあくまでも筆者の体験談であり、症状を説明したり治療を保証したりするものではありません。気になる症状がある場合は専門機関にご相談ください。

■楢戸ひかるの著書
『ギフテッド応援ブック −生きづらさを「らしさ」に変える本−』(小学館刊)



定価1,760円(税込)/192ページ

著:楢戸ひかる
監修:片桐正敏(北海道教育大学旭川校教授)
取材協力:小泉雅彦/日高茂暢/ギフテッド応援隊
マンガ:黒川清作


ギフテッドの生きづらさをリアルに描いたストーリーマンガ80ページと、約100ページの解説で構成。 当事者たちの「生きづらさ」を「らしさ」に変えるために必要なサポートのあり方についても提案した書籍。


(楢戸ひかる)

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